YAMANASHI-OKAYAMA-WAKAYAMA
山梨・岡山・和歌山
※本記事は、新しい働き方LABが主催したオンラインイベント『豪華ゲスト3名による “Talksession”「地方で働く」を考える!地方で働くって実際どう?』をレポートにしています。
2023年6月23日に開催された本トークセッションイベント。「地方で働くって実際どう?」をテーマに、移住やUターンの成功や失敗、リアルな生活費や働き方などについて、地方で活躍している3名の登壇者が語りました。
リモートワークの普及により、時間や場所に捕らわれずに働くことができるワークスタイル「デジタルノマド」が注目されていて、「自分らしい新しい働き方」をより追求できるようになった現代。
前編では、実際に地域でフリーランスとして働くのはどうなのか、ぶっちゃけ話から、地域ならではの動き方を模索しました。
後編では、「地域で働くことのリアル」や「地域で働くケーススタディ」について語り合ったレポートをお届けします。
シモカタ氏(以下、敬称略):一番重要なことは、日本語が通じるということを一旦忘れることだと思っています。当たり前ですが日本では日本語が通じるので、なんとなく分かり合えてる気がするじゃないですか。だから「自分が思ってることが正しい」と思い込んじゃいがちなんです。僕も昔はそうだったなと思っていて。「みんな考え方が違うし、それでいいんだ」と気づいたぐらいからうまくいき出したんですよね。
たとえば海外の人と話す時って、そもそも言葉が通じないから一生懸命話し合うので、絶対に相手を否定しないんですよ。実はその感覚が日本人同士でも本当は必要で、相手は相手の文化の中で生きてきて、自分の人生を生きているんだから、受け入れられるのがいいし、理解し合えるのがいいと思います。
北田氏(以下、敬称略):本当にそう思います。海外留学を合計で4、5年していたのですが、私は地域の人たちのことを「ネイティブ」って呼んでいるんです(笑)。
本当にネイティブなんですよ。「外国人だよね」という場面が多すぎて。でも、「韓国人だよね」と思うとすごくやりやすいです。「わからないだろうから、どこから説明したらいいかな?」と丁寧に考えると、非常にスムーズにいくんですよね。海外に住んでいた経験をそのままアウトプットする感覚が強いです。
シモカタ:ネイティブと表現することは、決してバカにしているわけじゃなくて、ただ感覚が違うってだけですもんね。そこに意味はないんです。「何でここ違うんだろう」と理由を求めると自分が苦しくなっちゃうんです。地方に行きたいと思っていたり、地方と関わりたいと考えていたりする人は、このことを最初の前提として必ず持っておいてほしいですね。
中新氏(以下、敬称略):コピーライターをやっていて通ずる部分なのですが。クライアントが「この想いを伝えたい」というのと、消費者が「こういう体験を得たい」ということにおける乖離(かいり)がすごく多いんです。都市部の人が認識している言語と、地域で生きてきた人たちの言語ってやっぱり解釈が違う。それは例えば温度感もそうだし、スピード感なんかも全然違うと思うんですよ。だからその辺のレイヤーを揃えてから、一緒に話してみたり聞いてみたりすることって大事です。
北田:東京にいる時に「ITの会社なんです」と言うと「ITなんですね」って感じじゃないですか。地方都市で「東京が本社のITの会社です」と言った時の壁のつくられ方がすごくて(笑)。
これに悩んでまして。昨日たまたまクリエイターの方と話した時に、「『IT』じゃなくて『ものづくりの人です』って言った方が絶対しっくりくるよ」と言われて、なるほどって思いました。ものをつくっているという立場で一緒なんだということで受け入れられることが大事なんです。
シモカタ:今の話が、3つ目のテーマにいい感じに入ってきてるなと思っていて。3つ目のテーマが「地方で働くことのリアル」なのですが、まさにさっきの話が、地方で働くことのリアルだなと思います。でもこれってある程度関係性ができて、チャレンジできる思考回数が増えてからの話だと思うんですよ。中新さんの場合、独立した新卒で、フリーランスになるって開業届けを出した瞬間のリアルな気持ちはどんな感じだったのかなっていうのを聞きたいです。
中新:僕は大学2年生の頃からこの仕事をしていて、卒業するタイミングも仕事をはじめて2年経ってぐらいなんですけど、自分の気持ちとしてはそんなに意気込んでいるわけでもなく、「この道で行くんだ」という淡々とした気持ちではじめました。ただ、仲間内での飲み会に行ったら、周りは会社の話をしてて自分はそれに同意しようがないんです。上司も部下もいないので、そこではじめて「自分ってなんか違う生き方してるし、ちょっと寂しいな」と思った時はありましたね。
シモカタ:学生時代の友達が、本当にスッと消えていなくなるよね(笑)。あれ何なんでしょうね。
北田:話したいと思っても話が合わなさすぎ問題(笑)。私はまだ独立したことのない会社員なのですが、やっぱり同年代の子は、みんな都内で就職していて会社員なんです。都内の会社員と地方で働いている会社員には結構差があって。この前ひさびさにランチ会に大学の同期と行ったのですが、そこでの話題は「彼氏のボーナスが私より低くてマジ無理なんだけど」とか「同期の半分が結婚しはじめてマジ焦るわ」とか。話が合わないんですよね(笑)。
シモカタ:新卒で就職する場合に特に多いんだろうなと思うんですけど、学生の価値観のまま社会に出て、それが「仕事をする人間という価値観」に変わるタイミングって、なかなか難しい気がするんですよ。それって多分、大学時代から話していた話が「私が彼氏からもらったクリスマスプレゼントより、私が彼氏に送ったものの方が高かった」と言ってるノリのままいる気がしていて。それこそ萌さんみたいに、自分で決めて自分がやりたいことをやって働くっていうことにコミットしてる人だったり、中新さんみたいに、自分の力で生きていくって決めた人だったり、仕事にコミットしているっていう部分がちゃんとあるといいですよね。
北田:それって楽しいからなんですよね。「ライフ・アズ・ワーク」になってるんですよ。自己実現の手段なんですよね。
シモカタ:すごくわかります。僕も『ワーク・イン・ライフ』ってよく言います。
北田:そうなってきますよね。そうならざるを得ないですもんね。だって、それが良いか悪いかは人によると思うけれど、飲み会に行ったとしても、ずっと仕事してる感覚というか、ビジョンの話になってくる(笑)。
でもそれが無理ってなる人も絶対いるから、これから踏み出す人に関しては、移住前や転職前に実際にそこに入ってみて肌で感じておいた方がいい気がします。
シモカタ:考えていることが独特すぎる人もいるし、でも独特すぎても自分も楽しめるじゃないですか。面白いというか、「この人はこんな考え方なんだな」って、「この目線で見るとこの業界はこう見えていてこういう風にしたいと思っているんだな」みたいな興味に変わっていくというか。でも感覚が合わない人は確かにいますからね。
北田:こういう話めちゃくちゃリアルだな(笑)。私もGoogleストリートビューを見て移住することを決める前に、こういうセミナーに参加しておけばよかったと思います。すごい失敗をいろいろしたんで(笑)。
シモカタ:その失敗の話を聞かせてもらってもいいですか。
北田:仕事の進め方を地方の方々と同じ言語(同じ温度感、同じ目的、同じ価値観)でやらなかったことです。「それって非効率だからやめた方が良い」と思っていたんですけど、地元の方にとっては一番大事なのが効率とはそもそも限らないんですよね。「調和が一番」「平等が一番」という風に、地方では「仕事=最短で効率よく進める」が正義ではないんです。
シモカタ:それめちゃくちゃありますよね。でも難しいのが、それを理解した上で、やっぱり最短を目指さないと、あなたたちの世代はいいけど、お子さんの世代の時にマジやばいぞっていう話をどうやって踏み込むかってめっちゃ悩みますよね。
北田:私たちからすると「お尻に火をつけてください」って思うんですよね。でもそれをそのまま伝えたところで喧嘩になるじゃないですか。かと言って相手の言っていることだけを受け入れても、みんな幸せにならないし。そういう狭間に陥って悩むことはあるあるかもしれないですね。子どもという文脈はすごく大事で、時間と数字はやっぱり分かりやすいと思います。中新さんみたいに授業に行っている人が、「お子さんの話を聞いて、お子さんこう言っていたんですよね」という風に、「“未来がちょっと暗いから”と進路を悩んでいる人もいるんですよ」というリアルな意見を挟むと、重いを腰あげてくれますよね。
中新:世間で問題になってることが、地方に伝播するまでのスピードが少し遅いように僕は思うのですが、そこはサポートしてあげて「一緒になって悩む」というところまで落とし込めると良いですよね。自分事化するというのは、地方ではまだ足りていないのかなと思っています。
北田:「わからないから知恵を貸してください」という流れにするのも大事ですよね。
シモカタ:わからないって大事ですよね。「都会から来た人」という目で見られるから、それに応えようとしてカッコをつける。でもそれがあるうちは上手くいかなくて、わからないということを言えるようになってから上手くいくようになりました。
なごやかかつ、笑いの絶えないイベントとなった、今回のオンライントークセッションイベント。あっという間の1時間で、地方ならではの苦悩や、あるあるネタを多数聞くことができました。次回の開催が待ち望まれています。
Editor's Note
地方で働くことについて、リアルな話の数々が飛び出し、聞き応えのあったイベントでした。地方ならではの温度感と、だからこそどんな行動が必要かが分かるので、非常に有益だったのではないでしょうか。
新しい働き方として、地方で働く事を考えている人の参考になれば幸いです。
YUYA ASUNARO
翌檜 佑哉