Mima, TOKUSHIMA
徳島県美馬市
四国・徳島県の中北部に位置する美馬(みま)市は、美しい「うだつの町並み」を有する魅力的な町。歴史的な文化を大切にするこの町は、伝統的な製法で継承されてきた和傘や、藍染めのほか、阿波おどりに欠かせない竹笛も今なお、職人さんが丁寧に手作りで生産しています。これらの文化・伝承の品々を実際に職人さんにご紹介していただき、その伝統に触れるイベントが開催されました。
【イベント概要】
「伝統工芸」×「食」×「阿波おどり」で徳島県美馬市を知る会
日程:2017 年11 月9 日(木)
主催:美馬市役所
会場:パソナ 「TRAVEL HUB MIX」
運営:株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部 *1
(スピーカー)
美馬市役所 経済建設部 商工観光課 課長補佐
仲 正敏 様
美馬和傘製作集団 材料製造担当
住友 聡 様
竹笛工房竹笛師
阿波おどり協会副会長
真鍋 政利 様
(イベントスケジュール)
・徳島県美馬市のご紹介
・美馬市和傘職人のお話と手仕事(現地ライブ中継)
・竹笛職人のお話と生演奏
・参加者全員で阿波おどりを行う
・美馬市の食を堪能(懇親会)
司会
皆さま本日はお越しいただきありがとうございます。早速ですが、まずは「徳島県美馬市」がどんなところなのかご存知ない方もいらっしゃると思いますので、美馬市商工観光課の仲 正敏さんよりご説明していただこうと思います。
それでは仲さん、どうぞよろしくお願いします!
皆さん、こんばんわ!美馬市観光課の仲 正敏と申します。今日はお越しいただき誠にありがとうございます。実はこれまで美馬市単独でイベントを行ったことがなかったので、今日は「人が集まるのかな?」と不安だったのですが、こんなに大勢の方に集まっていただき、驚いております。本当にありがとうございます。それではさっそくなのですが、徳島県美馬市のご紹介を簡単にしたいと思います。
美馬市は徳島県の西部、阿波踊り空港から車で45 分くらいの場所にあります。香川県の高松市とも隣接しているので、徳島県からでも香川県からでもアクセスが良く、高速バスも走っているので、東京都からも直結でお越しいただくことが可能です。
基本的情報なのですが美馬市は、平成17 年に4 町村が合併して誕生した市になりまして、合併当初は3 万4,000 ~ 5,000 人ほどの人口でした。2 年前に行われた国勢調査では、人口は3 万503 人になっており、過疎化が進んでいる状況です。
また森林が70 %で、ほとんどが山ということになるのですが、街のイメージをいいますと、吉野川が東西に流れていまして、吉野川の両サイドに山があります。この吉野川の川岸に美馬市の街が構成されているという形です。四国と聞くと温かいイメージがあるかもしれませんが、年に3 回くらいは積雪する地域でございます。街中は非常に過ごしやすい環境になっていて、病院とか美容院、スーパーなど生活するのに全く困りません。
そして現在、徳島県全体で企業誘致の一環として「サテライトオフィス」を積極的に受け入れておりまして、美馬市には現在7 社もの企業が進出しています。そして企業の皆様と美馬市を舞台に、地域活性化のストーリーを作っていこうとチャレンジも行っております。美馬市の代表的な観光地も少しご紹介させていただければと思います。
まず全国的にも有名な「うだつの町並み」です。この町並みは、430 mくらいあるのですが、国の重要建造物保存地として設定されている所でもあり、歴史のある場所です。夏場になりますと、日本一の清流「穴吹川」で「筏下り大会」が行われます。今年は台風の影響で中止になってしまったのですが、30 年の歴史がある大会になります。
最後に先ほどもご紹介させていただきました「吉野川」ですね。本当に美しく大きな川で、穴吹川などいくつかの川が吉野川に流れ込んでできています。
美馬市の特産品をご紹介させていただきますと、後ほど皆様にもご賞味頂くことになってるのですが、美和市の山間地では非常に「蕎麦」が多く生産されている所です。その他に「みまから唐辛子」というものがありまして、この「みまから唐辛子」を原料に作られました激辛薬味「みまから」はテレビでも紹介されたことがあります。穴吹川流域では「ブルーベリー」が栽培されていたり、12 月くらいからは「はっさく」の収穫が始まります。
農業のお話も少しさせていただきますと、美馬市穴吹町では、今年の1 月に「日本農業遺産」に登録された伝統的な農業方法「傾斜地農耕システム」があります。この「傾斜地農耕システム」というのは、山間部ならではの山の傾斜を利用して、斜めに畑を作り、無農薬で有機栽培で野菜を育てる方法です。地元の野菜を使用した「農家レストラン」は予約を取るのが大変なくらい人気で、今後は「農家民泊」も行っていきたいと思っています。
「傾斜地農耕システム」をはじめ、美馬市は「中山間地域」に多くの特徴があるので、今後は「美馬市ならではのもの」をアピールしていきたいと考えています。
皆さんもぜひこの機会に美馬市にも来て頂き、気分をリフレッシュしてみてくださいね!これで美馬市の紹介終わります。ありがとうございました。
司会
仲さんありがとうございました。皆さん、美馬市のことはよくわかりましたでしょうか?私も実は美馬市に結構行っておりまして、私よりもう少しリアルな美馬市をご紹介させてください。
まず美馬市で真っ先に思い出す、とっても元気なおばあちゃんがいます。このおばあちゃんはすっと民泊を開くことが夢で、私もそのお話を聞いていたのですが、なんと今年の5 月に「民泊始めちゃいました」と連絡が入りまして、その行動力に驚かされました。本日、懇親会の時に皆様にお出しします、お米と柚子はそのおばあちゃんが「皆さんにぜひ食べて欲しい」とご好意で送ってくださったものになります。楽しみにしていてくださいね。
あとは小泉会長という男性の方がいらっしゃるのですが、小泉会長は僕たちのために「田んぼつくっちゃうよ」ということで、一緒に田んぼを作りました。
他にも本当は今日イベントにもきて欲しかったのですが、そぶえちゃんというおばあちゃんがいらっしゃって、「美馬市の綺麗な景色をみながら朝ごはんが食べたいなあ」と言ったら、「いいよ、食べな!」と朝食をつくってくださって、ピクニックみたいな感じで一緒に朝ごはんを食べたこともありました。
美馬市は本当に暖かい人ばかりで、「本当に美馬市って、人によってつくられているなあ」とよく思いますし、僕が美馬市を大好きになったのは、こういう暖かい方がたくさんいらっしゃるからだなと思います。
日本全国いろんな観光地があると思うのですが、美馬市は「 “ ありきたりな ” 観光地」ではなく、「“とっておきの” 、“あまり人には教えたくない” 観光地」かなと思っています。今日はいらっしゃった皆様に、そんな場所に行ってみたいと少しでも思って頂ければと思います。
司会
それでは続きまして、美馬市で和傘職人をしてらっしゃいます住友 聡さんを皆様と中継でお繋ぎし、お話を聞いてみたいと思います。先ほど仲さんよりご紹介がありました「うだつの町並み」の一角に住友さんたち和傘をつくっている職人さんの工房があります。本日こちらの会場にお入りになる際、入り口にあった和傘を目にした方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、あちらは住友さんの工房よりお持ちした和傘になりますので、あとでぜひよく見てみてくださいね。それでは中継を繋がせて頂きます。
司会
住友さん、聞こえますでしょうか?
住友さん(以下住友)
はい住友です。聞こえますよ。よろしくお願いします!
今映像に写っている2 人は、和傘の組み立てから完成までを行う職人です。和傘は分業制でつくっておりまして、他にも材料をつくる職人や、塗料を調合する職人など、それぞれの専門性を活かして1 本の和傘をつくっています。
司会
そうなんですね。住友さん、もしよければ美馬市の和傘の歴史を教えてください。
住友
わかりました!全般的な和傘は一説によると、400 年ほど前の安土桃山時代から和傘として、そのままの形を受け続いていると言われており、美馬和傘も定かではありませんが、江戸時代から続いているという資料が残っています。
美馬和傘は昭和30 年代頃に一度廃れてしまいまして、ほぼなくなってしまっていたのですが、「技術を伝承していこう」ということで、6 年前から我々がやっております。最近やっと、材料作りから組み立てまでの全ての工程を行えるようになってきたところです。
司会
和傘の全盛期にはどれくらいの本数が作られていたのでしょうか?
住友
かつては、約200 人ほどの職人の方がいたと伝えられておりまして、年間100 万本ほどつくられていたそうです。これは当時ですと、日本で2 位の生産量になります。
司会
ちなみに今ですと、1 年間にどれくらい作られているのでしょうか?
住友
そうですね、今ですと年間100 本ちょっとくらいでしょうか。少ない人数で、材料から全て手作りでやっているので、最盛期には到底及びません。
司会
その100 本も非常に貴重で、すぐには手に入らないと聞いているのですが、現在の和傘のご予約状況っていかがなのでしょうか?
住友
和傘を1 本つくるのに約6 ヶ月ほどお時間がかかるのですが、現在お待ちいただいている方は10 名ほどいらっしゃいます。
司会
住友さんありがとうございました!実は和傘の手作り体験も行っておりまして、本格的に和傘を作ることができます。ただ通常の和傘ですと、先ほど住友さんもおっしゃっていましたが、完成までにかなりの時間がかかるため、合宿という形になるそうです。それが難しいという方のために、2 ~ 3 時間で小さな和傘を作る体験も行っているようなので、ご興味のある方は、訪れてみてくださいね。「うだつの町並み」には、和傘のほかに「藍染」を行っている工房もございまして、美馬市は藍の集積地なんです。
司会
続きまして、阿波おどり暦51 年、徳島県で阿波踊りの副会長を勤めていらっしゃり、阿波おどりには欠かせない竹笛を知り尽くした職人でもある、真鍋政利さんに生演奏も交えて竹笛のお話を聞けたらと思います。真鍋さん、よろしくお願いします。
真鍋さん
皆さんこんばんわ!今日は本当に集まっていただきありがとう!ご紹介していただきましたように私は竹笛職人です。日々試行錯誤しながら竹笛を作っております。
まず私は竹笛を作るために、竹を探しに山に登ります。先ほど仲さんより、美馬市には「吉野川」が流れているという話があったと思うんですが、吉野川の近くでは竹が水を吸い上げてしまい、笛にするには脆く、すぐに割れてしまうんです。なので、200 m〜300 mの山間部まで竹を取りに行っています。
とってきた竹は、1 年から2 年かけて乾燥させます。その後竹を火にかけて、竹の油を全体の70 %から80 %まで抜いていきます。昔は備長炭でこの作業を行っていたのですが、火力が落ちてしまって、微調整がかなり難しいんですよね。今1 番良いのはガスコンロなんです(笑)
そうして一定の温度で油を抜いた竹を今度は、そっと水につけるんです。水につけて約5 分置きます。そうして水からあげると、曲がっていた竹が真っ直ぐになっているんです。
そして出来上がりの肝になるのが、竹笛の「穴」を開ける作業です。開ける穴の大きさや場所を1 つ間違えただけで、思い通りの音は出なくなってしまいます。その後は色を塗っていくのですが、その前に竹を磨きます。1 本磨くのに2 時間ほどかけながら丁寧に丁寧に磨いていきます。もう両手が腱鞘炎になっているんですが、それでも手で磨くのが良いんです。
竹笛を作り始めると食事もろくに取らず、無我夢中でいつも作っていますね。ぜひ生の音も聞いてください。
音楽にはクラシックやロックなどいろいろありますが、私自身としては「竹笛に勝るものはない!」と思っています。ぜひ懇親会の時にもお話できたらと思います。お聞きいただきありがとうございました。
(END)
人と人とのつながりが薄くなり、機械の進歩が目覚ましい時代。そんな時代には逆行するように、人のあたたかさや職人さんたちの手仕事に対する強いこだわりがとても伝わってきた本イベント。私も現地に訪れ、みなさんと繋がりたいなと強く思いました。
あなたも一度美馬市に触れたら、たちまち美馬市を好きになること間違いなし。次のご旅行にはぜひ美馬市を選んでみてはいかがでしょうか?
*1 株式会社パソナ
パソナグループは、「社会の問題点を解決する」を企業理念に、一人ひとりのライフスタイルに会わせた働き方を提案し、雇用創造に取り組んでいる。また、多様な才能を持った人材が集まって地域産業を活性化させる“人材誘致”による独自の地方創生事業も、重要な事業の柱として位置づけている。
なお、株式会社パソナ ソーシャルイノベーション部では、観光立国、若者雇用、東北復興、海外展開、地方創生、シェアリングエコノミーなどをテーマにして、行政・企業・NPOなどと連携した事業を展開。地方創生や、新しい働き方の創造を推進し、雇用創造・産業振興プロジェクトの開発に取り組んでいる。
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