副業
※こちらのレポートは2023年2月にパーソルキャリア株式会社が提供する、副業・フリーランス人材 マッチングプラットフォーム「HiPro Direct」が主催した「副業フェス2023」のトークセッションをまとめています。
コロナ禍を経てリモートワークやワーケーションなど、働き方にも多様性が生まれてきています。企業を取り巻く環境にも変化が現れ、副業を解禁する企業も増えました。
キャリアアップを目指し副業を検討する人。
事業成長のために、副業人材を活用する企業。
新しい人材活用の形が、今まさに生まれています。
今回のセッションでは、首都圏でもビジネスの第一線で活躍しながら、地域での副業に力を注ぐプレイヤー2人が、地域副業の実態と面白さについて語りました。
鈴木:最初のテーマは「地域の副業に踏み出したきっかけ」です。ここ数年で地域創生やテレワークの普及などが叫ばれ、地域で働くことや副業をすることが浸透してきていると思います。
その中で、おふたりがなぜ地域での副業に踏み出したのか、きっかけを教えてください。
三宮:私は初めから地域での副業を検討していたわけではありませんでした。独立するために知人にいろいろな人を紹介してもらっている中で、「Loino(ロイノ)」*1 のサービスを知りました。
地域の仕事に副業として関わることができるのなら、まず試してみようと。実際にやってみてとてもやりがいを感じましたし、勉強になることや気づきも多いですね。
鈴木:初めから地域でというよりは、紆余曲折の中で地域副業と出会われたんですね。蓑口さんはいかがでしょうか。
蓑口:私は20代の頃から、故郷である富山県南砺市に関わる仕事がしたいなと思っていました。帰省の度に慣れ親しんでいた商店がどんどん閉まっていく様子を見て、何かできないかと考えていたんです。
そこで、私にできることを見つけるために、2ヶ月に一度帰省するように。毎回知人から様々な人を紹介してもらい「私に何かお手伝いできることはありますか」と相談し続けたんです。結果、2年経った頃には、報酬をいただける仕事に結びつきました。
鈴木:蓑口さんの持つスキルを認知してもらえないと、報酬をもらえる仕事には繋がりにくいと思うのですが。どのようにアプローチしたのでしょうか。
蓑口:初めは地元の友人に、東京でどんな仕事をしているのかを詳しく説明するところから始めました。意識したのは東京で使っている言葉ではなく、地元の皆にわかる言葉で言い換えることです。
蓑口:初めは世間話をしていた友人達もだんだんと「若い人材の採用が難しい」「自社の商品を売るために、販路を広げたい」とビジネスの悩みを相談してくれるようになりました。そうした相談がどんどん手元に集まっていくうちに、仕事に繋がったんです。
鈴木:人と人が繋がって仕事になるというのは、地域あるあるなのかなとも思います。三宮さんはそう言ったご経験はありますか。
三宮:そうですね。お客様から仕事を紹介していただけることもあります。その中で先ほど蓑口さんが「地域の人がわかる言葉で説明することが大切」とおっしゃっていたのに、とても共感しました。そこを上手く合わせていけるかが、仕事のフィールドを広げていくポイントだと思います。
鈴木:地域企業が副業人材に求めることは何か。また、副業人材を地域企業が活用していくメリットなどについても、おふたりの考えをお聞かせいただけますでしょうか。
三宮:地域企業が副業人材に求めていることは「希望の光を照らすこと」なのかなと思っています。地域企業の方のお話を聞くと、抱えている課題に対して「まず何をどうすればいいのかもわからない」ということが多いです。
そこで求められているのは「ここはこうすれば解決しますよ」と解決策をまず提示することだと思います。
蓑口:私は一言で例えるなら「風」が求められているなと思います。
私が最初に地元に関わる中で求められたのは、Uターンしてフルコミットすることでした。でも私はリモートかつ副業で関わるつもりでしたので、自分が中途半端な存在だと見られるのではと悩んでいました。
蓑口:でもある時に地域の成長のためには土地に根差す“土の人”と、外から関わる“風の人”の両方が必要だという考えを知り、意識が変わりました。地元で長年かけて信頼を築き上げた企業を成長させるために、私が外からの情報や知見を提供すれば良いのだと思ったんです。
副業者は中途半端な存在と思われるかもしれませんが、外からだからこそできることがある。地域の経営者の方に私が「風」であることを伝えて向き合っています。
鈴木:ありがとうございます。「風」としての存在を認めてもらうまでにいろんなプロセスや試行錯誤があったのかなと思います。どれくらい時間を要したか、また認められ始めたターニングポイントがありましたら教えてください。
蓑口:地元でイベントを開催したことが一つのきっかけでした。参加者は20名ほどの小さな事例勉強会だったのですが、来場した方が皆さん「本当に良かった」と感想を広めてくれて。
それが地元で信頼を得ているある方の耳に届き、その方が応援してくださるようになりました。すると周囲の人も「彼が言うんだったら蓑口さんは信頼できる」と言っていただけるようになりました。
鈴木:精一杯関わっていく中で、信頼関係が作られていった体験があったのですね。三宮さんは蓑口さんとは異なり、地元ではない地域での副業を経験されていると思います。副業で関わっていくなかで、その地域のことを好きになったという経験はございますか。
三宮:そうですね。たまたまなんですけど、私も蓑口さんのご出身である富山の会社にも縁があったりまして。北陸で大雪が降ったニュースを聞くと、「すごい雪が降ってるけど大丈夫かな」とか考えますね。
また、関わる企業の業種や業界についてもアンテナが立ってきます。自分の視野や興味が広がっていくので面白いですね。
鈴木:地域企業で副業する際に、意識すべきポイントがあれば教えていただきたいです。これは、会社の規模や企業の歴史、地域性など様々な観点で異なってくると思います。
三宮:地域企業の方たちと目線や足並みを揃えていくことが大切だと思います。東京の企業で働いていた時には当たり前だと思っていたことが、地域によっては当たり前じゃないこともあります。こちらが掲げたイメージを全く理解してもらえないことも。
大きな目標を掲げることも大切ですが、まずはどう一歩を踏み出すかを一緒に考えるところから始めていくことが重要ですね。
鈴木:三宮さんは、地域での副業を始めて数ヶ月ということでしたが、そうした意識のギャップは初めから想像できていましたか。
三宮:やってみないとわかりませんでしたね。携わる地域によって違ったりもします。自分の考えを提案しても、想像していた返事が返ってこないんです。そうした経験を重ねていくなかで、少しずつ相手に合わせてチューニングしていきました。
蓑口:私の場合は、富山の企業と一緒に仕事をするポイントが2つあります。それは「妄想」と「期待値を下げる」ことです。
地域企業ですと、いきなり「商品のパッケージを変えたいんだけど」というような相談が来るのですが、よくよくヒアリングをすると、目指していることを達成するためにはパッケージのリニューアル以前に挑戦すべきことがあることがわかります。
蓑口:まずは「どこに辿り着きたいのか、何を大事にしたいのか」を一緒に妄想し共有することが、文化の違う人たちと働く上で大切だと感じています。
その後、自分が関われる業務の期待値を下げてお伝えします。例えば、新規クライアントの紹介だったら10件はできると思うけど、あえて「まずは3件紹介します」と伝えます。そうすると小さなサイクルで「できたね、やったね」っていう信頼を積み上げていくことができます。
鈴木:ありがとうございます。地域の企業経営者からしても、副業者が実際に何をしてくれるのかイメージが沸かないというケースも多いと思います。だからこそ自分たちができることを少しずつ積み上げていき、お互いどのように関わっていくのかを決めていくことが大切なんですね。
鈴木:次のテーマは、地域で働くことのやりがいや面白さについてです。今後、地域で副業に挑戦される方に向けてお聞かせください。
三宮:地域企業が本当に困っていることを、自分の強みや経験を活かして解決に導くことができることにやりがいを感じます。大企業では通らないような個人のアイディアに挑戦でき、それが成功すると自分の自信にも繋がります。
また、実際に地域へ出向くことは、旅をするような楽しさがあります。いろんな方にお会いして、それまで知らなかった生活文化に触れられるという醍醐味も。美味しい地域の食材を食べられることも、おすすめポイントです。
蓑口:私は、お世話になった故郷の人たちが喜んでくれるのが何より嬉しいです。
他にも地域での仕事は自分を変える環境を与えてくれます。例えばコロナ禍ではリアルイベントではなくオンラインイベントのスキルが求められたように、時代が変われば求められるスキルも変わります。
どうすれば時代に合わせ生き残ることができるのかを、仲間と一緒に真剣に考える。そのフィールドが、私にも新しい変化をもたらしてくれます。これが私なりの地域の活用法かなと思っています。
鈴木:おふたりとも、どうもありがとうございました!地域企業と副業人材の関わりについて、多くの知見や経験を共有いただきました。
Editor's Note
これまでは移住、定住した上で、地域にどれだけコミットするのかが、地域で信頼を得る指標となっていたように思います。
この数年で、リモートワークや多拠点生活などの考えが浸透してきました。
これからは住んでいる場所にとらわれず、その地域をいかに考えて行動してくれるかに指標が移っていくのかもしれません。
そうすることで、企業と個人両者にメリットのある、新しい関係を築けるのかもしれないですね。
私も地元と移住した町など複数の地域に貢献できるように動けるようになりたいと思いました。
DAIKI ODAGIRI
小田切 大輝