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LOCAL LETTER

守り続けたい社会を目指す「ゼブラ企業」。そのエコシステムを構築するには

DEC. 01

JAPAN

拝啓、社会課題解決とビジネスの両立を目指すアナタへ

※本記事は『ゼブラ企業カルチャー入門』刊行記念トークイベントの内容をレポートにしております。

ゼブラ企業とは、長期的視野を持って「社会」と「経済性」を両立させようとしている企業のこと。利益を追求し、短期間での急成長を目指「ユニコーン企業」に対して生まれた概念です。従来の資本主義の行き詰まりが指摘されるなか、未来を拓く考え方として注目されています。

ゼブラ企業を発展させるためには、起業家だけではなく、支援の仕組みづくりや、既存企業との協業、地域への定着など様々な役割を果たす人や組織が必要です。

イベントでは、「日本から始める新しい資本主義」をテーマに掲げ異なる役割を担う4名の登壇者に、それぞれの立場からゼブラ企業について語っていただきました。

 

社会性も経済性も諦めない、ゼブラ企業の考え方とは

阿座上陽平氏(モデレーター、以下敬称略):最初に私からゼブラ企業について説明します。ゼブラ企業という考え方は、ユニコーン企業に対抗する形で生まれました。ユニコーン企業とは、評価額が10億ドルを超える設立10年以内の未上場のベンチャー企業を指します。2013年にシリコンバレーのベンチャーキャピタリストがつくった言葉です。当時から、この言葉に象徴されるような成長が期待されるスタートアップへの投資が活発に行われていました

一方で、ベンチャーキャピタル(VC)の投資先に選ばれない企業が出てきます。ユニコーン企業の影響によって壊されたり取り残されたりしてしまうものがあるのではないか。それを直したり、維持したりすることを目指そう、ということを4人の女性起業家がブログに出したところから始まっています。

阿座上 陽平(あざかみ ようへい)氏 株式会社ゼブラアンドカンパニー共同創業者、株式会社ユートピアアグリカルチャー プロデューサー / 早稲田大学商学部卒。メディア企業、デジタルエージェンシー、スタートアップなど事業の立ち上げや成長に貢献。社会課題の解決と自立的経営の両立を目指す「ゼブラ」の考えに共鳴し、田淵・陶山と共に2021年にゼブラアンドカンパニーを創業。マーケティング、ブランディング、ストーリーテリングを用いてゼブラ企業の共感者を増やし事業成長に伴走している。
阿座上 陽平(あざかみ ようへい)氏 株式会社ゼブラアンドカンパニー共同創業者、株式会社ユートピアアグリカルチャー プロデューサー / 早稲田大学商学部卒。メディア企業、デジタルエージェンシー、スタートアップなど事業の立ち上げや成長に貢献。社会課題の解決と自立的経営の両立を目指す「ゼブラ」の考えに共鳴し、田淵・陶山と共に2021年にゼブラアンドカンパニーを創業。マーケティング、ブランディング、ストーリーテリングを用いてゼブラ企業の共感者を増やし事業成長に伴走している。

阿座上:それを機に、女性の経営者だけではなく、男性経営者、さらには金融業界からも声が上がりました。同じ思いを抱く人が集まったときにどんなインパクトがあるかということで、2017年に「ゼブラ」というキーワードを用いて、ゼブラズユナイトをつくりました。現在は日本を含め国籍も年齢も様々な2万人以上の人がゼブラズユナイトに在籍していています。

ゼブラ企業の特徴は3つあります。1つは、社会性と経済性の両方を追求するとともに、相利共生を大切にしているということです。お金を拡散して急成長するユニコーン企業は、どうしても5~10年以内といった短期間で利益を出さなきゃいけないんです。そうするとやはり、成功するために市場を独占し、勝たなきゃいけない。

阿座上:それに対して、そうではないやり方もあるということで出てきたのがゼブラです。成功する、独占することが目的ではなくて、守りたい社会をつくるためにWin-Winで、みんなで集まってつくりたい世界をつくっていく。そしてそれを守る維持していくために少しずつ成長していき、関係するみんなにお金が回るようにするという考え方です

ゼブラ企業の特徴の2つ目は、社会的な認知度・理解の向上が必要な難しい社会課題に挑戦していること。3つ目は既存の金融の仕組みにマッチせず、新しいお金の流れを求めていることです。

僕たちが考えているゼブラ経営の要素は、4点あって、事業成長を通じて、より良い社会を作ることを目的としていること、お金だけではなく時間、コミュニティなどの多様な力を組み合わせて成長していること、 株主だけが儲かるのではない長期的でインクルーシブな経営姿勢であること、そして、ビジョンが共有され行動と一貫していることです。

ここからは、それぞれの方にお話しいただきます。伊奈さんからお願いします。

伊奈友子氏(以下敬称略):私は経済産業省の中小企業庁で創業支援事業促進課長として、創業の活性化というミッションに日々取り組んでいます。

2023年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」では、地域の社会課題解決の担い手となる企業という文脈で、正式に「ゼブラ企業」という言葉が使われました。政府としても意識が高まっている状況です。

伊奈 友子(いな ともこ)氏 経済産業省  中小企業庁 創業・新事業促進課長 / これまで、経済産業省において中小企業庁事業環境部調査室長、商務・サービスグループ物流企画室長/消費経済企画室長、製造産業局ものづくり政策審議室長などを歴任して中小企業・ものづくり政策などを多数担当し、現在、創業支援や中小企業の新事業支援、地域課題の解決に取り組むゼブラ企業の推進などを担当している。
伊奈 友子(いな ともこ)氏 経済産業省 中小企業庁 創業・新事業促進課長 / これまで、経済産業省において中小企業庁事業環境部調査室長、商務・サービスグループ物流企画室長/消費経済企画室長、製造産業局ものづくり政策審議室長などを歴任して中小企業・ものづくり政策などを多数担当し、現在、創業支援や中小企業の新事業支援、地域課題の解決に取り組むゼブラ企業の推進などを担当している。

伊奈:地域の包摂的な成長に向けて取り組む中で感じるのは、ゼブラ企業はやはり1社だけでは成り立たないということです。ゼブラ企業自体も1社だけでは成り立たないですし、地域の関係者と繋がることでゼブラ企業が大切にする考え方を広げ、事業を大きくしていくことができるんです。

また、ゼブラ企業は日本の長寿企業に近いところがあるとも感じています。1社で総取りするのではなくて、協力しあい、利益を社会や従業員に還元するというところは、日本の老舗企業と同じです。創業から100年、200年経っている企業の中でも上場している企業はたくさんあるわけではありません。長くビジネスを続けているのは、従業員と地域に還元しながら、適正な規模で、ビジネスを行っているから。特にこれは日本の中小企業の特徴です。

伊奈:ゼブラ企業の育成を考えたときに、やはり地域の多様なステークホルダーときちんと連携をしていくことは重要だと思いますし、一度起業した方が次の起業家を育て、起業が続いていくことがエコシステムの中に必要ではないかと感じます。

地域の中で多様なステークホルダーと連携していくためにどうしたらいいのか、社会課題解決を目指す企業が成長していくためにどうしたらいいのか、さらに、成長が続いたあとに最後の出口をどうするか、これから検討していきたいと思っております。

社会課題を解決するビジネスを実現可能にするためには、人・物・金をつなぐ仲介者の力が必要

伊奈:起業支援を行う中で、ソーシャルな課題を解決することをビジネスにしたい方が増えていると実感しますが、なかなかうまくいききれていない現実があります。課題としてあるのは、関係者がばらばらすぎてつなぐのが難しいことでしたり、また、関係者同士が共通の言語で喋れない、銀行の融資担当からすると何を言っているのかわからないということがあると思います。

だからこそ、間に立ってつなぐ役割を強化することが重要だと感じます。社会課題解決企業を1社ごとに扱うのではなく、面的なボリュームがでる形で支援できないか、今後検討していく予定です。

小林味愛氏(以下敬称略):ゼブラ企業がうまくいききれていない、というのは具体的にどういう状態のことを指していらっしゃるのでしょうか。

小林 味愛(こばやし みあい)氏 株式会社陽と人代表取締役 / 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省へ出向。2014年に退職し、株式会社日本総合研究所へ入社。全国各地で地域活性化事業に携わる。2017年8月福島県国見町にて、地域資源を価値化する株式会社陽と人を設立。子育てをしながら、福島県と東京都の2拠点居住生活を送る。
小林 味愛(こばやし みあい)氏 株式会社陽と人代表取締役 / 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省へ出向。2014年に退職し、株式会社日本総合研究所へ入社。全国各地で地域活性化事業に携わる。2017年8月福島県国見町にて、地域資源を価値化する株式会社陽と人を設立。子育てをしながら、福島県と東京都の2拠点居住生活を送る。

伊奈:「志があって賛同する人が集まったものの、反対にあってうまくいかない」でしたり、「創業時に必要な資金が足りない」、「協業先を見つけることが難しい」など様々な課題があります。さらに、その地域の中に受け入れる土壌があるか、という環境の面は大きいです。ウェットなところから、仕組みとしての課題、両面でとらえる必要があると思っています。

小林(味):経済的にもっと伸びる企業、逆に社会的なインパクトをもっと出せるような企業がある中で、仕組みとしてさらに整っていけば、地域がより良い状態、適正な状態になれる可能性がある。まだそこまでできていないから、これからわかりやすく伝えていく役割ということでしょうか?

伊奈:そうですね。うまくいっていないところにいかにうまく水が流れるように仕組みの面でサポートすることが私の今の仕事だと思います。

伊奈:社会的なインパクトを出すということ自体が事業の目的としてなかなか理解されないという課題もあります。理想論を言っても儲からない、と言われることもありますが、理想を叶えて儲かる手段が絶対あるはずです。そういった考え方そのものが理解されていないところがあると思います。

事業の目的と社会課題の解決を並べた場合、絶対に理想論になるはずなんです。

「未来の子どもたちに美しい自然を」という目的を持った事業に対して、「それって理想論だよね」と言うのではなくて、本当にビジネスになる可能性を探っていくことがまず第一歩だと思っています。

共創によって生み出される利益を超えた価値とは

小林さやか氏(以下敬称略):私は日本郵政の事業共創部で、ローカル共創イニシアティブというプロジェクトにかかわっています。社会課題解決に向けて活躍するゼブラ企業などの地域プレーヤーに郵政グループの社員を派遣し、2年間で共創モデルをつくるというプロジェクトです。目的は単に派遣をすることではなく、あくまでも共創モデルをつくっていくこと。結果的に人材育成にもつながっています。

小林 さやか(こばやし さやか)氏 日本郵政株式会社 事業共創部 担当部長 / 2006年に日本郵政公社に入社。以来、主に不動産開発事業の企画・立案・実施に従事。2017年に日本郵便の社内副業制度を利用し、地域における郵政グループの不動産活用の在り方を模索し複数のプロジェクトを企画。2020年、新規ビジネス室(現・事業共創部)へ異動後、「ローカル共創イニシアティブ」プロジェクトを立ち上げる。
小林 さやか(こばやし さやか)氏 日本郵政株式会社 事業共創部 担当部長 / 2006年に日本郵政公社に入社。以来、主に不動産開発事業の企画・立案・実施に従事。2017年に日本郵便の社内副業制度を利用し、地域における郵政グループの不動産活用の在り方を模索し複数のプロジェクトを企画。2020年、新規ビジネス室(現・事業共創部)へ異動後、「ローカル共創イニシアティブ」プロジェクトを立ち上げる。

小林(さ):事業共創部とは、基本的に他企業とのアライアンスにより新規事業を取り扱う部署で、配属された当初はM&Aなどを担当していました。しかし、大企業の新規事業の手法としてM&Aだけではなく、自社の強みを見出して、地域のプレヤーさん掛け合わせてやっていくことこそが正しい道なのではないかと思うようになります。そこで、郵政グループのもつ社会関係資本、ネットワークを生かしたビジネスができれば、と考えました。

実際、協業を形にするには、双方のコミュニケーションと多大な労力が必要なので、接着させる存在として人を派遣する手法を採りました。結果的には人材育成につながったという側面もあります。やはり越境体験なので、価値観の違いを知ることによって会社がもっと好きになったという社員もいましたし、すでに派遣された社員は、以前よりも自分主語で話すようになったと思います。

大きい組織だと、どうしても若い人は上から指示を受けたことをとにかくやることがミッションなので、だんだん会社が主語になっていくのです。それはそれでひとつ正しいことでもありますが、「自分はこう思う」がだんだん言えなくなってきます。地域に派遣されると、「あなたはどう思うの」と問われ続ける場面が多いですよね。そういう経験を通してどんどん変わっていって、それがすごく頼もしく感じますね。

持続可能な地域を次世代に託すために、今できることに取り組む

小林(味):私たち、株式会社陽と人は、「仕組み」として自分たちの利益を最大化するのではなく、地域へ利益を循環していくことで次の世代に地域をどのような状態で託していけるか、という社会実験をしています。

事業では、福島の農業の課題の解決と、女性を取り巻く課題の解決に取り組んでいます。

私たちが活動する国見町は桃の生産地で、全国の町村でNO.1の生産量ですが、町ではいわゆる規格外の桃が畑で廃棄されているんです。

「食べられないんですか?」って聞いたら、「食べられる」って言うんですよ。それでも「価値にならないから」廃棄になる。でも、「これが一番おいしいんだ」ともいうんです。それって価値ですよね。

こういった桃が廃棄され、流通していない理由はいろいろありますが、地域にいればいるほど、この「なぜ」が増えていきました。

調べた結果、現状のような桃の流通の構造になったのは戦後でした。食料を安定的に供給するために作られた構造が今も中心にあることによって、見た目の悪いものや効率的に運べないものは規格外となり、価値にならない。そうであれば、ちゃんと物流をつくり、欲しいと思ってくれる消費者とつなげることで解決できるので、自分たちでつくろうと思いました。

また、国見町はあんぽ柿という干し柿の産地でもあり、今でも1つ1つ手作業でつくられています。スーパーで売っている干し柿は高いと感じるかもしれませんが、農家さんの所得はなかなか上がりません。1年かけて柿を育てて、剥いて、干して、それでなかなか儲からないという状況は持続可能ではないし、後継者もいなくなります。

あんぽ柿は「加工品」なので規格外品が出ない。そのため、未利用資源であるむいた「柿の皮」に着目して、柿の皮から抽出した成分から女性特有の健康課題を改善できるようなデリケートゾーンケア商品を3年かけてつくりました。商品の普及はもちろん、女性特有の健康課題を改善していくことを目指して、産婦人科の先生など専門家の方と連携して、情報の発信や企業研修の実施なども合わせて行っています。

編では、ゼブラ企業とは何かに始まり異なる立場からゼブラ企業の発展に取り組む登壇者の取り組みを深堀りしました。後編では、「ゼブラ企業」という考え方を通して、資本主義経済の中で社会にインパクトを与える企業が持続していくために重要な考え方のヒントを探ります。

Information

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Editor's Note

編集後記

2024年から新一万円札の顔になる渋沢栄一は、経済的成長だけを追い求めるのではなく、人のためになることの重要性を説きました。令和の時代、資本主義社会が続いてきた今まさに必要とされている考え方なのではないかと感じました。

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