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LOCAL LETTER

登録者1,000人超、150以上のシゴトが誕生。成長し続けるコワーキングスペースの「コミュニティづくり」に迫る

DEC. 14

拝啓、「仕事やプロジェクトが次々と生まれる」活発なコミュニティをつくっていきたいアナタへ

※本記事は「ローカルライター養成講座」を通じて、講座受講生が執筆した記事となります。(第2期募集もスタートしました。詳細をチェック

長野県富士見町で大学の保養所だった建物をリノベーションし、2015年12月にオープンしたコワーキングスペース『富士見 森のオフィス』

都心からのリモートワークやワーケーションの拠点としてだけでなく、地域と都心をつなぐ交流拠点としての役割を担い、登録者数は1,500人を超える。人気の秘密は、会員同士の交流のしやすさと、そこから生まれる新たな仕事やプロジェクト。

オープンから150以上のプロジェクトを生み出してきた「コミュニティづくり」の極意を、地域おこし協力隊として運営を担当する緒方麻弥さんに伺いました。

緒方麻弥(maya ogata)さん 『森のオフィス』運営スタッフ(地域おこし協力隊)/ 群馬県出身。都内で食品輸入会社に勤務後、「自然豊かな場所で暮らしたい」と2020年5月に富士見町へ移住。『森のオフィス』のスタッフとして、利用者の対応や移住促進を目的としたイベント企画等を行っている。

自然に囲まれて仕事に没頭できるコワーキングスペース

大きな窓ガラスいっぱいに広がる森と、優しく差し込む日の光。

開放的で気持ちの良いその空間では、仕事も捗ること間違いなし!

そんな魅力あふれる『森のオフィス』には、コワーキングスペースのほか、企業のレンタルオフィスや会議室、雑談もできるカフェスペース、日替わりシェフによるランチ提供のある食堂など、過ごしやすさを提供する工夫が至るところに。

カフェスペースには、『森のオフィス』オリジナルブレンドのコーヒー豆や、ナッツのはかり売りも。

また、キャンプサイトを備えた宿泊棟『森のオフィスLiving』も併設。移住検討者や二拠点居住者、プロジェクトチームでの合宿などに絶好の滞在場所となっており、施設の前に広がる芝生庭やウッドデッキなどのスペースは、イベント会場として利用することもできます。

はじまりは2015年。富士見町の事業『テレワークタウン計画』推進の一環として、ルートデザイン合同会社が町から委託を受ける形で『森のオフィス』を立ち上げました。以来、代表の津田賀央さんと代々の地域おこし協力隊が運営にあたる体制に。

会員数が少なかったオープン当初は、職場と生活が延長線上にある雰囲気。閉館時間まで仕事をしたら、みんなでご飯を作って、食卓を囲んで、片付けて帰る。そんな日常を送る中で、スタッフは会員さんと家族のような関係性をつくり、生活や仕事のサポートを入念に行っていきました。

そんなサービスクオリティの高さが評判となり、当時都内で働きながらも「自然と触れ合える生活がしたい」と考えていた緒方さんの心にもヒット。

そこからとんとん拍子にスタッフとして関わることになり、現在は『森のオフィス』の運営だけでなく、移住促進のための交流会やイベントを行うなど、地域の人と移住してきた人をつなげる役割を担っています。

緒方さんが心がける、「コミュニティを元気にする」日々のコミュニケーション術とは?

「活発なコミュニティづくりに欠かせないのは、日々のコミュニケーション」と語る緒方さん。

「最近移住してきた人を紹介したり、お子さんの年齢が近い人同士を引き合わせたり。あとは趣味や好きなものが同じ人たちを繋げることも。日々日常の中で、そういった交流はスタッフみんながしています。」(緒方さん)

ランチの時間、コーヒーで一息つく時間。挨拶はもちろん、こういった時間に何気ない会話を重ねることで、相手からも話しかけやすい環境をつくっていると言います。その結果、「こういうことをしたいんだけど…」と会員さんから直接相談を受けるケースも多いのだとか。

「それぞれの会員さんがどういう仕事をしているか、どういうモノを作っているかも把握するようにしています。例えば町の人からホームページを作りたいと相談された時、制作物のテイストやその人の性格、喋るトーン、好きなものなどを考慮した上で、なるべく合いそうな人を紹介するように心がけています」(緒方さん)

そんな意識をそれぞれのスタッフが自然と持っていることで、プロジェクトが次々と生まれやすい環境ができあがっているのですね。

一方、会員数の増加に伴い、一人一人のことを把握するのが難しくなっているのも事実。そこで、会員それぞれの仕事や趣味が記されたプロフィールシートを掲示する、などの工夫を取り入れています。

各々の好きなものや得意分野、会員になった経緯などが一目でわかるプロフィールシート。思わず本人に話しかけてみたくなる、個性あふれる自己紹介文が面白い。

仕事の依頼をしたい時などに目当ての人を見つけやすくなり、かつ会話のフックができることで、声をかけやすくなるという効果が生まれ、スタッフの手が届かないところでもコミュニケーションが生まれやすくなっています。

また、会員さん同士で登山に行ったり一緒に畑を始めたりと、様々な活動が生まれている様子。初期の頃は運営側でサークルの立ち上げや企画をすることが多かったそうですが、今はスタッフの斡旋なしに各々が自由に動いていて、無理のないコミュニティ運営が実現できているようです。

コミュニティを活かして生まれた150以上のプロジェクト。その内容と経緯とは?

では、実際にコミュニティの中から生まれているプロジェクトにはどのようなものがあるのでしょうか。

その内容は、大きく二つに分類されます。お金を大きく動かす「仕事」ベースのものと、自分の「思い」や人との「関係づくり」に重きを置く「プロボノ」ベースのもの。

前者の場合、会員同士の需要と供給がマッチして仕事に繋がるケース、『森のオフィス』に持ちかけられたクライアントワークにチームで取り組むケース、会員自らが立ち上げたり持ってきたりした案件に有志で取り組むケースなど、様々な経緯があります。地域の事業者とのコラボ案件もあれば、都心からの近さゆえ、都内企業から規模の大きな案件の話が降ってくることも。

オープン当初は「リモートワーク」という概念がまだ浸透していない時期。エンジニアやデザイナー、ディレクターなど、フレキシブルに働けるウェブ関連職の人の移住が大半でしたが、コロナ禍をきっかけに一般企業の会社員も「リモートワーク」という選択が徐々にできるようになったことで、『森のオフィス』に集まる人々の職種や業種が多様化し、そこから生まれる仕事の幅も広がっています。

また、『森のオフィス』の運営陣には、代表の津田さん率いる、デザイナーやディレクターなどの経験を豊富に持つチームがあり、『森のオフィス』として案件を受けるときには、この制作チームが中心となり、案件のテーマや規模感に合わせて適任のメンバーを集め、プロジェクトチームを結成します。

その時の判断材料となるのは、やはり信頼関係。日々のコミュニケーションという土台があるからこそ、それぞれの会員さんが「どんな人であるか」「どんな仕事をしているか」という情報を頭に入れておくことができます。

移住や二拠点生活により、地方に拠点を構える動きがスタンダードになりつつある時代。地方にとっても、彼らの力で新たな施策に取り組み、それまで眠っていた地域の魅力を発信できる絶好のチャンスになっています。だからこそ、『森のオフィス』では、地域で何かしたいと思っている人々が「仕事を得やすい」「実績をつくりやすい」環境づくりに力を入れています。

一方、プロボノ的活動も多く生まれています。例えば、最近『森のオフィス』の一角に誕生したのは『森のほけんしつ』

「地域の方が体に気を遣うきっかけをつくったり、なんでもないお話をすることで元気になってもらいたい」という思いで、管理栄養士の会員さんが立ち上げた企画。プライベートサロンや月に一回のトークイベントを開きながら、一緒に活動するチームも徐々に大きくしています。

「会員さんも自分から『こういうことをやりたい』と声を上げてくれることが多いし、スタッフとしても『とりあえずやってみよう』という精神なので、その相乗効果でどんどん新しいものが生まれています」(緒方さん)

一方で、過去には少し困った事例も。地域おこし協力隊のチームで、地元の高齢者向けに無償でスマホ教室を開催してみると、予想以上に人が集まりました。

「助かった、ありがとう」という声をもらうと嬉しいものの、その対応に追われ、通常業務に割く時間が圧迫される状況に。それを見兼ねた参加者の中には、「タダでは申し訳ない」と五千円札を握りしめてやって来たり、日本酒を差し入れてくれたりした人もいたのだとか。

「初めからルールや枠を設けるのではなく、とりあえず始めてみて、問題が発生したらそのケースに合った対応を考え、改善していく。そうやって、『やってみたい』と思った当初の気持ちを尊重して、上手に実現していく方法を常に模索しています」(緒方さん)

また、会員さんが増えてきたからこそ、『森のオフィス』に求めるものも異なってきている段階なんだとか。仕事として関わるプロジェクトを増やしていきたい人もいれば、地域の人とのコミュニケーションの場を作りたい人や、自分のビジョンを実践に移していきたい人もいる。ここに集う人の多様性そのものが、『森のオフィス』を居心地の良い場所にしているのかもしれません。

完結してしまう空間に、もっと地域とのつながりを。「昔ながらの知恵」を切り口に広がる輪

コミュニティ運営者の多くが頭を悩ませる、「コミュニティの外」との関わりをどう築いていくかという問題。生活から仕事まで完結してしまう『森のオフィス』では、コミュニティ内の繋がりが強固になりやすい分、外から入りづらくなるという一面も抱えています。

「コワーキングスペース」自体に物珍しさのある地域では特に、「何をするところなのか分からない」「敷居が高い」というイメージはなかなか拭えるものではありません。

そういった声に対してまずは結果を見せていこうと、『森のオフィス』オープン当初は、会員数を増やすことを目標に、都心からの呼び込みに力を注いでいました。

緒方さんが赴任したのはオープンから5年が経ち、その土台が出来上がってきた頃。まさに「地域とのつながりを増やす」という次のフェーズに移っている時期でした。

「地域の人と富士見町に住んで間もない人を繋げるのが自分のやりたいことであり、役割であると思っていました。そうすることで、どちらの方にも喜ばれたら嬉しいなって」(緒方さん)

地域の伝統的なものや手仕事への関心が強い緒方さん。

富士見町に伝わる昔ながらの漬物が美味しいと聞けば、人のツテを辿り『漬物名人』と呼ばれる「おかあさん」を見つけ出し、直々に漬け方を教わるだけでなく、移住してきた若い「おかあさん」たちにも繋げます。お米農家さんから「稲わらを廃棄せずに違う形に変えられたらな」という声を聞いたときは、稲わらで鍋敷きを編むワークショップを開催しました。

色んなところで自分のやりたいことを発信し、つながった関係が途絶えないよう連絡をまめにとり、何度も足を運ぶ。その結果、自分を「可愛がってくれる」人が増え、農作業や手仕事、ご飯などの誘いを受けるようになり、ますます関係を深めている緒方さん。

「地元の人と一緒に野菜を収穫したり、仲良くしている地域の方たちが何かあると電話をくれたり。そういう場面が当たり前のように日常に溶け込んでいる今の生活が、本当に豊かで楽しいです」(緒方さん)

いきいきと語る緒方さんの姿勢が、『森のオフィス』にも新たな縁と風を運んでいます。

色んな人とつながり、自分の「やりたい」を深められる場所・『森のオフィス』

あなたも実際に足を運んでみることで、フレッシュでエネルギーに満ちあふれた空気を味わってみませんか?

また、現在『森のオフィス』では、新しい地域おこし協力隊の仲間を募集しているとのこと。興味のある方はぜひ、ご応募ください。

Information

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Editor's Note

編集後記

『森のオフィス』は単なるコワーキングスペースではなく、地域の人との関係づくりに不安を抱く移住者・移住検討者に安心を提供するコミュニティでした。初めてのコミュニティに足を踏み入れるのは勇気がいることですが、緒方さんをはじめスタッフの皆さんの丁寧な対応に、利用者さんのドキドキが溶かされていく様子が目に浮かぶ取材でした!

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