ZENKOKU
全国
「地域資源を活かした新たな事業や仕組みづくりに挑戦したい」
「まち全体が豊かになる持続可能な観光の在り方を考えたい」
そんな想いを持つアナタに向けて開講するのが、LOCAL LETTERを運営するWHEREによる「観光経営人材養成講座」です。
これまでにのべ70名以上が受講したこの講座では、地域固有の資源を価値として再編集し、持続可能なモデルとして育てる“観光経営”のノウハウを、実践的なカリキュラムを通じて伝えてきました。
現在は第3期生を募集中です。今回はこれまでに講座を受講した卒業生3名に、リアルな感想や、受講を経てどんな変化があったのかを伺いました。
それぞれの現場で奮闘する3人は、講座で何を学び、どんな視点を得たのでしょうか。前編となる本記事では、受講の背景と講座で印象に残った学びをお届けします。
【受講生募集中】観光経営人材養成講座の詳細はこちら
講座には全国からバックグラウンドの異なる受講者が集まり、中にはすでに地域で事業を動かし始めている人も少なくありません。卒業生の石橋拓磨さんもその1人です。
「今までは仕事も地域の活動も全部『自己流』でやってきました。でも、地域の観光を本気で育てるなら、ちゃんと『経営としての観光』を体系的に学びたいと思ったんです」(石橋さん)
岡山県倉敷市・児島エリアで地域おこし協力隊として活動しながら、ブランディングやマーケティング、事業立ち上げといったプロデュース業を営む石橋さん。現在も体験型の飲食店や宿泊事業の準備も進めるなど、精力的に活動を続けています。
受講の背景には、地域で実践を重ねるなかで育ってきた“ある感覚”がありました。

「観光って、1つのコンテンツや1店舗が盛り上がっても、それだけだと“点”で終わってしまうんです。僕が今いるエリアは人口2,000人ほど。1つの宿が盛り上がっただけでは地域全体の変化にはつながりにくい。だから『点をつないで面にしていくこと』『協業で地域課題を突破していくこと』が必要だと感じていました」(石橋さん)
協業しながら地域全体を盛り上げるにはどうすればいいのか、これまではただがむしゃらに取り組んできたと石橋さんは語ります。しかし、講座を受講したことで、その“我流の感覚”が言語化・定型化されていきました。

「地域のプロジェクトでは、行政・事業者・住民、それぞれの立場やスピード感が違うために、なかなか前に進まないことがあります。しかし『観光経営人材養成講座』で学んだことで、その原因を『リスクと責任の所在が曖昧だから』というように、理論として捉え直せたんです。言語化できるようになったことで、一緒に地域で頑張っている方と話すときも認識を共有しやすくなりました」(石橋さん)
講座で得た言葉やフレームを持ち帰ったことで、それまで頭の中だけでモヤモヤ考えていたことに輪郭が生まれ、仲間との「共通の参照点」ができたという石橋さん。自身の実践をより確かな言葉で捉え直しながら、地域の観光に向き合う視点を深めていきました。
続いての受講生は、埼玉県宮代町を拠点に、農家民泊の運営サポートや世界の軽食をテーマにしたイベント出店など、地域と世界をゆるやかにつなぐ活動を行う木村裕子さん。

もともと生まれ育った地元を、「あまり特徴のないまちだと思っていた」と語る木村さん。結婚を機に一度はまちを離れたものの、再び戻って家を建てるタイミングで、神奈川出身の夫が宮代町の街並みに興味を示したことが転機になりました。
「夫が『この建物がかわいい』『ここがおもしろい』と言ってくれて、それまで何とも思っていなかった景色が急に違って見えたんです。そこから一気にまちづくりや、まちそのものに興味を持つようになりました」(木村さん)
一方で、個人事業主としてまちづくりの仕事を獲得するには難しさもありました。
「まちが主催する活動はどうしてもボランティアに近い関わり方が中心になりやすく、また『観光』という発想がまだ当たり前ではなかったりして。自分の活動を、ちゃんと『事業』として成り立たせたいと思い、講座を受講しました」(木村さん)
そんな木村さんにとって、大きな転機となったのが「観光経営人材養成講座」のフィールドワークです。木村さんが受講した第1期では長野県・富士見町と島根県・海土町(あまちょう)を訪れました。

「海士町のフィールドワークでは、チームごとに担当する事業者さんが決まっていて、一緒に作業をしたり、課題を聞いたりしました。そのうえで、短い滞在期間でもビジネスの“次の一歩”になる提案を形にして、最終日にプレゼンするんです。実はその事業者さんとは今もやりとりが続いていて、プロジェクトを一緒に進行できるように動いています」(木村さん)
実際に事業者と伴走しながら、「観光を事業として成立させるプロセス」を講座後も継続して体感している木村さん。
「これまでは『自分にできること』に意識が向いていて、少し視野が狭くなっていたかもしれないな、と気づきました。行政や他のプレイヤーと一緒に動くことで、できることの幅はもっと広がっていいんだ、と背中を押してもらえた講座でした」(木村さん)
同じく、講座のフィールドワークが強く印象に残っていると語るのは、藤田隼也さん。
藤田さんは鎌倉を拠点に、「観光×まちづくり」をテーマにした事業づくりに取り組んでいます。宿泊施設の企画・運営をはじめ、地域事業者と連携したイベント、まち歩きと物語性を融合させた謎解きコンテンツなど、鎌倉の魅力を多面的に編集して届ける活動を続けています。

「富士見町と海士町で出会った方々が、もちろん顧客目線もあるんですけど、最終的には『自分が好きなものを提供する』という、ある意味では“好みの押し付け”に近いスタイルで活動されていて。それがうまくいっている事例が多かったんです」(藤田さん)
そこで藤田さんは、「顧客目線」だけではなく、「自分の好き」から始める観光の形があってもいいと気づきます。ネットでは見つからないようなスポットばかり案内してくれた、と富士見町のツアーを振り返ります。

「『こんな場所、普通は行かないよね』と思うようなところも、案内してくださる方の“推しポイント”が乗ることで、僕たちにとってはすごく刺さる体験になっていました」(藤田さん)
サービス提供者自身が心から好きなものをやっているからこそ、そこに熱量や愛情が宿る。その熱が、お客さんにも伝播して共感を生む。現場で活躍するローカルプレイヤーとの生の交流から、見えてくる新しい世界がありました。
講座の魅力は、カリキュラムだけではありません。3人が口をそろえて語ったのが、「受講生同士のつながり」でした。
「第1期はいい意味で“変な人”が多かったという印象があります(笑)サラリーマンよりも、自分で起業していたり、個人事業主として動いている人が多くて。観光という文脈でフィルタリングされた起業家に、一度に出会える場はなかなかないと思います」(藤田さん)

「受講中はオンラインが中心でしたが、フィールドワークで一緒に現場を回ったことで、一気に距離が縮まりました。今でも一緒に岩手のイベントに参加したり、鎌倉を案内したりと、受講後のつながりが続いています」(藤田さん)
また、木村さんは、「観光に可能性を感じているけれど、まだ地域で動き出していない人たち」との出会いも新鮮だったと語ります。
「実は、地域でまだ大きく活動していない人も何人もいて。でも、そういう人たちの視点や意見がすごく勉強になりました。ペアワークや課題を通じて、その人の得意なことや価値観がわかってくるのが楽しかったです」(木村さん)
「それぞれ住んでいる地域も、やっていることもバラバラ。だからこそ、『この地域とこの地域をつないだら面白そうだな』といった発想が生まれやすくなると思います。ローカルとローカルをブリッジしていく上でも、このネットワークは心強いですね」(石橋さん)
前編では、3人がなぜ観光経営人材養成講座を受講し、どんな学びや視点の変化があったのかをお届けしました。後編では、こうした学びを経て、3人が今どんな挑戦に取り組んでいるのかを深掘りしていきます。
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Editor's Note
鼎談で特に心に残ったのは、石橋さんの「ローカルは飛び込んでみないと始まらない」という言葉。現場で活動してきた実践者ならではの重みがありました。同時に、この講座で学べる体系的な知識や実践知が、その“最初の一歩”を踏み出す確かな後押しになるのかもしれないと感じました。
HONOKA MORI
盛 ほの香