WAKAYAMA
和歌山県
和歌山県新宮市には、旧九重小学校を改修したカフェと本屋とパン屋「book cafe kuju」があります。
(この記事は、メディアパートナーである「和歌山・三重・奈良の求人サイトKii( http://kii3.com/kuju/ )」の取材記事をもとに作成しました)
kujuには、“ 正社員 ” がいません。みんなそれぞれが仕事をかけもちしています。僕も、家庭教師との二足のわらじなんです。
そう話すのは「book cafe kuju」のオーナーで、一児のパパでもある柴田哲弥さん。
かけもちのはたらきかたが、僕はしっくり来ていて。好きなんですよ。家庭教師は、人の紹介で頼まれたときに、受けさせてもらっています。
33 歳になっても “就職” してないでしょ。周りからはもう、さんざん言われますよ。“就職しろ” “何してんの” “身をかためろ” … ようは『ちゃんとしろ』ってね(笑)
オープン当時は、カフェの売り上げだけでは食べていけない…という事情もあったのが正直なところ。しかし「book cafe kuju」がオープンして3 年が経った現在では、カフェの売り上げだけでも、生計を立てられるようになっている。それでも柴田さんは “ ある想い ” を持って「カフェオーナー」と「塾講師」の “ かけもち ” のスタイルを続けている。
地方育ちの同世代も感じることじゃないか、と思うんです。公務員になるか、家業を継ぐ以外、就職先の選択肢はけっこう限られる。
なにより僕自身、未来を描けない感じがしたんです。僕みたいな生きかたは、大きく稼げるわけでもないんですけど…同じ熊野に住んでて『こういう生きかたもある』ことは、声をあげたくて。
柴田さんは和歌山市生まれの33 歳。学生時代から新宮市に通っており、2011 年4 月に新宮市に引っ越してきた。柴田さんが引っ越したその半年後、紀伊半島を豪雨災害が襲った。
復旧の手伝いに行った九重地区で、浸水した旧小学校を解体すると聞いたんです。こんないい建物が壊されるんや、もったいないな。誰もやらへんのや、俺やるかと思ったんです。
旧小学校にカフェをオープンするということに地元の住民の3 分の1 以上が反対をしていた。しかしそれでも柴田さんは、住民向けにカフェメニューの試食会を開いたり、九重地区の盆踊り大会を再開したりと活動を行い、一つひとつ丁寧に住民との信頼関係を築いていった。そして2013年11月に「book cafe kuju」のオープンを実現させたのだ。
旧小学校を “ブックカフェ“ として生まれ変わらせたのにも理由があった。
家でTVが話し相手になっていた九重のおじいちゃんおばあちゃんも、移住してくる人も、地元の若い世代も、集まれる場所があったらいいかなと思ったんです。
本屋併設のブックカフェにしたのは、周辺に本を買う場所がなかったから。知人づてに京都でガケ書房(現・ホホホ座)を営んでいた山下賢二さんに打診したところ、おもしろそうやなと、出店してもらうことになったんです。
飲食店での経験が全くなかった柴田さんは、ブックカフェをオープンさせると決めてから、一つひとつ手探りで進んでいく毎日を過ごしたそう。
自分がブックカフェをやるなんて思ってもいなかった。はじめはインターネットや本を読んで、コーヒーのことも勉強していって。
フードメニューは、旧給食室に入っている「パン むぎとし」を運営している林さんご夫婦と共に考えた。
林さんご夫婦は、ずっとパンづくりの道を追い求めています。小麦の栽培から取り組んで、天然酵母のパンをつくるパン。僕は神の舌を持つパン職人と思ってて。そこに、できるかぎり地元産の食材と組み合わせて、サンドイッチを提供しています。
2013年11月のオープン以来、「book cafe kuju」にはTVを見て過ごすことの多かった九重地区のおばあちゃんや、新宮市街から訪れる家族連れ、熊野三山をめぐるツーリストや、目の前を流れる北山川で遊ぶ人など、地元と外からのお客さんが半分ずつの割合で訪れており、賑わいをみせているそう。
そして今回「book cafe kuju」では、新たに働く人を募集している。
ふしぎとここで働く人って、何か自分ではじめてくんですよ。自分で店をはじめたり、資格を取るための学校に通いだしたり。週に2 日、ここで過ごす時間がきっかけになるのかな。
資格や経験は問わず。もちろん他の仕事とのかけもち歓迎とのこと。
ほんとうに、来てくれる人次第だと思うんです。アルバイトとして基本の仕事をちゃんとやってくれることはとても大切。
その上で、むぎとしさんのパンを今以上に活かして、自分でレシピ開発して、コーヒーの抽出も身につけて、『柴田さんはどっか行っててください!』くらいの人やったら、店をどんどんお任せしていくと思う。そうなれば、もう少し給与を出すことも考えたいです。
「Uターンのきっかけを探している」、「何か自分ではじめようと準備している」、「柴田さんと働いてみたい」。「book cafe kuju」では、そんなあなたのことをお待ちしております。少しでも気になった方は、一度柴田さんにご連絡してみてはいかがでしょうか。
また「book cafe kuju」はその立地はもちろん、コーヒーや自家製パンには地元のお水を使用するなど、地元ならではの “ 自然 ” にこだわったカフェ。普段自然の少ない都内で活動している方にとっては、新鮮な場所であると共に、どこか落ち着く場所でもあります。休日には「book cafe kuju」までパワーをもらいに出かけてみるのもオススメです。
NANA TAKAYAMA
高山 奈々