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LOCAL LETTER

100年後も家族で暮らしたい地域を作る。村づくりを体験する「旅するクラスルーム」が石川県珠洲市で開校

OCT. 14

拝啓、子どもたちと地域の未来を創りたいアナタへ

全てのこどもたちに「新しい義務教育の選択肢」を提供することを目的に始動した「地域特例校100校開校プロジェクト」。地方自治体と連携し、「子どもたちが学びたいものを学べる、子どもたちが通いたい学校」を全国に100校設立することを目指している。

 地方行政との包括連携協定第一号は石川県珠洲市。その珠洲市での取り組み第一弾として、2022年10月22日-23日に「旅するクラスルーム(珠洲クラス)」が開催される。

「珠洲クラス」主催者の一員であり、運営を担っている、株式会社こみんぐる取締役の林俊伍さんに、参画の背景や想いを聞いた。​​

林 俊伍(Shungo Hayashi)さん 株式会社こみんぐる 取締役 / 金沢市出身。大学卒業まで地元金沢で過ごし、大手商社への就職を機に東京・名古屋で計7年を過ごす。2016年に金沢へUターンし、妻の佳奈さんと株式会社こみんぐるを創立。「100年後も家族で暮らしたい金沢を創る」を掲げ、金沢市内に『旅音』というブランドで、22棟の宿を運営。https://comingle.net/ 宿はあくまでも手段で、目的は持続可能地域の発展に貢献すること。
林 俊伍(Shungo Hayashi)さん 株式会社こみんぐる 取締役 / 金沢市出身。大学卒業まで地元金沢で過ごし、大手商社への就職を機に東京・名古屋で計7年を過ごす。2016年に金沢へUターンし、妻の佳奈さんと株式会社こみんぐるを創立。「100年後も家族で暮らしたい金沢を創る」を掲げ、金沢市内に『旅音』というブランドで、22棟の宿を運営。https://comingle.net/ 宿はあくまでも手段で、目的は持続可能地域の発展に貢献すること。

子どもたちの「やりたい/なりたい」想いを引き出す「旅するクラスルーム」

 2022年8月1日、地域特例校100校開校プロジェクトの推進母体である「教育ジャパン3776地域コンソーシアム」と石川県珠洲市は、地域創生と新しい教育の融合「教育移住プロジェクト-そして新しい珠洲のまちづくりへ―」について相互に連携・協力する包括連携協定を結んだ。 

包括連携協定締結式(左:泉谷 満寿裕珠洲市市長 / 右:中島武教育ジャパン3776地域コンソーシアム代表)
包括連携協定締結式(左:泉谷 満寿裕珠洲市市長 / 右:中島武教育ジャパン3776地域コンソーシアム代表)

珠洲市を体験する活動の第一弾として、2022年10月22日-23日に同市真浦町の現代集落で開催されるのが「旅するクラスルーム(珠洲クラス)」である。

旅するクラスルームとは、親子で地域に滞在し、地域の伝統工芸や地域の特色を活かした体験学習に参加するプログラム。短時間の体験ではなく、泊りがけで十分な時間をかけ、リアルに没頭することで、子どもたちの「やりたい/なりたい」想いを引き出すことを目的としている。

旅するクラスルームサービスイメージ(Komforta Workation より)
旅するクラスルームサービスイメージ(Komforta Workation より)

初回の「旅するクラスルーム」は2021年に石川県金沢市で、加賀友禅絵付け体験をテーマに開催された。このときの子どもたちの没頭ぶりと、それに感動して涙を流した保護者の姿が、地域特例校100校開校プロジェクト設立のきっかけともなった。この時、宿泊施設を担当した株式会社こみんぐるが、今回の「珠洲クラス」を企画・運営する。

村づくりの実験の場で、0から1を作る体験を

株式会社こみんぐるは、代表の林佳奈さんとパートナーの林俊伍さんが「100年後も家族で暮らしたい金沢を。」の想いで、2016年5月に創業。現在は、金沢の古民家を活用した一棟貸切宿泊施設「旅音」の企画・運営を主な事業として営んでいる。

こみんぐるWebサイト 
こみんぐるWebサイト

教育関連の事業は手がけていない、こみんぐるが、なぜ今回の地域特例校100校開校プロジェクトに参画したのか。そのきっかけを林さんはこう語る。

「自分たちがやろうとしている『100年後も、家族で暮らしたい地域づくり』において、教育は重要な要素だと考えていました。そこに、知人から『面白い人がいる』と紹介されたのが、地域特例校100校開校プロジェクト発起人の中島武さんだったんです。話をしていて、中島さんのやっていることと自分たちの方向性が合っていきそうだと感じました」(林さん)

この出会いから生まれたのが、「現代集落で村づくり体験!」をテーマとする、今回の珠洲クラスルーム。

珠洲クラスリーフレット
珠洲クラスリーフレット

“現代集落” とは、林さんが手がけるプロジェクトの一つ。能登半島の最北部近くに位置する石川県珠洲市真浦町で「限界集落」を「現代集落」に変えることを目指す。

水や電気や食を自給自足できる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を、先人の知恵とテクノロジーで実現しようとしている。現在は、第1期工事としてシェアハウスのリノベーション、自家発電装置の導入、農作放棄地の開発に着手した段階である。

「僕たちは、『100年後も家族で暮らしたい地域を作る』をコンセプトに活動しています。でも、地域がどのようであれば持続的になるのかがわかっているわけではありません。わからないから実験しようということで始めたのが、現代集落です」(林さん)

 現代集落は「100年後の豊かな暮らし」がどのようなもので、どうしたら実現できるかの実験であり、珠洲クラスの参加者には「実験の場に来てもらい、実験を体験してもらう」と林さんは言う。 

「珠洲クラスは、現代集落の活動を一緒に創りだす時間です。畑で収穫したり、道を作ったり、地域の子どもたちと『理想の学びのある学校って何だろう?』をテーマに議論したりして、0から1を作る体験をします」(林さん)

地方は宝の山。珠洲は世界の最先端。

 金沢市生まれ、金沢市育ちの林さんは、大学卒業後、商社に就職して県外に出た。その後、愛知県で教員を務めた後、愛する金沢に戻り、夫婦で起業。 

「起業するときに、誰のために何のためになぜするのかを二人でじっくり話し合いました。その結果、金沢のためになること、金沢の人が喜んでくれることをしようと決めたんです」(林さん)

そう決めた一番の理由は「金沢、自分の地域が好きだから」。

そう決めた一番の理由は「金沢、自分の地域が好きだから」。

「日本とか世界という話は自分の中に全然入ってこないんです。ピンとこないし、わくわくしないし、思いがのらない。石川県とか金沢とか地域のことであれば、そのために何かしようと強く思えるんですよね」(林さん)

こみんぐる創業当時は北陸新幹線が開通して間もなく、旅行者向けの宿が足りなかったという。そこから宿泊施設の運用代行を経て、一棟貸切宿を20軒以上運営するに至る。

金沢市内で、用途がなければ取り壊されてしまう町家や空き家を宿として蘇えらせれば、守ることができる。それは金沢の歴史ある街並みを残していくことにつながり、創業時に決めた「金沢のためになること」に近づいているのではないかと考えているのだ。

「でも金沢のためになることをしようと考えれば考えるほど、金沢だけでは成立しないことがわかってきて。能登というものが、すごく重要だと途中から気づきました。金沢という都市を支える農村部を、もっとちゃんと見て、都市と農村両方を持続可能にしていかないとならない。その気づきから、現代集落を始めることになりました」(林さん)

そう語る林さんだが、単に地域が好きだからだけではなく、東京よりも地方の方が可能性がある、宝の山だと考えて事業に取り組んでいる。 

珠洲は、現代では考えられないような暮らしをしています。物々交換で食料が回っているんですよね。極端な言い方をすれば、肉以外は買わなくても生活できるような。奥能登全体の人口は3万人から4万人。そのうちの半分ぐらいの人はそういう生活をしている可能性が高い。これは世界の最先端だなと思っていて。そこに僕らが学ぶべきことがあるのではないかと考えています」(林さん)

現代集落Webサイト
現代集落Webサイト

珠洲の人口の半分以上が高齢者年金受給者。このままでは持続していけない。それをどうやって持続的にしていけるのか、次の世代に繋げていけるのか。その答えを探すことが林さんたちがやりたいことだという。

 「『仕事ができないから東京にいるんでしょ』という時代が来ると思っている」という林さん。 

「東京に比べたら圧倒的にプレイヤーが少なくて、ちょっと頑張ればすぐ一番になれる。ビジネス的にも、チャンスも可能性溢れています。スケールさせていくところも込めると思っています」(林さん)

何もないから何でもできる。珠洲が好きになって珠洲に移住したいと思う人が増えたらいい

今までに開催された「旅するクラスルーム」は、加賀友禅を始め、地域に根差した伝統工芸や産業、食などをその地域で学ぶものだった。

金沢クラスで加賀友禅の絵付け体験に没頭する子どもたち
金沢クラスで加賀友禅の絵付け体験に没頭する子どもたち

それに対して、今回の「珠洲クラス」は、今は地域にないものを作る、これから何をどう作るかを共に考えるという特徴がある

「体験の提供では地元の大谷小中学校の校長先生やPTAの方々、受け入れとしては地元の農家さんに色々協力していただいています。現代集落で描いている30年後のビジョンの範囲内であれば、やりたいことや、やれることにどんどんチャレンジしてやってもらったらいいと考えています。手を動かして、0から1を作っていくような話がたくさんできるので、無から有を作り出すことが好きな人に参加してほしいですね」(林さん)

今回の珠洲クラスは1個の通過点であり、その先で色々な人が学びに来る場所になることを願っているという林さん。その願いの底には「地域に学校を残したい、残さないといけない」という切実な想いがある。

「現代集落がある大谷地区は、中学校が主で24人ぐらいしか生徒がいません。もう消えてなくなりそうで。この地域に小・中学校がなくなると、地域の文化や一生懸命繋いできた営みが一気に崩れてしまいます。

子どもがいなくなると、大人も活力を失うんですよね。自分の子どもではなくても、地域に子どもがいることは必要。小学校を残すのはとても重要なことなんです」(林さん)

真浦地域は何もないから何でもできる。0→1を自分で作ればよく、誰が作ってもみんなが遊べばいい。そういう特徴と、真浦地域ならではの里山里海の営みを楽しめる子どもたちに来てもらって学んでもらえたらいい。珠洲が好きになって珠洲に移住したいと思う人が増えたらいい。その手段が不登校特例校でなくてもいいと林さんは言う。

「大谷小中学校は、既に地域で独自の学びをいろいろ生み出しているんです。1日かけて塩作りを体験したり、稲刈りしたり、本当にすごいですよ」(林さん)

塩作り体験の様子(大谷小中学校Webサイトより) 
塩作り体験の様子(大谷小中学校Webサイトより)

「僕は自分のためだけに働くのは虚しいと思ってて。誰かのために働く方がパワーが出ます。その誰かを未来の遠くに置けば置くほどパワーが出る。 僕らは100年後、要するに孫の世代のところを見て仕事をしています。だからものすごくやりがいがある。僕らがやっていることを、今評価される必要もないと思ってて。

孫の世代になったときに、『こういう仕組みが出来上がっていたから、この状態になってるんだよね』と言われるようなことがしたいんです」(林さん)

そう語る林さんの元々のテーマは教育と柔道と石川県だったそう。旅するクラスルームには、教育も石川県も関わっている。「金沢大学の柔道部の監督をしているので、金沢に帰ってきて全部手に入れちゃいました」と大きな笑顔を見せてくれた。

旅するクラスルーム(珠洲クラス)の概要

◉概要
・「豊かな営みって何だろう?」そんな思いから始めた“現代集落”の活動を、一緒に創りだす時間です。エネルギーを作る、畑で収穫、道を作る、「理想の学びのある学校って何だろう?」を議論するなどを通し、0から1を作る体験を行います。

・村の祭は今年は中止ですが、能登の有名なヨバレというおもてなしの文化、祭り御膳を味わい体験していただけます。

◉日程
2022/10/22(⼟)-24(⽉)

◉会場
⽯川珠洲浦ル12

◉定員
親子5組(⼩学1年〜中学3年対象)

◉スケジュール
◆10月22日(土)
13:00 現代集落に集合 チェックイン
畑の畝作りと収穫体験(現代集落)
17:00 交流会 BBQ@現代集落(地元の小中学生も交えて)

◆10月23日(日)
7:00 朝食(みんなで作る)
9:00 0→1を作る時間:人の導線をつくる 道の開拓&迷路つくる
村づくりの実践(現代集落にて)
12:00 昼食(子どもたちが作る/カレー)
0→1を作る時間:人の導線をつくる 道の開拓&迷路つくる
村づくりの実践(現代集落にて)
18:00 祭り御膳で夕食 & 祭太鼓の演舞と体験

◆10月24日(月)
7:00 朝食(おにぎり&味噌汁)
9:00 現代集落出発
大谷小中で、「自分達で学校作るとしたら」をテーマにディスカッション
12:30 昼食(大谷小中学校)
13:00 解散

<現代集落までの交通について>
●羽田空港⇄のと里山空港 片道約60分
のと里山空港⇄現代集落
ふるさとタクシーまたはレンタカーで片道約40分

●東京駅⇄金沢駅 新幹線 片道約2時間30分
金沢駅⇄現代集落 お車 片道約2時間10分

▼ふるさとタクシーについて
https://www.noto-airport.jp/access/furutaku_tel.html

◉参加費用
早割(9月30日迄) 34,500円/人(税込)
10月1日以降 39,800円/人(税込)

■参加費に含まれるもの ・2泊3日の宿泊代。
・食事代 朝食2・昼食2・夕食2
・珠洲での子供の体験費用

■参加費に含まれないもの・宿泊地までの交通費(現地集合・現地解散)
・食事時の飲み物代・アルコール代(現地払いの自己負担にて)
・個人的費用(お土産代等)

◉申込み方法
以下申込みボタンよりお願いいたします

◉申込み期限
2022年10月17日まで

◉お問い合わせ先
現代集落/株式会社こみんぐる
villagedx@comingle.jp

Information

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Editor's Note

編集後記

今回は構成を担当しました。高山編集長が受け取った林さんの言葉を、自分はどこまで理解しているのか、どう構成したら読者に届くのか、何度も問いながら執筆しました。
林さんのお話の中には、今回のプロジェクトだけではなく、地域で事業を興し、人生を賭けて取り組むことのエッセンスが詰まっています。必要な方に林さんの言葉が届くことを願います。

これからも地域特例校100校開校プロジェクトの応援をお願いします!

これからも地域特例校100校開校プロジェクトの応援をお願いします!

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