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LOCAL LETTER

「改革に自惚れた改革」にならないために。自治体改革の実現に向けて、今、職員と組織に求められること(後編)

FEB. 16

前略、自治体職員としてあるべき姿を模索している公務員のアナタへ

行政組織においてはトップの意見が意思決定に大きく反映される。役職のない職員にとっては、ときに歯がゆい思いをすることもあるだろう。

時代が大きく変化する中で、行政組織のリーダーは組織や職員をどのように考えているのだろうか。

そんな疑問をもつアナタに向けて今回は、地域経済を共に動かす起業家のためのサミット「SUMMIT by WHERE」を開催。第1回目は、完全オンラインにて、日本各地30箇所以上の地域から、第一線で活躍する官民学の方々が集まりました。

中でも本記事では、「自治体改革の実現に向けて、今、職員と組織に求められること」について、小紫 雅史氏(奈良県生駒市 市長)、東 修平氏(大阪府四條畷市 市長)、上村 一郎氏(香川県東かがわ市 市長)、加藤 年紀氏(株式会社ホルグ 代表取締役 奈良県生駒市役所 職員)の豪華4名のトークをお届け。

これからの行政組織・職員に必要な考え方が語られました。

前編記事はこちらからご覧いただけます

市長自らが「背中を見せること」が大切

加藤氏(モデレーター:以下、敬称略):行政においてはKPIを立てるのがすごく難しい領域があるのではないかと感じていますが、東市長は今までKPIをつくってきた中で、難しかった領域はありますか?

写真右上> 加藤 年紀(Toshiki Kato)氏 株式会社ホルグ 代表取締役 奈良県生駒市役所 職員 / 「地方自治体を応援するメディア」「地方公務員アワード」「地方公務員オンラインサロン」等を運営。著書「なぜ、彼らはお役所仕事を変えられたのか?(咢堂ブックオブザイヤー2019受賞)」。株式会社LIFULLインドネシア子会社COO/取締役(H24~28)。三芳町魅力あるまちづくり戦略会議政策アドバイザー(H30)。
写真右上> 加藤 年紀(Toshiki Kato)氏 株式会社ホルグ 代表取締役 奈良県生駒市役所 職員 / 「地方自治体を応援するメディア」「地方公務員アワード」「地方公務員オンラインサロン」等を運営。著書「なぜ、彼らはお役所仕事を変えられたのか?(咢堂ブックオブザイヤー2019受賞)」。株式会社LIFULLインドネシア子会社COO/取締役(H24~28)。三芳町魅力あるまちづくり戦略会議政策アドバイザー(H30)。

東氏(以下、敬称略):基本的にKPI立てることができていない場合は2種類あって、1つはそもそもKPIによる管理が向いていない場合、もう1つは脳に汗をかいていない場合です。

脳に汗をかいてない場合は、汗をかいたと感じ答えが出るまで、私たちは「うん」とは言いません。私たちの市役所では、4つの大きなゴールを掲げており、基本的に全てこの4つの指標に紐付く形で各事業のKPIを設定しています。KPIを立てることが難しい場合は、常にその4つの柱のどこかに必ず紐づくように職員にも考えてもらっています。

写真左上> 東 修平氏(Azuma Shuuhei)大阪府四條畷市市長 / 外務省、野村総研インドを経て、2017年1月から大阪府四條畷市長に就任。その後、公約であった副市長の全国公募を実行し、0歳児を持つ女性副市長とともに、公民連携による施策を多数展開。11年ぶりの人口増加を達成。日本一前向きな市役所を目指し、(一社)at Will Work主催の WORK STORY AWARDで2019年、審査員特別賞を受賞。
写真左上> 東 修平氏(Azuma Shuuhei)大阪府四條畷市 市長 / 外務省、野村総研インドを経て、2017年1月から大阪府四條畷市長に就任。その後、公約であった副市長の全国公募を実行し、0歳児を持つ女性副市長とともに、公民連携による施策を多数展開。11年ぶりの人口増加を達成。日本一前向きな市役所を目指し、(一社)at Will Work主催の WORK STORY AWARDで2019年、審査員特別賞を受賞。

加藤:上村市長は、自治体改革の実現に向けて、具体的にどのような取組みをされていますか?

上村氏(以下、敬称略):「俺の背中を見ろ」というわけではありませんが、自分が積極的に地域に関わっていく姿をまず見せなきゃいけないと思ってます。「このまちのためならあの人何でもやるね」と住民の皆さんに言ってもらえるようにしなければならないと考えていまして。

時には、香川県のYouTuberさんと一緒に全身タイツ着たり、被りものを被ったりして、コンテンツを全世界に向けて配信することもあります。

他にも、中学生や高校生と話す場をセッティングしてもらったり、今回のようなイベントに登壇させてもらったりすることも含めて、僕自身が率先して、新しいことに挑戦していていく姿を見せています。こうすることで、職員も「ここまでやっていいんだ」と、心理的ハードルが下がっていくと思うんですよ。

写真左下> 上村 一郎(Ichiro Uemura)氏 香川県東かがわ市 市長 / 中学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、中央大学法学部に入学/卒業。(株)電通パブリックレーションズに入社、(株)電通での出向勤務を経て、香川へUターン。参議院議員の地元秘書として3年間勤務、1年間の選挙活動後、2019年4月、38歳で東かがわ市長選挙に当選。コロナ禍では子育て世代や市内企業向け支援策を4月に開始する等、早期対応を実践。
写真左下> 上村 一郎(Ichiro Uemura)氏 香川県東かがわ市 市長 / 中学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、中央大学法学部に入学/卒業。(株)電通パブリックレーションズに入社、(株)電通での出向勤務を経て、香川へUターン。参議院議員の地元秘書として3年間勤務、1年間の選挙活動後、2019年4月、38歳で東かがわ市長選挙に当選。コロナ禍では子育て世代や市内企業向け支援策を4月に開始する等、早期対応を実践。

加藤:人事面での取組みはありますか?

上村:人事的なところでいうと、地域創生課という部署があります。この課は地域づくりに挑戦していく部署なのですが、今年の春に人員を増強しました。

部署の人たちは、非常に厳しいご意見もいただくことありますが、日々尽力してくれています。

あとは、自治体は住民の皆さんの安全安心を守っていかなければならない部署もあるので、今はコロナに対して自治体がどう考えているのかを皆さんに分かってもらえるように、人事的に攻めるところは攻めていこうと考えています。

マイクロマネジメントをせずに、大局的な視点で自治体を運営する

加藤:続いて東市長、具体的な自治体改革の取組みを教えてください。

東:私自身は、マイクロマネジメントは絶対にしないと心掛けています。まだ徹底できてないときもありますが、必ずここを意識しています。私がやる仕事は、今行っている取組み、策定してる計画の目線が、本当に住民側にあるのかをチェックすることです。内向きの論理は当然出てくることがあります。「これ何でこういうふうに設定したの?」と聞いたとき、「他部署との調整が難しいので」とか、「他の市ではこうなので」という内向きの論理が表面に現われている時には、絶対にGOサインは出しません

この姿勢を貫くと、すごく職員が嫌そうな顔をすることもありますが、最終的にNOと言える権限が与えられてるのは、自治体の中では首長だけです。首長が「職員に嫌な顔されるかな」などと考えてしまったら、誰も止めれなくなってしまいます。そこは申し訳ないなと思いながらも、職員とは違う目線を持つようにしています。

副市長のほうが組織内の調整マネジメントをやっているので、内部の人事など副市長に託して、私はNOという役割を担う、そんな役割分担で人事改革をやっていますね。

加藤:そうすると、マイクロマネジメントの部分は副市長にお任せして、東市長は比較的俯瞰的に大きなものをやっている。そんなような棲み分けをしているってことですね?

東:そうですね。俯瞰的に物事判断する以上、計画などが直前に私のところに来た際に、「計画の骨格そのものが違う」と指摘することもあります。

「何のための仕事か」を明確化することで、職員は迷わずに進める

小紫氏(以下、敬称略):マイクロマネジメントの話は、私も結構耳が痛くて、私が極端な改革スタンスに立ってしまうことで起こる1つの弊害が、ここにあります。マイクロマネジメントは、市長の私の仕事としては減らしていかなきゃいけないと思ってるんでが、どうしてもマイクロ部分にも手を出してしまうので、そこは反省しながら仕事しています。

生駒市がとにかく大切にしているものが「人」なのですが、人というものは、職員採用だけに気を配れば良いというものではありません。まちづくりは、職員だけでは絶対完結しないものです。

特にこれからは地域内だけでなく地域外も含めた事業者や専門家の方など、生駒市の取組みを気に入ってくれて、定住まではいかないにしても生駒市のファンになってくれる方、そんな方をどう巻き込んで、まちづくりをするかが大切になってきます。「地域に飛び出す」という上村市長の話とも繋がりますが、多様な人々を巻き込む活動が必要です。

加藤:今まで掲げている理想像に対して、「うまくいかなかったな」という取組みはありますか? 自治体改革では特に失敗部分も参考になるなと思っています。

上村:失敗と言えるかはわかりませんが、僕が住民の皆さんと話した中で、「あ、これいいな」と思ったアイディアを職員に渡す時の「渡し方」が難しいと感じています。頭から終わりまで、僕が全てできるわけではないのですが、とは言え、「こんな話があったからやっといて」と無茶ぶりしてもいけません。そのあたりのバランスを取るために色々と試しています。

例えば、「こんな話あったから、今の制度の中でちょっとやってみて」だったり、自分が当事者の方とある程度話を詰めた上で、「ここでこんな話なってるから、引き続きお願い」といったように、ある程度まで自分が関与する形で仕事を渡すようにしています。

中には、話が完全に立ち消えてしまったものとか、話を振ったけど、半月ぐらい全然音沙汰がないものもあります。反対に、話を振って1日、2日ですぐに報告持ってきてくれるものもあります。

加藤:職員がスムーズに仕事に移行できるようにするためには、具体的にどのような点に注意していますか?

上村:目的をちゃんと伝えることが大事ですね。もちろん、最終目標は住民の皆さんのためではありますが、それより1個下の目標で、例えば「住民の方の中でも、このターゲット層のためにやってるんだ」とか。

職員自身が何にために取り組んでいるのか分からなくなってしまうと、「市長が言ったから」と他人事になってしまう。「何のためにこの仕事をやろうとしているのか」を明確化することが大切です

それぞれの市長が考える、これからの行政組織と職員のあり方とは

加藤:続いて、東市長に「自治体改革の失敗事例」を教えていただければと思います。

東:上村市長がおっしゃる通り、新しいものを外部から持ち込むときは、組織に浸透していないので、継続されないことが多いと感じます。組織のそれぞれの手や足や肩、頭になぞらえると、それぞれの状態が分からない中で進めても、結局全体としてうまく動いてくれません。就任して3年半になりますが、うまくいかなかったなと思うことのほうが多いです。

今はこれらを反省点として、組織内部の健康状態を耐えず指標化して分かるようにしてあります。このような取組みが今ようやく機能し始めたかなと思っています。

加藤:小紫市長はいかがでしょうか?

小紫:結構近い内容ですが、私も市長5年目で「土壌づくりをもっとしっかりとやっておかなければな」と思っています。どうしても首長の任期は4年なので、4年で物事を考えてしまいがちです。しかし、先進的な取組みや、良い取組みは、もっと違う枠組みで考える必要があると感じています。

たとえ、新しい取組みを実施しても、職員に当事者意識が感じられないと、次に職員が自分たちの頭で考えて展開していくことに繋がらない。そうすると、結局首長や一部の職員だけがやってる状況になっていくんだろうなと思います。

私も新しい政策を考えるのが好きなので、色々なことを職員にお願いしたり言ったりしますが、ビジョンとかミッション、バリュー、行動指針に基づいて、ある程度職員に任せられるような組織が理想だと思っています。そのための組織づくりをどうするかという点がまだ課題です。

加藤:最後に、行政組織とその職員は今後どうあるべきか、皆さんに伺います。

上村:職員の皆さんには、仕事以外に色々な経験を積んでほしいです。行政はすごく忙しいところで、季節によっては大量の作業を抱えざるを得ないところもあります。ただ、そればかりではなくて、家族で出かけてみるとか、リモートで離れた場所にいる友達とやり取りしてみるとか。外に出て自分からインプットしていく機会を増やすことが重要だと思っています。

組織としては、職員の自由な行動をできるだけ配慮していきたいと思っていますし、仕事以外のところで得てきた経験や知識を組織の中に持ち込みやすい風土ができたらいいなと思っています。

加藤:いいですね。そんな組織で働きたい方はぜひ応募して、面接を受けてみてください。続いて東市長よろしくお願いします。

東:上村市長に同意ですが、部長級のレベルと役職が付いてない職員では与えられてる情報量が違いますから、きつい言い方になるかもしれませんが、役職がない職員が見えていない世界について不満を言っても仕方がありません。まだ得られない情報の中で意思決定されているわけですから、あまり歯向かってもしょうがないかなとも思うんです。

役職が上がるほど仕事では外部から情報を得ることの比重が増します。役職が付いていない職員は目の前の仕事をいかに全力でこなすか、各人のレイヤーに応じた仕事をきっちりこなすことが大切だと思います。

小紫:今のレイヤーの話は議論したいなと思ってます。大切なことは、本当は2つだけで、職員へのメッセージとしては、生駒市で過ごすことを誰よりも楽しんでほしいと思っています。働き方改革も結局はそういうことのような気もするし、いかに生駒市を、自身が働く以外で暮らしの中で楽しんでいくかを追求してほしいです。

これは賛否があるかもしれませんが、公務員に終身雇用がなくなっていくであろう中で、やめても食べていける人になってほしいと思っています。とにかく、生駒市役所から吸収できることはいくらでも吸収してもらい、組織側はそれぞれの職員が成長する機会をきちんと提供できる体制にしていきたいです。

草々

Editor's Note

編集後記

一言で市役所と言っても、それぞれで市長や職員の関わり方は大きく異なる。

最終的な意思決定に市長が責任を持つことには変わりないが、日々のマネジメントやプロジェクトの舵取りにどう関わるか、職員の自主性にどこまで任せるかは、組織の数だけ答えがある。

3市長のマネジメントや組織・職員への考え方や苦労を肌で感じることができたセッションでした。

これからもSUMMIT by WHEREの応援をよろしくお願いします!

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