起業家
※本記事は約3年ぶりに開催となった『ONE KYUSHU サミット』のセッション内容をレポートにしております。
地域課題に本気で向き合っているからこそ、立ち向かわなければならない逆境。
「逆行こそチャンスに」と頭ではわかってはいるものの、なかなか太刀打ちできずに困っているという方も多いはず。
そんなアナタにお届けするのが、『ONE KYUSHU サミット』の中でも、「地域活動家はコロナをどう乗り越えたのか、ローカルアントレプレナーが挑んだ逆境からの会心の一撃」と題して行われたトークセッション。
新型コロナウィルスという未曾有の状況下に直面したローカルアントレプレナーが語る、逆境の乗り越え方とはーー。
大井(ファシリテーター):まずは登壇者の皆さんから自己紹介をお願いします。
野中:私は薬剤師で、大分県を中心に薬局と薬剤師を繋ぐ『ふぁーまっち』というアプリの開発・運用を行っています。弊社の理念は働く女性のための休みやすい環境づくり。「休みたいときに休み、働きたいときに働ける環境づくり」を考えています。
去年は薬局を一つ承継し、薬局運営も開始しました。現在は大分県、福岡県、鹿児島県で運用をしています。
青柳:2017年に入社をし、現在は株式会社BOOKの代表取締役として「どこでもできる世界をつくる」をコンセプトに、世の中に新しい価値を発信するお手伝いをしています。
個人として、廃校を利活用した『いいかねPalette』の立ち上げにも関わりました。『いいかねPalette』では、音楽で地域を盛り上げるをテーマに、レコーディングスタジオをはじめとする、音楽や映像コンテンツの制作環境を整備していたり、フリーで使えるコワーキングスペースやシェアオフィスがあったりと、廃校を活用したさまざまな運営を行っています。
池内:農業を中心に地域開発を行っている株式会社terraの池内です。僕らのミッションは、「地方のポテンシャル全ての顕在化」。
よく、「地方や農業ってポテンシャルあるよね」と漠然としたことを言ってくださる人がいますが、正直聞き飽きた。そうではなく、「言葉としてどんなポテンシャルがあるのかを全て顕在化させよう」と活動を行っています。そのほか、廃校を活用した農業体験事業を企画し、生産量・売上増に関する活動を展開しています。
高橋:宿とサウナを運営する株式会社LAMPの高橋です。大分県は温泉県として有名ですが、僕が移住をしてきた豊後大野市は温泉が出ない町。そんな町で、自然を活用したテントサウナや小屋サウナを7つ展開しています。
大井(ファシリテーター):今日は「ローカルアントレプレナーが挑んだ逆境からの会心の一撃」というテーマなんですが、コロナ禍でみなさん本当に大変だったと思います。そんな中でも、地域に根ざして活動されていたからこその、みなさんの会心の一撃を教えてほしいです。
青柳(BOOK):みなさんご存知だと思いますが、うちはコロナで倒産危機にまで陥って、当時社員だった僕を含めた全従業員がリストラにあいました。会社として代表1人しか残らない決断から、僕自身も無給の中で、なんとか事業を持ち直そうと頑張ってきました。そんな中で振り返ってみると、僕らがつくってきたコンテンツは「誰かのやりたい」からはじまっていたなって。
青柳(BOOK):共同代表である樋口聖典は、JAPANPodcastアワードを受賞しましたが、それも代表の「これからはYouTubeやPodcastといった発信の時代」という「やりたい」からスタートさせたものだし、そこからどんどん派生して、音声メディア事業としてSpotifyのディレクターをさせてもらったり、音楽だけじゃなく映像や写真といったところに事業を展開させてもらったりしているなと。
『いいかねPalette』に関しては、利用者から「コロナで寂しいから、ここに住んでいいか」と相談があったことをきっかけに、結果的に廃校での長期滞在プランが生まれたんです。今20人ぐらいが住んでいますが、このコミュニティから会社がはじまったり、イベントをつくってみたり。『いいかねPalette』もいろんな人たちの「やってみたい」からはじまったことだなと思います。
高橋(LAMP):僕らはよく「コロナがあったからサウナをつくったの?」と聞かれますが、サウナづくりはコロナ前から着工していたんですよ。本当は2020年4月にオープン予定でしたが、緊急事態宣言で全くお客さんが来なかった。
高橋(LAMP):それに、九州にはいいサウナがいっぱいあって、単体で勝負しても勝てないと思ったんですよね。だから弱い奴が強い奴に勝つために、数で勝負するみたいな感じで、僕は数で勝負したのが結果的にうまくいったなって思っています。
元々大分県には、観光地の強豪である「別府・湯布院」がある中で、豊後は滞在時間の少ない場所だったんですけど、サウナを展開することで町に来てくれる人も、滞在してもらえる時間も増えてとてもよかったですね。
大井(ファシリテーター):サウナをはじめたきっかけは、高橋さんがサウナにどハマりしたことからなんですよね?
高橋(LAMP):そうなんです。どハマりしたことで、みんなでサウナを共有したいたから、サウナイベントをやって、そのときに「テントサウナなら冬もできるんじゃない!?」っていう話が上がりました。
今まで、冬の観光資源がないことが課題だったんですけど、テントサウナだったら冬でも自然の中でできるし、冷たい川も堪能できるし最高ということで、自然と組み合わせることを考えました。
豊後大野市には、稲積水中鍾乳洞(日本最大級の水中鍾乳洞。歩いて楽しめる)があるんですけど、そこもコロナで大打撃を受けて悩んでいたので、「日本で唯一水中鍾乳洞でサウナが楽しめる場所」として展開したら、大バズりしちゃって。これは会心の一撃かもしれません(笑)。
大井(ファシリテーター):池内さんも起業の話がすごいんですよね?
池内(terra):6年前までアフリカにいて、ビズリーチの福岡オフィス開設の時に帰ってきました。副業で事業継承の話が出て資金調達をした後に、事業相手から「やっぱりなしで」って言われちゃって(笑)。会社にももう辞めるって言っちゃってたし、お詫びにって数百万の資金をいただいて、応援してくれる農家さんもいるしで、腹を決めてやろうと起業したんですよね。
大井(ファシリテーター):池内さんは全力でぶつかって、手繰り寄せてる感じがしますよね!野中さんもコロナ禍で業績が伸びていた印象を受けたんですが、実際はどうですか?
野中(薬けん):私たちは人手不足の薬局にヘルプでいくビジネスモデルなので、コロナ禍で薬剤師が少ない店舗の利用率が増えました。
大井(ファシリテーター):調剤薬局を買収したみたいな話もありましたよね。でも本来は買収モデルではないのではと思うんですが。
野中(薬けん):最初は買収の話ではなかったんですが、いざお話を聞いてみると「実は売りたいんです」ということで、私たちとしても研修施設として1軒持ちたかったので、買い取ることになりました。元々のビジネスモデルは異なりますが、今後も買収というのはあり得るとは思いますね。
大井(ファシリテーター):なるほど。その考え方はありですね。最近は跡継ぎベンチャーも増えてますが、そこにも寄与できそうですね。
野中(薬けん):実は今、大手薬局が小さい薬局を買収し始めてしているという実態があるんです。でも「地元のために薬局を経営したい」という若い人たちもたくさんいて、町としても地元のために頑張ってくれる若者たちに店舗を残したい。今後は両者をつなぐ、紹介ができる役割も実施できたらと思っています。
大井(ファシリテーター):最後に、ローカルアントレプレナーとして、これから3年後のビジョンを教えてください。
高橋(LAMP):宿での目標は、スタッフの人数を増やすこと!サウナとしては、2021年に豊後大野市が行政で初めて「サウナのまち」を宣言したので、今後はフィンランドとの姉妹都市協定を結びたいですね。
池内(terra):僕は農業を中心としたまちづくり。例えば農業は田舎で行うことが多いのに、農業の機械を取り扱う会社は都会にある。それを九州に持ってきたいと思っていて、九州産業大学と連携をしているところです。あとは、めちゃくちゃ美味い料理を農地で食べられる「農家レストラン」をつくりたいなって。
青柳(BOOK):今九州には面白い文化やカルチャーをつくる人たちがたくさんいるので、そんな人たちを繋ぐ場として『いいかねPalette』を展開したい。あとは関わってくれる人たちと、廃校利活用もしてみたいですね。
野中(薬けん):『ふぁーまっち』を全国で活用できるようにしたいですし、大分県を一番薬剤師が働きやすい県として認められる状況にもしていきたいです。
大井(ファシリテーター):素敵なお話をありがとうございました!
Editor's Note
コロナという未曾有の状況で、ローカルに向き合い、ただひたすらに前を戦ってこられたある種戦士といってもいい、アントレプレナーの皆様方。今日のお話を聞いて、今後の逆境に立ち向かう多くの方々のヒントになると感じました。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香