偏愛ビト
絵本に出てくるような大きな鳥の丸焼きを食べてみたい。
それはきっと誰しもが一度は憧れを持ったことがあるのではないかと思う夢。
そんな憧れの七面鳥を日本で育てているのは、なんとわずか3箇所。その一つである、高知県中土佐町大野見地区に取材に伺った。
人口約1,200人という限界集落で、人口の半数に及ぶ七面鳥を飼育する、ある一人の男性の思いとはーー?
この記事では、LOCAL LETTERで過去に伺った取材先より、「100年先のふるさとをつくる、全国の“偏愛ビト”」をご紹介。
本日の“偏愛ビト”は、クリスマスといえば思い浮かぶ「ターキー」を日本国内で育てる数少ない生産者の松下さん。「ターキー偏愛ビト」の彼の“偏愛”との出会い、そして、地域への思いとは。
「しまんとターキー」と、松下さんの出会いは、本当に偶然の出来事。
元々トライアスロンの選手として活躍していた松下さん。当時、トライアスロンで訪れた中土佐町で、高タンパク低カロリー、かつ、鉄分やビタミンが豊富に含まれる「しまんとターキー」に出会ったのだ。
「アスリートにとって、これほどまでに最高な食材はない。」と「しまんとターキー」に文字通り“惚れ込んだ”という松下さんは、その産業を伸ばすため、中土佐町への移住を決意したという。
一般的に七面鳥は、鶏にあげているような「配合飼料」を食べて育つ。
しかし、「しまんとターキー」は、人間は食べないお米の2番米や、ニラを食べて育つのが特徴のひとつ。これも「地元のものでなんとかできないか」と、50年間試行錯誤してきた結果だという。
その結果として、アメリカで食べるような七面鳥とは全く異なる、もちもちとした食感と、肉汁が溢れるほどジューシーな旨味がうまれたのだ。
松下さんの夢は「しまんとターキー」の産業を伸ばすこと、だけではない。それは、「しまんとターキー」をキッカケに、人口減少が著しい大野見地区に少しでも注目を集めること。
食べ物が美味しくて、自然が豊かで、人が優しい地域は全国にごまんとある中で、どうやって一つのまちが生き延びていくのか。
大野見地区に七面鳥がやってきて50年、多くの人々からバトンを受け継いだ松下さんの挑戦は、まだはじまったばかり。
大きなリスクを認識しながらも、しまんとターキーに惚れ込み移住を決めた彼。その美味しさはもちろん、大野見地区全体を、地域の人と一緒に背負い、守っていくという強い意志がそこにはあった。
大野見地区の自然の恵みと、先人の知恵、そこに受け継いできた強い思いが加わり育てられた「しまんとターキー」。
生産量が限られるため、松下さんの直通電話を知っている人しか注文できない時もあるんだとか…。アナタもこの機会に、ぜひその味を確かめてみてはいかがでしょうか。
Editor's Note
実はこの記事、クリスマスに向けた「ターキー」「七面鳥」などの検索で、再び多くの方にご覧いただく機会が増えていた記事。そのため今回、より手軽に読みやすく「ショートストーリー」として再編集させていただいたんです。
こうして過去に取材させていただいた方々と今も繋がりを持てたり、多くの方に記事を通して届けることができること、地域メディアを運営していてよかったな、と思う瞬間でもあります…!
今後も過去の記事より厳選して、日本全国の“偏愛ビト”をご紹介していく予定。ぜひ楽しみにしていてくださいね!
CHIAKI MIYAZAWA
宮澤 千晶