ログ小屋
ログ小屋が道路を走る姿を見たことがありますか?
見たことがあったとしたら、「台車に載せて運んでいるのだろう」と思ったのではありませんか?
多くの場合、それが正解でしょう。でも、「IMAGO iter」は違います。ログ小屋自体が車なのです。車だから、駐車場はもちろん、庭に停めておくことも、海や山に走らせることもできるんです。
その「IMAGO iter」が、2022年5月4日・みどりの日に長野県小諸市で開催された「ASAMAYA MARCHE」に登場。ファッションブランドのポップアップストアとして新緑と桜に囲まれた会場に馴染みつつ、注目を集めました。
離れやお店等として一定期間利用して、使わなくなったら移動ができ、中古車として販売もできるというユニークな製品がどのようにして生まれたのか、どんな使い方ができるのか。
「IMAGO iter」を提供する 株式会社アールシーコアBESS事業本部 の小山剛さんに聞きました。
「走るログ小屋・IMAGO iter(イーテル) 」は、車輪がついたログ小屋。自走するわけではなく、車で牽引する。車で行けるところならどこでも行けて、車を止められる場所ならどこでも止められる。サスペンションや電磁ブレーキを備え、十分に安定した走行が可能なことを走行テストで実証済み。
「本格的なログ小屋同様、厚みのある無垢の国産杉材を使っています。無塗装なので好きな色に塗ることもできますし、棚などを造り付けることも可能で、アイディア次第で自由に使っていただけます。牽引するために、牽引自動車第一種免許が必要になりますが、中型免許があれば、十数時間程度の講習受講で取得することができますよ」(小山さん)
内部の広さは、6.51㎡。より広い 11.27㎡ の「移るログ小屋・IMAGO X」もある。いずれも4面に窓があり、1面は出入り口を兼ねた掃き出し窓。明るく開放的な空間だ。IMAGO iter は、さらに木屋根と幌屋根が選べるという。
2021年10月に発売され、アウトドア関連のショーなどで話題を呼んだ。
ログ小屋を走らせるという発想は、いったいどこから生まれたのだろう?
「私たちは、BESSというブランドでログハウスを販売しています。BESSのオーナーさんから『庭に離れを建てたい』という相談がよくあって。建築物として離れ用の小屋も用意はありますが、様々な規制で建築が難しい場合も多いんです。
また建築物は一度建築してしまうと使わなくなった時には取り壊すことしかできず、木をふんだんにつかうログハウスは寿命も長いのでもったいないという想いもありました。であれば、ログハウスの車両、トレーラーハウスがあっても面白いのでは? とアイディアが広がり、走るログ小屋が誕生しました」(小山さん)
建築物として建てた離れは、不要になったら壊すしかない。でも、車なら中古車として販売できる。車にするなら、動かしたい。マイカーで運べて、テント替わりにあちこちで使えたら楽しい! ということから、IMAGOシリーズのカタチとなった。
ログ小屋を走らせようというアイデアが出ても、本当にやろうとする人や会社はなかなかないであろう。アールシーコアが実現させた理由は?
「面白い、うまくいくかもしれない」と思ったら、やってしまう会社なんですよね。社長が「大馬鹿が世の中を変える」とよく言います。社内に『大馬鹿塾』という道場のような場があり、そこで私も一風変わった弊社ならではの考え方を教わりました。小山 剛 株式会社アールシーコア
小山さんの本業は移住支援。ご自身も2013年に、パートナーの郷里である小諸市に移住し、コロナ禍となるまで週5の東京への新幹線通勤を続けてきた。コロナ禍以降、リモートワークとなり、今では週1~2回の東京本社出社、それ以外は自宅でリモートワークをしている。
「移住した当時は、20代の若い奴が地方に移住して新幹線通勤するなんて理解できないという風潮でした。でも、探してみたら、小諸にも同世代の面白いことをやっている方がたくさんいたんですよね。近頃は『信州で暮らして、東京の会社に勤めている』というと『いいね』と言われるようになりましたし、移住して来られる方もほんとうに増えましたね」(小山さん)
小山さんは、小諸市を含む東信エリアに移住する方を土地探しからサポートしながら、地元の人たちと連携して新しいことを始める暮らしを楽しんでいる様子。仕事では『FuMoTo』という小諸市内の宅地の企画・開発も手がけ、プライベートでは小諸市で新規出店する人をサポートする『おしゃれ田舎プロジェクト』のメンバーでもある。
「BESS はログハウスを販売して終わりではなく、そこでの暮らしを楽しんでいただくための情報提供やBESSユーザーさんのコミュニティ運営も行っています。『FuMoTo』も土地を売るのではなく、そこでの暮らしを提供することが目的です。
共有スペースはここで暮らす方々の間に自然な交流が生まれるように設計し、コミュニティ作りもサポートして、小さな町を創ろうとしています。特に小諸は、暮らし始めてからが楽しくなる街です。色々な方をつなげていく役割を果たしたいと思っています」(小山さん)
BESSの小屋シリーズIMAGO(イマーゴ)は、建築物の固定式と、車両タイプの2種類があり「走るログ小屋・IMAGO iter 」は、発売から半年で既に様々な用途で活用され始めている。
「IMAGOの用途は庭に置いて離れとして作業小屋や趣味部屋として使う方が多いですね。リモートワークになったため、自宅に仕事部屋がほしいという方が増えているので。その他には、軒先でのお店、ケーキやお花、コーヒースタンドとしてご利用いただいている事例があります」(小山さん)
キャンプ場のコテージとして採用されたり、アメリカの某会員制大型スーパーの商品として扱われたり、サウナができないかなど、ユニークなアイディアを持った方々から問合せもいただいているという。
ASAMAYA MARCHE では、マルシェ主催者の武藤千春さんが率いるファッションブランド「BLIXZY」の展示ブースとして活用。以前、アールシーコアが主催した移住オンライン配信イベントへの出演時にも、仮設のオンラインスタジオをBESSで仕立て、小諸の街中から全国へ配信していた。
「武藤さんからあの時の小屋使えないですか? と相談があり、二つ返事でOKしました。物販のポップアップストアの好事例になりましたね」(小山さん)
黄色に塗られたログ小屋と牽引車両は、マルシェ会場でも目立ち「BLIXZY」のお客さんだけでなく、「IMAGO iter 」の説明を聞きに来る人が後を立たない。
BESS のブースでは、檜のスプーン磨きなどのワークショップを開催しており、「IMAGO iter 」の説明に、ワークショップの対応に、小山さんを含め、スタッフの皆さんは大忙しだった。小山さんが土地探しからサポートして、ご家族で移住して来られたBESSのオーナーのご家族がマルシェ会場にいらっしゃるという一幕も。
「IMAGO iter」「IMAGO X 」とも、買い取りの他にリースでもご提供しています。2ヶ月間のリースで、日替わりのテナントが入るような使い方もありますね。ASAMAYA MARCHE のようなイベントや季節限定の催しなどにも、どんどん活用していただきたいです。小山 剛 株式会社アールシーコア
「IMAGO iter」は、全国11ヶ所にあるBESSの展示場『LOGWAY』で実物を見ることも可能。LOGWAYは単なる展示場ではなく、BESSのオーナーも集まり、暮らしの体験ができるとのこと。お近くのLOGWAYに、足を運んでみてはいかがだろうか。
「今すぐ使いたい!」「話を聞きたい!」という方は、BESSへ直接問い合わせを!
Editor's Note
子どもの頃から、モンゴルのゲルを携えて移動する暮らしに憧れていました。ゲルやテントではなく、ログ小屋を連れて暮らすという発想はなかったので、「IMAGO iter」を知った時は軽い衝撃を覚えたものです。
これを実現させてしまうのは、どんな会社のどんな人たちなのかと思いながら取材に臨み、終始とても楽しそうに話される小山さんがうらやましく、私も「大馬鹿塾」に入ってみたいと思いながら、この記事を書きました。
FUSAKO HIRABAYASHI
ひらばやし ふさこ