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LOCAL LETTER

育児休暇を取らない選択は簡単です。“ワーク・ライフ・コミュニティ” のブレンドで幸福度向上を提唱する「起業家の、家族観。」

JUN. 20

IKOMA, NARA

前略、育児休暇を取得したトップの家族観を知りたいアナタへ

「オトコも育児をすることが当たり前」の時代に変わりつつある、現在。

旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。では、優秀なリーダーたちは、どんな家族観を持ち、家族間や職場ではどんな話し合いや文化があるのか。

普段はあまり語られないが、日々、起業家(経営者)たちが向き合う「家族観」について迫る──。

記念すべき第1回目となる今回は、2021年3月25日に第4子誕生に伴い、育休取得を発表した奈良県生駒市の小紫雅史市長を取材。

民間企業のトップが育休を取得することすらもまだまだ大きな話題として取り扱われる中、自治体経営のトップが率先して、仕事とプライベートを両立させ、幸福度を高めていこうとする小紫市長は、どんな家族観を持っているのだろうか。

写真右> 小紫 雅史(Masashi Komurasaki)氏 奈良県生駒市 市長 / 環境庁(現 環境省)へ入省。ハイブリッド自動車のグリーン税制等に従事し、外交官として米国ワシントンDCの日本国大使館に勤務。2011年8月 全国公募により奈良県生駒市副市長に就任、2015年4月 生駒市長に就任。「まちづくりはひとづくり」を掲げ、公務員試験の廃止やプロ人材の公募、副業推進等に取組んでおり、全国から注目を集めている。写真は、全国で初めてピジョン㈱と生駒市が、子育てしやすいまちの実現に向けた連携協定を締結した時の記者会見の様子。生駒市と三宅町が自治体として全国で初めての選定された理由には、子育て施策に熱心に取り組んでいることに加え、両者の首長が育休を取得していることが挙げられている。(詳細はこちら)
写真右> 小紫 雅史(Masashi Komurasaki)氏 奈良県生駒市 市長 / 環境庁(現 環境省)へ入省。ハイブリッド自動車のグリーン税制等に従事し、外交官として米国ワシントンDCの日本国大使館に勤務。2011年8月 全国公募により奈良県生駒市副市長に就任、2015年4月 生駒市長に就任。「まちづくりはひとづくり」を掲げ、公務員試験の廃止やプロ人材の公募、副業推進等に取組んでおり、全国から注目を集めている。写真は、全国で初めてピジョン㈱と生駒市が、子育てしやすいまちの実現に向けた連携協定を締結した時の記者会見の様子。生駒市と三宅町が自治体として全国で初めての選定された理由には、子育て施策に熱心に取り組んでいることに加え、両者の首長が育休を取得していることが挙げられている。(詳細はこちら

まちのビジョン「自分らしく輝けるステージ・生駒」を、市長が自ら体現していく

「行政官にならなければ、保育士や学校の先生に本気でなりたいと思っていた」というほど、子どもが大好きな小紫市長。育休は1人目が生まれた時から考えていたものの、あえて取得しなくてもフレキシブルに働けていたり、副市長に就任した直後だったりと、様々な理由から今回が初の取得になったという。

「生駒市では “自治体3.0” を掲げていて、市民を行政サービスの “お客さま” と捉えるのではなく、市民と職員がともに汗をかいて課題解決を目指す自治体の在り方を目指していて。まだ道半ばですが、市民の満足度やまちに住み続けたいという定住希望率が86%もある素敵なまちになりつつあるので、住みたい、暮らしたいまちを市民の皆さんとともにつくっていきたいと思っています」(小紫市長)

2020年5月に著された書籍『生駒市発! 「自治体3.0」のまちづくり』(学陽書房)によると、「自治体1.0」は、何の工夫もなく「お役所仕事」を続けているだけの自治体のこと。さらに「自治体2.0」は、改革派の首長のトップダウンで市民を「お客さま」とみて、のニーズに応えていこうとする自治体。

そこから先に進んだ「自治体3.0」とは、(ソフトも含めた)まちづくりを行政だけで担おうとせず、民間事業者や市民など多くのプレイヤーと共に進めていく形を指し示しているという。

「自治体3.0で大切にしていることの一つが、市民の皆さんに自分の住みたいまちや暮らし方をどんどん提案・実現していってくださいという、市民の皆さんの主体性です。生駒市が掲げているビジョン “自分らしく輝けるステージ・生駒” は、自分が暮らしたいまちや、やってみたいイベントなどは自分自身でつくってくださいね、行政も全力で応援しますから、という意味。市民の皆さんに主体性を求めている以上、行政職員も一人の住民・市民として、仕事も家庭も地域活動も含めて、主体的に行動し、日々の暮らしを豊かにハッピーにしていかなくては意味がないと思います。自分たちがボロボロなのに、市民に「輝くまちをつくりましょう!」と言っても説得力がありませんからね」(小紫市長)

「何より、私自身が 一人の職員・市民として “自分らしく輝けるステージ” を体現することで、生駒市のまちづくりにもつながりますし、市民の皆さんだけでなく、職員の幸せな生活にもつながると信じて、育休取得の決断をしました」(小紫市長)

とはいえ、現在は新型コロナウイルス関係で、全ての自治体がワクチン対応等に追われている大変な時期。そこにはとても大きな葛藤があったという。

「年明けのタイミングで、一番最初に副市長と秘書課の職員に相談をしました。コロナ禍で大変な時期なので、本当に悩みながら相談したんですが、“むしろ(育休を)取ってください” と言ってもらえたことが、本当に有り難かったです。こういうご時世ですが、今のタイミングだからこそと、批判も覚悟の上で発表しましたが、応援の声をいただくことが多くて、生駒市民の皆さんはもちろん、行政職員にも本当に感謝をしています」(小紫市長)

育休を取らない選択は簡単。コロナ禍の大変な時期にあえて市長が育休を取得する意味

「コロナ禍で大変な時期だからこそ」育休取得に葛藤し、「コロナ禍で大変な時期だからこそ」育休取得に踏み切れたという小紫市長。そこにはどんな想いがあったのだろうか。

「生駒市ではコロナ禍以前から、プロフェッショナル人材の採用やテレワークなど、経営戦略として、“多様で柔軟な働き方を通じて、生駒のまちづくりを前に進めることのできる人材が、働きやすい環境づくり” を徹底的に推進してきました。それなのに、私が “育休取りません” というのは、今までやってきたことに反するのではないかとも思っていて。“コロナ禍で忙しいので育休取らない” というのは簡単なんですが、コロナ禍だけどあえて育休を取らせていただく意味をきっちり説明して発信できれば、職員にも市民にもまちづくりにも意味のあることにできなるだろうと思っていました」(小紫市長)

「子どものほっぺを触りながら感じている幸せはもちろんですが、私が育休を取ってよかったことは、自分の人生やキャリアデザインにとっても大きな強みになるということです子育ての現場や喜び、苦労を知ることは、人生にも仕事にも大きなプラスだし、育児を通じて自然な形で地域とつながっていくことの意味も大きい」(小紫市長)

空想論ではなく、制度を必要としている人にしっかり寄り添う政策を実現しようと、自分自身の中で具体化できるまで、物事を知ったり体感したりする小紫市長。さらに、小紫市長が活動をする上で意識している一つに「発信」があるのだそう。

「活動をするときは、しっかりと自分の活動内容を発信していくことも重要です。例えば、私が育休について発信し、これが一つの事例として多くの人に知ってもらえば、生駒市の職員はもちろん、他の市町村の首長さんだって、育休やフレックスタイムなど、何かしら福利制度の利用を考えるきっかけになる可能性があります。これは、子育てに関することだけでなく、多様な働き方が浸透すれば、例えば “妊婦さんや車椅子の職員が土砂降りの雨の中無理に出勤する必要はないよね” という意見が職員から出てくるとか、組織全体が温かみのある柔軟な思考を持つ可能性が生まれてくる。そんな流れができたら良いなと思ったのが、今回育休に踏み切った一つの理由でもあります」(小紫市長)

奥様との育児で取得した、関わり合いのポイントは「自己主張しない人の主張こそ、丁寧にすくい、主体的な行動を促す」こと

小紫市長のような特別職公務員の育休は、一般的に想像するまとまった期間の完全な休暇ではなく、フレキシブルな働き方(原則、定時退庁 / 夜間、土曜・日曜日の仕事の抑制 / 公務に極力支障のない形での平日の休暇の取得)を指している。それでも、コロナ禍で多忙な中、仕事と家庭のバランスを取るのは簡単なことではないはず。家庭内での奥様との連携はどのようにしているのだろうか。

「コロナ禍のいま、まるまる3ヶ月休みますというのは、選挙で選んでいただいている以上できませんが、忙しい中、仕事と家庭を何とか調整しながらやっています。とはいえ、1日子どもを見ている妻と、平日は半日程度の育児しかしていない私では負担感は全く違うと思います。終日一人で育児をすることで初めてわかることもたくさんあるので、育休をとっているとはいえ、圧倒的に妻におんぶに抱っこ状態だと感じていますし、常に葛藤しながらやっている部分ではありますね。それでも、例えば特に忙しい時間帯である17:00-19:00には家に入れるように早退したり、朝も遅めに出勤させてもらったりしているので、完全な育休ではありませんが、妻も理解してくれています」(小紫市長)

「あとは、妻はあまり自己主張をしない人なのですが、だからこそ、何か主張があった時には丁寧にすくうということを、長年の付き合いの中で徐々に体得してきました。妻と喧嘩するときは、だいたい妻の数少ない主張を僕が聞き流してしまったときなんですよね(笑)。実はこれって仕事でも似たようなことが言えると思っていて。私たち首長の任期は4年と決まっているので、この4年間の間でやりたいことをやっていこうとすると、どうしても行政職員とはスピード感に違いが生まれてしまうんです。だからこそ、私の方から “これやろう!あれやろう!” と言ってしまうことも多いのですが、職員が “これやりたい!” を言えるような風土づくりや、職員から意見が出た時はできるだけ丁寧に拾って、職員の「やりたい」を尊重し、主体性を持って取り組んでもらうことを大事にしていきたいと思います」(小紫市長)

「子どもが生まれると丸くなるとか言われますが、私は全然変わらなくて。でも、4人目が生まれてようやく少し丸くなったところもあるのかな。職員からは「ぜんぜん変わってない」と言われそうですが(笑)」そう笑いながら、話す小紫市長。

生駒市の未来のために、時には周りが驚くようなことも、最前線に立ちながら実行してきた小紫市長のスタイルが、育休によって新しいスタイルへと徐々に変化してきている片鱗が垣間見れた瞬間だった。

4人の子どもの父親として、自分の強みやスキルを磨き「自己プロデュース」をし続ける

「数年前から、書籍や講演でよく ワーク・ライフ・コミュニティのブレンドがまちづくりの一番大きな土台になる という話をさせてもらっていて。私は、仕事と家庭以外に、地域に自分の居場所(コミュニティ)を持つこと、そしてこの3つが良い形でシナジーを生むように、自分の時間(セルフ)を確保することがとても重要だと思っています」(小紫市長)

ワークライフバランスから一歩踏み込み、市長自らが体現者となって、仕事・家庭・地域社会(コミュニティ)の3つを融合することで、多様性あるまちづくりに果敢に挑戦している生駒市。

「仕事ができるということ自体は、生き抜く上で大切な力になりますが、仕事以外の部分でいろんな人とつながりを持ったり、自分自身のの時間を使ってリラックスしたり、本やセミナーから学びを得ることだって、自分のPRポイントになると思います。」(小紫市長)

「今後、行政も民間も関係なく終身雇用がなくなっていく中で、自分の強みは何か? 自分をどう発信していくのか?を考えて、自分自身をプロデュースしていくことが大切です。私自身、選挙に落ちてしまえば無職なので、4人の子どもの父親として、今の仕事ではない場所で自分は何をしたら食べていけるのか?、自分が活躍できる場所は他にもあるのか?、スキルや経験も含めてどんなキャリアデザインを描けるのか?を常に考えています(小紫市長)

いち早く様々な改革に乗り出し、前例のない取組みをしかけ続ける生駒市。これだけ多くの注目を集めるほどの功績を残しながらも、今もなお常に自分の強みや経験を伸ばしていくために、学びを吸収し、人脈を広げ、自分自身のことを発信し続けている小紫市長。この小紫市長の姿勢こそが、生駒市が急進する理由の一つなのかもしれない。

起業家の、家族観。

奈良県生駒市の自治体経営トップを担う、小紫市長の家族観には、生駒市民を家族同然に大切に思い、未来を切り開いていこうとする市長としての強い意志と、4人の子どもに目一杯の愛情をかけ、たとえ自分が市長という肩書きを下ろしたとしても、全力で家族を支えていこうとする父親としての覚悟があった──。

Information

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「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

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Editor's Note

編集後記

今回、LOCAL LETTER としても初の試みとなった「限定公開インタビュー」で取材をさせていただいた小紫市長の家族観。仕事と育児、さらにはコロナ対応に追われる中、それでも快く取材をお引き受けしてくださった小紫市長には感謝しかありません。

これまでであれば「公務員特集」として取材・執筆させていただくところ、こちらも初の試みとして、父親としての一面から取材をさせてもらった今回の記事。市長・父親・夫として、奮闘する小紫さんの新しい一面がお届けできていたら嬉しいなと思います。

これからも小紫市長に注目です!

これからも小紫市長に注目です!

これからも小紫市長に注目です!

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