だれでもレター
※本記事は「だれでも送れる、LOCAL LETTER」の企画を通じて、読者の皆様から投稿いただいた記事となります。
大都市圏の路線や新幹線の利益によってローカル線の赤字路線を支えてきたJR各社。しかし、コロナ禍によってこのビジネスモデルが大きく揺らぎ、今後の鉄道の活かし方や代替手段にも大きな注目が集まっています。
そんな中、行政と地域住民が手を取り合い、ローカル線の廃線を食い止めようと奮闘している地域の一つが岡山県真庭市です。
今回「だれでも送れる、LOCAL LETTER」を通じて、地域の実情と思いを教えてくれたのは、真庭市で地域おこし協力隊として活動する酒井 悠さん。
真庭市内を走るJR姫新線(きしんせん)の存続に向けて動く、行政と地域住民の思い・そして行動とはーー。
そもそもJR姫新線(きしんせん)とは、兵庫県姫路市の姫路駅から岡山県新見市の新見駅までの約158kmを結ぶJR西日本の路線で、古くから真庭の地域住民の「足」を担っており、市内における停車駅は7つあります。
多くの市民に必要不可欠なものとして、真庭市役所も「日常の移動手段として欠かせない公共交通」「重要な社会基盤」と位置付けており、大切な鉄道を「乗って守る」ことをスローガンに掲げています。
真庭市役所の中でJR姫新線の利用促進を行なっているのは、公共交通対策事業を担当する「生活環境部くらし安全課」。通学する高校生や通院する高齢者など、市民の移動手段を確保し日常生活を支えるため、「鉄道は地域の『財産』である」という想いを持って日々奮闘しています。
その一方で、真庭市は2005年に9町村が合併し誕生したまち。南北50kmの縦長の市ですが、JR姫新線が通過するのは落合町、久世町、勝山町(いずれも旧町名)のみで、残りの6町村(北房町、美甘村、湯原町、中和村、八束村、川上村)は通過しておらず、鉄道は決して身近な乗り物とは言えません。
「マイカーが圧倒的に優位な地位を築いている中山間地域・岡山県真庭市において、あえて鉄道の利用を促していかなければならないことに苦労しています」と語るのは、くらし安全課の主幹・三船さん。
地域住民の利用を促すため、彼らは「駅周辺に人が集まるための場づくり」に着目。手始めに市内全ての駅のトイレをきれいに使いやすくリニューアル(水洗化)を行い、その後はマルシェなどのイベント企画を実施しています。
「(真庭市役所が大事にしているのは)行政単独で取り組むのではなく、地域のプレイヤーと協力し、市民を巻き込んだ取り組みにすること」と、三船さんは語ります。
実際に、市内の3つの駅前を会場に実施したマルシェには、行政の方を筆頭に、地元の出店者のみなさん、移動音楽隊、YouTuber、カメラマン、ライター。それぞれ個性を持ったメンバーが自身の得意な領域で参戦。
結果的にマルシェの参加者は1,500人にも登り、限定駅弁やスタンプラリー(参加者はなんと240人)など、鉄道ならではの企画も実施したことで、JR姫新線を身近に感じる取り組みになったといえます。
今後のJR姫新線について、三船さんは「地域住民の中に『JR姫新線=地域の財産で、なくてはならないもの』という意識を醸成していくことが大事だと思っています。また、鉄道が通っていない地域の人にもJR姫新線を身近に感じてもらい、関心を抱いてもらうことも重要だと思っています」と思いを語ってくれました。
今後も定期的なイベントが行えるよう、行政としても助成金を使いその活動を援助する方針もあるのだそう。
三船さんは最後に「JR姫新線の利用者を増やし、まずは、輸送密度1,000人を達成すること」と力強く語ってくれました。
輸送密度が2,000人を切ると、鉄道サービスが困難とも言われている中、少しずつでも前に進んでいくことが出来ればと一歩ずつ着実に、そして前向きに真庭市は進んでいます。
<この記事を投稿してくれた人>
岡山県真庭市 / 地域おこし協力隊
酒井 悠さん
岡山県真庭市の地域おこし協力隊(2022年5月着任)。1984年東京都世田谷区生まれ。プロモーションや地方創生の仕事を経て真庭市へ移住。前職で地域の観光分野の課題解決となるサービスを提供したことで全国の様々な自治体の実態を知り、そこに住んでいる「人」や、関係する「人」が大事であると気付く。ライターとして「人」の個性を理解しマッチングさせていきたいと考えている。趣味は映画鑑賞、野球観戦、新聞記事のスクラップ。
酒井さんからの「だれでも送れる、LOCAL LETTER」への寄稿はこれで3回目。いつも地域への愛が込められたお手紙をありがとうございます!
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