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LOCAL LETTER

選択できる環境が可能性を広げる。東京からローカルを支えるメリットとは

JAN. 19

TOKYO・OITA・OKINAWA

拝啓、地域に興味はあるけど、どう行動したらいいかわからないアナタへ

地域を支えたい。その想いを胸に一歩踏み出したいと思うとき、活動のスタイルにはいくつかの選択肢があるように思います。

UターンやIターン、すなわち生まれ育った土地を盛り上げようと努力する人や、他の地域に魅力を感じて、移住をきっかけに関わりをスタートする人。このような従来のローカル活動の選択に、新しいスタイルが加わっています。それは「東京にいながらにして地域を支えること」。

沖縄出身で、2025年6月より株式会社WHEREに社員として参画している新垣潤二さんは、その第三のスタイルを実践しています。東京から地域にどう向き合っているのか、この選択肢の魅力はどこにあるのか。新垣さんの軌跡と現在の心境をお届けします。

故郷を取り巻く問題は、行政への関心を導いた

沖縄で育った新垣さんが、なぜ東京に来ようと思ったのか。まずは学生時代の原点に遡ってみましょう。

「中学の頃から社会科が好きでした。学んでいくうちに、例えば平均所得が日本で一番低いことや、子どもの貧困の割合が日本で一番高いこと、非正規雇用の割合も高いことなど、故郷である沖縄が抱えている問題を知ることになりました。

高校の時には『そのダークサイドに対して何ができるだろう?』と思っていました。行政なら非営利的な行動ができるのではないかと考え、また当時は沖縄県庁に勤めたいという希望もあったので、沖縄特有の事情と、国内外の政治・経済が学べる琉球大学に進路を決めました」

新垣 潤二氏 株式会社WHERE ディレクター / 沖縄県出身、琉球大学人文社会学部 政治・国際関係学プログラムを卒業。在学中に沖縄県議会会派事務、SaaSセールスのインターンに2期参画。卒業後はBToG向けITベンダーに入社、沖縄エリアの地方自治体の財務書類等作成や「離島の公共施設再生プロジェクト」を担う。第1期ローカルプロデューサー講座受講後に株式会社WHEREへ参画、現在は3講座のディレクションをメインで担当。「どこで暮らしても、選び取れる選択肢が豊かな環境づくり」を模索中。

大学進学を自然と選択できる環境で不自由なく育った新垣さんにとっては、沖縄を取り巻く社会問題を自分事として感じることは難しかったと振り返ります。

「もし進学という選択肢が身近でない環境で育ったなら、きっと自分は周りの言葉を疑いもなく受け取って、進学しない道を選んでいただろうなと思ったんです。環境が違っていたら今の自分はなかったかもしれないそのことに、ある種の怖さを感じました。

沖縄の政治や問題を語るときに、よくも悪くも基地問題が出てきてしまう。もちろん基地問題を考えていくことは大切ですが、その背景にある政策ではなく、基地についての議論にだけ強くフォーカスされてしまう風潮があるように感じて。その辺りから行政に対して関心を持ちましたね」

現状への違和感が決めた、県外への進路

沖縄の大学ならではの、地域や歴史にまつわる授業も、新垣さんの世界観に影響を与えていました。

「基地返還が何よりも大事だ、というような議論を目にするたびに、個人的には違和感がありました。その主張で、果たして問題が根本的に解決するのだろうかと。

自然と目が向いたのは『こういった問題がある』ではなく、『どうしたらうまくやっていけるか』という方向です。例えば補助金の活用の仕方だったり、貧困を解決するために産業構造をどう変革していけるだろうということを考えていました」

大分駅前の広場で、有志でマルシェを開催した時の一枚。“いまのきもち”をボードに貼り、来場者同士がつながる場ができました。

沖縄では、観光に次ぐ第二の産業の柱として情報通信(IT)産業を掲げています。しかし産業の実態を学ぶにつれ、課題と目指す姿の大きなギャップが新垣さんが進路を決めるベースになりました。

「当時、沖縄県の情報通信関連産業は、全国比での生産性が低いとされ、また業種別の雇用者数にも大きな偏りがあると知りました*。特にコールセンターは非正規雇用者の割合も高いことから、沖縄県の『リーディング産業』の基盤をさらに強固にしていかなければならないのでは、と強く思いました」
(*参考:R4沖縄情報通信関連産業)

最終的に、新垣さんは沖縄県外のIT企業での就職活動を進めることに決めました。

「大学3年の頃には進路として公務員を志望していましたが、落合陽一さんの『2030年の世界地図帳』という本を読んで感動したことがきっかけで、IT業界でローカルに関われること、沖縄県外であること、裁量は多めで営業職であることをキーワードに就職活動をしました」

あえて沖縄県外で地域のことに取り組みたいと思った理由はなんだったのでしょうか。

「県外の選択肢を立てた理由は2つあって、1つは新卒で県外に行かなかったらこの先絶対後悔すると思ったからです。県外に出た友人の話を聞いていると、たくさんの出会いがあって、自分が知らない経験をしているところに嫉妬していたんですね。

友人たちは環境を変えたことによるメリットを存分に享受していて、つながりや選択肢を自分よりも圧倒的にたくさん持っている。でも現実の自分は狭い世界で生きていて、選べないことを痛感していました。

2つ目は、僕は沖縄しか知らなくて、自分の中に他の地域のストックがない。生まれ育ち、居心地が良かった以外の理由で、自分が沖縄を好きな理由がわからなかった外から沖縄を見ることで、改めてわかることもあるのではないかと思いました」

新天地で気づいたのは、内に秘めた情熱だった

県外へ向かうことを決めた新垣さんは、大学卒業後は大分県の企業に就職します。

「就職したところは地方色が強く、自治体から業務委託を受けて事業を行う会社でした。沖縄のクライアントにも関われましたし、他の地域の大きなプロジェクトにも参加していたので、やりたいことをさせてもらえたと思います。県外に出たことで人間関係が広がって、故郷以外にもうひとつ故郷ができた感じです

東京の街角で両親と撮った写真。

満足していたはずの新垣さんでしたが、居心地のよい環境の中で次第に、自身の内にある情熱に気づくことになります。それは、もっと理想の自分を目指したい、自分の力で挑戦したいという、強い思いでした。

「どちらかというと自分は要領があまりよくない方だと思っているので、頭の回転がいい人や、段取りが得意な人、人を惹きつける魅力のある人と一緒に仕事をすると、自分にないものを持っていて大きな刺激を受けます。

就職した会社は社員に優しくて、任された仕事もあり満足はしていましたが、もう少し自分自身に力をつけたいとも思っていました。そのためには、今の環境を変える必要があるのではないかとも感じ始めていました」

地域に携わる人たちを深掘りしたい。さらなる可能性を求めた転職

新たな環境を求める新垣さんが東京へ移るきっかけとなったのは、WHEREが運営する「ローカルプロデューサー講座」でした。

「同じ会社の同期が講座に申し込んでいて、面白そうだと受講したのが始まりでした。佐賀県唐津市のフィールドワークのあとに、WHEREに参画しないかとお話をいただきました。

当時は大分の企業に入社して3年目。会社ではプロジェクトも手がけていたので悩みましたが、何度かお話をして最終的にはWHEREで挑戦してみたい気持ちが勝ちました」

小さいころから面倒を見てくれた祖母と。当時92歳。

転職の決め手になったのは、もともとの就活の軸にしていた希望と挑戦できる環境が全部叶うと思ったからでしょうか。

「もともとは学生時代から東京のベンチャー企業で働いてみたいという願望があったんです。当時はご縁がうまくつながりませんでしたが、最終的には実現することができました」

前職で自治体に関連する仕事をする中で、地域を元気にしたいと一番に願っているのは地元の住民や事業者だと気付いた新垣さん。仕事ではさらに「ローカル」にフォーカスしたいと考えていました。

「ローカルに携わる個人や法人がどういうモチベーションなのかをもっと知りたい。自分も行政に携わっていたので、行政のプロジェクトにはもちろん、個人や法人にも、ビジネスで関わりが持てる環境に魅力を感じました」

多様な選択肢を選べるまち・東京で、地域を支えるということ

上京して半年が過ぎた今、新垣さんは、情報量や人との出会いの数が格段に多い東京でローカルに携わるメリットを感じています。

「東京は地方出身者が多い土地柄と、全国どのエリアにも行きやすい利便性がある。そのため、ローカルに携わっている人とオフラインでも気軽に会える環境です。今では2週間に1回は新しい人と会っています。矛盾しているかもしれませんが、東京は最もローカルから遠いのに、一番ローカルにアクセスがいいそこが魅力です。

もちろん生活や移動にコストがかかるし、たくさんの選択肢があるのに収入次第で選べないこともあります。本当はどれでも選べたらいいですけど。僕自身の豊かさの指標としては『選択肢があって、かつ選べる状態』なんです」

取材はオンラインで行った。ひとつひとつの質問に対して、言葉を丁寧に考えて回答する姿がとても印象に残っている。

現在は主にWHERE ACADEMYの講座の運営を担当していて、講師や受講生からダイレクトに返ってくるリアクションがとても有意義だとか。「東京にいながら地域に関わること」を選んだことは正解だったのでしょうか。

「全く後悔はないです。人との出会いが増えたことで、地域に関わる考え方の幅が広がりました東京に来なかったら得られなかったものがとても多い。ローカルに関わる人が東京に出る価値はとんでもなく大きいし、むしろ絶対来るべきだと思っています。

これからの理想としては、僕個人が仕事相手として声をかけてもらえる存在になること。まだ自分の力不足な部分もあり、そこまで深い関係性を築けている方は多くありませんが、今は仕事で携わる方たちへのリスペクトをちゃんと伝えること、配慮を忘れないことを意識しています」

「よくわからないけどローカルが好き」
「起業はしないけど地域に関わりたい」

そんな、想いはあっても具体的なステップが見えていない人こそ、引き出しを多く持っておくことが大事だと新垣さんは語ります。

自分のホームグラウンドから出て、多くの選択肢が集まっている東京に行って、人々との繋がりを持つことの価値は大いにあります自分の中の選択肢を増やすという意味では、東京という場所は100点だと思います」

初めてディレクターを務めた、地域バイヤープログラムのPOPUP@AKOMEYA TOKYO NeWoman新宿店。来場してくれた兄と。

100点とはいえ東京というひとつのまちにずっと住み続けるかどうかは、まだわからないといいます。

ライフスタイルとしては二拠点生活が希望です。今は一か所で暮らすイメージがあまり浮かばず、例えば月の半分は沖縄、残り半分は東京という感じで働ければうれしいですね」

この先のキャリアパスのイメージはあるのでしょうか。

「先のことは今はあまり想像できないですが、自分が共感するプロジェクトに参画したいです。それはWHEREに関連するものでもいいし、他の組織が主催するものでもいいです。結局自分が興味あるのは『行政』なのかもしれない。行政がうまく機能するように、別の立場から働きかける人になりたいと思っています。沖縄にこだわらず、どの地域のことでも後押しをしていきたいです」

飛び込んだ先で問われているのは、個人の意志

「地域を支えたい」気持ちを胸に自身のキャリアを築いてきた新垣さんが、東京にいながら地域の活動に携わるというひとつのスタイルを体現する今、感じていることがあります。

「地域への関わり方は人の数だけあると思っていて、それを具体化するにはいっぺん地域へ飛び込んでみるしかない。ただ地域への一歩目がとてもハードルが高くて、移住するにも仕事を得るにも大変です。そ『飛び込むこと』への様々なサポートがある点がWHEREの強みです。 

WHEREの講座では『地域への入り方』を手厚くフォローしています。これから地域に入りたいけどどうしたらいいかわからない人でも、一歩先を行く講師陣から学ぶことができます。講師陣は、想いをもって地域に飛び込んで、試行錯誤しながら自分なりのスタイルを作りあげてきた方々です」

「受講後にどう行動するかは、個人の意志が問われています。一度地域に入ってみたもののマネタイズが難しい、地域が合わないといった理由で立ちゆかないこともあるでしょう。

でも、チャレンジし続ける人もいるのです。そこはよくも悪くも個人の想いです。僕も講座を受けて、今は違う肩書ではあるものの納得いく形で仕事をしていますし、常にローカルとどう関わりたいかは、その人自身が問われていると思います」

その人の志が最終的には大切なのですね。

「地域への入り口はできているけれども、そこからちゃんと歩くのは自分。運営としても元受講生としてもそう思っています。自分の意思で関わって、リスペクトを持ってコミュニケーションが取れる人を地域は求めています。そこを大事にすればWHERE ACADEMYの学びもさらに、発揮されていくと思います」 

たとえ「講座」という同じ入り口に立っても、そこから歩んでいく人生はそれぞれ違ってきます。

地域の持つ魅力を多くの人に伝えたい、そのために役立つことはないだろうか。理想と現在地の重なる未来に向かって、新垣さんは東京で、今週も新しい人に会って地域を語ります。

新垣さんの働く株式会社WHEREでは、新しく一緒に仕事をする仲間を募集しています。

地域づくりから「人づくり」へ

第二創業期のWHEREで、ともに走りませんか。

Editor's Note

編集後記

出身地ではない東京に拠点を置きながら地域を支えることは、ある意味ハンデがあるかもしれません。それでも情報量が豊富な東京にいる利点を生かして伝えたいことがある、地域のために活動できることがあると、自身のキャリアを模索している新垣さんの生き方は、地域を支えたい人たちのロールモデルになるように思いました。

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