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※本レポートは2024年9月26日に行われた「【第6期インタビューライター養成講座 特別公開講義②】話し手の真意を引き出すインタビューと表現を探る」を記事にしています。
「100年先のふるさとを思ふメディア」をコンセプトとする「LOCAL LETTER」。地域で活躍するプレイヤーや、豊かな暮らしを模索する実践者にインタビューし、800地域・1,100記事以上の掲載をしてきました。
「LOCAL LETTER」が7年間にわたって培ってきたインタビューやライティングのノウハウを伝える「インタビューライター養成講座」は、早くも第6期目を開講中。
(インタビューライター養成講座 詳細は こちら)
「第6期インタビューライター養成講座 特別公開講義②」では、フリーランスの編集者・ライターのかたわら、岡山県で本屋を経営するあかしゆかさんをゲストにお迎えしました。
きちんと真意が伝わる記事を書くための準備や心構え、取材時や執筆時のコツなどについて、あかしさんに語っていただきました。
どこをとっても本当にためになる、取材をするに当たっての「語録」のようなあかしさんの言葉が満載の一夜限りの特別講義を、受講生からの質問も交えながらレポートします。
平林 和樹(モデレーター、株式会社WHERE):今回の特別講義のテーマは、「話し手の真意を引き出す」です。取材相手が話す言葉と、内心で思っていること、この両方をどう掴むかが記事にする時には必要です。あかしさんがインタビューするときに意識していることはありますか。
あかし ゆか 氏(以下、敬称略):大きく3つあります。まず、大前提として「事前準備をきちんとする」ことです。これにより、自分が知らないことを「知らない」と臆せずに言えるようになります。
準備不足のまま曖昧な質問をすれば、インタビュイーの方に「こんなことも知らないのか」と思われてしまいますが、自分がちゃんと事前準備をしていれば堂々と聞くことができる。取材中にいい対話をするために、事前準備をきちんとすることは大事にしています。
2点目は、「取材中はPCを触らない」ことです。必要なことは手元でメモをします。相手の表情、目線の動き、仕草などのわずかな変化に多くのことが表れるので、取材中はできるだけお相手の目を見て対話をしています。
最後は、「自己開示をする」ことです。相手の話を聞くだけでなく、その質問をする理由や自分の体験を語ることで、相手が具体例に紐付けて答えてくれることもあります。
平林:インタビューライター養成講座の受講生の中からも「何を、どのくらい時間をかけて準備すればいいか」という質問が必ず出てきます。あかしさんはどのようにリサーチされますか。
あかし:WEB記事や著作本を読むほか、最近ではYouTubeで検索もします。自分がリーチできる情報の中から、取材テーマに紐づくものの知識を入れます。
とはいえ、取材対象者を隅々まで調べ尽くすよりも大切なことは、目の前の取材に対して真摯に向き合っている姿勢を示すことだと思っています。インタビュアーが真摯ではないと、取材相手は心を開いてくれません。
臼山 小麦(ディレクター、株式会社WHERE):通常、事前質問リストは何問くらい用意されますか。また、取材終了時点ではそのリストの何%程度が達成できていますか。
あかし:取材相手に事前に送る事前質問リストは、5〜6個くらいです。あまり多くならないようにしています。それとは別に、深掘りしたいポイントを自分用に細分化して、複数個用意しています。とはいえ取材は生ものなので、用意した質問からずれていくことももちろんありますが。
受講生:取材先によって、服装やメイク、自身のキャラクターを変えることはありますか。
あかし:例えば、漫画家さんの取材にはその漫画にゆかりのあるTシャツを着るなど、話のネタになるようなものを身に纏うことはたまにありますね。それがアイスブレイクになることもありますから。
受講生:取材慣れしていないお相手への心づかいはどうされていますか。
あかし:緊張している方には、まず「なんでも話してくださいね」とこちらがオープンマインドであることを伝えます。そして、取材中は相手のコミュニケーションスタイルを探っていき、なるべく相手が心地よく話せるように会話をしていきます。取材慣れしていない方へは、質問をこまめに入れますね。
平林:相手の目線や話す雰囲気で「この人は本音か、そうじゃないか」を見分けていますか。
あかし:私も取材を受けることがあるのでわかるのですが、インタビュイーの取材の場での発言すべてが、本当に話したかったことというわけではありません。うまく話せないこともあるし、その時々で話したくないこともある。だからできるだけ本音に近い気持ちを引き出せるような質問を追加で入れることがあります。例えば、事前準備で読んだエピソードをたどって「以前はこうお話しされてましたが…」とさらに深く聞いてみたり。こうした場面で、事前準備が活きてきます。
受講生:取材中に言葉が途切れ、沈黙になった時はどうしていますか。
あかし:「沈黙と無知は恐れない」ようにしていますね。知らないことは知らない、わからないことはわからないと言った方がいいですし、相手が考えている沈黙の場合、あまり気にしません。いくらでも待ちますし、沈黙を解消するためだけのつなぎの質問は入れないようにしています。
また、取材の1時間や1時間半の中で、流れに乗り始める瞬間は必ずあります。そこに乗るためには、その記事のコンセプトや誰に何を伝えたい記事なのかを意識し続けることが大事です。取材中、肝になるエピソードは絶対にあるので、それを逃さないように意識しています。
平林:インタビュアーと取材対象者の感情が被っていけば、自然と取材の道が開けますからね。途中で煮詰まった時、僕は思い切って「一回仕切り直ししましょう」と言います。相手も緊張感が取れてスムーズにいくことも多いですね。
受講生:インタビューする時に、あかしさんがこれだけはルーティーンとして行っていることがあれば教えてください。
あかし:相手の意図を汲み取ることを自分の想像のみで行わないことですね。相手の言葉はあくまで相手の一部分でしかないので、いろんな角度から話を聞くようにしています。「それはこういうことですか?」と相手の言葉を確認したり、取材後に、他のインタビュー記事や相手が書いた文章を読み直したり。そうしていくと、自分の中での言葉の解像度が上がっていきます。
臼山:執筆についても受講生から事前に質問をいただいています。「記事は会話の流れのまま書くことが多いですか。あるいは読みやすくするために順序を入れ替えますか」。
あかし:いかに読者に伝わるように組み替えるかが執筆なので、私は入れ替えながら記事にしますね。星座をつくるようなイメージで、どう繋いでいくと1番良い形に見えるかを考えています。取材中は必ずしも流れがうまくできるわけではないので、読者がわかりやすい形に流れを変えるのは必要なことだと思います。
臼山:また、表現を輝かせるために違う言葉に置き換えることもあると思うのですが、何か意識されていることはありますか。
あかし:「この人が本当に言いたかったことはなんだろう」と翻訳するように言葉を変えることはあります。でも、自分自身がその言葉を理解できているかを大事にしているので、わからない言葉を無理に書くことはしません。
平林:取材には教科書も正解もなくて、実践していく中でどれだけの引き出しを作るかだと思いますが、あかしさんはその辺りの力をどう鍛えていかれましたか。
あかし:自分がした取材を文字に起こすことで、どこをもっと深掘りすればよかったのか考えます。客観的に自分で自分の取材をフィードバックすることを大切にしていますね。
ただ、取材とはスキルだけでどうにかなるものではなく、人と人との対話だと思っています。取材相手との時間を「仕事」としてだけではなく、自分や、時間をいただいている取材相手の方の人生にとって豊かな時間の1つにするぞというマインドで臨むことを心がけるようにしています。私自身もまだまだ未熟者なので、今後もさらに人間力を磨きたいと思っています。
臼山:今日から活かせる視点をたくさんいただくことができました。本日はありがとうございました!
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Editor's Note
私自身、ローカルライター養成講座1期を卒業して早くも3年が過ぎようとしています。今に至るライターのキャリアを築けているのは、確実に講座のおかげと言えます。今回の特別公開講義を拝見して改めて自分の取材スタイルを見直し 、取材そのものに真摯に向き合うことに取り組もうと感じました。
KAYOKO KAWASE
河瀬 佳代子