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LOCAL LETTER

リカレント教育が話題の今、地域注目のコミュニティ・スクールとは

FEB. 13

拝啓、地域でのよりよい教育のあり方を考えているアナタへ

現在、全国的に『コミュニティ・スクール』の設置が進んでいることをご存知でしょうか?

コミュニティ・スクールとは、教育を軸として地域コミュニティの醸成をしていく新たな公立学校のスタイル。

しかし「地域と学校が手を取り合う」と言っても、「具体的な取り組みが分からない」「そもそも制度自体を知らない」という方が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、NPO法人 教員支援ネットワークT-KNITが主催したイベント「地域未来創造カイギ 〜コミュニティ・スクール設置率100%!特別支援学校のコミュニティ・スクール実践事例から考える教育の未来〜」の様子をお届け。

NPO法人 教員支援ネットワークT-KNIT で代表理事を務める塩畑貴志さんと、特別支援学校のコミュニティ・スクール運営を5年間に渡り続けている宮本慎太郎さんに、コミュニティ・スクール実践事例から考える教育の未来を考察していただきました。

コミュニティ・スクールって何?

塩畑(以下、ソルティー):コミュニティ・スクールとは、「地域の意見も取り混ぜながら、一緒に学校教育を作っていきましょう」という制度のことです。一般的に、外部から学校教育に関わる地域側の人には、PTAや学校評議員の方がいますが、基本的に彼らには教育についての権限がないため、意見が反映されず、学校教育と地域の声がズレてしまうことも多い。ですが、コミュニティ・スクールは学校側と立場が対等なので、時には校長や教育委員会にも物申せるんです。

塩畑 貴志(Takashi Siohata)氏 (通称:ソルティー)NPO法人 教員支援ネットワークT-KNIT 代表理事、社会教育士、セルフコミュニケーションカウンセラー、岩間第一小学校 学校運営協議会委員 / 茨城県笠間市のICT支援員として2年従事した後、教員の負担軽減、働き方改革を進めるために2011年からボランティア活動を始める。その縁で笠間市のコミュニティ・スクールの立ち上げを地域側から推進し、設置に至る。その後、経験を活かし、さまざまな教育委員会のコミュニティ・スクールの立ち上げアドバイザーとして関わる。文部科学省の『地域とともにある学校づくり推進フォーラム2022』の事業を受託。

ソルティー『コミュニティ・スクール』という名の学校があるわけじゃなくて、地域と結びついて学校教育をコーディネートしていく制度ということですね。コミュニティ・スクールは、「みんなで学校運営を通じた地域づくりをしていこう」と「学校運営協議会」が立ち上がると開始できる制度です。

コミュニティ・スクールの原点は、共生社会の実現だった

ソルティー今日のイベントでは山口県立周南総合支援学校の宮本慎太郎先生にお越しいただき、宮本先生が実施されてきた事例を踏まえてコミュニティ・スクールについて深ぼっていけたらと思います。

宮本宮本慎太郎です。今日は私が今勤めている山口県の特別支援学校でのコミュニティ・スクールの取り組みをお話させていただきます。

宮本慎太郎 (Shintaro Miyamoto)氏(通称:まぐちゃん)山口県立周南総合支援学校教諭(コミスク担当兼学校運営協議会委員)、山口県光市立光井小学校 地域コーディネーター(兼 学校運営協議会委員) / 2015年から、山口県光市立光井小学校PTA会長を3年間務め、コミュニティ・スクールに初めて関わる。PTA会長の任期を終えた後は、地域コーディネーターとして現在もコミュニティ・スクールに携わる。2017年からは、当時の職場である山口県立田布施総合支援学校にて、コミュニティ・スクール事務局長として5年間コミュニティ・スクールの運営に携わり、共生社会の実現に向けてさまざまな取組を行った。田布施総合支援学校のコミュニティ・スクールは、2021年に時事通信社主催教育奨励賞にて「優良賞」を受賞。

宮本そもそも特別支援学校コミュニティー・スクールの原点は、京都市の総合支援学校のコミュニティー・スクールに出会ったことです。ここでは、地域で子どもたちを育てる風土があり、この「共生社会の実現」をしたいと目指すところからはじまります。

京都市立総合支援学校の取り組み。独居老人の方へ宅配をするための弁当をつくったり、アパート訪問をしてペットボトルを回収したりと、地域を巻き込んだ活動が目立ちます。

宮本ただ「共生社会の実現」というのは、コミュニティ・スクールだからというわけではなく、一般的な学校でも目指している目的なので、「コミュニティ・スクールに求めたいものはなんだろうか」と考えながら、地域ならではのコミュニティ・スクールの方向性を模索していきました。

特別支援学校のコミュニティ・スクールの方向性を決めた、2つの出来事

宮本地域でコミュニティ・スクールの学校運営協議会を立ち上げ、コミュニティ・スクールの方向性を考える中で、学校の卒業生にアンケートを実施して。楽しかった行事は何か?」「田布施総合支援学校のいいところは何か?」「未来はどんな学校になって欲しいか?などを、卒業生や保護者に対して質問しました。

宮本特に多かった回答は「地域の人と仲良くなりたい」「社会体験を増やしてほしい」「学校をもっと紹介してほしい」という意見でした。このアンケートの回答結果が田布施総合支援学校のコミュニティ・スクールを運営する上で、大きなポイントとなっていますね。

アンケートの回答の中でも参考になった声は、「田布施総合支援学校が知られていない」という言葉です。学校が知られてないということは、もしかすると、障害(をもつ生徒のこと)に関しても認知されていない可能性があり、その事実が私たちの活動を大きく変える一言となり、広報範囲を広げて、「共生社会に向けての発信をしていこう」と意識統一を行いました。

コミュニティ・スクールの事例発表!

宮本ここからは、私たちが実施したコミュニティ・スクールの事例を抜粋してお伝えしていきます。

①広報づくり

宮本まずは、コミュニティ・スクールの広報「コミスクだより」。現在71号まで発行しており、全て自分たちの手でつくっています。

宮本最初は教員と保護者だけに配布していましたが、学校周辺地域への回覧、町内の各施設(町役場、学校)への掲示へと広げ、さらにホームページからも発信しています。あとは県内の他の総合支援学校にも配布していて、結果的に「見学したい」「教えてほしい」と問い合わせも増えています。

②地域作品展

宮本私たちが参考にしたコミュニティ・スクール『京都私立西総合支援学校』で実施していたアイディアを元に、子どもたちの作品を地域に展示する企画「地域作品展」を行なっています。地元の郵便局の一角をお借りして作品展をはじめ、現在5年目になります。

③運動会で地域のみんなとダンス!

宮本これまでの運動会では、児童生徒全員が集まって踊るだけでしたが、コミュニティ・スクールの導入が始まってからは、児童の中に保護者や地域の人たちも入って、全員でダンスを踊っています。

④勉強会・交流会

宮本「先輩お母さんと語ろう会」や「障害年金についての勉強会」などの勉強会・交流会も企画しています。毎回50人ほどのお母さんが集まり、その後の交流も深まっています。

⑤教職員研修

宮本「特別支援学校の子どもたちの指導で悩んでいる教員がいる」と知ったことがきっかけではじまった教職員研修もあります。地域の総合支援学校の教職員に呼びかけて「悩みを聞く会」を開き、勉強会、教材研究にまで発展しています。教員の通常の研修と絡む部分もあり、有意義な企画になりましたね。

⑥有志による学校の大掃除

宮本チラシを配って有志で大掃除をしたことも。最初は10人くらいだったのに、回を重ねるごとに人が増え、最後は子どもがどんどん来てくれて、約50人くらいで一気に学校の大掃除をしましたね。 

宮本その他、ゲストティーチャーを招き授業をしてもらったり、アート作品を展示したり、さまざまな企画を実施してきました。

高等部が移転したら、コミスク農園ができた! 

宮本さらに、2020年9月に田布施総合支援学校の高等部が他所へ移転するため、余った農園や空き教室の使い道も話し合っていて。地域の方も含めた協議会で話を進めていきました

宮本協議会メンバーと相談する中で出てきたのが「コミスク農園」。学校の子どもや地域の人たちと一緒に、安納芋の苗を植えて収穫する一連の体験をしています。

多くの関わりが広げる、教育のフィールド

宮本これまでは私たちが実施してきた事例を紹介をしてきましたが、ここからはこの5年で生まれた変化についてご紹介したいとおもいます。

まず、コミュニティ・スクールを始めたことで大きく変わったのは「学校に関わる人たちの多さ」です。当初は、学校と密接に関係する人たちだけの関わりでしたが、現在は町のクラブやメディア、地域の小中学校や老人クラブまで、多岐に渡った関わりが生まれています。

コミュニティ・スクールを始める前の関係者
コミュニティ・スクールを始めた後の関係者。圧倒的に、双方に向いている矢印の数が増えていることがわかる。

宮本もちろん新型コロナウイルスの影響で学校の休校やコミュニティ・スクール活動制限などもありましたがホームページを駆使して子ども達の旺盛な意欲を取り上げてもらった結果、外部への発信は広がっています。

さらには、コミスク便りを参考にしてくれる学校も出てきており、私たちとしても非常に嬉しく思っています。このような活動が評価され、時事通信社が主催する教育奨励賞の優良賞も受賞しました。

宮本個人的には、教育は社会の基盤であると思っていて、人を作ることは地域を作ることであり、地域がよくなるとそこに人が来るという循環だと思うんです。その好循環を生み出す起点がコミュニティ・スクールです。

今日改めて5年間を振り返りながら思ったことは「教育のフィールドを広げる」ことの重要性です。コミュニティ・スクールは学校・保護者・地域、いろんな人と関わることによって広い視野でものごとを見つめることができる、最良のシステムこれは特別支援学校だけではなく、他の学校全般にも言えることだと思います

Editor's Note

編集後記

「コミュニティ・スクール、総合支援学校のことを知らせたい」、その情熱が広がって成功した秘訣は、総合支援学校に寄り添った企画であることと、宮本先生ご自身が積極的に人とのつながりを持たれたことでしょう。共生社会を目指す最初の一歩は、人との関わりを真摯に持つこと。その大切さを学ぶことができました。

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