レポート
※本レポートはPOTLUCK YAESU様、株式会社SHIFT PLUS様のスポンサードによって行われた、地域経済活性化カンファレンス『SHARE by WHERE』で行われたトークセッションを記事にしています。
まちづくりや地域創生において、新しい変化を求めて一歩踏み出そうと踠きながらも、日々多くの壁が目の前に立ちはだかり試行錯誤している人は多いのではないでしょうか。
そんなアナタのために開催した、地域経済をともに創る仲間のためのサミット「SHARE by WHERE」。今回は、全国各地から総勢70名の方々に集まっていただきました。
今回はそんなアナタに向けて、各地域の第一線で地域創生に関わるプレイヤー4名が「文化資本を高付加価値に変えるローカルラグジュアリー」をテーマに、トークセッションを開催。
前編では「地域が自分たちの価値に気づく方法」をお届けしましたが、後編ではより深く議論された「地域に価値を生み出し、地域をより良く変えていく方法」をお届けします。
上田氏(モデレーター:以下、敬称略):前半では「地域が自分たちの価値に気づく方法」についてお話ししてきましたが、後半では「地域づくり」についてお話を聞いていきたいと思います。皆さん、ズバリ「地域づくり」において大事なこととは何でしょうか?
秋元氏(以下、敬称略):町おこしや地域づくりの人々には、もっとマーケティングの視点が必要ではないかと感じています。
マーケティングの手法にSTPマーケティングというものがありますよね。S(セグメンテーション・市場細分化)を行い、T(ターゲティング)でターゲットを絞るまでは行うのに、P(ポジショニング・競合との差別化)の時に、他と比べて自分たちがなぜ選ばれるかという視点を全く持たない方が多いんですよね。
秋元:だから皆さん口を揃えて「うちの地域は海が綺麗で山が美しくて川が清らかだ」と言うわけなんです、日本にはそういう場所が沢山あるのにも関わらず。マーケティングの視点を持つことで、もっと地域は変わっていくと思いますね。
上田:確かにそうですよね。地域の良さを見つける時に、意外と他と比べることをしたがらないですよね。行政が政策をやる時にも、他地域がやっていることを参考にする場合が多いと感じます。
秋元:そうなんですよ。行政はよく先行事例があるかどうかを気にしますが、むしろ本来差別化しようと思ったら、先行事例はない方が良いのではないかと思うんですよね。なぜ、先行事例を探したがることが多いのか。山添さんがお感じのことがあれば教えてください。
山添氏(以下、敬称略):行政の立場から申しますと、やはり先行事例があることで安心するんでしょうね。先行的にやっているところがあれば上司を説得しやすいとか、そういう体制のところがまだまだ多いのではないかと思います。
山添:私としては、先行事例があるかどうかではなくて、地域の人たちが何をやりたいのか。そのやりたい気持ちが小さくても、可能性があれば政策的にちゃんと引き上げてあげる視点が大切だと思いますね。
上田:私は普段いろいろな自治体とお仕事させていただいているんですが、行政の中を変えていくには、首長の力だけでは難しいとも感じていて。そういう時、どのようにして中を開拓していくのか、山添さんは首長としてできることは何だと思われますか?
山添:私は12年前に地元に帰ってきて、9年前に町長選挙に出たのですが、当時32歳で誰からも「当選することはない」と言われました。そのような状況下で最も主張していたのは、「この町にはチャレンジが必要だ」ということ。そのチャレンジを町民の皆さんと一緒にやっていくためには、いかに自分の背中を見せられるかが重要だと思っています。
おかげさまでなんとか当選させていただいて、いざまちづくりをやっていこうとした時に、後ろに付いて来てくれる人が選挙を通じて増えたような気がします。
私としては、挑戦や変革の風土を町民の皆さんと一緒に作っていきたい想いが選挙の時点からあるので、その姿勢を貫いて、自分の背中を見せていくことがやはり重要だと感じますし、挑戦していこうとする首長の組織は、大なり小なり変わっていけると思っています。
上田:私は離島に関する仕事をしているので、町や村の仕事が多い中で感じるのが、役場職員の少なさやマンパワー不足。そして若いプレーヤーが少ないということ。そのような限られたリソースの中で、どう地域を変えていくのか。または、どう新しいアクションを起こしていくのか。その辺りどのようにアプローチしていけば良いのか、何かヒントはありますか?
秋元:私が普段経営のお手伝いをしている案件は、従業員が10人もいないような会社なんですね。まさにリソースが少ない組織です。だからこそ求められるのは、ひらめきと工夫だと思います。
秋元:「良いところがない会社はどうしたら良いですか?」と聞かれることがあるんですが、そんな会社は一つもないんですよ。なぜなら、同業他社がいるにも関わらずその会社が続いてきたからには他社ではなく、その企業が選ばれる理由があるからです。本人たちが気づいていない良さが必ずあるからこそ、それをひらめきを以っていかにして見つけるか。これは地域も同じだと思います。
その上で、工夫も必要になってくると思っていて。私のところには、さまざまな年代の方々が相談に来られるんですが、その際に工夫しているのは、相手の口のサイズに合わせて提案をカットするということ。2分の1、4分の1、それでも入らない方には16分の1にカットする。相手に合わせた提案の仕方を心掛けています。
地域づくりにおいても、同じようなことが有効だと思っていて。自治体に何か提案する時に、担当者の方の口のサイズに合わせた提案のカットを意識することで上手くいくはずです。
上田:「文化資本を高付加価値に変えるローカルラグジュアリー」が今回のテーマですが、その高付加価値は大体作り手の理屈で考えられがちだと思うんです。「これは値段を上げてやっていこう」と方向性を決めると思うのですが、消費者がそこに価値を感じない限り全くもって意味がない。
消費者に対して、自分たちが提供するコンテンツやサービスをいかに価値が高いものと感じてもらえるか。何か工夫されていることはありますか?
橋村氏(以下、敬称略):これは本当に難しいのですが、僕らは最終的には消費者のニーズに合わせていきますね。ですが、源泉は全部自分です。結局自分がそれを欲しいかどうかで判断する。
橋村:私たちの場合、無いものを作ろうとしているので、他に上手くいっている人がいるかどうかではなく、自分が欲しいサービスかどうか。そして最終的にそれを買ってもらうためにアジャストをする形です。
上田:無いものを作る。それは非常にリスクのあることだと思うのですが、それに対してはどうモチベーションを保っているのでしょうか?
橋村:自分がやっている事業なので、結果それが上手くいかなくても自己責任だと思っています。ですが、ローカルになればなるほど寛容性がなくて、失敗に対する許容性もないんですよね。本来なら、ローカルになればなるほどトライしていくべきなのですが、マインドがなかなか昔のままで変わっていないのが今の現状。結局、未来志向ではなく過去実績が評価されている。ただ、ステークホルダーが少ない分、変わろうと思えば早いと思っています。
今はコロナもあって時代がいろいろと変わろうとしているじゃないですか。ちょうど過渡期にある今、若者も私たちも世代関係なしにめちゃくちゃチャンスがある。まだまだ日本全体では寛容さが欠けていて、ローカルに行けば行くほどそれがもっと濃い。それを分かった上で、どうトライするか、どう変えていくかというところかなと思います。
秋元:今のお話でとても共感する部分があって。世の中の表彰制度って、全て過去実績から表彰するじゃないですか。でも「評価されるべきはそこじゃない」と私は声を大にして言いたい。成果が出たか出なかったかではなくて、失敗も含めて挑戦したこと自体が尊いのではないかと。
だから私は、結果ではなくて挑戦そのものを評価するチャレンジアワードという表彰制度を作りたいんです。挑戦軸と、社会的な意味合いが幾分あるかないかという二軸で表彰する仕組み。いずれそれを作るのが夢です。
上田:ローカルにおいて信用を得るのは、なかなか難しいことなのかもしれませんね。
橋村:本当にそう思います。地方銀行で融資してもらうのにも一苦労ですよ。シリコンバレーが全て良いというわけではないですが、日本の金融制度には疑問を感じます。これも先ほど話したように、過去実績が評価されていますよね。
上田:最近思うのが、クラウドファンディングの成功を与信にできないかと思っていて。要は、金融機関に単刀直入に貸してくれと言っても、貸せない場合もあるかもしれない。でも、クラウドファンディングで共感を得て500万円集めた。それって十分な与信になり得るじゃないですか。それを担保にお金を貸してくれるのもアリなのではないかと思っています。いろいろな金融の在り方がこれから出てきてもおかしくないですよね。
橋村:そうですね。これだけファイナンスのチャートが増えてきている日本で、地域の大事なプレーヤーの一つである地方銀行が生きる道をぜひ模索していってほしいところですよね。
上田:最後に山添さん、本日のご感想をお願いいたします。
山添:皆さんのお話を聞きながら、行政の役割は何だろうかと考えた時に、地域の皆さんの挑戦を支えていくのは当然のことなのですが、地域の価値である文化や景観、あるいは環境などをしっかりと守っていく。そして経済活動の部分にも行政がちゃんとコミットしていくことが、多様な主体を活かしていくのかなと思いました。
上田:地域は可能性の塊ですよね。地域で暮らす人々の挑戦を支えながら失敗をも評価してあげることができると、より良い社会になっていくと感じました。本日は皆さん、ありがとうございました!
Editor's Note
それぞれ異なる分野で活躍されている登壇者の方々から、共通して出てきたのは、「挑戦」という言葉。先行事例や過去実績ばかり評価するのではなく、挑戦し続けることが地域により良い変化をもたらすカギなのかなと、イベントを通して感じました。
思わず聞き入ってしまう登壇者の方々のさまざまなストーリーに、地域を変えていくヒントが沢山見つかったように思います。読んでくださった方にとって、本記事が一歩踏み出すキッカケとなっていたら幸いです。
KANA KITASHIMA
北嶋 夏奈