YAMAGUCHI
山口
大人が子どもを教え育てる「教育」の時代から、子どもたちや若者が自ら発案し、行動することを通じて、「社会をつくりながら学ぶ」時代へと変化しています。
その変化の船首に立ち、「若者のまちづくり参画」を掲げ、探究学習を通じた起業家教育を積極的に推進しているのが、山口県長門市。
今夏、長門市を舞台に、株式会社WHEREが主催するトークセッション「地域経済サミットSHARE by WHERE for Student in 長門 – 次世代教育と産業創出 -」が開催されました。
「SHARE by WHERE」は、産業や地域の枠を超え地域経済を登壇者・参加者とともにつくる地域経済サミットとして開始。過去4回オンラインとリアルにて実施し、述べ170名の登壇者および、1,500名の産学官で働く多様な方々にご参加いただきました。
「for Student 」は、今回が初の試み。現地(長門)で起業家精神を学ぶ高校生も登壇し、起業家や首長とともに学び合いました。
高校生が10、20年先に活躍していくきっかけをつくることを目指した本イベントから、オープニングトークとクロージングトークをお届けします。
平林(モデレーター):皆様、お足元の悪い中お集まりいただき誠にありがとうございます。株式会社WHERE代表取締役の平林と申します。今回の開催パートナーである株式会社3inの岩本さんにも来ていただいております。よろしくお願いします。
岩本氏(以下、敬称略):皆様おはようございます。株式会社3inの岩本隆行と申します。どうぞよろしくお願いします。
平林:オープニングにあたり、少しの時間を頂戴して、今日の「地域経済サミット」についてお話させていただきたいと思います。
今回のサミットは、岩本さんからご相談いただいたのがはじまりですよね。高校生たちに地域内外の起業家や自治体のトップの方々に接する機会をつくりたいというご相談でした。岩本さんがなぜそれをやりたかったのかをお話しいただけますか。
岩本:少し前まで学校の先生をやっていました。自分の教え子が、どんどん長門から出ていってしまい帰って来られない。「自分は何のために先生をやっているんだろう」というジレンマがあって。とても素敵な高校生の方々が、将来地元で夢を叶えるためには仕事をつくるしかないと思い、自分が最初にはじめてしまいました。
平林:背中を見せているんですね。
岩本:まさに、言ったことをそのまま自分がやったという勢いです。
平林:だから普段、高校生向けの探究学習をやられていて、そこで起業家精神みたいなところを提供されているんですね。
岩本:そうです、そうです。
平林:僕らが地域経済サミットを開催するのは今回で5回目になります。「地域経済をともに創る」ということを大事にして運営しております。ですので、「“この場”で対話すること」をめちゃくちゃ大事にしています。
今回もいろいろな方に登壇していただきますが、台本を渡しておりません。共通のテーマだけが存在しているという形です。
私自身も、まちづくりや地域活性などに関わらせていただいていますが、やっぱり一番大事なのは、対話すること。この対話を純粋にどうやったらできるか、つくれるかということを考えて、この地域経済サミットという形をとっています。
皆さん、登壇者のお話を聞くなかで、質問ですとか「ここもうちょっと聞きたい」というところがあったら、ぜひ突っ込んで聞いていただければ嬉しいです。
岩本:高校生の皆さん、「起業家精神」って言うでしょう。平林さんは本物の起業家ですよ。元々ヤフーにいらしたんですよね?
平林:そうですね、ヤフー株式会社で広告エンジニアをやっていました。
岩本:大きい会社を辞めて独立するってすごい勇気がいることだよね。
平林:教員もそうじゃないですか。
岩本:そうですね。今日はそういう本物の起業家だからこそ伝えられること、起業家精神を感じてほしい。「起業家になれ」というわけではなく、その心を皆さんにぜひ感じていただきたいです。
平林:今日は、皆さんと一緒につくっていく時間にできればと思っています。この後2セッションあります。最後のクロージングトークまで、ぜひ皆さん楽しんで学びのある時間を過ごしていただければと思います。
岩本:高校生の熱量とか、そういうものが皆さんとシンクロして、それを共有して皆さんがご自身のエリアで風を巻き起こしてくださる。そういうきっかけになる会にできたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。
平林:よろしくお願いします。ありがとうございました。
オープニングトークに続き、2つのセッションが開催されました。
人を中心としたまちづくり、コミュニティづくりを実践している起業家たちが、挑戦が生まれるまちづくりに必要な要素、環境、文化について語り合いました。
▼Session1のレポートはこちら
前編:社会課題を許容し、互いの違和感を認める。そこからはじまる「まちづくり」
後編:小さな挑戦の積み重ね。未来を拓く「まちづくり」の担い手が今すべきこと
若者の力を地域、産業へどう活かすのか?当事者である高校生を交えながら、行政の視点や環境づくり、起業家のノウハウを学び合いました。
▼Session2のレポートはこちら
前編:若者からの改革を推進する。地域を愛す高校生と首長が考える地域創生
後編:経験値こそ宝。自分にできる小さな一歩からはじまる「地域創生」
平林:西本さん、朝から聴いてみてどうでしたか?
西本氏(以下、敬称略):本当に共感の嵐でした。納得することだらけで。今、頭の中が情報でいっぱいです。
平林:どんなところに共感しました?
西本:Session1の「【起業家精神】挑戦が次々に生まれるまちづくりとは?」で、小杉湯の関根さんがおっしゃっていたことです。「銭湯が直接、高齢者のケアとか子どもの居場所とかになるわけではないけれど、それが社会全体に良い影響を与え、間接的に良い影響が広がっていく」というのが素敵だなと思いました。
平林:「こういうことを学んでみたい」とか、「こういうアクションをしてみたい」というのはありましたか?
西本:地方創生を考えたとき、その地域にいる人がわくわくしていたら、自然と人がやって来るんじゃないかと思って。今、長門にいらっしゃる方も、絶対何かしらの信念や軸はあると思います。それを引き出すことで長門が盛り上がっていったら、人も自然に長門に来て地域が盛り上がっていくんじゃないかな。
人から信念を引き出すとか、モチベーションになることをやっていきたいと、今日思いました。
岩本:君達はいい時代に生まれたよね。だって、やりたいことやっていいって言ってもらえるんだもん。やりたいことがないのが一番大変でしょ?だから何をしたらいいのかって考えて。
違和感を持っている人がたくさんいるじゃないですか。「いや、だってこういうまちでなんか……」って言うでしょ?それ全部チャンスだから。人が「できないな」「無理だな」と思うことをひっくり返せば、それはみんなわかるよ。
1人でやれることは1人でやればいいし、チームであればチームでやればいいわけだから、実はすごいシンプル。だから皆さんはすごくいい時代、恵まれている時代にいるから、その権利を最大限に使ってほしいなと思いました。
平林:明日はどんな内容なんでしたっけ?
西本:明日はですね。今日、私達高校生が受け取ったことや感じたこと、思ったことを全部ひっくるめてパフォーマンスをする日です。
平林:パフォーマンスっていうのはなんでもいいの?
西本:そうです。歌でも、劇でも、ダンスでも。明日、グループに分かれてパフォーマンスします。もう1つあって。地元の小中学生を招待して、小中学生と一緒にほぼ即興でパフォーマンスをします。私達の想いを小中学生に広げて、小中学生と一緒に長門市中に広げていく日が明日です。
平林:今日めちゃくちゃインプットしましたものね。今のイメージ的にはどんなことを明日挑戦してみたいと思っているんですか?
西本:今日受け取ったことから新しい考え方をいろいろ学ばせていただいたので、それを目一杯表現できたらなって思います。
岩本:先ほど江原市長が登壇されましたが、大人も皆さんも赤ちゃんも同じ市民なんです。大人は、確かに経験値があって良いことを発言するけど、そこに気を使って我慢するんじゃなくって、高校生の皆さんも同じ一市民だからね。自信を持って大人の方と対等にやった方がいい。明日は思いっきり「どか~ん」とやってほしいですね。
そうだ!明日の練習は1回しかないから、腹の底からさ、「どっか~ん!と花開く」ってそこで叫ぼう。
平林:今?
岩本:今ね、後ろの人たちに向かって。
平林:立って後ろ向いて、西本さんの音頭に合わせて?
岩本:そう。チャンスは1回、練習なし!
西本:せーの!
会場の高校生全員:どっか~ん!と花開く!
平林:お~!いいですね。
ということで、クロージングトークを締めていきたいと思います。
僕としては、当事者であることがすごく大事だと思っています。「まちは誰のためのものなの」というところを常に考えているんですけど、1人でまちって言わないじゃないですか。2人でもまちとは言わないかなと思っていて。1人1人が集まったからこそ「まち」と呼べる。だからこそ、その1人ひとりがどれだけ当事者意識を持てるか。
当事者意識の方向性は何でもいいと思っているんですけれど、例えば「道にゴミが落ちていたら」。自分の家だったら拾うじゃないですか。それが道路とか公園とか、いろんなところに波及していくと、より良く楽しく暮らせるまちになるんじゃないかなと思って、この地域経済サミットを運営しています。
今日は高校生に向けてということもありますけれど、見守っている大人も当事者意識をもっともっと拡大していけると思います。僕自身も、岩本さんのように、背中で見せていくことが大事だなと思っているので、皆さんぜひ引き続き明日も楽しんでいただければと思います。本日はありがとうございました。
岩本:ありがとうございます。ぜひ明日もよろしくお願いします。
Editor's Note
現地には行かれませんでしたが、写真を見るだけで、高校生のみなさんの熱量と真剣さ、サポートする大人の方々の誠実さや温かさが伝わってきました。読者のみなさんにも、舞台裏の様子も全部お見せしたい!長門の未来が楽しみです。
FUSAKO HIRABAYASHI
ひらばやし ふさこ