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LOCAL LETTER

人の心を開くことが重要。オープンイノベーションによって付加価値を生み出す地方創生

OCT. 06

拝啓、オープンイノベーションの在り方や実例を知りたいアナタへ

近年、組織内部のイノベーションを促進するために、積極的に内部と外部の技術やアイデアを活用する「オープンイノベーション」という言葉が話題となっています。

そこで今回、北海道上士幌町を舞台に開催した地域経済サミット「SHARE by WHERE」では、「オープンイノベーションによって付加価値を生み出す地方創生」と題したトークセッションを開催。

「ただ人を集めればいいという訳ではない」「いかに心を開けるかが重要」様々な視点から意見が交わされた本セッション。最前線でイノベーションに取り組む登壇者の思い描く、オープンイノベーションとはーー。

ポテンシャルを底上げしていくのが「オープンイノベーション」

高嶋そもそも本当に地域でオープンイノベーションって必要だと思いますか?

写真左> 高嶋 大介(Daisuke Takashima)氏 株式会社INTO FABRIC 代表取締役 / 自律的に働く人が増える社会をつくりたいと考え、INTO THE FABRICを設立。「けもの道をつくりながら企業の可能性を探す」ことを得意とし、組織/戦略デザイン、コミュニティデザイン、イベント/マーケティングを行う。ゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ「100人カイギ」をはじめ、広義な人をつなぐ場をつくる活動を行う。
写真左> 高嶋 大介(Daisuke Takashima)氏 株式会社INTO FABRIC 代表取締役 / 自律的に働く人が増える社会をつくりたいと考え、INTO THE FABRICを設立。「けもの道をつくりながら企業の可能性を探す」ことを得意とし、組織/戦略デザイン、コミュニティデザイン、イベント/マーケティングを行う。ゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ「100人カイギ」をはじめ、広義な人をつなぐ場をつくる活動を行う。

五十嵐内部じゃ進められないから、外から戦力を入れる必要があるってことなのかなと思っています。例えばサッカーならJリーグ開幕のときのアントラーズが、世界のサッカーをとりいれるべくジーコを呼んだみたいな。最初からオープンイノベーションをしようと思ってしたわけではないケースがほとんどだと思うんですよね。

地域でも、地元の人だけではできないから、もうこれ無理じゃんって外の風を入れることをイノベーションって言うと思うんですけど、そんな仰々しい言葉使わなくても至って普通のことですよね。

写真右> 五十嵐 慎一郎(Shinichiro Igarashi)氏 株式会社大人、株式会社SHAKOTAN GO 代表取締役 / 1983年北海道小樽市生まれ。札幌南高校卒業後上京。紆余曲折を経て、東京大学建築学科卒。「北海道から、世界をちょっぴり面白くクリエイティブに」を掲げ、株式会社大人を2016年に設立。店舗や施設の企画/デザインといった空間プロデュースをはじめ、地域活性化のイベントの企画運営や移住・起業支援、ウェディング事業etc.を行う。2021年に積丹町のまちづくり会社㈱SHAKOTAN GOを設立。
写真右> 五十嵐 慎一郎(Shinichiro Igarashi)氏 株式会社大人、株式会社SHAKOTAN GO 代表取締役 / 1983年北海道小樽市生まれ。札幌南高校卒業後上京。紆余曲折を経て、東京大学建築学科卒。「北海道から、世界をちょっぴり面白くクリエイティブに」を掲げ、株式会社大人を2016年に設立。店舗や施設の企画/デザインといった空間プロデュースをはじめ、地域活性化のイベントの企画運営や移住・起業支援、ウェディング事業etc.を行う。2021年に積丹町のまちづくり会社㈱SHAKOTAN GOを設立。

金澤北海道ってホワイトコーンやワインのようにブランドできる物が多数あって、すごくポテンシャルを持ってるんです。でも、その価値を買ってくださる方にきちんと伝えるというのはまた別のスキルが必要でして。

他者が自分たちと違う優先順位で大切なものを持っていると認識した上で、自分と異なる人達と理解をし合うことが、オープンイノベーションの肝だと思います。

どちらのスキルの方が優れているということではなく、上士幌には農畜産物を始めとして素晴らしいスキルを持ち常に研鑽している人たちもいますし、都市には同じようにクリエイティブやマネジメントの研鑽をしている人たちもたくさんいます。

両者がお互いに敬意を持って、お互いの仕事の仕方などの違いを理解しながら、お互いのポテンシャルを引き出していけるかっていうのがオープンイノベーションの余地かなと。

写真右> 金澤 一行(Kazuyuki Kanazawa)氏 株式会社Publicus 代表取締役 / 民間シンクタンク、株式会社リクルートでの新規事業の事業責任者を経て、現在、地方自治体の官民連携、地域の事業者のブランディングなどを行うコンサルティングに従事。上士幌町での地域の事業者支援プログラムに従事し、あまりにも好きになりすぎて上士幌町に移住。ヤンキー文化をこよなく愛し、ヤンキー文化の研究も行う。東京大学大学院公共政策学教育部修了、総務省地域力創造アドバイザー、早稲田大学総合政策科学研究所招聘研究員。今回はコロナ感染による隔離で地元開催なのにオンライン参加。
写真右> 金澤 一行(Kazuyuki Kanazawa)氏 株式会社Publicus 代表取締役 / 民間シンクタンク、株式会社リクルートでの新規事業の事業責任者を経て、現在、地方自治体の官民連携、地域の事業者のブランディングなどを行うコンサルティングに従事。上士幌町での地域の事業者支援プログラムに従事し、あまりにも好きになりすぎて上士幌町に移住。ヤンキー文化をこよなく愛し、ヤンキー文化の研究も行う。東京大学大学院公共政策学教育部修了、総務省地域力創造アドバイザー、早稲田大学総合政策科学研究所招聘研究員。今回はコロナ感染による隔離で地元開催なのにオンライン参加。

森田役場って日々の業務に追われてめっちゃ忙しいんですよね。その中で地方創生をやろうってなっても、人材のリソースが足りない現状があります。

課題も多様化してきてて右向け右ではもう対応できないし、公務員は公務員しかやってないから過去の成功体験以外の知見もない。なので、新たな発想を入れないと新たな解決策は見つからないと感じていました。

そんな中で僕らはアナザーワークスという複業人材の会社と出会って、DXと広報と人事といった複業人材を募集したんです。外部から役場に複業人材を入れて民間の力を借りたいなと思いまして。

写真右> 森田 浩司(Koji Morita)氏 三宅町役場 町長 / 1984年奈良県磯城郡三宅町生まれ。大阪商業大学を卒業後、2015年に「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町の議会議員に当選。2016年から町長として「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進める。ビジョンを象徴する交流まちづくりセンター「MiiMo(みぃも)」が2021年7月にプレオープン。妻の第一子の出産を機に、無期限の時短勤務を取得し「子どもが安心して育つ町」を目指す。
写真右> 森田 浩司(Koji Morita)氏 三宅町役場 町長 / 1984年奈良県磯城郡三宅町生まれ。大阪商業大学を卒業後、2015年に「全国で2番目に小さい町」の奈良県三宅町の議会議員に当選。2016年から町長として「日本一夢が叶う住民参加型の町」へ改革を進める。ビジョンを象徴する交流まちづくりセンター「MiiMo(みぃも)」が2021年7月にプレオープン。妻の第一子の出産を機に、無期限の時短勤務を取得し「子どもが安心して育つ町」を目指す。

森田それが本当に衝撃体験でした。まず会議の仕方が違うんですよね。1時間なら1時間でどこまで進めるっていうアジェンダがあって、全然民間の人はダラダラしない。私たちは今まで何やってたんだろうって思いましたね。

あと民間の人と行政職員では喋ってる言葉が全然違う。職員はアジェンダなんて聞いたことがないし、文化の違いがあるんです。こういう刺激を受けて、職員から「分からないことが分かった」って言われたのが一番嬉しかったですね。人の変わるきっかけになれたので。

高嶋たしかに、スキルが無いところに、外から持ってくるっていうのは、オープンイノベーションという文脈ではヒントになってくるかなと思います。

オープンイノベーションの「オープン」は「心を開くオープン」

高嶋福田さんから見て、これ失敗だった、これよかったっていう具体的な事例ってありますか?

福田結構初期って意気込んでも上手くいかないんですよね。みんなの意見を出して一緒にやっていきましょうって話では難しいので、まずはとにかく「一緒に場を楽しむ」っていうところがスタートなのかなと感じます。

何でもいいんですよ、バーベキューでも。お互いに立場も違うし知らない人同士だったりするので、なるべくまずはお互いを知ろうっていうことで。

一緒に楽しい時間を過ごして同じ時間を共有するっていうところからスタートして、何か新しい価値を生み出すことを、少しずつステップアップして進めていくことがすごく大事だなっていう風に思います。

写真中央> 福田 和則(Kazunori Fukuda)氏 株式会社エンジョイワークス 代表取締役 / 1974年生まれ。外資系金融機関勤務を経て2007年エンジョイワークスを設立。持続可能なエリアマネジメントを目指して、2017年に多様なステークホルダーがまちづくりに参画できる共感投資プラットフォーム「ハロー! RENOVATION」をリリース。まちづくりにおけるヒト、モノ、カネの新たな関係性構築に取り組む。
写真中央> 福田 和則(Kazunori Fukuda)氏 株式会社エンジョイワークス 代表取締役 / 1974年生まれ。外資系金融機関勤務を経て2007年エンジョイワークスを設立。持続可能なエリアマネジメントを目指して、2017年に多様なステークホルダーがまちづくりに参画できる共感投資プラットフォーム「ハロー! RENOVATION」をリリース。まちづくりにおけるヒト、モノ、カネの新たな関係性構築に取り組む。

五十嵐最初、外の風を入れようとしたら、多分みんなガード上げちゃいますよね。安定を求めて公務員になった人もいる中で、「変えるぞ」ってめちゃくちゃ大変だよなって思います。

森田最初の声はほんと凄かったです。「なんでそんなことやるんですか」って。なので「こういう思いでやりたいんだ」っていうのを、めっちゃ話しましたね。

やってみたら真剣に町のことを考えてくれる熱い人が外部にいることに気づいたし、すごく変わっていきました。

金澤森田さんが言ったような「言語が違う」は私も感じていて。同じ日本語話者同士で「言語が違う」というのは、話をするときの前提が違うということ。

同じ土地や職場で同じ仕事をしているとわざわざ言葉に出さなくとも伝わるものが多いですが、自分たちと違うキャリアや文化を持った人に説明するには、相手の分かる言葉にする必要があります。

言葉遣いだけではなく、例えばビジネスをするにしても、株主利益の向上を目指す上場企業と、雇用を守り、次の代にもつなげていくことを目指す地域企業では全く異なります。地域や関わる人によって、優先度の高いものは違うんですよね。

そういう意識できていない違いを埋めずに「合理的だからやりましょう」というのはやはり乱暴で、それを埋めるためには町長や役場と話すだけではなく、住民の人と友だちになる。最初に福田さんがおっしゃっていた「バーベキューで仲を深める」というような、違いがあっても乗り越えて一緒にやりたいと思える関係性をつくることから始めるのが全てだと思います。

金澤役場の人たちも、外から来た人たちを仕事としては相手にしてくれますけど、自分の地域内での信用を貸し与えてでも地元の仲のよい人を繋ぎたいと思うかどうかは値踏みします。そこに応えられる熱意と仕事の品質をもって、役場の人と仕事をすれば地元住民の人に会わせてもらえるかなと。

「よくわかんないけど、この人と一緒にやってみたいな」っていうような関係。そこから入ってもらわないと、なかなか地方でものはできないと思いますね。

高嶋オープンイノベーションってつまり心をオープンにするって事なんですかね。

金澤そうですね。まずは心を開かないと。相手が違う文化にいるのをちゃんと理解した上で心を開かないとダメです。経営資源を主にお金で獲得する都市と、お金と地域内の関係性の両方を経営資源に使っている地方とはビジネスでもコミュニティでも原理が違うので。

海外の企業を買収するときは、原理が違う前提でコミュニケーションがとれるのに、東京から北海道へ行くと、なぜか東京と同じように振舞ってしまうんですよね。

結局は「人」。面白い人たちの周りには面白い人が集まり、面白いことが起こっていく

高嶋人と知りあうという意味では五十嵐さんも場づくりに力を入れてると思いますけど、どんなきっかけだったんですか?

五十嵐「場」って結構広い範囲の話だなって感じたんですよね。何億という大金をかけて大きな建物を作るより、面白い人が1人でも2人でも地方へ移住したほうが町は変わるじゃんって思ったのがきっかけです。

高嶋場があると人が寄ってきますけど、人が繋がっていくのはまた別の話かなと思っています。都市のコワーキングスペースはオフィスの代替えでしかなくて、繋がる体験はあまりないように感じます。

五十嵐そもそもコワーキングスペースは「家賃高い」「カフェ満席で打ち合わせ場所を探すの大変」という都市だから成り立っているもので、地方では成立しない部分って多いんです。でも、その場自体に意味がないことは無くて、旗印としての機能があるんですよ。

例えば、旅行やUターンで地元にもどった時に立ち寄ってみると、地元で新しいことをやってる人の話を聞けるという意味はあるかなって思ってます。

森田:結局は人なんですよね。楽しい人たちが楽しいところに集まってきて、そこに地元の人が交流する場をどうデザインするかっていうのは、すごく大事だと思います。

五十嵐だからスナックでもいいんですよね(笑)。

オープンイノベーションは「手段」であり「目的」ではない

高嶋前半はオープンイノベーションって大事なのは人だよね、変化だよねと話が展開していったと思うんですが、オープンイノベーションの必要性についてはどう思いますか?

金澤場合によりけりですね。オープンイノベーションを地域側が何に使いたいかという目的を持つことが必要ですね。あくまで手段でしかないので、目的化してはいけないかなと思います。

森田私は絶対必要だと思いますね。コロナ禍を通じて、町が変化に強いか弱いかでこれから差が出てくるなと感じています。

今までできなかったことができるようになるのに「やるか、やらないか」で大きく変わってくるし、地元の人もやれることとか、やりたいこと、もっと自由にできると気づいてくるので、各所の連携をしっかりとすることが大事だと思います。

森田私が最近言ってるのは「まちづくりを行政はやめる」ってことなんです。インフラと福祉は絶対にやるけど、皆さんのやりたいことをやってることがまちづくりじゃないかと思うので、そういう人たちにどう伴走してやりたいことを実現していくかを考えています。

福田私は心をオープンにすることが本気で必要だと思っているので、そういう意味では必要だと思ってます。イノベーションは絶対1人では無理ですしね。

このままでは滅びゆく町にオープンイノベーションで立ち向かう

五十嵐北海道は課題先進地域と呼ばれていて、僕が今関わっている積丹町は人口1,800人でかつ、1年で出生者は4人の、まさに課題先進地域。

温泉も税金で運営してたのに、もう立ち行かなくなって民間で誰かやってくれないかという声があがったので、僕が始めたんですけど、これもオープンイノベーションって呼ばれるようになるのかなって思います。単純に温泉をやるだけじゃなくて、仲間や企業、地元と一緒にこの地域の可能性をつくっていこうっていう。

五十嵐積丹町は、オープンイノベーションがないと、きっとこのまま滅びていく町なので、絶対にオープンイノベーション必要だと思うし、私は今ちょうどそこを仕掛けていこうと思ってるので、チョー皆さんに悩みを相談したいところなんですよね!

一同(笑い)

福田すごい心開いたね!(笑)

高嶋皆さんの話を聞いていて、スナックとかで住民同士が「この街がもうなくなるからどうしようね」って、課題を話し合うとかくらいまで、自分事化する場を作るか、どうやって巻き込んでいくかってところはすごく重要かなと思いました。本日はありがとうございました!

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