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LOCAL LETTER

【後編】地域にお金を還すだけにとどまらない。地域商社が生み出す実践レシピ

MAR. 12

ZENKOKU

拝啓、自走する地域のこれからを描こうとしているアナタへ

※本レポートは、イベント「ひと・ちいきEXPO」のTalk Session4「地域商社鼎談!ふるさと納税で注目を集める『地域商社』のインパクトと30年後の姿」を記事にしています。セッションの様子を前後編に分けてお届けします。(前編はこちら

もし、ふるさと納税の仕組みが変わったらー

「地域は財源調達できるのか」「地域商社は存続の危機に陥らないか」

地域の財源を支える手段でもあり、ビジネスとしても成立するふるさと納税。自治体にとっても、地域商社にとっても、大きな存在意義があります。しかし「もしも、この制度がなくなったら」と考えると、不安なことばかりが頭を過ります。

前編では、地域商社が担うふるさと納税事業の役割を語っていただきました。そこで見えてきたのは、地域のためにできることはふるさと納税だけではないということです。

後編では、地域商社が仕掛ける地域へのアプローチ方法を具体的に聞いていきます。

ふるさと納税事業の進め方を探る、地域商社の視線の先

平林氏(モデレーター、以下敬称略):ふるさと納税だけに依存しない事業の在り方を、それぞれ考えていらっしゃいますね。ふるさと納税は、経営の舵取りに難航しそうな事業ですが、たとえば、このタイミングで別の事業にシフトするなど、どのような時間軸で事業の経営を考えていますか。

平林 和樹氏 株式会社WHERE・代表取締役/ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、地域経済サミット「SHARE by WHERE」、ローカルxキャリア開発の「ACADEMY」事業など地域、業界を超えた共創による人づくりに邁進中。内閣府地域活性化伝道師、地方創生SDGs課題解決モデル都市専門家、総務省地域力創造アドバイザー、ふじよしだ定住促進センター理事。

舩坂氏(以下敬称略):今、まさに舵取りが難しいと感じているところです。12月は特に、国の制度に変わりがないかと毎朝ネットで「ふるさと納税」と検索しては、ドキドキしながら状況を追っていました。

舩坂 香菜子 氏 株式会社ヒダカラ・共同代表/楽天グループ株式会社でECコンサルタントに従事した後、地域活性マネージャーとして飛騨市役所に出向。2020年4月より、地域の魅力を見つけ輝かせる地域商社、(株)ヒダカラを創業。主な領域はEC・企画・商品開発・マーケティング。2021年に岐阜県白川村の『深山豆富店』を未来に残すためM&A。地域に、豆腐に、奔走中。

舩坂そんな状況でも、会社としては10年後のふるさと納税の事業バランスは考えています。制度がさらに厳しくなったり、制度の廃止のように変化があれば、事業を動かすスピードや事業のバランスは変えていく予定です。ただ、地域商社として「地域のために」という本質は変わりません。

毎朝状況を確認してしまうぐらい動向を気にしていますが、何かが大きく変化することはどんなジャンルでも想定されることで、逆に新しいチャンスや新しいやり方が出てくる時でもあると思っています。

もしふるさと納税の制度がなくなったら、たとえば「生産者さんをどう支えるか」とか、「ふるさと納税が担っていた財源開発をどうするか」と困り事も必ず出てくるはずです。新しい困り事に対して「地域のために何をするべきか」という視点で事業を考えていけばいいと思います。

黒瀬氏(以下敬称略):寄附金額相当の財源を生む制度がただなくなるということは考えられません。その時には、ふるさと納税が形を変えて新たな市場が生まれると思います。その市場を支えるのは地域商社の役割かもしれません。そう考えると、仮に制度がなくなってしまっても、地域商社としてやれることはあるんじゃないかと思います。

黒瀬 啓介 氏 LOCUS BRiDGE 最高経営責任者・共同代表/2000年に長崎県平戸市役所へ入庁。広報担当時には、長崎県広報コンクール広報紙の部門で5年連続最優秀賞受賞。ふるさと納税担当時には、2014年寄附金額日本一を達成。2019年に独立し、LOCUS BRiDGEを創業。

平林:黒瀬さんの会社では、5年後や10年後の事業方針はどう考えていますか。

黒瀬:僕の会社では、中長期的な計画としてふるさと納税の事業を半分以下にしようと考えています。今もそこに向けて準備を進めていますが、制度の変化するスピードが早ければ、それに合わせて前倒しでアクションを起こしていきます。

地域商社が考える次の仕掛け

平林:(前編では)地域商社にとって、ふるさと納税事業は事業原資をつくるためのツールとして捉えているというお話が三者間から出ていましたが、そのの投資先として考えている事業を教えてください。

大関:ビックゲートでは各地域に地域商社を作る、もしくは地域商社になる準備として事業所を作り運用させる形で事業を進めています。他には道の駅の再生事業も引き受けています。

大関 将広 氏 株式会社ビッグゲート・代表取締役/大学卒業後、株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、以降、複数のIT企業を経て、2011年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。2014年7月に株式会社ビッグゲートを創業。また、一般社団法人全国道の駅支援機構の理事、みついしょうじ株式会社の取締役を兼任している。

平林:道の駅ですか?

大関:道の駅の再生事業は、地元の産業振興を目的に作ったはずの道の駅が、赤字経営になってしまった自治体から相談を受けて支援を始めました。この自治体では、ふるさと納税で得られた利益は道の駅のリニューアルに再投資します。

同じように、各地域ごとに向き合うべき地域課題があります。そして、それぞれの地域にも、地域に根付いた地域商社はいるはずです。地域商社は、地域に潜む課題に対して、資金を投下すればいいと思いますね。

僕らのやり方は、まず地域の課題解決のための事業所を立ち上げて、ふるさと納税で資金を作る。そこに、道の駅を運営するノウハウを伝えることで、事業所を後ろ側から支援するスタイルを取っています。

当社でふるさと納税の運営や、道の駅の運営のすべてを請け負うと、結果的にその地域から資金を持っていってしまうことになります。地域で資本が循環するように、地域ごとに地域商社を作る必要があると思っています。

黒瀬:僕の会社は代表二人体制でやっていますが、僕の方は「地域に仕事があって暮らしの選択を地域に持てる」ことや「稼ぐ地域にする」という軸で事業を進めています。もう一人の共同代表は「第二の市役所を作って地域を支える母体を民間側に作りたい」という軸を持っていて、この二つの軸で会社を経営しています。

黒瀬:僕の会社は社員の3分の1が元公務員です。役員は元公務員だけで構成されていることもあり、会社全体として行政に寄った考え方かもしれません。というのも、公務員の職歴をもつ社員は、公務員は尊い仕事ですごい素敵な仕事、とやりがいを感じながらも、地域の垣根を越えられないやりきれなさがあって僕らの会社に入ってきているので、行政や地域に強い想いを持っています。

投資先は地域課題や行政そのものの課題になることが多く、今はそういった領域を広げていっています。

平林:どういった領域か、詳しく聞いてもいいですか。

黒瀬:最近だと自治体の広報です。僕自身、広報がすごい力を持つようになってきていると感じています。僕の会社の社員には、元広報担当者がすごく多いんです。

地域の外に向けた魅力発信のアウタープロモーションではなく、地元の方や地元事業者に向けて地域の価値や魅力を伝えていくことで、地域を活性化していくこと、インナープロモーションにも力を入れています。他には空き家活用や、自治体から依頼を受けて支援する指定管理事業として観光分野にも領域は広げている段階です。

舩坂:会社の売上の約半分がふるさと納税事業での売上になりますが、再投資先は自己紹介でも触れた豆腐屋の事業承継がまさに事例のひとつです。

今は正社員二人が、仕事の大半を豆腐製造に費やして、豆腐を作ってくれています。

平林:正社員が豆腐作りをするのはすごいですね。

舩坂:そうなんです。豆腐屋の事例を紹介しましたが、対象は豆腐屋だけではなく、例えば一次産業や飛騨のリンゴ、美濃焼も同じです。地域で残すべきものや、もっと価値を上げていきたいものはあるのに、場合によっては産業の利益が地域に直接還元されない産業構造産物があります。

私たちの会社では、地域に直接利益が還元される仕組みを作っていきたいと考えていたので、るさと納税の制度のように、生産者と消費者が直接繋がれる仕組みはすごくいい方法でした。

ですが、その仕組みはふるさと納税以外にもオンラインショップでの販売や、観光客と生産者を繋げるような企画といった、ふるさと納税に代わる手段もあると思っています。そういうところに、時間とお金を使っていきたいと考えています。

平林:みなさん違う事業を考えていて、興味深いですね。

それぞれが考える地域を元気にするためのレシピ集

平林:これから先、ありたい姿として自社に置いている目標はありますか。

黒瀬:僕らの会社は後方支援者という立場でありながら、地域で活動するプレイヤーでもあり、地域の人に伴走して支援することもあれば、地域に入り込んでやることもあります。最近はプレイヤーとしての事業を拡大しているところです。

会社を一緒に作る仲間が増えるたびに、元々想定していなかった領域も支援できるようになってきたので、これからも型にとらわれず、地域にとって、行政にとって信頼できるパートナーになりたいと考えています。

大関:一緒に仕事をするお客さんや、道の駅の再生事業に取り組む事業所を支援できる仕組みを作っていきたいですね。

道の駅を例にしてみても、経営がうまく行っていないところは、同じ課題を持っていることが多いです。たとえば棚卸しの頻度が極端に少なかったり、一度の棚卸しに時間がかかり過ぎていたり。あとは、各自治体で独自のやり方があるので効率が良くない部分も多くあります。

業務の仕方をマニュアル化して指導した上で、各エリアのデータを取っていくと、月1回のコンサルティングでも状況は、結構改善するんです。なので、後ろ側で支えることと、個々にあわせた指導を組み合わせていけば、効率よく運営ができるだろうなと考えています。

平林:ナレッジの共有や、フォーマット化ということが、ビッグゲートさんの得意とするところでしょうか。

大関:そうですね。僕が積んできたキャリアとしては、ITを駆使して情報を整理することが強みです。ただ、地方では標準化してはいけないこともたくさんありました。

地域のことは地域で。それ以外の共通した課題は標準化した方が絶対にいいと思います。これからは、地域商社がお互いにノウハウを共有できるようなシステムを作っていくことが目標です。

舩坂:深山豆腐店は、縄で縛っても崩れないほど固い「石豆腐」を作る豆腐屋でしたが、後継者がいないことで一度はお店を畳みました。石豆腐は岐阜県白川村の伝統食材でもあります。「伝統のあるものがなくなってしまうのは勿体ない」と思い事業承継を決めました。

舩坂:私は、地場産業や地域の人が元気になったり、地域に誇りを持てるような状態を作りたいと思っているのですが、地域商社のなかにはその気持ちだけで地域を活性化させようと奮闘しているところもあるように見えます。

私の会社も、地域を元気にする事業を試行錯誤しながら進めている最中ですが、実績が少しずつ出来て、ある程度、上手くいく組合せの型があるんじゃないかと思えてきました。

例えば、地域の課題と地域の素材、ビジネスモデルのように、どこの地域にもある3つの要素があって、まだ掛け合わせていない組合せをしてみたら、新しく地域が稼げる仕組みができるんじゃないかなという仮説を持っていて。それをやってみて、たくさんの事例ができてきたら、地域を元気にするレシピ集のようなレシピ本を出したいです。

それをできる集団になれば、行政にとっても、地域の業者にとっても、いいパートナーになれると思うので、そういうところを目指したいなと思っています。

平林:地域を元気にするレシピ本、すごくいいですね。大関さんも、このセッションの中で一番大きくうなずいています。

Editor's Note

編集後記

そんな視点で見るとそんなビジネスが思い付くのか、と驚きの視点があると同時に、少しワクワクしている自分がいました。もしふるさと納税の仕組みが変わったらー、それでも地域商社は私たちの生活を支えてくれる、そんな気がしています。

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