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※本レポートは2024年6月23日に開催された株式会社WHERE主催イベント「各種講座の卒業生あつまれ!大同窓会」で行われた講座卒業生の「記者会見インタビュー!」を記事にしています。
離れた場所に暮らしながらも、関わりたいローカルがあるーー。
いわゆる関係人口として、何か地域の役に立ちたいーー。
地域にとってもメリットがあり、自分のやりがいにも繋がる活動をしたいーー。
地域の暮らしや仕事に興味があっても、何から始めたらいいのかわからない。地域で役立つ力を身に付けるにはどうしたらいいのだろうか。
こうした想いを抱える方に向け、株式会社WHEREでは、「インタビューライター養成講座」「地域バイヤープログラム」「ローカルプロデューサー養成講座」など、ローカルで活きるスキルを身につけられる講座を多数開講しています。
これまでの卒業生は150名以上。
そしてこの度、講座の垣根を超えて卒業生が一堂に会する「大同窓会」を実施。様々な講座から、実践者のみなさんが集結しました。
本記事では、大同窓会の1コンテンツである「記者会見インタビュー!」より、各講座のプログラムを通して得た学びやつながりを活かして活躍の場を広げている卒業生4名のリアルな実践事例をお届けします。
地域でプロジェクトや事業の立ち上げに関わるために、「まず地域で何かしたい」と地域バイヤープログラムに参加した橋場美紀さん。
講座参加前には特定の活動地域がなかったものの、卒業後の今、講座で出会った小椋唯(ゆいまーる)さんとともに岐阜県美濃市の地域活性に取り組んでいます。
「講座に参加して1番大きかったのは地域に想いを持つメンバーとの横の繋がりができたことです。
私には通える地域ができて、ゆいまーるにとっては活動の協力者が増えた。もともと私は『関係人口』としてどこかの地域と深く関わりたいなと思っていたし、ゆいまーるは講座での出会いを地域につなげたいと考えていました。そこがマッチしたんですね 」(橋場さん)
「地域バイヤープログラムを受講して良かった点は、チームでの活動が多かったことです。私は、デザイン・制作・PRなど、明確にできることがあったわけではありません。
そのため、自分がどう地域の役に立てるのか、何が強みなのかわからず、地域と関わり始めるのは難しいとずっと思っていました。
講座では現地のフィールドワークから最後の店舗イベントの運営まで進めていく中で、チームで何回もミーティングをしながら一緒に準備を進めました。そうしていくうちに、自分では気がつけなかった得意なことや、ローカルでも役に立つスキルを発見させてもらいました。とてもありがたかったです」(橋場さん)
名古屋で暮らす橋場さんと、岐阜県美濃市で活動する小椋さん。拠点が近い2人が講座卒業後も一緒に活動するようになったきっかけは、講座終了直後の打ち上げでした。
「難しいんだろうなと頭の中で思いながらも、『美濃で手伝えることない?』と思い切ってゆいまーるに聞いてみました。そうしたら、意外にも『じゃあ、一緒にやってみる?』と返事をしてもらえて。すごくワクワクしたのを覚えています。
講座を通じて一緒に過ごして、お互いの想いも聞いていたので、それぞれの強みを生かして連携をしたら何かローカルで実現できることがあるんじゃないか、とお互いに思えたから活動がスタートしたのかなと思っています」(橋場さん)
「こんな私でも何か地域の役に立てそうなことがあるんだ、と思えて少し自分に自信を持てました。ゆいまーるも、外の視点から地域課題や魅力などの整理ができ、取り組むべきことと優先順位が明確になったと喜んでくれました。
だからこそ、これからも関わり続けてほしい、これからも関わりたい、と相互に思える関係性ができ、気づけば美濃が『通える地域』になっていました」(橋場さん)
まずは出会い、やりたいことを人に話す。そして最後に、できることからやってみる。
ローカルとのつながりがなくても作り上げることから始めて、通える地域を見つけだした橋場さん。一歩ずつ地域との関わりを深め始めています。
「まだ仮名なんですが、『美濃和紙を稼げる産業にするプロジェクト』というものを和紙漉き(すき)職人の方や地域の木工のNPOと連携しながら進めていて、それにしばちゃん(橋場さん)にも入ってもらっています」と話すのは、小椋唯(ゆいまーる)さん。
美濃市地域おこし協力隊のほか、個人事業主としても美濃市で活動中。そうした中、地域内で新たな商店のプロデュースに取り組むことをきっかけに地域バイヤープログラムの受講を決めました。
講座受講を機に、橋場さんとともに美濃を盛り上げる活動に取り組んでいます。
「今、和紙漉き体験ができる場所が観光の中心部にはないので、体験プログラムづくりに取り組んでいる最中です。今年の秋から冬にかけてモニターツアーを実地するために、和紙漉き職人に監修をお願いしこの夏から開発します。
詳細はまだ確定していませんが、今後も自分のSNSや、講座受講生のコミュニティの中で発信していくので、美濃市と関わりたい、美濃市で自分が学んだスキルを試してみたいという方がいたら、ぜひつながりたいです」(小椋さん)
「美濃和紙はユネスコ文化遺産になっていますが、職人さんは昔に比べてかなり少なくなったようです。自分の工房を立て、和紙1本でやってる人が少ないというのが現状です」(小椋さん)
「『美濃といえば和紙だよね』と言われることも多いですし、和紙は美濃市を知るための入り口となるものだと思っています。美濃和紙を知ってもらうためにまずは体験が効果的かなということで挑戦しています。
今後は和紙漉き職人の方などから詳しく話を聞きながら、商品開発にも取り組みたいと思っています。他にも美濃市内で活動されている方と連携し、小さくても自分たちにはなにができるか考え地域づくりに取り組んでいきたいと思います」(小椋さん)
講座での出会いを出発点に、2人の挑戦は今後も続いていきます。
新潟県での農業体験をきっかけに、酒蔵で働く人や花火師と話したり、地域の伝統行事へ参加したりすることで作り手の想いやこだわりに触れ、心が動かされたという宮崎颯さん。
ローカルプロデューサー養成講座を受講しながら、日本酒と美味しい料理を楽しみながら酒蔵や農家のこだわりを楽しむ独自イベント「和酒味合」(わしゅみあい)を企画。講座卒業直後に、見事開催されました。
「作り手のこだわりを聞いた時に、前向きな気持ちになったり、ワクワクしたんですね。そこから、こだわりを楽しめる体験を提供するような場所を僕が作りたいって思ったんです。
僕はたまたま人見知りもしないし、抵抗なくいろんなところに行くことができるタイプ。でも、そうじゃない人もいます。だからこそ、自分の強みを活かして、理想とする場所を作りたいと思いました 」(宮崎さん)
イベントを開催したのは、構想してからわずか3か月後。
この期間で実施できた背景には、まず自ら締め切りをつくったことがありました。
「こういうことができたら面白いんじゃないか、と最初に思いついたのが3月下旬。思いついただけで、詳細は何も決まってないのに、とりあえず会場を6月に抑えました。今振り返ると、やるしかない状態にしたからこそ開催できたんだろうと思います」(宮崎さん)
アイデアを思いついても、構想段階からなかなか進めない方も多いはず。宮崎さんの勇気ある経験談に、会場の熱がふっと上がります。
「次にやったのが仲間集めです。
ローカルプロデューサー養成講座で、プロデューサーには2種類いると学んでいました。0から1をつくる人と、やりたいことに対してアプローチを当てはめて1から100をつくる人。
『自分は、この人は、どういうタイプなんだろう?』と意識しながら周囲の話を聞いていました。
そしてやりたい企画を実現するためにどんな人が必要か考えました。この場において目指していたのは、日本酒を仕入れ、料理を出し、作り手の思いを伝えること。そこで、知人のデザイナーと管理栄養士に声をかけました。チームで進めていけたのがよかったですね」(宮崎さん)
宮崎さんはまさに0から1をつくるタイプ。だからこそ、異なるタイプの仲間と一緒にイベントを作り上げました。
「これもプロデューサー講座で学んだことですが、誰が言い出しっぺなのかがすごく大事なんですよね。
このイベントの場合、自分が言い出しっぺなので自覚を持って、『こういうことやりたいんだ』という枠組みは必ず自分が作っていました。もちろん、全部そのまま採用されるわけではないんですが、まずプロデューサーが起点を作ることがすごく大事だと学びました」(宮崎さん)
「仲間の意見を聞き、落としどころを作るように意識しながら進めました。実現できたことは、仲間に感謝ですね」(宮崎さん)
宮崎さんは、企画のアップデートに向け、次なる一歩を踏み出しています。
雪深いふるさと、新潟県妙高市を出て東京で働いてきた岡本岳志さん。
一度都市部に出て、幅広い人脈やスキルを手にしたからこそ、地元のおもしろいものがよりくっきりと見えてきました。
今では地域の価値を引き出すコンテンツを作り、地域に新しい人の流れを生み出すことへ挑戦しています 。
「妙高ではかつて山岳信仰が栄えて多くの修験者がいました。しかし、江戸時代にはいなくなってしまった。そこで、村人たち自らが山伏(やまぶし)に扮して地域のお祭りや信者を支える、仮の山伏という文化が生まれました。
実は妙高は、仮山伏が現存している日本唯一の地域です。このことを知った時、これはおもしろいんじゃないか、と思ったんです 」(岡本さん)
「一般的な修験者、山伏というのは非常に厳しい修行をすることで有名ですが、仮山伏はかなり庶民派です。
これは、地方創生の文脈でいうと関係人口に似ている気がする。ただ『妙高が好き』っていう理由で動いてるような、そういう軽さと緩さが仮山伏にはあるんですよ。この文化はすごく今の時代に合ってるんじゃないかなと。
そこで、軽さと緩さを活かしたコンセプトで色々作ってみたら楽しいのかな、という思いから、『妙高修験道トレッキングツアー』や『妙高仮山伏ダイニング』という企画を今検討しています」(岡本さん)
ローカルプロデューサー講座から学んだのは、コアとなる仲間作り。東京で暮らす岡本さんが企画を円滑に進めていくには、地元にいる熱量と実行力がある仲間を捕まえ、しっかりコミュニケーションをとることが鍵になります。
「地域で新しいことをやるのは『若者・よそ者』とよく言われますが、意外と地元シニアの方でも新しいことをやりたい人はいらっしゃるんですよ。
そういう方は地域内で立場や責任があり、どうしても気軽に動きづらいという課題感を抱えている場合があります。そうした時に、かれらが動きやすいように外から調整してあげる。それだけで、とんでもない爆発力を出すんです。
やりたいことはあっても実際の行動に移せていなかったところに、外から改めて「仮山伏っておもしろいよね」「あの人も同じこと考えているからこういう風にやりましょうよ」と声をかけられる。
すると、彼らにとっては『言われたからしょうがない』というような、行動の理由ができるのだと思います。そして自分は、地域外からの客観的な視点だからこそできる情報の流れなどの設計をするんです」(岡本さん)
「講座内でもよく言われていましたが、単にこちらのやりたいことを求めて協力要請をするだけでなくて、相手が求めてるものと、こちらが地域に関わることでのメリットっていうのを明確にすることが大事です。
全方位にとってメリットのある座組みを意識し、いろんな人に話をすると、思いがけないところで意外な情報のキャッチや人脈ができることがあります。こうした出来上がる前のプロセスで、どう情報発信するかということも大事ですね」(岡本さん)
2つの企画は着実に前進し、それぞれ今年秋にはテストイベントを開催。商品化に向けて邁進しています。
WHEREが提供する各種講座の内容は様々ですが、どの講座でも熱意ある仲間に出会い、学びあう経験が得られます。
能動的で刺激的な学びを求める方、叶えたい思いを抱える方はぜひ、WHEREが創る学びの場で一歩目を踏み出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
Information
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<こんな人にオススメ!>
・好きな地域の魅力をもっと多くの人に届けたい
・仕事で発信に関わってはいるけど、1から自分でやったことはない
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Editor's Note
4人の発表は個性に溢れていましたが、卒業してから学んだことを活かす初速の速さが共通項だと感じました。同じく卒業生の立場から、こちらが焦ってしまうほどたくさんの刺激をもらいました。
AYAMI NAKAZAWA
中澤 文実