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LOCAL LETTER

都会育ちから島移住を決意。島で生業をつくるまでのきっかけは「小さなこと」

JAN. 11

EHIME

拝啓、小さなきっかけを掴んで人生を変えたいアナタへ

※本記事は「【ADDress × LOCAL LETTER】ローカルライター向けADDress滞在プログラム」にて執筆した記事となります。

「働き方や生き方を変えたい」と望むとき、大きな変化が必要だからと足踏みしてしまうことがあるのではないでしょうか。

しかし、大きな転換を経験している人の実体験を聞くと、実は小さな変化・選択の積み重ねで今があるということに気づきます。「どんな選択を積み重ねた結果、生き方を大きく変えたのか?」といったロールモデルとなるような姿を知ることで、きっとあなたの人生のヒントにもなるはず。

都会暮らしから島移住へと踏み出した大橋健太郎さんは、自分の興味が示すものに触れ続けて行動した結果、今があると教えてくれました。「きっかけをくれたのはいつもWeb記事でした」と日常の些細な情報収集から、キャリア・生き方を大きく転換した軌跡について、お話をお聞きしました。

大橋健太郎さん 合同会社さんど 代表社員 / 1985年広島生まれ千葉育ち。新卒で全国チェーンカフェ&バーに入社し、エリア責任者を勤めた後、2013年に退職を決めて海外渡航。2年の旅を経て、豪華客船の船員として勤めることを決意。旅先で出会った大三島の魅力に惚れ込み、移住を決める。現在は、夫婦で宿泊業・飲食業を営む。
大橋健太郎さん 合同会社さんど 代表社員 / 1985年広島生まれ千葉育ち。新卒で全国チェーンカフェ&バーに入社し、エリア責任者を勤めた後、2013年に退職を決めて海外渡航。2年の旅を経て、豪華客船の船員として勤めることを決意。旅先で出会った大三島の魅力に惚れ込み、移住を決める。現在は、夫婦で宿泊業・飲食業を営む。

働き方に違和感を抱いて海外へ旅したきっかけは「ブログ」

新卒で入社した会社では、飲食業を経験した大橋さん。約7年間働くなかで体調を崩したことをきっかけに、このままの働き方では生きていけないという現実に直面します。

なんとか生き方を変えたいけど、何がしたいかわからない。そんなとき自分を支えてくれたものの存在に気づいたと話してくれました。

「社会人として働くなかで辛い時期を支えてくれたのが、世界1周ブログでした。ブログではいろんなジャンルがあるなかでも、世界1周カテゴリーが僕は好きで。いろんな人たちが世界を旅しているのを知って、おもしろそうだなとずっと興味があったんです」(大橋さん)

海外で旅する人々の日常をブログを通して知ることで、自分のなかに新たな世界が広がっていると大橋さんは気づきました。

「日本語しか話せない自分だけど、飛び込むことできっと何かが変わるかもしれない。そんな思いで退社後は海外へ渡航することを決めました。もともと飲食店独立の目標を掲げて貯金していましたが、一旦考え直して貯金を使って海外に行ってみたんです。ブログをきっかけに海外渡航を決め、約2年間旅をすることに。海外に行ってみたら何か変わるんじゃないかと期待して飛び込みました」(大橋さん)

自分中心で生きてきた。人生観が大きく変わった出会い

旅のなかでオーストラリアの都市である、シドニーからケアンズまで約2,000kmをヒッチハイクした大橋さん。初めての経験で方法もわからないまま手探りで歩むなかで、拾ってくれた現地の方の言葉で人生観が変わりました。

「オーストラリアの方に拾ってもらい、家に招いてもらいました。その方は以前にも、僕と同じように彷徨う日本人に声をかけたそうで。その方にとてもよくしてもらったことから、今後困っている人がいたら、自分も助けることにしようと決めて生きてきたと教えてくれました。

『君も大人になって余裕が出たら、誰かに恩を返すようにすればいい。私には何もいらないから』と言ってくれて。これまで自分中心で生きてきたことに気付かされました。今度は自分が誰かのために恩を返す形で生きていこうと決めた瞬間でした」(大橋さん)

大事なことを教わる瞬間に立ち会い、今後は海外・日本の方々の助けになりたいと、生き方の指針を定めた経験になったのです。

「ここで生きていく」と決めたくなるほど魅力的な大三島

恩を返して生きていくという想いは「宿泊業・飲食業」で叶えると決めた大橋さん。これまでの旅の経験から自分がいただいた恩を返せる形として、「宿泊業・飲食業」は理想の方法なのではと考え始めました。

そして、2022年3月末にしまなみ海道が通る1つの島である愛媛県今治市の大三島にて「𝗖𝗼-𝗹𝗶𝘃𝗶𝗻𝗴 & 𝗖𝗮𝗳𝗲 𝗦𝗔𝗡𝗗𝗢」を開業します。1階はカフェ&バー、2階はホステルとコワーキングスペースを併設したこの施設は、職住一体型コリビングスペースとしてみんなの居場所をつくっています。

大橋さんが大三島という土地で生業をつくりたいと決意した理由の1つとして、大三島の魅力に圧倒されたからと、当時の思いを語ってくれました。

「海外渡航を経て日本に帰ってきたとき、なにか職につかなきゃと思ったんです。当時見ていたWeb記事でクルーズ船での働き方を知りました。飲食店の経験が活かせるし、旅をしながら働けるところに魅力を感じて、ご縁があってクルーズ船の船員になりました。

船旅でいろんな島を訪れるなかで、大三島と出会ったんです。仲間と大山祇神社の参道沿いを歩いていて、ここにカフェがあったらおもしろいよねなんて勝手に想像を膨らませている自分がいました。本当に実現できたらおもしろいなあと、当時はぼんやり思っていたんです」(大橋さん)

「これまでたくさんの島を見てきた自分の経験を振り返っても、大三島の魅力は唯一無二のものだと確信しています。橋で繋がる島々からなるしまなみ海道は、利便性もよくて過ごしやすい。島であって島でない感覚が不思議とあって、ここで海を見ながら暮らせたら素敵だなって」(大橋さん)

これまでいろんな島を訪れた大橋さんだからこその着眼点で、大三島の魅力を語ってくれました。

初めは妄想レベルだった島移住が現実になった瞬間

大三島の魅力に惚れ込み、島での暮らしを想像する大橋さん。当時ぼんやりと思い描いていたところから、数年で施設の開業に至るまでにご縁やきっかけがあったと教えてくれました。

「クルーズ船で大三島にきたときに、翌年には仕事をやめて宿泊業を営みたいと考えていました。どこで開業しようか考えているときに、タイミングよく大三島に出会ったんです。ぼんやりとしたイメージではあるものの、実際に開業するならどの場所でできるか?と気になって空き家サイトで探してみました。

空き家サイトで『地域おこし協力隊を募集しています』と書かれた記事を見つけて興味を持ったんです。最長3年間、地域のことをやりながら事業を立ち上げる準備ができそうだなと感じ、役場の人に話を聞きに行きました。10月頃に記事を見つけて、12月に募集があると教えてもらい、タイミング的にもチャンスかもしれないと応募してみることに。無事採用されて、大三島への移住が現実になりました」(大橋さん)

大三島での理想の暮らしは、1つのWeb記事に出会ったことで行動が加速したという大橋さん。小さなきっかけから島移住へと導かれたのです。

コロナ禍という壁を時代にあった方法で乗り越える

地域おこし協力隊として大三島に移住したのが2020年3月のこと。ちょうどコロナ禍に突入し、外出を禁じられる日々でした。

「本来なら地域おこし協力隊として地域の繋がりをつくるべきところが、コロナの影響で役場で資料を読み込む日々。このままでは何もできずに3年間を終えてしまう……。そこで自分ができることを考えて実行したのが、キッチンカーの製作です。

飲食店の形態を変えて挑んだ事業では、時代にあったやり方で人との繋がりをつくることに成功しました。土日はキッチンカー出店を行い地域での活動を広げつつ、平日は開業に向けた事業計画・ビジネスプランの作成に打ち込む毎日でした」(大橋さん)

キッチンカーに目をつけたのも、きっかけは映画だったそう。何気ない日常からヒントを得て前に進むことができたと教えてくれました。

コロナ禍と聞くと、人との接触が途絶えてしまうイメージが一般的には強いもの。移住先でコロナ禍という壁とも感じられる局面で、自分ができることを模索する選択をした大橋さん。選択の先には、大三島に来たミッションともいえる「人と人との繋がり」を生み出すきっかけづくりができたのです。

開業した施設の構想はWeb記事からアイデアを

土日はキッチンカーでの活動を行う一方で、平日は今後の事業計画に向き合うことで、現在の事業を叶えた大橋さん。一見、日本では数少ない「コリビングスペース」という施設を開業するに至るまでについて聞いてみました。

「事業計画では、妻の宿泊業経験と僕の飲食業経験をうまく活かした施設を立ち上げたいと考えていました。どんな施設だったら大三島の参道を盛り上げられるかと考えているとき、1つのWeb記事に出会ってアイデアをもらえたんです。その記事で、海外にはコリビングスペースという施設があることを知りました」(大橋さん)

「職住一体型の施設を指すコリビングスペース。コロナ禍もありテレワークという新たな働き方が広がりつつあるなかで、働き方の選択肢として今後広がっていくかもしれないと感じました。大三島にみんなの居場所となるような空間をつくるのにとてもあっているし、夫婦の経験が活かせる施設だと感じて実現しようと思いました」(大橋さん)

ビジネスプランを構想する段階で、コンテストに出場することを決めた大橋さん。自分よりも先に事業を叶える先輩方に励まされ、想いを形にすることができたと感謝の気持ちを添えて語ってくれました。

日本の魅力に気づけば、生き方は1つじゃないと気づく

島への移住から約2年の時を経て、コリビングスペース開業に至った大橋さん。都会で育ち、島で生業を形成したと聞くと「大きな偉業を達成した」と思ってしまうかもしれません。しかし、現在に至るまでに影響を与えてくれたのは、たまたま見ていたWeb記事だったとわかります。

「都会で育った経験から、都会の楽しさも知っています。都会には魅力的な部分がたくさんあるけど、日本は都会も地域も全部含めてすごく素敵な国だし、魅力的な場所がいっぱいあるんです。そのことを多くの人に知ってもらいたいし、場所に限らず生き方だって1つじゃないと思います」(大橋さん)

「1つのことにとらわれずにいろんな視点で物事を見ることで、新しい自分や生き方に出会えるチャンスがあると実感しています。そのためにも、普段からいつもと違ったことをしてみるというのを心がけてみると、きっかけの1つになるかもしれません」(大橋さん)

小さな変化を自ら選べば、チャンスに出会えて生き方が変わる

「大きなことでなくていい、たとえば帰り道にちょっと違う道を選んでみるとか、違う駅で降りて寄り道してみるとか、それくらい小さなことでも何か見えてくると思うんです。小さな選択からいろんなチャンスが生まれるということを僕自身が経験したので、変わりたいと思う方にも届いたらいいなと思っています」(大橋さん)

現状を変える・人生を変えると聞くと、壮大なイメージがあって難しそうに感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、生き方を変えるきっかけは、日常の小さなところにあるのです。

大橋さんがWeb記事からアイデアをもらって行動してきたように、あなたも日常の何気ないところに変化できるチャンスがあるかもしれません。小さな選択を大切に生きてみることで、今後の人生を変えるきっかけを掴んでみてはいかがでしょうか。

Editor's Note

編集後記

大橋さんの生き方に触れるだけでも、普段とは違う視点に触れられるなと感じました。この記事を読んだ誰かが、大橋さんの生き方に触れて「私もやってみようかな」と思ってもらえる予感がします。

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