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LOCAL LETTER

土木作業、ゴミ収集、配達の経験を経て町長へ。異色の町長は「面白がる天才」だった

JAN. 30

拝啓、これからの人生の歩み方に向き合っているアナタへ

「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する新企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。

記念すべき第1回目のゲストは「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町で町長を務める、森田浩司さん。森田さんは2016年に32歳の若さで三宅町長選挙に初当選。「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進め大活躍中です。

そんな森田さんとの対談から見えてきたのは、彼自身の実直な姿勢。「大学時代は就職活動が疑問でやらなかった」「文句を言うなら、同じ立場になってから言おうと思った」などなど、自分の人生を選択したいと思っているアナタに注ぐ一匙の刺激をお届けします。

森田さんの生きる道とはーー。

土木作業員から町長まで。異色の経歴に見える共通項とは

平林:新企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』の記念すべき第1回目のゲストは森田さんです!LOCAL LETTERを読んでくださっている読者の方に対して、いろんな方の生き方・考え方に触れてもらおうという企画なんですが、森田さん、最近本当にいろんなところで活躍されていますね!

森田:ありがたいお話ですね。注目していただいて。

平林:森田さんと言えば、三宅町の今後のことを深掘りしたくなるんですが、今日は森田さん自身についてを辿りたいと思っています。森田さんっていろんなキャリアを経て、町長になられているんですよね?

森田町長になる前が町会議員でその前がコープの配達員でした。それより遡っていくと、臨時職員でゴミ収集の作業員、国会議員の秘書、土木作業員でした。

平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、LOCAL LETTERプロデューサー / ヤフー株式会社・カナダ留学・株式会社CRAZYを経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディアLOCAL LETTERは約2万人の会員規模まで成長。人口900人の村で古民家をリノベした体験型民泊施設まつや邸は開始9ヶ月で宿泊客180名を突破。地域経済活性化カンファレンスSHARE by WHEREを立ち上げ業界・地域を超えた産学官民の起業家70名以上が登壇。内閣府地域活性化伝道師。

平林:すごい多様ですね!

森田:大学時代ってみんな当たり前のように就職活動をしますけど、学生時代の僕はそれがすごく嫌だったというか、就職活動って何でするんだろうっていう思いがあったんですよね。だから、リクルートスーツを着て企業説明会に行ったことがないんですよ(笑)。

平林:町長になって初めてスーツ着た感じですか?

森田:近いかもしれません(笑)。だから未だにスーツは落ち着かないんですよね。当時(今から15年ぐらい前)の就職活動って大学3年ぐらいから説明会や面接に行き始めていたんですけど、僕自身何をしていいのかわからなくて、気づいたときには卒業が迫っていたという感じ。

仕方がないので「どんな企業あるんだろう」と説明会には行ったんですけど、正直全く知らない企業ばっかりだったんですよね。知らない企業に「御社のここに惹かれました」と嘘はつけないな、どうしようかなと思っていたら、知り合いの土木会社の社長さんから「お前暇してるんやったら来い」って言われたんですよ。

社会経験もないし、土木のことも全く知らないのに何故か雇っていただいて、そこからダンプや4tトラックに乗りました。当時、光ファイバーを通す管を地面の下に入れるっていう仕事をしていたんですけど、それがめっちゃおもしろかったですね。

平林:え、全く興味もなく声をかけられて始めた仕事なのに、何を面白がれたんですか?

森田:最初って何をやっていいかわからない。でも、仕事の流れがわかってくると、「次に自分はどうしたらみんながうまく動けるか」とか「次の日の作業のためにこうしておくと楽」とか、工夫が見えてくるんですよね。

あとは、マンホールって既製品があるんだとか、電信柱ってこうやって設置するんだとか、地面の下って夏は涼しくて冬はあったかいとか、そういう改めて知る発見ってすごく楽しくないですか?

森田 浩司(Koji Morita)氏 三宅町長 / 1984年奈良県磯城郡三宅町生まれ。大阪商業大学を卒業後、2015年に「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町の議会議員に当選。2016年から町長として「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進める。ビジョンを象徴する交流まちづくりセンター「MiiMo(みぃも)」が2021年7月にプレオープン。妻の第一子の出産を機に、無期限の時短勤務を取得し「子どもが安心して育つ町」を目指す。

平林:なるほど。もう少しお聞きしたいのは、例えば目的意識がある人だったら「土木で経験積んだ上で、何かやりたい」みたいに面白がる視点に立ちやすいと思うんですけど、誘われて入った職場でなぜ面白がる視点をもてたのか?ということです。

森田:なんでしょうね。当時考えていたのは、いかに無駄なことをせず、楽をして、早く帰りたい。だったかな(笑)。

平林:めちゃくちゃ共感します。僕も面倒くさがりなんで、後で楽するために、今大変であればいいっていう考え方なんすよ。

森田:同じです。いかに楽をするかを考えて仕事してたっていう感じですね。

その後、国会議員秘書になったんですが、こちらは親方みたいな方に「行ってこい」って言われて、全然知らない人たちの中で選挙の手伝いをしたのがきっかけでした。

平林:どんなお手伝いですか?

森田:届け出とかチラシづくりとか、選挙実務全般ですね。1年間で9回、地方選挙の手伝いをしていて、気付いたら「国会議員の秘書しない?」と誘われ、国会議員の秘書になりました(笑)。

平林:すごいですね。

森田:選挙ってある種お祭りで、全然知らない人たちと、共通の目的を達成するって楽しいんですよ。あとは戦略じゃないですけど、「こういう風にしたらこうなるのでは」と、仮説検証を短期間で重ねることもできるし、それこそ1日で選挙の情勢が変わるなんてこともあって、そういう普段では経験できない面白さみたいなのはありましたね。

精神的に病んだことも。森田さんを支えた「やってみよう」の精神

平林:いやー、今のお話だけでもこの企画をしてよかったなって思いますね。どうしてもメディアではその時注目されている1点をフィーチャーする機会が多くて、この挑戦の過程が読者にはわからないケースが多いんです。

だからこそ、今に至るまでの過程を伝えることも大事だと思っていて、今日の森田さんのお話は、読んでくださっている皆さんがそれぞれにぐっと胸に刺さるものがあると思います。

森田:嬉しいです。実は、国会議員の秘書の時は精神的に病んじゃった時もあって。

平林:え?!森田さんがですか?

森田:はい。実は1回ダウンしてるんです。

平林:全然想像がつかないですね。

森田:診断を受けたわけではないんですけど、身体が動かなくなってきて、毎日死にたいと思っていましたね。

平林:何がきっかけだったんですか?

森田:嘘ついてるっていう形がダメだったのかな…。当時は秘書なんで、代弁者にならないといけないというか、「Aです」って代弁しているのに、Bになることもあるとか。

あと、肩書きは国会議員秘書なのに、自分の力では何もできないことが多かったんですよね。知識も全然ないし、熱量も含めて人を助けることの難しさを痛感する日々が続きました。

仕事が続けられないと感じて、次を探し始められるようになった時に、たまたまハローワークでゴミ収集の臨時作業員の募集を見つけて面接に行ったという流れですね。

平林:秘書を経験されると、次は選挙に出るケースが多いじゃないですか。その中で森田さんは、「働かなきゃ」と作業員や、その後配達員もされています。そんな森田さんの意思決定の軸はなんですか?

森田:とりあえずどこか働ける場所というか「何かやってみよう」っていうことだけなんです。ご縁があって採用してもらったから一生懸命頑張ろうって。そしたらその職場にたまたま後輩がいたりして、すごく楽しかった。

ゴミ収集って、単純そうに見えてめっちゃ頭使うし、ゴミが出てる量でその日の作業を判断するんです。「今日はこっちから取りに行こうか」とか色々試していましたね。

平林:やっぱり森田さんは、面白がる天才ですよ。

森田:仕事してたら楽しいじゃないですか。「なんかしんどいな」と思う時間を過ごすなら、「楽しい」を見つけた方がいいと思ってて。

平林:見つける力がすごい。大体は「なんで今コピーとってんだろうな」みたいになりがちというか。

森田:それでいうと、コピーも段取りよくとったら仕事短くなるなとか思うんです。やっぱり僕の中のどこかしらに「早く終わりたい」「楽したい」があるんでしょうね。楽しんでるっていうより、楽できる。だから「この作業っていらないのでは?」とか「これってする意味ある?」とか、そういうのは常に考えてますね。

平林「考える」ところがポイントですね。

駅に立ち続けて9年目。「負のイメージを覆したい」からはじまった森田さんの習慣

森田:ゴミ収集の作業員の後はコープの配達員をして、町会議員、町長という経歴ですね。

平林:ほんとに異色の経歴ですけど、素朴になんでそこから選挙に出ようと思われたんですか?

森田:当時、友人と飲んでた席で「この政治はよくない。自分の町がやばい」と話す機会が多かったんです。議員さんは高齢の方が多くて、若い世代とのギャップを感じることがあったんだと思います。でもよく考えたら、政治家は選挙で決まった住民の代表で。だから、飲み屋で文句言ってても何も変わらないんですよね。それなら同じ立場になって文句を言ってみようと思ったのがきっかけです。

平林:それで見事当確されたんですね。選挙では秘書時代の経験を活かして、戦略的にされたんですか?

森田:経験もそうですけど、一番大事にしたのは、みんなが政治家に対して感じてる負のイメージを全部覆してみることでした。例えば「選挙のときしか姿出さないんでしょ?」とか「政治家はみんなうさんくさい」とか。反対に言えば、ちゃんとしたら信用もされるのではと思って、僕自身2023年2月で政治家歴9年目に入るんですけど、政治家になった時から9年間、毎日駅に立ってます。

平林:まじですか。

森田:「駅に立つのは選挙前だけでしょ」っていうイメージが嫌だなって思うんですよ。

平林:でも毎日って…。

森田:反骨精神からはじめてますが、今では僕が力をもらう場になっていて。習慣になってるので、東京出張とかで何日か行けなくなると気持ち悪くなりますし、町の人からも「コロナにかかったんか!?」って言われたり(笑)。あとは子どもたちの成長も見ることができるのもいいですね。この間まで小学生だった子が、あっという間に高校生や社会人になってるんですよ。町民皆さんからエネルギーをもらっています。

平林:以前までは、世の中的にも綺麗な部分(オシャレさやかっこよさ)を伝えることが多かったと思うんすけど、最近は綺麗な部分だけでは人に響かないなと感じていて。どっちかというと、リアルな本音を取り扱った方が、応援してくれる人が多い気がしますね。

森田:やっぱり「共感」が大事になってきていますよね。キラキラした人って、やっぱり眩しいじゃないですか。僕自身でいうと、「死にたい」って思っていた経験は大きいんだと思うんです。人間全て紙一重だからこそ、今日は絶好調でも、明日にはわからないというか。そういう自分もいると気づけたことが大きくて。

だからキラキラした人を眩しすぎると思う僕もいますし、メディアで取り上げられると自分もそっち側に見えることがすごい嫌で。「本音を言いにくくなってくるよね」ということもすごく感じている中で、今回は「本音をしっかりとお話できる」企画で心理的安全が担保されているのは、すごくありがたいです。

平林:僕もお話を聞けて本当に嬉しいです。

森田:多分メディアで「死にたいって思ってた」経験を話したのは、初じゃないかな(笑)。

平林:なんかいろいろ考えちゃいますよね、「こういう発言したらどうなんだろう」とか。人間だから不安がよぎるのも当たり前なんですが、でも周りが本当に知りたくて、応援する理由になるのも、その人の本質的な部分だったりするというか。

森田:そうですよね。「やってみて失敗してもいいじゃん」と思っているので、「やってみる」が結構好きなんですよ。

平林:その精神が育まれたのはどこなんですか?

森田:どこなんだろう。僕自身はコンプレックスの塊だったからなあ。

平林:そうなんですか?

森田:そうなんです。好きなものも、やりたいこともなかった。なんかキラキラしてる人って、やりたいことしっかり持ってる人が多いじゃないですか。

やってみよう精神に繋がってるのは、秘書の時代に先輩から言われた「君は若いのに、 聞きかじり(上辺だけの理解で本質的な理解がないこと)になりすぎ」って言われたことなんですよね。いろんなことを知っているし、相手にも伝えているけど、情報だけで知った気になるのは違う、情報そのものが正しいかどうかはわからないよと。

平林:めちゃくちゃいい言葉ですね。

森田:「自分で見に行かずに、聞いてることを右から左へ流す知ったかぶりじゃ薄っぺらく見られるよ」って言われて、確かにそうだなって。その時からできるだけ自分で現場を見て、自分で体験して、自分の言葉にするっていうことをしようと思いました。でもぶっちゃけ、言われたときってすごい腹が立ったんですよね。出来ている気でいたから、「出来てないよ」って言われたみたいで(笑)。

でもあとから段々わかってきたというか。そこから「やってみよう精神」が出てきたのかは定かではないですが、好きなことがないなら、とりあえずやってみて、合う合わないを判断しようっていう思いもあったのかもしれません。

Information

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「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

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Editor's Note

編集後記

記念すべき第一回目のゲストはTwitterでいつも素敵な発信をされている森田町長!
元から素敵な方だと思っていましたが、今日のお話を聞いて「生きる力をもらった」と感じる方も多いはず。
私自身記事にまとめながらすごく感銘を受け、「この記事を早く世に出したい!!」と頑張って仕上げました(笑)
素敵な人には理由がある。そんなことを思った森田さんの対談。後編もとても素敵な内容が盛りだくさんなので、是非そちらもご覧ください!

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