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LOCAL LETTER

現状にとどまるか、進むか。「ローカルプロデューサー養成講座」卒業生3名が語る学びのカタチ

SEP. 24

JAPAN

拝啓、ローカルでの事業づくりで変えたい現状を抱えているアナタへ

地域と向き合うとぶつかるビジネスの壁。それらを乗り越え、ローカルを強さへと変える「プロデューサー」。そのローカルプロデューサーの役割と知識を体感し、実際のプロジェクトを通して「実現し続ける力」を身につける為の特別なカリキュラムが、ーカルプロデューサー養成講座です。

第1期では新規開講にも関わらず25名の受講生が集まり、卒業時の満足度は97.1%にものぼりました。

講座が終わって3ヶ月。このわずか3ヶ月で5つのプロジェクトが新たに動き出すなど、講座での学びや出会いは、ローカルプロデューサーの歩みを着実に後押ししています。

今回、3名の卒業生から講座での学びや経験を伺い、講座の魅力を深掘りしていきます。果たして、本講座で得られるものは何なのか、ローカルプロデューサー養成講座を体験した当事者だからこそのリアルな声をもとに紐解いていきます。

マイプロジェクトがあっても無くても。自分で背中を押してみる

地域で成功しているプロジェクトや事業に欠かせない役割を担う、ローカルプロデューサー。しかし、何をどうすれば「ローカルプロデューサー」と呼べるのでしょうか。かれらは具体的なノウハウやスキルが見えにくい存在でもあります。

フリーのアートコーディネーターとして文化芸術の分野で活動されている八木志菜さんは、「ローカルプロデューサーって何だ?」という純粋な興味から講座を検討し始めたといいます。

八木 志菜 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 / 京都市出身。アートコーディネーター。国内外での国際ボランティアや英国・シューマッハカレッジでHolistic Scienceに触れた経験から、「縁を持った地域を愛すること」と「表現」をキーワードに活動。公共文化施設勤務を経て、現在はフリーで活動する。
八木 志菜 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 / 京都市出身。アートコーディネーター。国内外での国際ボランティアや英国・シューマッハカレッジでHolistic Scienceに触れた経験から、「縁を持った地域を愛すること」と「表現」をキーワードに活動。公共文化施設勤務を経て、現在はフリーで活動する。

「舞台芸術領域には『プロデューサー』という肩書きがそもそもあるのですが、プロデューサーの具体的な役割をきちんと理解できていなかったんです。それでも、今後自分が何かをプロデュースする可能性があるかもしれないと考えていた時期だったので、この講座がとても気になりました。

もちろん、舞台芸術分野のプロデューサーと、今回の講座が指すローカルプロデューサーは仕事内容が異なるとは思います。ただ、この講座ではじめて耳にした『ローカルプロデューサー』は、アートの領域に留まらず自分が貢献できる仕事が広がるのではないかと感じ、非常に魅力的でした。

他にも、私の祖母が暮らす地域で何かやりたい気持ちをずっと持っていました。でも何もできていない状況で。どうしたら実現していけるのかを講座で学ぶことで、活動の後押しになるかもしれないという期待もありました」(八木さん)

八木さんがローカルプロデュースしたいのは祖母が住む場所。地域を少しでも知りたいとの思いから農作業に通っているのだとか
八木さんがローカルプロデュースしたいのは祖母が住む場所。地域を少しでも知りたいとの思いから農作業に通っているのだとか

「想い」はありつつも、実際にどうすればいいのだろうと立ち止まってしまう状況は多くの方が感じる壁のひとつではないでしょうか。受講生である、芝原由貴さんもそのひとりでした。

「講座を受講した動機はいっぱいあるんです」と笑顔で当時を振り返る芝原さん。数ある動機の軸となっているのは、日本各地の魅力発信に関心を持つキッカケとなった佐賀県への想いでした。

芝原 由貴 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 / 大阪府生まれ。国際会議ディレクター。高校卒業後に佐賀県を訪れたことをきっかけに、日本各地の魅力の発信に関心を持つ。大学在学中に「全国通訳案内士(英語)」資格を取得。現在は国内PCOにて、地域の文化・歴史・魅力を活かしたMICEの企画・手配・運営に取り組む。
芝原 由貴 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 / 大阪府生まれ。国際会議ディレクター。高校卒業後に佐賀県を訪れたことをきっかけに、日本各地の魅力の発信に関心を持つ。大学在学中に「全国通訳案内士(英語)」資格を取得。現在は国内PCOにて、地域の文化・歴史・魅力を活かしたMICEの企画・手配・運営に取り組む。

「高校卒業後に初めて佐賀県に訪れてから、佐賀のことがずっと大好きです。今回、講座のプロジェクトの舞台が佐賀県唐津市で実施される『カラフェス(𝗞aratsu 𝗦easide 𝗖amp FESTIVAL)』だったことも講座に惹かれた理由の一つです。

それまで、ずっと佐賀に貢献できることをやりたいという気持ちはあるのに、想いばかりが強く、何をどうすればいいか分からない状況でした」(芝原さん)

芝原さんの佐賀旅行の一コマ。地域の歴史や文化、自然へのワクワク・ときめきを大事にしながら各地域を訪れるそう
芝原さんの佐賀旅行の一コマ。地域の歴史や文化、自然へのワクワク・ときめきを大事にしながら各地域を訪れるそう

現在、国内のコンベンション運営会社にて、地域の文化・歴史・魅力を活かしたMICE*の企画・手配・運営に取り組む芝原さん。

*MICE(マイス)…企業の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字。多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。

業務で携わる国際会議などのいわゆるBtoBのイベントを担当しているなかで、「BtoCイベントなどはどのように成り立っているのだろう」と興味が湧いたといいます。

「地域の魅力を知るキッカケとして、イベントや観光で地域を訪れることはひとつの形だと考え、今の仕事を続けています。そんななかで、主催者・開催地域・参加者もみんなが目的を達成できてハッピーになるようなBtoCのイベントを見てみたかったんです。

地域の事業はどのように興されているのか。
どのように収益を上げているのか。
地域の方はイベントをどう感じているのか。
地域の方をどうやって巻き込んでいくのか。
当日のボランティアスタッフとして、参加する側がおもしろいと感じるポイント・つまらないと感じるポイントは何か。

こうしたことを自分で体験して、感じとりたかったんです」(芝原さん)

仕事ではほとんど携わる機会がなかったBtoCイベントを多角的な視点から捉える機会として、講座の受講を決めました。

機会を最大限に活かす。プロジェクトを実現させる覚悟と行動力

活動のヒントを求めて参加する方がいる一方で、マイプロジェクトをすでに始めている受講者も。

東京に在住しながら、地元である新潟県妙高市で新しくプロジェクトを始めようとしていたころ、講座を見つけ、興味をもった岡本岳志さん。「地域資本を活かして事業を生み出し、継続する力をつける」という講座のコンセプトに惹かれ参加を決意したと言います。

岡本 岳志 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 /  東京の広告代理店に勤務。産学官連携のソーシャルプロジェクト開発を経て、現在はスポーツ・エンタメ領域や地域のDX支援などに従事。そのかたわら地元の新潟県妙高市にて「修験道/仮山伏」など、地域に眠る自然・歴史資源を生かし新たな人の流れを生みだすプログラムを開発中。
岡本 岳志 氏 ローカルプロデューサー養成講座第1期生 / 東京の広告代理店に勤務。産学官連携のソーシャルプロジェクト開発を経て、現在はスポーツ・エンタメ領域や地域のDX支援などに従事。そのかたわら地元の新潟県妙高市にて「修験道/仮山伏」など、地域に眠る自然・歴史資源を生かし新たな人の流れを生みだすプログラムを開発中。

大手広告代理店にて「環境」「アート」「コミュニティデザイン」「観光」など、社会テーマにおける産学官連携プロジェクトを推進するなど、業務としてイベント開催に携わる経験は少なくなかったという岡本さん。この講座に期待したことはなんだったのでしょうか。

「妙高市でのプロジェクトは、予算もなく地元の仲間や必要な人材を掘り起こして集めるところから始め、本当にゼロから作り上げる段階でした。手探りで取り組むなかで、先人たちの知見を体系的に学びたい、という想いが大きかったです」(岡本さん)

岡本さんの地元新潟県妙高市の資源を活かしたプログラムを1から立ち上げている
岡本さんの地元新潟県妙高市の資源を活かしたプログラムを1から立ち上げている

以前より、第1期の講師が手がける株式会社VILLAGE INCの取り組みは知っており、コンセプトの立て方など非常に興味深いと感じていたとのこと。そのため、講師の方にも強く惹かれる部分があったそうです。

第1期目の講師であった、株式会社VILLAGE INCの橋村さん(写真中央)。プロデューサーに求められる企画の組み立て方や、オペレーション設計などを惜しみなく教えてくださった
第1期目の講師であった、株式会社VILLAGE INCの橋村さん(写真中央)。プロデューサーに求められる企画の組み立て方や、オペレーション設計などを惜しみなく教えてくださった

プロジェクトを継続・発展させていく為にビジネスとして成立させる「経済性」を担保することは重要課題のひとつ。それを実現させる為に体系的な知識を身につけ、より迅速で細やかな対応が求められます。

「座学のなかで『こういう方向性かな』と思考を巡らせ、実際の自分のプロジェクトと照らし合わせてみる。その後、講師の方に『こういうことですか?この方向性でどうでしょうか?』と具体的な問いを投げて、自分の構想の軌道修正をかけていくイメージでした。フィールドワークは実際に講師の方に会える貴重な機会なので、積極的に活用して学びを深めていきました」(岡本さん)

「実践知」を重視するからこそ、「座学」が活きてくる

第1期のローカルプロデューサー養成講座では、佐賀県唐津市を訪れるフィールドワークを2回実施。初回の視察の際、講師の橋村さんが語った「ストーリーとヒストリー」の考え方は多くの受講生の記憶に強く残っているそう。

地域特有の歴史(ヒストリー)を知り、それをもとに新たなストーリーを紡いでいく。そのストーリーを地域の方や関係者にも丁寧に伝え続け、外にも魅力的に映るように組み立てていくことで自分たちのプロジェクトもその地域のヒストリーの一部になっていく…。

講師の橋村さん達から受け取った座学での学びも、現地を訪れることでさらに解像度が上がる
講師の橋村さん達から受け取った座学での学びも、現地を訪れることでさらに解像度が上がる

カラフェス開催地である佐賀県唐津市の波戸岬は、豊臣秀吉が朝鮮出兵に際して建てられた名護屋城の城跡があり、かつては五層七階の天守が建っていたとされる天守台、本丸御殿跡とその石垣、大手門跡などの史跡を今も見ることができる貴重な文化財となっています。

かつて豊臣秀吉など全国から150を超える名だたる武将が集結し、茶会や能を通して文化交流を重ねた名護屋城跡を舞台に「大茶会」が開催されたという逸話の流れを組み「カラフェス」へと紡いだストーリーを講師の橋村さんから聞きました。

こうした講師の話を受けた時、「わたしが大事にしていたことは合ってたんだ!」と肯定されたようで嬉しかったと語る芝原さん。

「自然環境などの地域性があってこそ、そこで生まれた歴史が存在し、現在へとつながっている。だから、まちの魅力を引き出す為に歴史を紐解くと、新たに面白いストーリーが生まれるのではないかと私自身も考えてきました。

今回のケースで言えば、入り口はフェスだったとしても『この土地は秀吉が大茶会を開いた歴史がある、すごい町なんだ』と実感できれば、地域住民にとってもシビックプライド(誇り・地域への愛着)の育成につながります。一過性ではない、持続的な価値を生みだしていく可能性を秘めているのではないかと感じます」(芝原さん)

そして、この学びを早速自身の活動に応用させた岡本さん。

新潟県妙高市で、「仮山伏ダイニング」と「修験道トレッキング」のイベントを計画している岡本さんは、「ストーリーとヒストリー」の考え方を「大義名分をつくりだす」思考へと発展させ、自身の活動に取り入れています。

「『仮山伏ダイニング』という神社の境内で実施する野外レストランの企画も、単に昔の精進料理を食べられます、ということではなく、歴史や文脈を大切にしながらも、イタリアのシェフと掛け合わせて異文化交流を図るなど、新しい価値を日々考えています

『修験道トレッキング』でも、単に歩くだけでなく、修験道の文化を学ぶ機会などを通してリトリートの要素を入れたりしています。コンセプトをしっかり打ち出し、丁寧に伝えることで、参加してくださるお客さんもそれに賛同するような方が集まるようになってきました」(岡本さん)

単純に歴史をなぞるだけではなく、来る理由となる『大義名分』をつくりだす。そのうえで、プロジェクトにどのようなストーリーを持たせるかが重要だと、岡本さんは言います。

「この『大義名分』は、お客様に向けたメッセージだけでなく、協力者との信頼関係を深める際にも欠かせない要素です。協力関係を築きたい相手のニーズはなにかを考え抜き、そのニーズに応える役割を「大義名分」を使って分かりやすく伝えるとともに、「あなたの力を貸してください」と誠実に相手にお願いする。

例えば、能力はありながらも定年退職などで活躍の場を見出せていない地域のシニアの方々に、「ここなら力を発揮できる」という機会をご用意します。地域に点在していたかれらの力を集め、関わる人々の間にシナジーを生むことで、共に成長できる環境を作ろうとしています」(岡本さん)

マイプロジェクトではなくても解像度はあげられる

以前、音楽フェスの立ち上げや運営の経験のある八木さんは、これまでの経験を活かしながら、カラフェスと自身が関わった音楽フェスとの違いをさまざまな視点で探りました。また、他の受講者と密にコミュニケーションを交わすことで、かれらが進めるプロジェクトを通して、手触り感のある学びを深めていきました。

受講生同士で学ぶを振り返る八木さん(写真中央)
受講生同士で学ぶを振り返る八木さん(写真中央)

「自ら手がけるマイプロジェクトが現在あるわけではないので、講座を通して学んだことを、岡本さんのようにすぐに活かす事はまだできていません。しかしながら、プロデュースすることに対して、解像度は確実に高まりました

以前は、何から手をつければいいのか分からない状況だったものが、実際にやる際は『このプロセスとこのポイントは押さえてやろう』とイメージがつくようになったと思います。

実際にプロジェクトを動かしている岡本さんは、もっと緻密な作戦や様々なトライアンドエラーを経験されてきたと思うので、講師としてお聞きしたいくらいです」と八木さんは笑いながら答えてくれました。

鼎談中の様子。リラックスして話される様子から皆さんの関係性が伺える
鼎談中の様子。リラックスして話される様子から皆さんの関係性が伺える

受講生全体で学びを深めようとする「ローカルプロデューサー講座」の受講生たち。フェス当日には、フェスに関わる業務マニュアルを独自でつくり、共有し合うなど、失敗も学びも惜しみなくシェアし、互いに成長を分かち合っています。

後編では、3人がそれぞれの視点から感じる講座の「価値」を中心に、受講検討中のアナタへのメッセージをお届けします。
ローカルプロデューサー養成講座詳細はこちら

Editor's Note

編集後記

この熱量の高さは「何かを生み出したい方々」だからなのでしょうか。受講生同士で知見を惜しみなく共有し、みんなで学びを加速させていく姿勢にカッコ良ささえ感じました。1期生が残したヒストリーを受け、新たな受講生がストーリーを紡ぎ、成長を続ける講座になっていく予感を感じました。

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