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LOCAL LETTER

圧倒的「劣等感」。九州国王、九州パンケーキ代表・村岡浩司の原動力

APR. 19

拝啓、地域と本気で向き合うあまり「息切れ」を起こしているアナタへ

「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 – 』。

第7回目のゲストは数々の飲食店を経営する一方で、市町村でも都道府県でもなく “九州” という単位に可能性を見つけ出し、「九州パンケーキ」をはじめとする「KYUSHU ISLANDⓇ(九州アイランド)」プロダクトシリーズを全国に展開する村岡浩司さんです。

村岡さんは「ONE KYUSHU」という概念で、地域活性へとつなげていく「ONE KYUSHUサミット」も開催し、周りからは “九州国王” の愛称で慕われています。

そんな “九州国王” から語られたのは自身に対する「劣等感」という言葉。

地域と本気で向き合い続けるアナタに注ぐ、一匙の刺激をお届けします。

都道府県の垣根を越えて「九州をひとつに」。活動のきっかけはプレイヤーに共通した「周囲からの期待」と「苦しさ」

平林:村岡さんは「九州をひとつに」を合言葉に活動されていて、その代表作に九州素材だけにこだわった『九州パンケーキ』がありますよね。味が最高なことはもちろん、「食べることで自分も九州も元気になる」といった、おいしさを増幅させてくれるストーリーがあるのがすごく素敵だなと思っています。

ですが、九州パンケーキが誕生した約10年前(2022年12月6日に九州パンケーキが誕生)には「九州を一つにくくる」とか「県の垣根を越えて何かをつくろう」みたいな動きはなかったように感じていて。何かきっかけがあったんですか?

平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、内閣府地域活性化伝道師、ふじよしだ定住促進センター理事 / ヤフー株式会社/カナダ留学/株式会社CRAZYを経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディアLOCAL LETTERは約2万人の会員規模まで成長。人口900人の村で古民家をリノベした体験型民泊施設まつや邸は開始9ヶ月で宿泊客180名を突破。地域経済活性化カンファレンスSHARE by WHEREを立ち上げ業界・地域を超えた産学官民の起業家70名以上が登壇。
平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、内閣府地域活性化伝道師、ふじよしだ定住促進センター理事 / ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社CRAZYを経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディアLOCAL LETTERは約2万人の会員規模まで成長。人口900人の村で古民家をリノベした体験型民泊施設まつや邸は開始9ヶ月で宿泊客180名を突破。地域経済活性化カンファレンスSHARE by WHEREを立ち上げ業界・地域を超えた産学官民の起業家70名以上が登壇。

村岡:30代のときにアーケードでの出店をきっかけに商店街の活動を一生懸命やっていて、最年少で商店街理事にもなったんです。でも、まちづくりに本気で取り組む若者が目立つと、重鎮の年配者には段々煙たがられたりして。そういった経験の中で、本質のまちづくりってなんだろうと真剣に考えるようになりました。

村岡 浩司(Koji Muraoka)さん 株式会社一平ホールディングス 代表取締役 / 1970年、宮崎県生まれ。人口12,000人のまち、宮崎市高岡町で廃校となった小学校をリノベーションし、カフェやシェアオフィス・コワーキングを併設するMUKASA-HUB(ムカサハブ)を運営。九州産の農業素材のみで作られた「九州パンケーキミックス」をはじめとする、「九州アイランド」プロダクトシリーズを国内外に展開。
村岡 浩司(Koji Muraoka)さん 株式会社一平ホールディングス 代表取締役 / 1970年、宮崎県生まれ。人口12,000人のまち、宮崎市高岡町で廃校となった小学校をリノベーションし、カフェやシェアオフィス・コワーキングを併設するMUKASA-HUB(ムカサハブ)を運営。九州産の農業素材のみで作られた「九州パンケーキミックス」をはじめとする、「九州アイランド」プロダクトシリーズを国内外に展開。

村岡:九州各地を旅している中で、改めて「おもしろい人たちがたくさんいるな」と思うと同時に、みんな同じような “悩み” を持っていることも知ったんです。

みんなそれぞれ「うちの町がすばらしい」と頑張っているけれど、頑張ってるからこそ周囲からの期待が大きくなって、苦しさも抱えている。そうした悩みを話し合ったり、共有したりする仲間は多い方がいいじゃないですか。それなら「まち」という概念に捉われるのではなく、大きく垣根を越えて活動家同士繋がった方がいいんじゃないかなと思ったんですよ。

平林:「村岡さん=九州」のイメージが強い一方で、村岡さんはどこに暮らす誰であっても真摯に向き合われているじゃないですか。以前、僕自身も村岡さんに真剣に話を聞いていただいたことがあります。その上で「一体何が村岡さんの言動をつくっているのかな」と思うんです。

村岡:実を言うと、僕自身は地域に対して興味があるというよりも、地域にいる「人」が気になってるんですよね。「なんでこの人はわざわざ移住したんだろう?」「なんでこんなに真剣にやっているんだろう?」とか。

地域に足を運びまくっているぽぽ君(平林の愛称)はどんな人だろうって、気になるじゃないですか。だからあの時話を聞いたのは、純粋にぽぽくんへの興味だよ(笑)。

時間の区切りがないからこそ、肩書きにとらわれない個人の「想い」や「本音」に向き合う

平林:僕も村岡さんに興味ありまくりだったので嬉しいです(笑)。地域で取材をしていると「地域の魅力は突き詰めると、そこにいる “人” だよね」という話を耳にするんですが、村岡さんはどんな風に人と関わっているのか気になります

村岡僕は正直あまり集団が得意じゃないんです(笑)

平林:“九州国王” と呼ばれているのにですか(笑)。

村岡:そうなんですよ(笑)。『ONE KYUSHUサミット』や『KYUSHU ISLAND』もやってますけど、これらは発起人である僕を通さないと何かできないってことではないし、コミュニティの中にいる方々同士でみんなが繋がればいいなと思ってやってることなので、僕自身がつくっているのは自然な集団なんです。無理に集まることや繋がることはしない。僕自身が特定の固定化された集団は苦手なんですよね。

平林:「集団」よりも「個人」に興味があるということなのでしょうか?

村岡:そうですね。幼少期を振り返ると、いつも人の目を気にして怯えているような少年だったので、(どこまで幼少期が影響しているかわからないけれど)集団的な活動より個人的な思想に興味があるんです。

平林:だから村岡さんは常に一対一の関係性をつくられているんですね。一人一人に向き合ってるイメージがありますし、みなさんが村岡さんを慕う理由がわかった気がします。

村岡:個人への興味だからこそ、その人の背景にある活動の規模感や、ましてや会社組織の売上には全く興味がなくて。むしろ理解していないことも多いかもしれません(笑)。知り合いのベンチャー起業家が「何億円資金調達しました」というSNS投稿をみたら「おめでとうございます」とコメントは入れますが、「そんなにいっぱい背負って大丈夫かな」と心配の気持ちが大きいことも多々ありますね(笑)。

平林:心配が勝るのは、村岡さんご自身の経営者としての経験がゆえでしょうか?

村岡:僕の経験でもあるけど、いろんな人から聞いたりするからかな。事業を進めていると、もちろん最高な状態の時もあるけど、7、8割は大変なことばかりじゃないですか。だから誰かが大変な時であれば「そうだよね」と話を聞きながら、一緒に想いを共有する時間を大切にしていますね。

平林:お話を聞いていると、事業に対する時間軸など、村岡さんご自身の中で「事業に対する物差し」があるように感じます。

村岡:ぽぽ君のように地域活動している人たちには、一つ残酷なことがあって、それは「時間の区切りがないこと」だと思うんです。何かを成しても「次はどうするの?」「その次は?」って永遠と求められ続けてしまう。ずっと成功し続けるって無理だし、それを求められるのは辛いですよね。地域の活動家だけではなくて、起業家はもちろん、首長をはじめとする政治家も同じです。彼らはどんな辛い時でもハツラツとしていないといけないですからね(笑)。

平林:当たり前のように「ハツラツさ」が求められますもんね。

村岡:でも、みんなと二人っきりで話をしてみると、やっぱり本音の部分が見えてくるんです。みんな戦っている領域は違うけれど、人としての「心のあり方」や「信念」は似ていて、僕は個人に興味があるからこそ、彼ら自身の声を聞くようにしています

平林:本音を聞く姿勢も含めて、村岡さんご自身の挑戦を通じて培ってきたものがあるんですね。

村岡:そうかもしれません。あとは相手の話を聞いている中で、「そこで詰まってるなら、この人と会うと何かあるかもな」とか、「この事業家と一緒にタッグを組むと、うまくいくかもな」と、繋ぐこともあります。繋ぐ以上の介入はあえてしませんが、次に会った時に話を聞くと、繋いだご縁で事業が進んでいることもあって。それは嬉しいですよね。

昨日よりも今日。周囲に優しく、成長し続けられる理由は圧倒的な「劣等感」

平林:30代や40代の時の村岡さんは、どんな感じだったんですか?

村岡:ギラついてましたね。

平林:どんなギラつき方だったんですか?

村岡:どうだろう。自分のことって難しいけど、でも敵もつくっていたと思いますね。失敗もたくさんしています。

平林:そんなご自分を変えた経験には、どんなものがありますか?

村岡:コロナは大きいですね。「生き方」そのものを再定義するように迫られた気がします。もちろん、社会もこれまでの延長線上ではない、新しい方向性に変革を求められて、今がまさにちょうど境目だと感じています。

平林:先日お話しした際に「New村岡だから」とお話しされていましたが、ここで自分自身の生き方を見つめ直す、または変わるという「New」は村岡さんの経験値がさせたものなのでしょうか?

村岡:それは「劣等感」からです

平林:村岡さんでも、劣等感を感じられるんですか。

村岡圧倒的「劣等感」ですね。自己肯定感の無さ。悲壮感とかそういう類のもの。コロナ禍はより一層そうした感情に支配されていました。だからこそ、僕は「昨日よりもちょっとだけでもいい感じの精神状態になりたい」と思っているんですよ。昨日よりもちょっと優しくなりたい。

平林:村岡さんは周囲からすると憧れの存在で、「一緒に仕事したいです」という人たちもたくさんいらっしゃるじゃないですか。それでも悲しみや劣等感、自己肯定感がなかなか上がらない、なんてことがあるんですか?

村岡:ぽぽ君もそういうのない?

平林:僕はないかもしれないですね。目の前に壁が立ちはだかっても、基本的には「どうやったらできるか?」ばかり考えてます…。

村岡僕は多分、スーパーポジティブに見せているんですよね。こないだ僕の友人から言われたのが「社交的なふりをしたオタク」。ぴったりすぎて大笑いしました。僕は基本的に1人ぼっちでいるので、僕自身をよく知る一部の人たちからすると、すごく納得してくれると思います(笑)。

平林:LOCAL LETTERの読者もびっくりだと思います(笑)。

村岡:僕は何をカミングアウトしてるんでしょう(笑)。

平林:今のお話聞いていて、村岡さんの優しさの所以に触れることができた気がします。村岡さんは、人の気持ちに寄り添ってくれるというか、辛い時に連絡しようと思う方なんですよ。

村岡:そこまでいくと、僧侶みたいだね(笑)。

九州を一つに!という強い志のもと、人を巻き込み続ける村岡さん自身のよりコアな「生き方」に触れた後編記事は2023年4月26日20時配信予定!無限に繋がり続けられる時代だからこそ、自分の価値を考える村岡さんに迫ります!後編『地域・世界で飛躍する一平ホールディングス代表の、自分らしい「生き方」』もお楽しみに!

Editor's Note

編集後記

村岡さんの優しさの所以に触れることができた対談!「一緒に仕事がしたい!」と多くの方から思われている村岡さんから話された「自己肯定感のなさ」という言葉がとても意外でした。ですが、しっかりと弱みを見せることができる人だからこそ、みんながついていきたくなるんだなと、更に村岡さんの良さを発見できたような対談でした。

村岡さんの「生き方」をぜひシェアしてください!

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