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【公務員特集】宮崎県を代表する地域商社「こゆ財団」の発起人、岡本啓二氏が語る「公務員がビジネスで成功した理由」

SEP. 06

SINTOMI, MIYAZAKI

前略、社会人生活に慣れてきた今だからこそ、ビジネスの基本に立ち返りたいアナタへ

人には必ず「強み」と「弱み」がある。

それはビジネスの世界でもなんら変わりなく、自身が属している業界の専門領域がいわゆる「強み」であり、専門領域外であれば「弱み」になることが多いだろう。

私が地域に関わり、最も驚いたことの一つに「行政と民間企業では求められるスキルが全く違う」というものがある。(皆さんからしたら当たり前かもしれないが)民間企業が存続するためには一定の「利益」を生み出すことが必ず求められる。一方で、行政は公共のために仕事を行うため、「利益」を生み出すことは求められていない。

だからこそ行政と民間企業の視点や考え方は、噛み合わないことが多い。そもそも使われる言語やツールだって全く異なる場合がほとんど。ましてや、売り上げを生み出すためのノウハウを持っている公務員は限りなく少ない。

そんな中、異色の存在として注目を浴びている宮崎県新富町役場に務める岡本啓二氏をご存知だろうか。

岡本氏は当時、2,000万円の寄付額だったふるさと納税を1年で4億円へと伸ばし、さらに2年目からは自身が立ち上げた地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(通称:こゆ財団)」で9億円、3年目からは19億円と年々、寄付額を増やし続けているほか、1粒1,000円のブランドライチを代表に、特産品のブランディングや起業家育成など、幅広い分野でそのビジネス力を発揮しているツワモノ。

今回はそんな岡本氏への取材から見えてきた、公務員がビジネスで成功した3つの理由を紹介する。

岡本啓二(Keiji Okamoto)氏 一般財団法人こゆ地域づくり推進機構執行理事 / 宮崎県新富町出身。南九州大を卒業後、1999年に新富町役場に入庁。福祉、農業部門などの担当課を経験し、町おこし政策課長補佐を経て、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(通称:こゆ財団)を立ち上げ、運用を役場から出向して行う。
岡本啓二(Keiji Okamoto)氏 一般財団法人こゆ地域づくり推進機構執行理事 / 宮崎県新富町出身。南九州大を卒業後、1999年に新富町役場に入庁。福祉、農業部門などの担当課を経験し、町おこし政策課長補佐を経て、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(通称:こゆ財団)を立ち上げ、運用を役場から出向して行う。

1, 仕事の姿勢から生まれた信頼に応え続ける

今でこそ「地域商社」という言葉を耳にする機会は増えたが、岡本氏が最初に地域商社の必要性を訴え始めたのは、今から5年も前になる2014年。保守的なイメージが強い役場公務員が「稼げるまちづくり」を推奨し、役場がこれを受け入れたというから驚く。

「運がめちゃくちゃよかったんです。僕が役場に勤めてから4回町長が変わっているんですが、(僕の思い過ごしかもしれないですけど…… )歴代の町長に好かれてきたんです。なので、相撲大会を企画して九州大会を開いてみたり、役場にお金がなかったので営業に回って資金調達をしたり、好きにやらせてもらっていました」(岡本氏)

そんな中、当時の町長からとある「フリーの係長にするから、なんかやってくれ」と、提案が持ちかけられる。

「以前から役場だけで頑張っても難しいと感じていました。当時、地域には一過性の単発的な取組みはあっても、それを継続するプレイヤーがおらず、勢いがありませんでした。このままでは、衰退していく一方だという危機感があったので、役場の外に法人をつくり、そこでちゃんとお金を稼いで、ノウハウを周りに普及することで、地域経済が回せる仕組みを確立できたらいいと思って、地域商社(こゆ財団)を提案しました」(岡本氏)

これまで、常に一生懸命仕事に向き合ってきたからこそ、企画自体には賛同の声がすぐに集まった一方で、大きな壁として立ちはだかったのが「資金面」だった。

「出張のお金すら出せないほどの資金難で、まち全体が困っていたので、まずはふるさと納税で資金を調達することを考えました。当時、2,000万円だったふるさと納税の寄付額を1億円に上げるかわりに、寄付額の一部で地域商社を立ち上げさせてほしいという交渉を町長した上で、とにかく営業に回ったり、いろんな方にお話を聞きながら、1年で4億円まで寄付額を伸ばしました」(岡本氏)

愚直に、少しづつ信頼関係を築いていった岡本氏。手探り状態ながらも、常に行動し続け、行動したからこそわかる学びを一つずつ見つけ、次に活かすことを徹底している。

「役場内では、計画性がないと指摘を受けることもありますが、想定していた方法が上手くいかなければ、結果を出すために、やり方を柔軟に変えていくことを大切にしています」(岡本氏)

2, 町に知らない人はいない。それが最大の武器

岡本氏は宮崎県新富町に生まれ、小中高大と宮崎県内の学校に通ったのち、新富町役場に勤めている生粋の新富町民。一見、宮崎県しか知らないということは大きなハンデになりそうだが、岡本氏は「それが自分の武器だ」と答える。

「新富町でずっと暮らしているので、とにかく知り合いが多いんです。役場に勤め始めてからは、知らない人はいないという状態にしたくて、とにかく毎晩地域の人たちと飲んでいました」(岡本氏)

当時の岡本氏は、地域活性化のために人脈づくりをしていたという訳ではなく、ただ単純に知り合いを増やしたくて、楽しく飲んでいたんだそう。ですが、今ではこの繋がりがあったからこそ、こゆ財団を立ち上げる際にも、役場内だけでなく、役場外からも賛同の声を多くもらえたという。

「今は町の中にコワーキングスペースをつくろうとしているので、積極的に企業誘致も進めていて、優良ベンチャーをターゲットに首都圏に営業にいっているんですが、その際にも新富町(こゆ財団)の強みとして、『僕が町の人と繋がっているからこそなんでもできますよ』とお伝えしています」(岡本氏)

官民連携が叫ばれる中、未だに企業が地域に入るにはいくつもの高いハードルを乗り越えなくてはならない。中でも重要なのが、企業と自治体のビジネススタイルが違うからこその両者の歩み寄りであり、企業と地域住民の信頼構築とマッチングだろう。

企業と自治体、企業と地域住民の間には、その地域ならではの言葉があり、ルールがあり、コミュニティがあるからこそ「細かいニュアンスの違い」が生じる。そこを岡本氏がハブになることによってスムーズかつスピーディーに物事を進めているのだ。

岡本氏の人脈は、官民連携の分野だけでなく、こゆ財団が行なっているもう一つの事業である「起業家育成」でも役立てている。

「こゆ財団では、強い経済圏をつくることをミッションに掲げ、地域商社で得た売り上げを起業家を育成するための起業家育成事業(新富ローカルベンチャースクール)に投資しています。昨年シータートル大学から卒業した人たちを今、新富町の地域おこし協力隊として受け入れ、実際に新富町で起業をするための準備を進めているんですが、まずは町の人と関係性をつくることが重要なので、僕がハブとなっていろんな人に繋げています」(岡本氏)

こゆ財団にも新富町にも岡本氏は唯一無二の存在。「新富町でなら使える武器」は、いつしか「新富町の最大の武器」として、多くの人々を惹きつけている。

3, 基準は「理想」のみ。それが圧倒的行動と成果を生み出す

新富町役場に勤めていた時から、岡本氏の行動力と成果は飛び抜けており、その度に新たなハードルが立ちはだかる。

「ふるさと納税の寄付額が伸びれば伸びるほど、僕の担当課だけ異常な状態になりました。電話がひっきりなしに鳴り、次から次へと新しい対応が生まれていくので、残業が増え、上司は働かせすぎと怒られてしまうような状態でした。このままではいけないと思い、こゆ財団を立ち上げる際に、ふるさと納税事業をこゆ財団に委託できるような形で提案をしました」(岡本氏)

ふるさと納税の寄付額が伸びることは、地域経済にとって喜ばしいことであるはずなのに、目の前の業務に終われ、役場内にはよくない空気が漂っていたからこそ、岡本氏は理想に立ち返ったそうすることで、こゆ財団がふるさと納税事業を行い、その運用費として寄付額の6%をもらうことで、寄付額を伸ばしならが、役場にとってもこゆ財団にとっても喜ばしい状況を生み出したのだ。

「首都圏で営業している時も、お互いにwin-winになれるビジネスであるか否かを大事にしています。相手にメリットがなくてもダメだし、ビジョンだけを叫んでいてもご飯は食べれないですからね。試行錯誤しながら、自分でやりたいことをどんどんやっていかなくちゃ。みんな本来の力を出せば、なんだってできるはずなのに、本来の力を出さない人の方が多いんですよね」(岡本氏)

「世界一チャレンジしやすい町」をビジョンに掲げ、誕生したこゆ財団。公務員、ビジネス経験なし、県外を知らない、、全てのハンデをハンデと捉えず、むしろ自分の武器として誰よりもチャレンジを重ねることで、世界一チャレンジしやすい町を体現する岡本氏の輝く姿が、宮崎県新富町にはあった。

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Photo by Waki Hamatsu

Editor's Note

編集後記

2017年4月に創設されたこゆ財団は、およそ2年で1粒1,000円ライチのブランディングをはじめ、創業支援事業、観光イベント事業、移住促進事業、起業家育成事業、地域教育事業など、10もの事業を展開し、今もなお飛躍を続けている。

まさに「成長期」であるいま、寝る暇もなく働き続けている岡本氏。「やけくそ」で頑張っているという言葉を取材中、何度もお聞きする中で、「地域を何が何でも良くしたい」という想いと、「宣言したからには全うする」という強い責任感が岡本氏を突き動かし続けているのだと感じました。

これからも宮崎県新富町の応援をよろしくお願いいたします!

これからも宮崎県新富町の応援をよろしくお願いいたします!

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