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日本全国
地域と伴奏しながら、現在活躍しているゲストをお招きし、参加者とノウハウや人脈のシェアを行うことで、地域とともに生きる人を増やすことを目的に開催している「LOCAL LETTER LIVE」。
今回ゲストにお招きしたのは、Fireplace代表取締役社長である渡邉知氏。
Fireplaceのビジョンは「ビジョンを繋ぐ場とコミュニティの創造を通じて社会をより良くする」
コミュニティ起点の「場づくり」を創造するプロとして数多くのプロジェクトを地域と一緒に行ってきた渡邉氏は、今年新たに3つのプロジェクトを立ち上げ、さらにその活躍の幅を広げている。
LOCAL LETTER LIVEではそんな渡邉氏と、全国で毎年40以上のプロジェクトを実施している弊社(株式会社)代表の平林が「官民連携 -プロジェクトの起こし方- 」をテーマに対談を実施。
今回は、LOCAL LETTER LIVEを通じてみえてきた地域でプロジェクトを起こす時の秘訣をお届けします。
【編集部から嬉しいお知らせ】
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平林:渡邊さんは、場づくりを創造するプロとしてこれまで数多くのプロジェクトに携わられてきたと思いますが、プロジェクトを起こすときにまず最初に大事にしていることは何でしょうか?
渡邊氏(以下、敬称略):自分が何を実現したいか、ビジョンを言語化することが1番大事だと思っています。例えば、ワンピースのルフィだったら「海賊王に俺はなる」とビジョンを掲げてグランドラインに出て、夢を実現するために仲間を誘うわけです。そうすると、一緒の船に乗ってくれる仲間ができる。その後で、それぞれ得意不得意を補い合って役割分担(ファンクション)が生まれていく。
まずは「ビジョン」を言語化し、「ファンクション」をチームの中で分担することが大事です。
平林:私たちもプロジェクトを始めるときは、まず最初にコンセプトをつくって、「こういう方向性で、こういうゴールを目指しましょう」とビジュアルとともに、言語化をするようにしています。
プロジェクトがうまくいかない時って、この最初の部分が握りきれていない時だと感じています。ビジョンや方向性をチームでしっかりと握り合って、全員でコミットする形をつくらないと機能しないんです。
渡邊:「自分でやりたい」と思っていない人は、そもそもプロジェクトを起こしませんよね。自発的なプロジェクトは、自発的な人と組むべき。私は、人からお願いされていないことを自分の意思でやっている人と組むようにしています。
私は視覚的なイメージで黒丸と白丸に分けています。課題解決が上手いプロフェッショナルタイプは白丸、自分の意思で勝手にやりたいことを始めてしまうタイプは黒丸。プロジェクト黎明期は、黒丸同士でつながって、その後、タスクに落とせる段階になったら白丸に手伝ってもらう、というケースが多い気がします。
平林:渡邊さんは自治体さんともプロジェクトをしていると思うんですが、自治体さんだと良くも悪くも様々な制限とかもあったりするじゃないですか。渡邊さんはどんな自治体さんとなら、一緒にやろうと思うんでしょうか?
渡邊:まずは、その地域の自治体で目立っている公務員の方を紹介してもらいます。変態と呼ばれるような人たちです(笑)お役所なので、やらなくてはいけないことをやる人が99%ですが、黒丸の公務員さんは、上司からお願いされていないことをやっているので、大抵役場内では奇異の目で見られていることが多くて、比較的簡単に出会うことができます。
その次に、黒丸の公務員さんに「なぜ人からお願いされていないことをやるのか」「何を実現したいのか」を聞いて、相手がやりたいことを言語として咀嚼します。
自治体でも民間でも変わらず、まず黒丸の人を見つけて仲間にする。言語化する。役割を分担する。自分が主体のプロジェクトでも、相手主体のプロジェクトでも、進め方は一緒のような気がします。あくまで私の場合、ですが(笑)。
平林:私は、徹底的に相手のことを知るためにいろんな質問をします。それこそ好きな食べ物や嫌いな食べ物とかも聞きますし、最近のホットワード3つとかも聞きます。渡邉さんが言う黒丸タイプの方って、そもそも型破りだから予想外の答えを投げてきたりしますよね。(笑)
渡邊:あとは、地域に行ったら、公務員さんに限らず、出会った黒丸タイプの人に必ず、オススメの「集い場」を聞いて、そこに行くようにしています。変態の周りには変態がいる(笑)変態の集会所で自己紹介すると、話がどんどん進み、あっという間にプロジェクトが生まれたりします。
平林:それはとても共感しますね。私は、黒丸の人に出会ったら「どこのスナック行ってるんですか?」って必ず聞くようにしています。地域のスナックってすごくないですか?この町にこんなに人いました?ってくらい人が集まってて、そこで繋がる人は地域のキーマンであることが多いんですよね。
渡邊:あとは、プロジェクトを始める上で大切なのが、自己紹介スキルです。自分がどんなことをやりたいか、というビジョンと、自分は何ができるのか、というファンクションを簡潔に相手に伝えられると、チャンスが広がります。
以前、とある町のとある居酒屋で、たまたま居合わせた方に自己紹介をしたら、その場でLINEを交換しようとなって、交換したんです。そうしたら、その方がまちの町長と繋がっていて、そのまま町長アポを取ってくれたことがありました。
自己紹介スキルが高まって、相手に自分のことを伝えることができるようになると、相手が自分のことを「他己紹介」してくれるようになる。その繰り返しが新しいプロジェクトを引き寄せるのではないでしょうか。
平林:自己紹介をする時のポイントになる「ビジョンの言語化」ですが、ほとんどの人がしてきたことがないものだと思うんです。渡邊さんは、自分のビジョンの深堀はどのようにしているのでしょうか?
渡邊:ビジョンは、事業づくりやまちづくり、チームづくりなど全ての土壌となる「礎」だと思っています。
まちの市長はそのまちを、どんなまちにしたいのかを言語化しなくてはいけない。会社も、チームも、自分の人生も一緒かな、と。サピエンス全史という本に、確か、人は言葉を覚えたから人間になったというフレーズがありますが、言葉は私たちの働き方、生き方、住まい方、全ての礎だと思います。
平林:言語化する時のポイントはありますか?
渡邊:すぐに言語化できる必要はなくて、まずは言語化したいと思うことが重要です。そしてその思いを持った上で、一番の計算ドリルは、ビジョンを言語化する人とたくさん出会い、話をすること。僕自身、リクルートを辞めて経営を始めた時、先輩経営者に「経営者とたくさん話せ」とアドバイスをもらいました。自分の言葉を持っている人と話すと、なぜこの言葉を選択できるのだろう、紡げるのだろうと思う。そして、同じように自分も自分の言葉で相手に伝えたいと思う。言語化力は、言語化力が高い方との接点頻度によって高まる気がします。
平林:渡邊さんのお話を聞きながら、誰にでも必ずある「原体験」が言語化の上でポイントになってくると思いました。例えば私なら、WHEREを立ち上げる時、実績も人脈も全くなくて、あったのは、ヤフーで広告まわりのマーケティングをやっていたということと、エンジニアとしてフリーランスをやっていたこと、そして、ベンチャー企業でオフラインイベントを作ってきたということ。
私は長野県出身なので、地域をどうにかしたいという想いはありましたが、サービスも全くない中で、ビジョンだけは最初につくって、なぜやりたいのか、何にこだわっているのかという部分だけを伝え続けていました。
とにかく地域に入り込みたかったので、知人30人くらいにプレゼンをしまくりました。そしたら、「君はこの人に会いに行きなさい」とか「君は何県に行った方がいい」とか、紹介を受けるようになって。
ビジョンがあることで、「あ、こうやって人や地域と繋がっていくんだ」という気づきがありましたね。
平林:プロジェクトを起こす上で、お金は重要だと思うんですが、その辺りはどうしているんでしょうか?
渡邊:まずは誰がお客さまなのか、を決めます。私は場づくり会社を経営しているので、今は、「場所を持っている法人や個人」から対価をいただくことが多いです。例えば、大手の不動産会社だったり、自治体だったり、ビルのオーナーだったりします。
その次に考えたことは、これは贅沢な望みかもしれませんが、「説明のための説明資料や会議」が不要なこと。「みなまで言わんでよろしい、さっさと進めちゃって」くらいの感覚で一緒にお仕事ができると、仕事のための仕事を削減できるからプロジェクトを進めやすいですね。
渡邊:お金は、無いところからいただくのではなく、溜まっているところからいただく。溜まっている場所がどこを考えて、その上で、自分のビジョンやスタイルに合っている人や会社を見極め、あとは、ひたすらお会いして「こんなこと実現させたいです。一緒にやりたいです。」と、ひたすら言語化して伝えます。
人は、想いで動く。想いは言葉。提案書を磨き上げることよりも、自分の言葉を磨くことが大事だと私は思っています。渡邉 知 氏 Fireplace代表取締役社長CEO
渡邊:最近は徐々に、友人知人から仕事を紹介してもらうケースが多いんです。私や会社の得意領域を周囲がわかってくれさえすれば、ご縁はいつかやってくる。自分のことを知ってもらうために、とにかく自己紹介をすることが大事。自己紹介は最大の営業活動だと思っています。
平林:確かにそうですね。私は最近、野営キャンプ場を運営したいと思っているんですよ。水や山って100年くらいのスパンで先を見通さなくてはいけない時に、100年で物事を考えたらどんな考えが生まれるんだろうと興味があるんです。
そもそもキャンプが好きっていうのと、水や山を守る100年スパンのビジネスがしたいという気持ちが重なって、野営キャンプの運営を考えているんですが、いろんな人にこういう話をすると、いろんな人が山を持っている方を紹介してくれるようになりました。
中には、お金はないけど土地はあるから、無償で使っていいよと言ってくれる人との出会いもありましたね。
渡邊:いつもファイアープレイスのメンバーには、機会の獲得は「アクション」と「アウトプット」からと伝えていて、チャンスを得るためには、絵を描くとか、言葉にするとか、音楽をつくるとか、人に見える形で示すしかありません。「野営キャンプをやりたい」と100人に言えば、話が舞い込んできますよね。
自分から発信していないのに、受信をしてほしいというのはおこがましい話で、自分の事業を知ってほしいなら、まずは発信。その時に大事なのがやっぱり言語化なんです。
平林:例えばですが、言語化して、最適な人材も集まった上で、プロジェクトが失敗することもあるんでしょうか?
渡邊:自分の体験談でしかありませんが、私が在籍していた(株)リクルートキャリアで転職の現場に立ち会ってきた中で、転職する理由の8割は「人間関係」でした。給料が安いとか、仕事内容が合わないとかは全体の2割くらいしかないんです。多くの人が「この人と仕事をするのがしんどい」「あの人は信頼できない」という理由で辞めていきます。プロジェクトが失敗する理由の大半も 、人間関係ではないでしょうか。
だからこそ、定期的にちゃんと時間をつくってビジョンの共有をしたり、お互いの目を見て話したりとか、コミュニケーションをないがしろにしないように心がけよう・・と思っていますが、私も全然できていませんね(苦笑)。いずれにしても、いかにして人間関係を育んでいくか、ということは、仕事に限らずとても大事なことですよね。
平林:いろんな地域と関わっていると、自分が関われない範囲も出てきてしまうじゃないですか。リーダー1人が見れるメンバーは6名くらいと限界もある。とはいえ、自分のビジョンは世界や社会を変えると信じているからこそ、パフォーマンスを出せる範囲を広げていかなくてはとも思っていて、その辺り渡邊さんはどうされていますか?
渡邊:それは私も悩むところですね。でも、そこは社内でどうにか完結させようとするのではなく、会社を超えた横のつながりで捉えたらいいと思っています。例えば、平林さん、そしてWHEREと共働するとか。仕事は回しあった方がいいですし、抱え込んで全て自社で解決という時代でもない。会社という定義がもっと曖昧になったらいいなと。会社のリソースには限界があるからこそ、広くコミュニティとして回していこうよというのが、私の価値観です。
対談中、100回以上出てきたのではないかと思うほど、ふたりから飛び出し続けた「言語化」という言葉。プロジェクトを起こす上で、まずは自分が、まちが、企業が何をやりたいのかを言語化し、出会う人には必ず伝えることからはじめてみてはいかがだろうか。
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Fireplace代表取締役社長・渡邉知氏が地域経済を共に動かす、起業家のためのサミット「SUMMIT by WHERE」に登壇決定しました!
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NANA TAKAYAMA
高山 奈々