地方進出
企業の地方進出。単純に拠点が増えることだけでなく、地域とより密接に関わる好循環が生まれることから、都心から少し離れた場所に拠点進出を検討している企業も増えてきています。
そこで今回お届けするのは、新潟県糸魚川市が主催した、『糸魚川に惹かれたMOVEDの世界に迫る 〜「心を動かす」職人・アスリート達のココロが動いちまったよ編〜』と題し行ったイベント。
テレワークが叫ばれる以前から全社員がフルリモートで働いてきたのにも関わらず、第2の故郷と呼べる場所として糸魚川市へ拠点進出した株式会社MOVED。
今では従業員だけでなく、従業員の家族も含めて、糸魚川を楽しみ尽くしているのだとか。本イベントでは糸魚川市に拠点を出した理由や、地域進出のメリットを赤裸々にお伝えしていきます。
外と中が混ざることで見えてきた、新たな可能性とはーー。
山崎:改めて、私と株式会社MOVED代表取締役の渋谷さんとの関係をお伝えします。前編で渋谷さんがお話してくださったのですが、一番初めに渋谷さんがお仕事で糸魚川に来られた際のプレゼンでとても心が動かされたんですよね。話の内容ももちろんそうなんですが、「この人が喋ると、なんでこんなに心が動くんだろう」って興味を持っちゃって。
懇親会の席で「糸魚川市の副市長になってください」って話をした思い出があります(笑)。それぐらい渋谷さんの持つエネルギーを感じたというか、こんな人が糸魚川に来たら新しい風が吹くなって。懇親会終わりに握手をして、それから3年が経ち、僕の念願叶ってMOVEDさんの拠点進出になりました。
渋谷:あの後、1年間で6回ぐらい糸魚川に来ましたよ。
山崎:みなさん完全自費で来てもらってますけど、来られた時は一緒に美味しい魚を食べたりして。しかもそれを渋谷さんがSNSに投稿したことで、従業員のみなさんも影響を受けてしまったという(笑)。
渋谷:あんなに頻繁に投稿してたら、「社長いいな」って「糸魚川いいな」って思いますよね(笑)。
山崎:『あなたと私をつなぐ地方創生“じぶんごと”プロジェクト「糸と魚と川」』を始めたきっかけも、2021年に糸魚川の仲間と渋谷さんたちでキャンプをしたことなんですよね。焚き火を囲みながら今後の糸魚川のことで盛り上がって。
その思いが通じて、今日のイベントでは北は北海道、南は福岡から視聴者の方が糸魚川に集まってくれて。嬉しい変化を感じますね。MOVEDのメンバーは何か感じるところはありますか?
コジロウ:最初「糸魚川」って何て読むかもわからなかったのに、今では住んでる扱いされてるぐらいなんですけど(笑)、僕は親子ワーケーションをSNSにシェアしたことで、友達の友達が繋がって、糸魚川に縁のなかった人たちまで来るようになっています。
瞳:周りもそうなんですが、私はメンバーから影響を受けています。それこそ、コジロウさんが親子ワークショップに参加される様子をSNSで見て「短期間じゃなくて1週間2週間ないと満喫できない!行きたい!」みたいな(笑)。
山崎:僕らとしても拠点ができたのは大きいですよね。
小林:僕なんか、周囲2時間で歩ける範囲は全部歩きましたよ。糸魚川の店の位置とかはほぼ覚えました。
山崎:さすがです。小林さんは本当に僕らよりも糸魚川のこと知ってますからね!
渋谷:小林は道案内もスーパーの名前とかで指示してくるんですよ(笑)。「どこどこのスーパーを左へ曲がってください」みたいな。完全に地元の人!
山崎:会場の方から質問をいただきました。「MOVEDのみなさんから見て、糸魚川の一番の魅力はなんだと思いますか?」とのことですが、いかがでしょうか?
コジロウ:人って言っちゃうと、くくりが大きくなっちゃいますけど、糸魚川の人たちの心意気かな。外から人が来ても警戒せずに、「誰か来たぞ!」って好奇心で関わってくれるんです。「どっから来たの」って声をかけてくれる。昨日はスキー場のリフトのおじさんと喋り倒しましたね。そういう雰囲気が普通に存在してるのが糸魚川って感じで好きだな。
瞳:町の人の糸魚川愛の凄さですかね。地元のことをあまり話さない県もある中で、糸魚川の人って「糸魚川素敵でしょう!また来てね!」ってすごい地元愛を感じる。相手に「来てね」って自信を持って言えるところがいいのかなって。
山崎:僕は自信なかったんですけどねー。地元の環境が当たり前すぎたんで。でもMOVEDのみなさんのおかげで自信を持てる環境になってきたし、自分の意識も変わったなと思います。
小林:初めて来たときに、町そのものに惚れました。私は散歩するのがめちゃくちゃ好きで、1日1万歩は歩くんですけど、路地裏にいい感じのお家があったりして、テンション上がりまくり(笑)。残していくべき町の風景がいっぱい残ってるのがすごいなって。
山崎:町並みすごく素敵ですよね。実はこのあたりは何回も大きな火事があって、昭和や平成の雁木がまばらに残っているエリア。でも最近また燃えてしまって、ある種、令和も含めて3世代雁木があったりします。地元としては「つぎはぎ的な修復になっているのはあまり美しくないんじゃないか」と言われる方もいるんですけど、小林さんに言わせるとそれが美しいって。
小林:最高ですね。アンバランスさがたまらない。綺麗に修復しちゃったら他の場所と同じになって特色がなくなっちゃうんですよ。だからこれぐらいのカオス感が歴史を語る上で最高なんです。ある種、地層と同じ。歴史によって風景が切り替わっているのがわかるのがいいですよね。
山崎:やっぱり僕らと視点が全然違う。いろんな町を見た中での糸魚川を見る視点。それがいい方向に作用する気がしてならないので、これからもガッツリMOVEDさんと組みたいと思ってます(笑)。
山崎:他にも質問がありました。「みなさんの話を聞いて、『ここに来たからせっかく来たから遊んでやろう』みたいな気持ちが見えるのですが、そういう感覚を持ち始めたのはいつ頃なのかを生い立ちも含めて聞いてみたい」とのことですが、みなさんいかがですか?
小林:僕は東京生まれ東京育ちなんですけど、東京と他の地域の圧倒的な違いは変化のスピードだと思うんです。道路の形ですが10年単位で簡単に変わってしまうような場所なので、変化自体に抵抗がない。僕自身、卒業した学校が幼稚園以外、合併や廃校で全部なくなってるんですけど、かと思いきや、廃校になったはずの学校が復活してることもあって。
そういう変化を見てきたからこそ、その町に残っているものの良さがわかる。だからこそ糸井川を歩いたときに、「この町はやばい」って思ったんですよね。
渋谷:私は東京の下町生まれで町に愛着はあるんですけど、僕が思う「田舎」がないんですよ。みんなが夏休みになると田舎に帰るじゃないですか、あれに憧れがあった。そういう意味では糸魚川は受け入れてくれるというか、第2第3の故郷としてすごく居心地も良い。今は子どもが勉強を頑張りたい時期なので、東京を離れられず二拠点になっていますが、いずれはその比率も5:5とか7:3みたいにその時のフェーズで変わっていくのかなって。
瞳:私は福島から出たことがないんですが、旅好きなので外を見てみたいという想いが自分の中にありました。あとは、選択肢を子どもに持ってほしいと思っていて。今福島に住んでますけど、「自分が住んでいる場所以外にも面白い場所があるんだな」っていう感覚を小さい頃から身につけていれば、大人になったときに選択肢が増えるかなって。
山崎:僕たちはMOVEDさんと違って、地方自治体の職員なので、人口減少をストップさせたいっていう想いがありますが、移住はハードルの高さを感じていて。じゃあ「何ができるんだ」と考えた時に、「自分事で関わってくれる人たちを増やしたい」という想いで動いています。
今回の皆さんのように、まずはきっかけがあって、関わりが増えて、拠点を構える。今はどこからでも仕事ができる時代なので、MOVEDのみなさんのようにまずは関わりを持ってもらうことが、今後のヒントになるかもしれないと思いました。
Editor's Note
質問にもあったように、メンバー自身が楽しんでいるのがとても伝わるトークセッション。中から見てわからなかった魅力も外からの視点が混ざる事で、新たな魅力が生まれるヒントになるかもしれません。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香