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LOCAL LETTER

地域企業と都市部の複業人材をマッチング。愛媛県松山市が目指す “複業” の在り方

MAR. 19

EHIME, MATSUYAMA

前略、地域を舞台に仕事への想いやビジョンに共感しあった仲間と、ビジネスに挑戦したいアナタへ

今の仕事をしながら、他の企業でも仕事をする。1つの仕事に捉われない「複業」をする人がここ数年、増えています。

とはいえ、一言に複業といっても、まだまだ「よくわからない」もの。

複業ってなんのためにするの?
複業先ってどうやって見つけるの?
複業先にはどんなニーズがあるの──?

そこで今回は、愛媛県松山市が初挑戦し大きな反響を呼んだ、複業マッチングプロジェクト『だんだん複業団』のオンライン事業報告会を取材。

だんだん複業団』が地域企業と都市部人材をマッチングする上で大切にした “複業” の在り方に迫りました。

松山市内の中小企業と都市部の複業人材を繋ぐ『だんだん複業団』

「地域に関わりたい」「自らのスキルを伸ばしたい」と考える都市部の会社員・フリーランスと、人材不足によって新たなチャレンジに踏み出せない地域企業をマッチングするプロジェクトとして松山市が立ち上げた『だんだん複業団』。

2020年9月にスタートした『だんだん複業団』に参画する地域企業は13社、都市部からは80名がエントリーし、すでに99件の提案、15件(10社)の事業マッチングが成立している。(マッチングは現在も継続中、数字は2021/03/01時点)

事業責任者としてプロジェクトを実施した松山市 産業経済部 地域経済課・鴻上哲史さんは『だんだん複業団』に込めた想いを次のように話す。

「 “だんだん” には、一般的に使われる “次第に・じわじわと” という意味と、“ステップアップする” という意味に加えて、松山市の方言で “ありがとう” という意味があるんです。

今回のプロジェクトを通じて、地域企業と都市部の方が少しずつ信頼関係を築きながら、双方のステップアップのきっかけにしてほしい、さらにはお互いが “ありがとう” と思い合い、松山市を好きになってほしい。そんな想いを込めて名付けました」(鴻上)

副業ではなく「複業」で、「共感」を重視したマッチングプロセスを実施

ただ単に地域企業に足りない人材やスキルを補う「外注先」のような関係ではなく、「中長期的なパートナー」として継続した繋がりをつくりたい松山市の想いを形にするため、『だんだん複業団』では3つの軸を大切にしたと話すのは、運営事務局であるパソナJOB HUBの藤本さんだ。

「今回のプロジェクトでまず大切にしていたのは、“複業” で関わる意欲のある人材とのマッチングに絞ったことです。“ふくぎょう” と聞くと、“副業” の漢字を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、だんだん複業団では “複業” をあえて使っています。

これは、メインとサブ、主と副、お小遣い稼ぎとして見られがちな “副業” ではなく、全て本業、全て同じだけの想いを持って同時並行で進める、キャリアの一つとしての “複業” として松山市に関わってくれる人材を求めたからです」(藤本)

都市部に比べ、金銭的にも、交通の便や人手をみても制限が多い中で、地域企業と共に、本気で悩み、考えてくれる人を募集の段階で絞り込んだ『だんだん複業団』。このブレないスタンスの示し方が、80名もの人がエントリーした一つの理由なのかもしれない。

「複業人材とのマッチングに加えて、今回初の試みということもあり、地域企業が安心して参加できるように地域側のパートナーとして、松山中心部のコワーキングスペースを運営する稲見さんとの連携や、地域企業の課題意識により共感してもらえるように、フィールドワークを通じた企業との交流の機会もつくりました」(藤本)

この他にも、事業提案をした複業人材と事業者のオンライン面談など、手厚いサポートを行なっている『だんだん複業団』。

効率性を考えると決して最適解ではないマッチングだが、マッチングで最も重要なお互いの相性を丁寧に確かめられるプログラムに、実際に参加した地域企業・都市部の複業人材はどんな印象を受けたのだろうか。

『だんだん複業団』を通じて起きた、地域企業の「変化」

報告会では、地域企業の代表として、ユナイテッドシルク株式会社の河合崇さん、株式会社大一合板商事の大久保仁志さん、株式会社福栄の亀岡龍平さんの3名が登壇。初のプロジェクトということもあり、当時感じていた困惑や期待、さらにはプロジェクトを通じて感じた想いを赤裸々に語った。

── 事業に対する最初の印象や複業人材へのイメージはどうでしたか?

河合さん(以下、敬称略):最初にお話をもらった時は、そんなことが実現したら有難い!とワクワクした反面、私自身、必要としている人材に出会える機会がない中で、どうやって複業人材を集めてくるんだろうか?本当に集まるのか?という不安もありました。

亀岡さん(以下、敬称略):私は話を聞いた時は、外注先を見つけるという感じなのかなと思っていて、とにかくお付き合いのある方からのご紹介だからやってみようという感じだったんです。でも、プロジェクトが進むにつれて、“人と人の関わり合い” だということがわかって、当初のイメージと徐々に変わっていきました。

大久保さん(以下、敬称略):私も亀岡さんと一緒で、最初は外注や派遣社員のイメージなのかなと思っていましたが、いざ面談で複業人材の方にお会いすると、本当に多種多様なスキルを持った方がたくさんいて、市内で同じようなスキルを持った方と巡りあうのは難しいので、驚きました。初めてのプロジェクトということもあり、正直わからない部分もありながらスタートしましたが、松山市とパソナJOB HUBさんがやるプロジェクトということで、安心感もありましたね。

── だんだん複業団に参加してみて出会った人材の印象はどうでしたか?

河合:私自身、都市部の大手企業で働いた経験があるので、給料面だけを考えると欲しい人材を獲得することは難しいと思っていましたが、実際に『だんだん複業団』へ応募してくださった複業人材の方とお会いしてみると、給料面よりも、私たちの想いや地域に貢献したいという理由で事業案を出してくださる方が多くて、本当に嬉しかったですね。

応募してくださった皆さんが本気で私たちに向き合ってくれたことはもちろん、それぞれが専門性の高いスキルをお持ちだったので、皆さんと話す中で、漠然と欲しいと思っていた人材像を明確にすることもできました。

亀岡:皆さんバライティ豊かな経験をお持ちで驚きました。これまでの経験を活かして、私たちにはない視点からアドバイスをもらえることも多かったので、目新しさもありましたね。

大久保:お二人がおっしゃられているように、普段話さない都市部にいるスキルを持った方とお話できたことがまず有意義でした。皆さん、ご自身のスキルや強みを自覚されているので、会社の課題を伝えると「こんなことが自分にはできる」と名乗りを上げてくれる方が多くて、ミスマッチが起こりませんでした。

あとは、今回のプログラムのほとんどがオンラインということもあり、多くの方とお話できたのはもちろん、スタッフも含めてオンラインの勉強にもなりましたね。僕自身も、会社のことをパワーポイントにまとめて、いつでもどこでも資料を見せながらお話できるように用意した方がいいなとか、色々勉強させてもらいました。

── 複業人材から提案がきてどのように感じましたか?多数の応募があった中で、採用した複業人材の決め手はなんでしたか?

河合:まずは自社専用の提案があったことに感動しました。私は提案は宝だと思っているので、コロナによって市外の人との接触が難しい状況の中で、市外の方からご意見・ご提案がいただけたことは本当に有り難かったです。

その上で、私の会社では4名の複業人材の方とご一緒するんですが、採用前から「100日で成果を出す」ことを一つの目標にしていたので、「松山で」「100日で」成果を出せる提案であるか、人材であるかを決め手にさせてもらいました。

河合:まずは「100日」を掲げていますが、その後も出来るだけ長く継続した付き合いを続けながら、複業人材の方が最終的には松山市に移住してきて貰えるような、松山市とより近い存在になってもらえたら嬉しいですね。

亀岡:私も多くの提案をいただけたことは本当に嬉しかったですね。提案内容も多種多様でしたが、最終的な決め手は “熱量” です。結局は人と人との出会いだと思っているので、面談を重ねる中で複業や事業にかける想いをお聞きして、一緒にやっていきたいと思った方とご一緒させていただきます。

今後が本当に楽しみで、私たちが成功事例をつくって、全国にサービスを広げていったり、複業人材の方に別の市内の企業を紹介したりすることができたらいいなと思っています。

大久保:10名以上の方からご提案をいただき、こんなにも会社のことを考えてくれる人がいることが私もまず嬉しかったです。どの提案からも新しいひらめきや発見をいただきました。その中でも特に会社に興味を持ってくれていることや、事業に対して想いがあるなと感じる提案資料を作ってくれた方とご一緒することにしました。

今回のご縁が私たちにとっても、複業人材の方にとっても、松山市やパソナJOB HUBさんにとっても良いものになって、次に繋がっていくような成果を残せるよう頑張っていきたいですね。

最初は半ば勢いで参画したものの、実際に複業人材と関わる中で、そのスキル・経験の高さや想いに驚いたと話すと共に、ビジョンや想いに共感する人材と出会えたと喜びを語る地域企業の皆さん。では、複業人材は今回のプログラムを通じてどんなことを感じていたのだろうか?

コロナ禍でも、人脈ゼロでも、地域と関わりをつくれる『だんだん複業団』

『だんだん複業団』に参加した複業人材を代表して報告会に登壇したのは、今回が初の複業になるという会社員のユズキさんと、コロナ直後にフリーランスへと転身したマツモトさん。二人とも、もともと松山市に縁があったわけではないものの、複業や地域に興味があり気軽に参加したところ、ご一緒したい企業に巡り会い、提案を実施。無事にマッチングが成立したという。

── なぜ事業に参加しましたか?実際に参加してどのような可能性を感じましたか?

マツモトさん(以下、敬称略):前職で地域企業に向けたマーケティングを担当していたこともあり、独立後も地域で仕事をしたいと思っていました。独立直後にコロナの影響を受けて、地域へのアクセスが難しくなる中、『だんだん複業団』は地域の魅力的な企業に出会える機会なのではと考え、参加しました。

『だんだん複業団』のプロジェクトは、希望者だけのフィールドワークなどで、テキストやオンライン面談だけではわからない企業や社員の思想や今後の展望などを直接聞くことができてとても嬉しかったです。直接話さなくても、事業概要や事業内容はわかりますが、想いの部分は拾いきれなかったりするので。

ユズキさん(以下、敬称略):複業は初めてですが、松山市とパソナJOB HUBさんがやっているプロジェクトということで心配はありませんでした。私自身は将来コンサル業で独立したいと思っているので、日本全国の事業者と繋がる最初の機会としていいなと思いました。

マツモトさんもおっしゃられていましたが、地域になかなか気軽には訪れられない中で、ゆっくりと地域企業の話が聞ける機会が設けられていてよかったですね。

── 今後企業や松山市とどういう関係になりたいですか?

マツモト:今後、本格的に事業をお手伝いさせていただく中で、いい関係性を作れたらと思っています。私自身、プライベートでも二拠点先や移住先を探していて、仕事先と地域が密接な関係にもなると思っているので、そういった将来的なことも視野に入れながら考えられたらと。

ユズキ:短期的にしっかりと成果を出しながらも、中長期的にはパートナーとして長くお付き合いができればと思っています。私だけでなく、私の周りの人やご一緒する企業の周りの企業との繋がりがそれぞれ広がっていくように、まずはしっかりと成功事例をつくっていきたいです。

複業において重要なのは「条件のマッチング」よりも「想いのマッチング」

これまで一般的とされていた「副業」のように、本業以外で「稼ぐ」ことをイメージし、労働時間や報酬など “条件のマッチング” で企業と個人を繋ぐのではなく、「どんな想いを持った個人なのか?」「どんなビジョンを持ち、どんな課題がある企業なのか?」を当事者たちが明確にし、伝え合うことで「共感」を生み出す “想いのマッチング” を行った『だんだん複業団』。

今回のプロジェクトを通じて出会った地域企業と複業人材が、今後どのような成果を上げていくのかはまだ誰にもわからない。だが、アナタにとっても、思わず目を離さずにはいられない地域の一つになったのではないだろうか。

旅行や出張などでは感じられない松山の魅力に触れたいアナタは、ぜひさらなる詳細をのぞいてみてくださいね。

Editor's Note

編集後記

働き方が多様になることで、地域でも「複業・副業・兼業」の募集を目にするようになりました。しかしその一方で、地域の受入れ先と人材が合わない「ミスマッチ」がボトルネックになる事例もしばしば。継続的に地域に関わってもらうために、必要不可欠な “良いマッチング” を生み出そうと、松山市が今回初挑戦した『だんだん複業団』。これからの松山市の取組み、さらには今回のマッチングによって生まれた繋がりがどのように広がっていくのか、注目です。

これからも松山市に注目してみてください!

これからも松山市に注目してみてください!

これからも松山市に注目してみてください!

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