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LOCAL LETTER

異業種コラボの始め方。同じ目線のコミュニケーションから生まれる「共創」

SEP. 30

JAPAN

拝啓、ボーダレスな共創で新たな事業を創ってみたいアナタへ

※本レポートは「地域経済サミットSHARE by WHERE in 東海 – 結ぶ東海 –」内のトークセッション「共創x新規事業|越境して興す事業創造」を記事にしています。

地域との結びつきによって、何が生まれていくのか?

経済・文化・人流の結びつきが強いと言われる東海。地域経済の実践者が集い、結びつきを深めることで新たな価値がつくり出されていきます。

本記事では、さまざまな背景を持つ登壇者が業種の垣根を超えて「協創」について熱く語るトークセッションをまとめました。異業種とのコラボレーションを数多く生み出し、事業の可能性を広げ続けている実践者4名のリアルなお声をお届けします。

ビジネスの大きさに左右されない”身軽さ”が事業共創のカギ

高嶋 舞氏(モデレーター、以下敬称略):モデレーターを務める岡崎ビジネスサポートセンターセンターの高嶋です。私は愛知県の岡崎市で中小企業の相談所を、10年前から市と一緒にやっています。

1年間で受ける相談は3,000件以上、新規事業についてはこの10年間で1,000件近く生み出すお手伝いをしてきました。

今日は新しい事業をどう作っていくのか、他の事業者の方と一緒にどのようにコラボレーションしていくのかについてディスカッションしていきます。それでは、みなさん自己紹介をお願いします。

高嶋 舞(たかしま まい)氏 岡崎ビジネスサポートセンターセンター長 / 大岡崎ビジネスサポートセンター「オカビズ」は、10年間で相談件数が2万5千件、約1,000の新事業・新サービスの立ち上げをサポートする、行列が絶えない中小企業のビジネス相談所。著書『怒らなくても「自分からやる子」が育つ親の言動○△×』(サンマーク出版)
高嶋 舞(たかしま まい)氏 岡崎ビジネスサポートセンターセンター長 / 大岡崎ビジネスサポートセンター「オカビズ」は、10年間で相談件数が2万5千件、約1,000の新事業・新サービスの立ち上げをサポートする、行列が絶えない中小企業のビジネス相談所。著書『怒らなくても「自分からやる子」が育つ親の言動○△×』(サンマーク出版)

新美 泰樹氏(以下敬称略)僕は愛知県知多市の岡田というところで、「OKD KOMINKA BREWING(オーケーディー コミンカ ブルーイング)」を立ち上げ、クラフトビールを作っています。始めてから5年ほど経ちました。

一昨年には古民家を改修して「SoN(ソン)」という複合施設をオープンさせました。SoNはOKDのビールが楽しめるだけでなく、まちのコーヒースタンドやコワーキングスペースも兼ねています。

「地域再生」というと格好良すぎるかもしれませんが、とにかく楽しいことをして「昔の文化をもう一回新しい形で作っていこう」という思いで活動しています。

新美 泰樹 氏(にいみ たいき)氏 株式会社PLUS OKD代表取締役 / 愛知県知多市で竹新製菓㈱の長男として生まれる。34歳で新たな挑戦を求めて東京へ飛び出し、クラフトビールに出会う。徳島や鳥取で醸造の知識を深めたのち、地元・知多市岡田で2019年にOKD KOMINKA BREWINGを立ち上げ、2021年には株式会社PLUS OKDを設立。2022年には古民家複合施設「SoN」をオープン。
新美 泰樹 氏(にいみ たいき)氏 株式会社PLUS OKD代表取締役 / 愛知県知多市で竹新製菓㈱の長男として生まれる。34歳で新たな挑戦を求めて東京へ飛び出し、クラフトビールに出会う。徳島や鳥取で醸造の知識を深めたのち、地元・知多市岡田で2019年にOKD KOMINKA BREWINGを立ち上げ、2021年には株式会社PLUS OKDを設立。2022年には古民家複合施設「SoN」をオープン。

水野 智路氏(以下敬称略)愛知県瀬戸市で「練り込み」という技法を使って陶芸をしている水野智路です。練り込みは異なる色の粘土を混ぜ合わせて模様を作る技法で、金太郎飴のように断面に模様が現れるのが特徴です。

僕が住む瀬戸市の「瀬戸」は、「せともの」という言葉の語源になっています。ですが、名古屋や東京などの遠方に行くと「瀬戸」と聞いて瀬戸内海を思い浮かべる方が多いようです。僕はこの「瀬戸」を陶芸の地として再認識してもらいたいと思い、活動しています。

また、プロダーツプレイヤーとしても活動していますので、ぜひ覚えていただければと思います。よろしくお願いします。

水野 智路氏(みずの ともろ)氏 練り込み陶芸家 / 2008年から作陶を始め、練り込み技法を駆使して作品を制作。全国各地の百貨店やギャラリーで個展を開催し、愛知県瀬戸市の魅力と練り込み技法を伝える。SNSを活用した情報発信にも注力し、インスタグラムのフォロワー数は17万人を超える。
水野 智路氏(みずの ともろ)氏 練り込み陶芸家 / 2008年から作陶を始め、練り込み技法を駆使して作品を制作。全国各地の百貨店やギャラリーで個展を開催し、愛知県瀬戸市の魅力と練り込み技法を伝える。SNSを活用した情報発信にも注力し、インスタグラムのフォロワー数は17万人を超える。

細井 広康氏(以下敬称略):株式会社アイシン新事業創出部の細井です。アイシンは自動車部品を製造するメーカーです。EVをはじめとした変化する自動車産業の環境に対応しつつ、車以外の新しい事業も模索していく必要があると考えています。現在、さまざまな挑戦をしているところです。

細井 広康氏(ほそい ひろやす)氏 株式会社アイシンVC事業センター 新事業創生ラボ 新事業創出部部長 / 1972年愛知県生まれ。1996年に(株)アイシンに入社し、デザイン部にて工業デザインに従事。2015年に新事業創出部に異動。パーソナルモビリティILY-Aiの企画、開発に従事。2023年新事業創出部部長に就任、現在に至る。
細井 広康氏(ほそい ひろやす)氏 株式会社アイシンVC事業センター 新事業創生ラボ新事業創出部部長 / 1972年愛知県生まれ。1996年に(株)アイシンに入社し、デザイン部にて工業デザインに従事。2015年に新事業創出部に異動。パーソナルモビリティILY-Aiの企画、開発に従事。2023年新事業創出部部長に就任、現在に至る。

高嶋:アイシンさんは、さまざまな新規事業に取り組んでいらっしゃいますよね。AIを活用した音声認識アプリや、最近では静岡の製茶問屋と協力した新ジャンルのお茶の開発もされていると伺っています。非常に幅広い事業を展開されている印象ですが、現在はどのような軸で事業を展開されているのでしょうか。

細井:実は、なにを軸で進めていくかは絶賛考え中なんです。まずは車以外の分野で社会に貢献できることを模索していて。アイシンには多くの技術があるので、新しい事業の種があれば「とりあえずやってみよう」というスタンスで勧めています。まだ形になっていないものもありますが、まずは試してみるという形で進めています。

高嶋:そうなのですね。大企業では目標設定が非常に高くなったり、物事のスケールが大きくなり過ぎることもあるのではと想像していました。

細井確かに企業の大きさによって最終的に求められる規模感はあります。ですが最初からそこを目指すのではなく、まずは小規模で始めています。さなビジネスの種から徐々にストーリーを描いていけば、どんどん新規事業も進めていけるのではないかと思います。

コミュニケーションの中で新しい共創は生まれていく

高嶋:ここからは、今回のディスカッションのテーマである「共創」について伺いたいと思います。みなさん多種多様な業種とコラボレーションされていると思いますが、新しい事業を生み出す際にどのように始めているのかお伺いできればと思います。

水野:僕は基本的にSNSでの活動からコラボに繋がることが多いです。SNS上で自分ができることをアピールしつつ、見た人からどんなリアクションが返ってくるかを待ちます。種をまいて、その成長を見守るような形です。ガツガツ営業するよりも自然の流れに任せるタイプで、その結果うまく波に乗ることができることも多々あります。

高嶋:水野さんはアパレルブランドのBEAMS(ビームス)や、自動車のLEXUS(レクサス)といったブランドと一緒に器を作られていますよね。

水野:はい。BEAMSさんとのコラボレーションは、もともと愛知で業務用冷蔵庫などを製造されているホシザキ株式会社さんとの繋がりのなかで生まれたものなんです。僕のインスタグラムの投稿を見たホシザキさんが声をかけてくださって。

BEAMSさんとホシザキさんのコラボレーション企画に僕も参加する形で、ホシザキさんの企業ロゴであるペンギンをモチーフにした器を制作しました。まさにSNS上で生まれた交流を大切にしていくと、自分でも思いがけない形で実を結ぶことがあると実感した企画でしたね。

水野さんのInstagram投稿より
水野さんのInstagram投稿より

高嶋:新美さんは、これまでにどのようなコラボレーションをされてきましたか?

新美:今でこそ多くの企業とコラボする機会に恵まれていますが、醸造所を始めた当初は誰かとコラボする予定は全くありませんでした。最初のころは自分が思い描くように醸造をハンドリングができず、軌道にのるまで苦戦していました。

1年間ぐらい悩みに悩み、ある程度評価していただけるビールが作れるようになってからコラボの話が舞い込むようになりました。

当初はそれも断っていたのですが、1種類、2種類、3種類のビールしか作らないのは面白くないなと思うようになって。逆にコラボレーションの提案を受け入れることで、技術を磨いていこうと決めたんです。そこからは地元の野菜を使ったり、造園業や美容院といった本当に異業種とのコラボが始まりました。

高嶋:誰とコラボレーションするかを選ぶときの、基準のようなものはありますか。

新美「どこと」組むか以上に「誰と」組むかを重視しています。すでに関係値がある人や、面白い人と共創していきたい。例えば造園屋さんとコラボする場合でも事業の内容より、どんな人が造園しているのかに着目します。「この人と一緒にやるならこういうビールの使い方をしたい」という発想で企画を進めていくことが多いです。

美容院とのコラボも、高校の同級生が独立したタイミングが重なり「彼のためにビールを作りたい」と考えたことがきっかけです。会社としても「全ては人」という考えを大切にしているので、人を基準にコラボの判断をしています。

細井:すごくよくわかります私は共創の形には2つあると思っていて、1つはお互いの足りないところを補ったり、やりたいことがマッチして始まるパターン。もう1つはコミュニケーションの中で生まれていくパターンです。後者のパターンであれば、人が基準になってきます。

打ち合わせのときに「こういうところを一緒にやったら楽しいのではないか」「もう1回会ってみよう」といった話からコラボレーションに繋がっていきます。何気ない雑談の中で生まれていく共創も多々ありますよ。

お互いの「強み」を活かすコラボレーションのためには、目標設定が不可欠

高嶋: みなさん様々な企業・業種との協業を経験されている方ばかりだと思います。これまでのコラボで、上手くいかなかったものはありますか。

水野: そうですね、先方の事情で上手くいかなかったケースはあります。例えばコロナ禍の影響で打ち合わせがうまくできずにいた案件で、(新型コロナが落ち着いた)2年後に突然値段を下げてほしいと言われて、折り合わなかったこともありました。

あとは練り込みの技法でどうしても生まれてしまう柄の歪みについて、事前に必ず説明するようにしていてもコラボ先の上層部の方から「歪んでいる」と文句を言われてしまったこともあります。

とはいえSNSで僕のことを知ってからコラボを持ちかけてくださる方が多いので、スムーズに進む案件がほとんどです。

高嶋:「水野さんだからコラボしたい」「水野さんの作品で生まれる柄や陶芸が好き」が前提にあるから、順調に進むのかもしれませんね。新美さんはどうですか。

新美: OKDの場合は企業だけでなく個人の方からも「誕生日会で使いたい」といった要望をもらうことがあります。コラボレーションのハードルとしては、気軽に感じていただけてるようです。

ただその分、OKDのビールを1度も飲んだことがない方からオファーが来ることがあって。そんなときは岡田にある店舗に来てもらい、まずはビールを味わってもらうところから始めていますね。

当たり前のことかもしれませんが、実際に「美味しい」と思ってもらってからでないと、コラボがうまくいかないことが多いですから。

高嶋: 飲んだこともないのにコラボを提案するのは少し失礼に感じますね。

新美:コラボするからには、OKDにとっても先方にとっても得になるようにしたい。どんなビールを作ったらお互いの特徴が活きるのか、ストーリー性まで考えて進めていくので、飲んでいないことを理由にすぐお断りすることはないですが「まずは飲んでみて!」と伝えるようにしています。

細井:相手のことをお互いにしっかり理解して、同じゴールを目指しているかを確認することが大切ですよね。相手が目指しているものとこちらが目指しているものがずれていると、結局うまくいかないことが多々あります。

最初から「同じゴール」までは決められなくとも、「向かう方向性」は同じであるようにすり合わせてからコラボするようにしています。

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Editor's Note

編集後記

リアルな経験から話される協業の話がすごく刺激的でした。誰もが知るような大企業とのコラボレーションも、きっかけは地道な人との繋がりから始まっているのが印象的でした。

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