協力隊
移住の選択肢のひとつとして、すっかり定着した「地域おこし協力隊」。全国各地では、さまざまな想いを持って地域で活躍する協力隊の姿があります。
今回はその中でも、東北で最も地域おこし協力隊を受け入れている宮城県丸森町に注目。
新しいことにチャレンジしたい移住者や起業家が続々と集まっているこの町で、協力隊としてどんな挑戦ができるのか。そもそも今、丸森町にはどんな人がいて、どんなことが起きているのか。
丸森町役場商工観光課の斎藤 洋寿さん、菊池 卓也さん、協力隊の起業サポートを担当するMAKOTO WILL執行役員・島 征史さんに話を伺いました。
丸森町は、宮城県の最南端に位置していて県内2番目の広さの人口約12,000人が暮らすまち。田園地帯とそれを囲むように山が広がる、小さな町をなぜ、移住者や起業家が選ぶようになったのだろうか。
「転機は、国の政策として『地方創生』が推進されるようになった2015年ですね。町の戦略の柱として、起業支援推進事業がスタートしました。その頃、東北エリアで起業家支援をするMAKOTO(現:MAKOTO WILL)と出会ったんです」(丸森町役場 斉藤さん)
MAKOTO WILLは、東北エリアで起業支援のプログラムなどの運営を手がける会社。丸森町とMAKOTO WILLの出会いをきっかけに、移住と仕事づくりをサポートする起業家育成プロジェクト「まるまるまるもりプロジェクト」が始動する。
「まるまるまるもりプロジェクト」とは、町の資源環境を活用したビジネスを生み出す人を町外から募集し、町に暮らしてもらいながら新たな仕事を生み出すプロジェクトのこと。
「まるまるまるもりプロジェクト」に地域おこし協力隊の制度を活用し、移住と仕事づくりのサポートを行なった結果、2015年のスタート以降、起業相談は900名以上、約30社が実際に起業・事業を継続している。
なぜ、丸森町はここまで挑戦者の集まるまちへと変革できたのだろうか。丸森町以外でも、起業家のサポートを幅広く行うMAKOTO WILL執行役員の島さんは、丸森町の魅力を “役場の熱量” と話す。
「役場の人たちがとても熱心なんです。ネットワークを持っているので、情報網などを駆使して伴走する姿勢があり、結果として移住や企業誘致につながっているのを見聞きしています。人をつなげる力が抜群だと思いますね。それがあったから起業できたという人は何人もいるはずです」(MAKOTO WILL 島)
丸森町生まれ丸森町育ちで、就職の際に「丸森町に戻ってきたい」と、Uターンをした菊池さんは、町の強みとして “外部を受け入れる文化” をあげる。
「丸森町は田舎ですが、町全体の雰囲気として、町外から来た人を受け入れる文化があります。実際に移住者とお話ししていても、丸森町に来て孤独を感じているケースをほとんど聞きません」(丸森町役場 菊池)
出身者も移住者も魅力を感じる丸森町。実際に、彼らは協力隊に対してどのような関わり合いをしていくのだろうか。
「一人ひとりの人生を預かるわけですから、町に来てもらう限りはお互いにハッピーで終えたいという想いがあります。特に協力隊へのフォローや時間を使うことは大切にしていますね」(MAKOTO WILL 島)
「お互いに不幸になることはしたくないので、コミュニケーションを一番大事だと考えています。役場と協力隊の関係だけでなく、地域との関係や近所との関係、協力隊同士の関係など、信頼関係を築くことが何より大事なんです」(丸森町役場 斎藤)
コミュニケーションを大事にしているからこそ、仕組みとしてもすぐに相談ができる体制や、コミュニケーションがはかれる場を用意。
「月に一度、役場職員との面談時間を設けています。起業や事業の相談はMAKOTO WILLが行うので、役場では生活面でのケアを行います」(丸森町役場 菊池)
丸森町では、協力隊との連絡ツールとしてSNSアプリを活用しており、メッセージグループには町役場の職員たちも加わって、いつでもライトに連絡を取ることができる体制を構築。コミュニケーションをスムーズにする上でも「連絡のしやすさ」を大事にしているんだそう。
さらに、定期的に関係者が一堂に集まる定例会の実施も。すでに活動中の先輩協力隊員や起業を支援するMAKOTO WILL、町役場の職員が集い、ワンチームで進めています。
そんな丸森町で起業した1人、山下久美さんは「まるまるまるもりプロジェクト」の2期生。洗えば繰り返し使用できる蜜蝋(みつろう)でつくるミツロウラップを製造・販売するマメムギモリノナカで創業した。
ミツロウラップとは、綿100%の布に蜜蝋や天然樹脂、植物油を染み込ませることで何度も使用できるようにしたエコラップのこと。プラスチックフリーのため、環境に優しいアイテムとして人気が高まっています。
「当初はミツロウラップをつくろうと思っていなかった」という山下さんですが、役場の紹介でつながった養蜂園で余っていた蜜蝋を活用できないかと、商品化を計画したところから、起業することに。
「当時は、ミツロウラップの作り方が確立されておらず、レシピや製造方法を試行錯誤するうちに、次第に商品づくりに夢中になってて。そうしたら、町内の販売店で取り扱いが決まり、さらに 『ふるさと名品オブザイヤー2019』で大賞を受賞。そこから県内外の販売店からの引き合いや、ノベルティなどの受注が相次ぎ、2019年8月に起業しました」(山下さん)
最終的に役場の起業へのサポート体制に魅力を感じて移住を決められたという山下さん。「住民の方や役場の方は、おおらかで暮らしやすいです。都市部に比べて目に入る物理的な情報が少ない分、自分の内側にある興味関心に没頭しやすく、マイペースに仕事に取り組めています」と丸森町で暮らしを充実させています。
続いて、ゲストハウス運営をするため場所を求めていた中村真悟さんにも取り組みを聞きました。
中村さんは国内外を旅する中で訪れた丸森町で、「自分の理想とする田舎のイメージがあって、地域おこしを頑張ろうとする人がすでに町にいた」ことをきっかけに一念発起。宮城県丸森町の筆甫地区で古民家をリノベーションしたゲストハウスを運営しています。
物件などの諸条件がマッチしたことはもちろん、町の雰囲気や丸森町や地域のサポートが手厚いと感じ、移住を決意したのだそう。
中村さんがゲストハウスを運営する筆甫地区は、住民700人程度の小さな集落。中村さんにとってどんな点を魅力に感じたのだろうか。
「筆甫地区は、丸森町の中心部から車で約30分の里山です。筆甫地区では自立的な地域運営がされている地域なんです。例えば、電力会社もつくるし、小売店が無くなれば協働運営の小売店をつくったり、ガソリンスタンドが無くなるとわかれば事業所を結して運営可能にしたり。そういった前向きに活動をする人たちに出会い、筆甫の人達の人柄や風土に魅かれ中村さんは『いいな』と思ったようです」(MAKOTO WILL 島)
一口に起業と言っても、そのきっかけや事業の規模感、始め方も多種多様。
「協力隊に応募してくださる方の中には、既に具体的にやりたいことがあって場所を探している人と、まだまだ抽象度が高いと感じる人がいます。後者の場合、その状態でいきなり地域に入ると馴染むまでに時間がかかるケースもあります。ですが、私たちは時間をかけるということも大事だと思っているので、まずは接点を持ってもらえたら嬉しいですね」(MAKOTO WILL 島)
丸森町では、より町のことを知ってもらうために、オンライン説明会や現地でのツアー(1泊2日)を行なっていく予定。自分のやりたいことが実現できるか、その意思を確認したり、より想いをブラッシュアップさせていく、そんな時間に当ててもらう時間です。
特に丸森町を巡るツアーでは、町での暮らしをイメージしながら、丸森町メンバーと繋がり、さらには自分の事業アイディアをブラッシュアップする時間になるので、協力隊に興味のある人は参加してみるのがおすすめ。
「事業を固めていくことは重要になると思うので、町のことを知ってもらった上で事業のブラッシュアップをしつつ、協力隊の応募書類に記入が完成してしまうような形にしたいなと思っています」(MAKOTO WILL 島さん)
何かあれば、それぞれの担当者にまず相談ができる。そんな関係を構築することを大切にしている丸森町ならば、アナタの想いの実現へと一歩近づくことにつながっていくかもしれません。
まずは、丸森町の人を、まちを知ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
◉日時・場所
①2022年10月23日(日)14:00-15:30 @オンライン
申込み>https://marumori2022daiikkai.peatix.com/
②2022年10月25日(火)20:00-21:30 @オンライン
申込み>https://marumori2022dainikai.peatix.com/
◉内容
もっと、丸森町のことを知ってもらいたい。そんな思いを込めてオンラインで説明会を開催します。丸森町ってどんな町?移住したらどんな生活ができるの?自分らしい仕事をつくるって、どうやるの?
説明会では、そんな質問に答えると同時に、町やサポート企業がどのような支援ができるのかなどを説明します。
◉お申込み
①と②でお申し込み先が異なります。それぞれ希望の日程にて以下ボタンよりお申込みください!
◉日時
2022年12月3日,4日
◉内容(大枠)
1、地域資源や買い物場所、住まいの見学
2、先輩起業家との交流
3、自身の考えている起業アイディアのブラッシュアップワークショップ
※内容は変更になる可能性がございますので、予めご了承ください
◉申込み
説明会に参加した方を対象にしているため、特段ツアーへのお申し込みフォームは掲載しておりません。もし万が一、説明会に参加できないけれど、ツアーにご興味がある方は、以下メールアドレスにお問い合わせください。
メールアドレス(MAKOTO WILL 担当者)
shokou@town.marumori.miyagi.jp
Editor's Note
人が集まるところには、そこにいる人たちの行動力と熱い想いがあることを改めて感じさせられました。一人ひとりの地域おこし協力隊に向き合おうとする丸森町やMAKOTO WILLの姿勢は、起業や何かを実現したいと思う人たちにとって、とても心強い存在になるはずです。丸森町の起業家たちとぜひお会いしてみたいです。
ASUKA KUSANO
草野 明日香