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次なる生き方は「コンパクト農ライフ」がいい。オンライン農学校「The CAMPus」代表 井本喜久氏が見据える “未来の生き方”

JUN. 01

日本全国

前略、ライフスタイルとビジネスに「農」を取り入れたいと考えているアナタへ

「場所がない」「忙しい」「やり方がわからない」「儲からなさそう」

こういった理由で農業に興味があっても、なかなか前に踏み出せない。という人は多いのではないだろうか。

私自身、地域に関わる中で先輩農家さんから「農業はやらないほうがいい、儲からないし、簡単ではない」と言われるケースは少なくない。

そんな中、今農業の概念を根本的に変えようと奮闘している一人の男、井本 喜久氏に出会った。

広島県で米農家の息子として生まれ、東京農業大学を卒業するも広告業界で活躍を遂げていた彼が、再び農業に興味を持ったきっかけは、奥様のご病気とお父様の死。

私たちの身近にあり、健康の源である「食」。そしてその根幹にある「農業」を日本で支えているほとんどが、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれる人たち。70歳が若手とも言われる現状に衝撃を受けた井本氏はいま、30〜40代の若者世代が憧れる、新しい農ライフスタイルを確立しようと、奮闘している。

そこで今回は、そんな井本氏を取材する中で見えてきた彼自身が目指す「新しい農ライフ」の姿をお伝えする。

井本 喜久(Yoshihisa Imoto)氏 The CAMPus 代表理事 / 広島県でコメ農家に生まれる。東京農業大学を卒業するも広告業界へ。世の中のオモシロイを形にするデザイン会社COZ(株)を創業。「次世代のPEACEを創る」を自身のテーマに様々な企業のブランドづくりに携わる。2012年、飲食のオリジナルブランドをスタートさせ農文化への興味が再燃。2016年には「学び」をテーマにした都市型マルシェを新宿駅屋上で展開し延べ10万人を動員。2017年11月末、インターネット上にオンライン農学校「The CAMPus」を誕生させた。
井本 喜久(Yoshihisa Imoto)氏 The CAMPus 代表理事 / 広島県でコメ農家に生まれる。東京農業大学を卒業するも広告業界へ。世の中のオモシロイを形にするデザイン会社COZ(株)を創業。「次世代のPEACEを創る」を自身のテーマに様々な企業のブランドづくりに携わる。2012年、飲食のオリジナルブランドをスタートさせ農文化への興味が再燃。2016年には「学び」をテーマにした都市型マルシェを新宿駅屋上で展開し延べ10万人を動員。2017年11月末、インターネット上にオンライン農学校「The CAMPus」を誕生させた。

コロナショックで世界経済が失速。「食料自給率」の低迷が大きな課題として浮き彫りになったいまがチャンス。

2012年から農業への熱を再発させ、2017年にはインターネット上にオンライン農学校「The CAMPus」を立ち上げた井本氏。彼はいま、どんな世界を目指しているのだろうか。

「まず私が最初にお伝えしたいのは “農業” と “農” は違うということ。 “農” というのは一種の文化価値だと僕は考えています。簡単に言うと “農” という価値観には2つの要素があって、1つは “暮らし” で、もう1つは “商い” なんですよね。この “商い” の部分を “農業” と呼んでいるわけです。つまりこれから “農” で “商い” をやろうとする人たちには、“暮らし” のこともセットで学んでもらいたいというのが基本にあるんです。暮らしと商いを自然環境の中で高度にバランスさせる生き方こそがこれからの “農ライフ” なんだと思います」(井本氏)

「農」を軸に「商い」と「暮らし」を創っていく。この2つのキーワードをもとに、井本氏が考えている未来の話を深掘りしていく。

最終的にThe CAMPusが創りたいのは、新しい価値観のJA(農業協同組)のようなもの。今、コロナショックで世界経済が失速し、僕たちの平穏な暮らしが脅かされている中で、食料自給率に注目が集まっています。ですが、僕らが暮らす日本の食料自給率は、37% 。例えここから、コロナ前の世界に戻り、不安が解消されたとしても、僕らの食料自給率低迷は大きな課題であることが浮き彫りになったと言えます」(井本氏)

日本の食料自給率は年々低下しており、戦後直後の1946年は88%あった数値も、2000年には40%、2018年には37%と過去最低を記録した。

「食文化が変わったので、仕方ない部分もあるんです。海外からの輸入や加工品みたいなものもたくさんありますし、海外産をどんどん輸入していけば、食料自給率が低くても生きていけますから。ですが、コロナの影響を受けて注目が一気に集まってくると思うんです」(井本氏)

とはいえ、日本にはアメリカやオーストラリアのように広大な土地がないことはいうまでもない。「耕作放棄地が増え続けている」という話をよく耳にするが、国土の7割が森林で覆われ、ただでさえ農地のほとんどがアクセスの悪い小さな田畑のこの国に、現在45万ha(広さにして京都府くらい)もの耕作放棄地が存在している。なぜここまで増えたのか。

「そもそもは、日本が戦後、農地改革を行なったことから始まりました。それより以前は地主と小作人による農業システムが成り立っていたのですが、戦後 “食料は国がコントロールすべき” という流れになって、地主&小作人のシステムは解体されたわけです。商売のことがわからない小作人たちをいきなり独り立ちさせてもうなく行かない。そこで登場したのがJAです。JAは、かつて小作人だった新しい農家たちのために技術・機材・資材・買取・流通・金融までを手掛け、設立当時はすばらしく機能しました。しかし、時代が変わっていき、美味しさの価値観変化、働き方の変化、農作物自由化、少子高齢化などなど、農業を取り巻く環境が激変。つぎつぎと担い手が減っていき、耕作放棄地が膨れ上がったのが今です」(井本氏)

現在、日本の農業人口は168万人。1960年代には1,500万人いた農業人口も、バブル期には1,000万人を切り、2000年代には500万人、現在は全盛期の10分の1ほどの、168万人にまで縮小。その6割が年商100万円以下であり、平均年齢は68歳を超えているという危機的な状況に陥っている。

「これでは、農ライフを目指す若者は増えないし、農業が次世代の憧れる職業にはなりません。だから今こそピンチをチャンスと捉えて、新しい価値観の農的暮らしと農的商いをバランスさせる農家たちを次々と誕生させ強く育てていくような、しっかりと機能するJAのようなものが必要だと考えています」(井本氏)

The CAMPusの理念は、世界を「農」でオモシロくする。

しかし、この圧倒的不利とも言える状況を井本氏は、一体どうオモシロく変化させようというのだろうか。

100人100通りの哲学がある。The CAMPusが提案するのは「0.5haで売上げ1,000万円以上」のコンパクト農ライフ。

The CAMPusが掲げている大きな概念に「コンパクト農ライフ」がある。農業で成功を収めるには、大規模農家として農業を行わなくては生計が立てらないイメージが強い中で、コンパクトを推奨する理由はなんなのだろうか。

「実は農に興味を持ちThe CAMPusという事業を構想し始めてから、全国の100人くらいの農家さんを訪ねて回ったんです。どんな農家さんを訪ねたかと言うと “楽しそう”  “かっこいい” “健康的”  “儲かっている” という四拍子が揃っている人たち。彼らに共通していたのは “コンパクト” という価値観でした。小さくても質が高く、しっかりと機能する農業を展開している農家たち。しかも暮らしのスタイルも素敵な人たち。彼らをみて、『狭い農地の多い日本の環境に最適な農ライフは、小さなエネルギーで、大きな豊かさを手に入れるコンパクトなカタチこそ答えだ』と考えるようになりました」(井本氏)

年商1,000万円以上を稼いでいる農家は全体の約8% 。井本氏が出会って素敵だと思った農家たちは、その8%の中にいながら、コンパクトな考え方を基本にしていて、暮らしもカッコいいし商売もうまくやってる人たちだったというのだ。

「The CAMPusでは、0.5ha(ヘクタール)で年商1,000万円という商売で農業を展開できる農家スタイルを提案しています。国や自治体に依存しないで自身の足で確固とした暮らしを確立できる農家を育成していきたい。そして彼らが自主自立したもの同士で集まって本質的な相互発展ができる新しいコミュニティを作っていきたいんです」(井本氏)

井本氏は、そんなコミュニティ形成へのファーストステップとして、The CAMPusで月500円の有料WEBマガジンを配信。すでにコンパクト農ライフを実現させている実践者70名の商いと暮らしに関する哲学やノウハウを2,000人の購読者に発信している。

さらに井本氏は2020年5月より、コンパクト農家の育成に特化したスクールとして「コンパクト農ライフ塾」を開講。新時代の「農的暮らし」と「農的商い」のデザインについて、The CAMPusが厳選した豪華講師陣(農業界のレジェンドたち)の成功ノウハウをギュッと凝縮させ、短期集中型で学べる内容となっている。

「農には、“これが正しい” っていうものはなくて、農家が100人いたら100通りの哲学があるんです。だからいつも僕は生徒たちに、“こういうのがあるね、そういうのもあるね、じゃあ、あなたは何を選択しますか” と投げかけ続けています。でも基本は、コンパクトなカタチ、つまり持続可能な人間の営みを大切にしていますが、あとは何を選択するかは次その人自身の感性で決めれば良いと思うんです」(井本氏)

SDGsと同じ2030年、耕作放棄地を0へ。目指すは循環主義経済の実現。

すでにコンパクト農ライフ塾2期生の募集を開始したThe CAMPus。井本氏は、今どんな未来を目指しているのだろうか。

「僕たちは10年後に耕作放棄地を0にしたいと思っています。僕らの農ムーブメントはSDGsの目標年である2030年を目処にしたいんです」(井本氏)

今現在、日本にある45haの耕作放棄地を0にするためには、日本の平均農地面積(農家1戸あたり2ha)で換算した場合、およそ22万人が新規就農をしなくてはならない計算となる。しかし現状の新規就農者は毎年5万人ほどで、それよりも離農者の方が多い状況。

「一見、無理でしょと言われる数字かもしれませんが、フランスでは政府がコロナショックにより仕事がなくなった労働者に対し、夏が近づくにつれて労働力の確保が急務となっている栽培農家や畜産農家で働くことを呼び掛けたところ、20万人以上から応募があったんです。コロナ禍によってパラダイム・シフトが起こっている今、例えば東京にいる1,200万の人々が “次の生き方ってなんだっけ?食ってなんだっけ?” と思って、アクションを起こしていけば、22万人の新規就農も夢じゃありません」(井本氏)

「中には、既存の農家たちに対して離農をやめるよう促すのが大切だと言う人もいるかもしれませんが、僕は辞めたい人は辞めればいいし、やる気がある人はやればいいというスタンスなんです。“この土地を守らないといけない” という思いだけでは上手くいかないと思うんです。この土地を使って、どんなオモシロい持続可能な地域づくりをしようかな?そのためにどんなオモシロい農ライフや農ビジネスをやろうかな?と考える人を増やしたいです」(井本氏)

そう言いながら笑う井本氏は、どんなときでも面白がってビジョンをつくり、それに対する実現へのマイルストーンを自分で設定できる人を養う必要があると語ります。

「今後、農ライフをやりたい人たちは決して “特別な存在” じゃないと思うんです。『農を志す人=土いじりや植物の生育とかが好きな人』というイメージはすぐさま捨ててもらいたい(笑)これからは単に『美味しい食・健康・環境・エコ』などに対する意識が高く “農” にもなんとなく興味がある人たちで、平日は都市部で休む暇もなく働きながら、週末や休日は郊外に出かけ家族や友人とアウトドアで過ごす。そんなライフスタイルを送っている、都市に暮らす30〜50代のビジネスマンやOLの人たちこそ『農ライフ』のスイッチが入りやすいし、そんな彼らにとって『持続可能な次なる生き方』を学べるコンパクト農ライフ塾なんかはど真ん中なんじゃないかと思うわけです(井本氏)

ここから100・200年先の未来を見据え、次世代の “オモシロい!” の声や想いをいっぱい集めて、右肩上がりの資本主義経済ではなくグルグル回る循環主義経済の社会をつくりたい」そう語る井本氏。自らの経験から「農」という文化価値の重要性を痛感し、「コンパクト農ライフ」のムーブメントを発信し始めた彼の挑戦はまだ始まったばかり。

しかし、井本氏が思い描く未来は、私たちが思っている以上に近く実現することなのかもしれない。

Editor's Note

編集後記

次回は、井本氏が手がける「コンパクト農ライフ塾」で講師を務めるパッション農家・梁さんへの講義の様子をお届けする予定。一般的な「農家」「農業」の概念では想像がつかない取り組みを行い、そのノウハウを惜しげも無く提供するThe CAMPus、コンパクト農ライフ塾に今後ますます目が話せません。

これからもThe CAMPusにご注目ください!

これからもThe CAMPusにご注目ください!

これからもThe CAMPusにご注目ください!

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