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LOCAL LETTER

「土佐の食文化が途絶えんように」71歳元漁師が始めた新たなチャレンジが熱い

JUL. 30

Nakatosa, KOCHI

拝啓、パワフルなおじぃから元気をもらいたいアナタへ

カツオの一本釣りで知られる高知県中土佐町久礼くれ。生臭さが一切ない「カツオのわら焼きタタキ」は、昔から地元の人ならではの食べ方。わらの煙でほどよくいぶされた皮の香ばしさは格別で、ガスであぶったタタキでは決して味わうことができない。

そんな「カツオのわら焼きタタキ」を求めて久礼の海沿いに車を走らせていると、海の目の前にそびえ立つ立派な建物を発見。ここが今日の舞台となるカツオのわら焼きタタキ作りを予約制で体験できる「陣や」。今回はこの「陣や」を運営する川島昭代司あきよしさんにお話をお伺いした。

バリバリの土佐弁で話す川島さんは、元漁師、元商工会長であり、現在は陣やを立ち上げた「企画・ど久礼もん企業組合(通称:ど久礼もん)」で会長を務めるほか、定食屋・スナックの経営から漫画家としても活躍するなんともパワフルなおじぃ。

「カツオを採る人がいれば、カツオをより広める活動をする人もいなあかん」という川島会長が組合を立ち上げたのは、今から11年前の2007年に遡る。

第一産業には “つきもの” と言っても過言ではないのが、その年の取れ高によって起こる大きな価格変動。それはカツオ漁も例外ではなく、1kg = 1,200円で売れる年もあれば、1kg = 100円と大漁貧乏になってしまう年もあるという。

「漁師の仕事は本当にしんどい。エアコンの効いた部屋でゲームするんとは違うきい」

漁の大変さを知っているからこそ「大漁貧乏にならないよう、カツオの加工品を作るぜよ」と川島会長の呼びかけで11年前に立ち上がったのが、地元の商店主ら5名からなる「企画・ど久礼もん企業組合」だった。

「カツオのわら焼きタタキ作り」はど久礼もんを立ち上げる前から、学校や企業から「体験付きでタタキを食べたい」と要望があった際に、海岸や漁協センターの一角を活用して、食べ放題付きの体験を企画・運営していた。過去には130人ほどの団体申し込みもあったという。

「大学の団体さんの時は大体赤字やな。特に相撲部はすごいじゃけん、1人でカツオ丼5杯は食べちょるもんな」と豪快に笑いながら話す川島会長。赤字であってもみんなに久礼のカツオを食べてほしいと、値段をあげることは一切してこなかった。それでも地道な努力で、決算が赤字で終わったことは一度もないという。

相手が小学生でも体験内容は変わらず、カツオを捌くところからはじまる。といっても、「二人羽織のような状態でカツオを捌くから実はぐちゃぐちゃになってしまうきぃね(笑)」と川島会長。身がグチャグタでも自分で捌いて炙ったカツオのタタキは、やっぱり格別なのだろう。生魚が食べられない子どもでもペロリと完食してしまうという。

最近では、小学生の時に体験をした子が30歳になり、自分の子どもと一緒に再び久礼に戻ってきてくれることも珍しくないと自慢げに話す川島会長が印象的だった。

陣やは別名「伝承館」と呼ばれており、川島会長は「土佐にはなくてはならない食文化を伝える拠点という意味を込めちょるきい。お客さんだけでなく、カツオを仕事にする町の人にとっても次の世代に繋げたい」と意気込みを語ってくれた。

毎年9,10月は、北から南に降りてくる「戻りカツオ」が美味しくてたまらない時期。ぜひ今年は最高のカツオとパワフルなおじぃに会いに、久礼に訪れてみてはいかがだろうか。

Editor's Note

編集後記

わたしが高知に初めて訪れた時、一番びっくりしたのは地元の人が「(高知では魚の鮮度が高すぎて)鮮度が低い魚の味を知らない」こと。一口食べれば「美味しい!」「生臭くない!」この言葉に尽きるとともに、あまりの美味しさに息をのみます。お取り寄せでも十分な美味しさと出会えますが、是非現地にも足を運んで、そこでしか味わえないあの味を堪能してみてくださいね!

高知県中土佐町

カツオは高知が絶品だきぃ!

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