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LOCAL LETTER

僕はある意味、欠陥だらけの人間。現役町長が赤裸々に答えた「生き方」とは

JAN. 31

拝啓、多くの人から信頼を集め続ける人の生き方を知りたいアナタヘ

「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する新企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。

記念すべき第1回目のゲストは「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町で町長を務める、森田浩司さん。森田さんは2016年に32歳の若さで三宅町長選挙に初当選。「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進め大活躍中です。

そんな森田さんとの対談から見えてきたのは、彼自身の実直な姿勢。「こんな人でも町長になれるんだと知ってほしい」「70歳でスタートアップしたい」などなど、自分の人生を選択したいと思っているアナタに注ぐ一匙の刺激をお届けする後編。

森田さんの生きる道とはーー。

「僕もキャリアを悩んでる」。どれを選んでも悩みはあるからこそワクワクする方を

平林:森田さんは日本トップクラスで動き回ってる町長ですよね。

森田:そんなことないです。でも自分の町だけでは見えないことがあるんですよね。外へ積極的に出るようになってからは「うちの町も、こうしたら面白くなるんじゃないか」とか「うちの町の武器ってこれがあるな」と、強みが見えるようになりました。一方で、中を疎かにできないところもあって、外に出れるようになってきたのはつい最近。ようやくチームで動けるようになってきたことを実感しています。

平林:森田さんが「動き回るようになって、町の武器がわかるようになった」のは、いろんな場所で町のことを話すからこそ、洗練されていくものがあるんだろうなと思ったんですよね。

平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、LOCAL LETTERプロデューサー / ヤフー株式会社・カナダ留学・株式会社CRAZYを経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディアLOCAL LETTERは約2万人の会員規模まで成長。人口900人の村で古民家をリノベした体験型民泊施設まつや邸は開始9ヶ月で宿泊客180名を突破。地域経済活性化カンファレンスSHARE by WHEREを立ち上げ業界・地域を超えた産学官民の起業家70名以上が登壇。内閣府地域活性化伝道師。

森田:そうだと思います。世の中の価値観がガラッと変わっていく中で、いろんな人たちと出会って話すことによって、「自分たちの町の変化は間違ってないんだ」と思いますし、5年10年後には周りにも良い変化だということが伝わっていくなと感じています。

平林:僕自身は、これから行政は民営化し、民間は行政化していくと思ってるんですよ。

森田:多分もう全てを行政だけでやるのはしんどくなってきてますね。民間というか、やりたいプレイヤーがやりたいことをやりだして、繋がれるようになってきた変化がすごく大きいかなと思ってて。今までは行政が担っていた部分も「あれ?実はみんなでできるんじゃない?」と気づき始めたのかなと。

だからこの企画のテーマ「生き方」じゃないですけど、これからの人生のあり方に悩んでる人って多いと思うんです。僕自身も今後のキャリアを悩んでいますしね。

森田 浩司(Koji Morita)氏 三宅町長 / 1984年奈良県磯城郡三宅町生まれ。大阪商業大学を卒業後、2015年に「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町の議会議員に当選。2016年から町長として「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進める。ビジョンを象徴する交流まちづくりセンター「MiiMo(みぃも)」が2021年7月にプレオープン。妻の第一子の出産を機に、無期限の時短勤務を取得し「子どもが安心して育つ町」を目指す。

森田町長だからできることがあるんじゃないかとか、町長でなくなったら何ができるんだろうという不安もあります。でも結局、どのポジションになっても何をやってても不安な時は不安だし、悩みもあるし、やってることが正解かどうかなんてその時はわからないけど、でもなんか楽しいやワクワクする気持ちがあるなら続けてみよう、でいいのかなとは思いますね。

主語を自分化して考える。自分が住民だったらどんな町に住みたいかを体現

平林:いろんな人と出会えば出会うほど多様な視点と出会うからこそ、お互いを理解し合うためにも、コミュニケーションが大事になると思うんですが、意識されてることはありますか?

森田:とりあえず徹底的に話す。「もう聞きたくない」って言われるぐらい(笑)

平林:(笑)

森田:結局、平行線になれば、どっかで終わりが来るじゃないすか。そこまでいきます。

平林: 「お互いに言いたいことをちゃんと言い合う」ってことですね。

森田:そうです。でも僕、基本は腹が立つことがあっても次の日には忘れてるんで、人を嫌いにならないんですよ(笑)。「何か言われたからこの人嫌い」っていうのは一切なくて、「言ってくれた」っていう気持ちが大きいかな。

平林:やっぱり話しを突き詰めるからこそ、お互いにいい落としどころで前に進めるなと思いますね。

森田:今キーワードとして出していただいた「前に進む話」「落としどころ」はすごく大事で。例えば、一歩踏み出して違う景色が見えたとしても、そのあと落ち込むことがあるかもしれないわけです。でも現状維持では何も変わらない。それなら一歩踏み出してみて、その結果が同じ結末でも、変化があっても、悪化していたとしても良くて。その変化そのものが楽しいです。やってしまったっていうのも含めてね(笑)。

平林:悩むことと不安を抱えているのはやっぱ全く別の状態だなって思いますね。「悩むことはなるべく無くして、不安を抱えて進むのか、解消できることを先に解消して進むのか」という話をメンバーにもよくします。

森田:「やってみる」っていうのは、最終的に「物事を前に進める」ことに繋がる気がしていますね。

平林:今の三宅町が周りから注目されてる理由は、独自路線を貫いてきたからだと思っていて、独自を貫くには、他を参考にしながらも「自分たちの町にとって何が必要か」を考え抜いた先にしかないと思っています。

森田:そうです。主語を自分化することをすごく大事にしてますね。自分ならどう思うか」とか「自分はこのサービス使ってどう感じるのか」とか。僕は町長だけど、自分が一人の住民としてこんな町だったらいいのにな」という気持ちが僕のモチベーションの中で一番強い部分なんですよ。「自分が住んでる町がこうだったら楽しいよね」を形にしているのがすごく大きいです。

平林:それこそ前編で話されていた「嘘偽りがない」っていうことですよね。

森田:そうです。だからすっごく楽しい。

子どものなりたい職業ランキングに町長を!「こんな人間でもなれるを知ってもらいたい」

平林:森田さんのルーティンはあるんですか?森田さんのように公の立場だと、いろんなお声が聞こえてくると思うんですが、そういう時自分をフラットに戻す方法というか。

森田:生活のルーティンで言うと、駅に立つっていうのは僕の中ではフラットになる場なんですよね。「町長室には行きにくいけど、駅に行けば話は聞いてもらえる安心感がある」と聞いて、駅は僕のホームじゃないかなと。あとプライベートでいうと、毎朝の味噌汁を作ることですね。

平林:毎日!

森田:Twitterに味噌汁の投稿してたら、「味噌汁の投稿がないときは寂しい」と言われて、自然と続けるようになりました。味噌汁ツイートもルーティン(笑)。#俺の味噌汁 っていうハッシュタグをつけてやってます。

味噌汁を作るきっかけは、僕の義父なんですけど、結婚前に、お義父さんにご挨拶行ったら朝土鍋でご飯炊いて味噌汁を作ってくれたんですよ。そこから味噌汁を作ることに憧れを持ちました。

平林:いい話ですね。

森田:「お袋の味」はよく聞くけど、「親父の味」はないなと思って、子どもが大きくなったときに、「うちの味は親父の味噌汁だよね」って言ってもらいたいなと思っています。Twitterフォロワーの皆さんも#俺の味噌汁 シリーズを楽しみにしてくれてるって聞いて、 勝手な自己満足ではじめましたが、今はやめるにやめれなくなってます(笑)。毎日「味噌汁の具どうしようか」とドキドキしてます。

平林:人間味を感じる部分ってめちゃくちゃ気になりますよね。

森田:SNSの投稿で大事にしてるのは、森田浩司を感じてもらうこと。「俺はこういう人間だよ、こういう人でも町長になれるんだよ」って。ぼくの大きな夢は子どものなりたい職業ランキングに町長を入れること。そしていつかその子たちが本当に町長になってほしい。

「学歴がスゴイ人じゃないとなれない」とか「真面目で高潔じゃないと」みたいなイメージがあるかもしれませんけど、こんなんですよ。んな人間でも、人のため、町のために、動きたい意思があればなれる仕事だよと伝えたいんです。

平林:それこそ新しい町長像ですよね。

森田:なるほど、自覚がないですねそれは。

平林:僕自身、地元で見てきた町長選とか町長のあり方って、「いかに隙を見せないか」に尽力している印象でした。「一文字でも間違えないように」みたいなイメージがあって。

森田:それに関しては「失敗しました」と言うようにしています。失敗から何を学んだかが大事なので、「失敗しました。この失敗からここを学んだので、次はここを改善しようと思います」までを一連のセットでお伝えするようにしています。

平林:それを言えるってめちゃくちゃいいっすよね。

森田:失敗ばかりしてきてますね。

平林:でも、今までの成功法が通じない社会になってきている中、やっぱり失敗せずには通れないというか。失敗しようと思って失敗するわけじゃないですけど、より大きな価値ある挑戦ができるなと思ったときに、まず小さく失敗も学びにする前提で挑戦する。ドキドキしますが、1歩目が大事ですよね。

森田:大事です。それが後々に大きな一歩になるんですよね。

「70歳でスタートアップがしたい」。森田町長の “遊び心” と “遊び方”

平林:あと時間が少しなんすけど、今日のお話を聞いて、森田さんはやっぱり生き急いでないなと思いました(笑)。

森田:いつ死んでもいいように行動してるからですかね(笑)。

平林:キャリアで悩んでいる方の話を聞くと、30代は「このままでいいのかな…」と考えて、40代では「こうあらねば…」と葛藤し、50,60代で「何をしよう…」思われている方が多い気がしていて。

森田:それでいくと、僕は70歳でスタートアップしたいなと思っています。

平林:まさかの(笑)。

森田:自社サービスをつくってみたいんです。

平林:やっぱり森田さんには、「既存の価値観をぶち壊したい欲求」があるんじゃないですか?

森田:どうなんだろう。そもそも、自分が70歳になったとき、自分にとって適切なサービスがある世の中になっているか?と考えると、違うような気がするんですよね。だから、自分好みにカスタマイズしたいだけなんですよ。自分にとって「楽しい」「居心地がいい」と思える空間を作りたくて、そんなサービスがないなら作ればいいし、既存サービスがあるなら、より自分好みに繋いだり、削ぎ落としたり、ブラッシュアップすればいいと思うんですよね。

平林:面白いっすね。

森田:高齢者の方々とお話しすると、スタートアップは自分事じゃないんですよね。「若い子がやることでしょ」って皆さんおっしゃるんですが、僕は「違います」とお伝えしていて。「当事者が必要だと思うサービスを当事者が作ることが一番だと思っていて、高齢者のサービスは高齢者が一番よくわかってるんで、高齢者のスタートアップしませんか」ってお話しします。

平林:共感します。20代だから「遊ばなきゃいけない」とか、30代だから、40代だから「こうしなきゃいけない」ってたくさんあると思うんですが、そうではないですよね。

森田:そうそう。そもそも20代の時、僕は遊び方すらわからなかった。それに比べて40,50代の方って本当にかっこいい遊び方をされているんですよね。

平林:「遊び方」ですね。

森田:僕も多分、仕事だけど半分遊んでるんですよ。何か新しい出会いがあるんじゃないか」とか「こんなにかっこいい人がいるんだ」とか「こんな風にすると自分や町も面白くなるかも知れないな」とか。遊び心と遊び方がすごく大事だと思っています。

平林:森田さんは遊び心を持たれるのも上手ですよね。

森田:仕事で遊ぶのはピカイチだと思うんです。遊んでる」という言い方は誤解を招くかもしれませんが、楽しむ力があるのは強みだと思っています。

平林:「楽しむ力」は今後必要なスキルというか考え方だと思っていて。これまでは、「仕事は仕事」「プライベートはプライベート」という風潮だったと思うんですが、今は境界線が曖昧になってきているからこそ、仕事にも自分の遊び心を入れて「自分がやるならこういうやり方でやる」とアレンジしていくと、めちゃくちゃ面白いですよね。

森田ボーダレスになってくると思う。仕事とプライベートの基準が曖昧になってくるし、行政と民間の境も曖昧になってくるし、役割ははっきりするけど、境界はなくなっていく。

これは個人と行政にも言えると思っていて。それぞれの役割の中で得意な部分がボーダーレスになってきて、混ざり合っていく社会が近づいていると思っています。

平林:今日の締めは決まりました。ボーダレスですね!

森田:そうですね(笑)。社会がボーダレスになることで「どうしたら自分が楽しく幸せに暮らしていけるか」という個人個人の価値観を認め合う多様性がより広がっていくんじゃないかなと思いますね。

平林:そう思います。生き方対談第1弾めちゃくちゃ楽しかったです!生きるヒントがたくさんありました。

森田:そう言っていただけて嬉しいです。僕はある意味欠陥だらけの人間なんで、世の中のすごい人たちと話して楽しくワクワクできたらいいなと思いました。

Information

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場所に縛られずに、 オモシロい地域や人と もっと深くつながりたいーー。

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。

「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

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・本業をしながらも地元や地域に関わりたい
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Editor's Note

編集後記

このお話を読んで「こんな町長が自分の町にいたら!」と思った方も多いはず!
私自身、まだリアルでお会いしたことがないのですが、森田町長のTwitterから滲み出ていた、親しみやすさの正体に触れることができたそんな対談でした。

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