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みなさんは、「バイヤー」というお仕事をご存じですか?
バイヤーとは、店舗で取り扱う商品の買い付けや仕入れ、管理などを行う人のことです。
バイヤーの中でも、地域に貢献したい方々がマーケティングスキルを身につけ、地域の事業者を応援する「地域バイヤー」。そんなバイヤーになるための特別講座「地域バイヤープログラム」が開講されています。(講座詳細はこちら)
地域に眠る魅力的な商品を発掘し、仕入れ、販促PRから販売まで実体験しながら学ぶ、超実践型のプログラムです。
これまで第3期まで開講し、のべ383名が受講しています。受講満足度は、なんと95.8%!
今回、第3期地域バイヤープログラムを受講した3名の方に、実際の講座の様子や講座を通して得た学びを伺ってみました。
受講生の中には、マーケティングの初心者から、すでに地域活性化に取り組む実践者までの方までいらっしゃいます。
すでにローカルで活動する山根さきさんも、受講生の一人。
東京で一度就職した後、地元の岐阜県郡上(ぐじょう)市に戻り、フリーランスとして地域おこしに取り組んでいます。
「つい先週もイベントを終えたところで。二日間続けて開催したので、ちょっとバタバタでした」と笑顔で地元・郡上市のことを語る山根さん。
郡上市に帰ってきた直後から、1,000名以上が来場する大規模なイベントに関わっているのだとか。地域を思い、すでに精力的に動いている山根さんは、なぜこの地域バイヤープログラムの講座を受けようと思ったのでしょうか。
「地元のいいものを、もっと外に広げたいっていう想いがあって。地域の特産品や魅力を市内だけでなく、県外や全国に向けて発信していきたいと考えています。いずれ産品を売る店舗を持ちたいなと思っていたところ、地域バイヤープログラムの広告を目にしました。タイミングや内容が自分のやりたいこととピッタリ合っていたので、すぐに申し込みました」(山根さん)
また、山根さんのようにローカルにゆかりのある方だけでなく、地域バイヤープログラムには、多様なバックグラウンドを持つ参加者が集まっています。
「出身が東京都墨田区で、実家の近くにスカイツリーが建っています。東京出身なのこともあり、そんなに地域を意識してきたわけではないんですけど…」と続けるのは、横山美穂さん。
外資系の企業に勤め、日々世界各国の方と働いています。出張や趣味の旅行など、これまで訪れた国は70か国以上という横山さん。日本国内の旅行も大好きで、海外から訪れる友人・知人に日本の魅力を広めることもしています。
「子どもの頃にあった銭湯や、お祭り、伝統工芸が少しずつなくなってきているのを感じていました。 それが寂しくて。でも、海外を旅すると、日本のこうした昔ながらの文化や伝統に興味を持つ人がたくさんいるんです。
需要と供給のマッチがうまくしていなかっただけで、日本国外に目を向けたら、こうした伝統を残すことができるんじゃないかなと思うことがありました」(横山さん)
そうした経験から、「自分にも地元や日本に貢献できることがあるのでは」という想いが心の中で膨らんでいきました。
「技、伝統、文化とか、日本のいいところを残すことの力になりたいなと思って、地域バイヤープログラムに参加しました」(横山さん)
普段から多国籍の人々と働き、多様な文化と触れ合う横山さんだからこそ気づけた視点。それをただの「気付き」だけで終わらせるのではなく、今回地域バイヤープログラムの講座に参加し、行動に移した横山さん。未来に向けて確かな一歩を、踏み出すことになりました。
続いて、横山さんと同じく都内を拠点とする、齋藤圭吾さんはITコンサルタント。これまで、会社員とフリーランスを行ったり来たりしながら多様な働き方を経験しており、現在はフリーランスの形態で自由度高く働いています。
ITコンサルタントとして活躍する一方で、「独自のサービスを作りたい」という想いを胸に抱いていると言います。
「本業のITコンサルでは、いろんな方のサービスを受託でお手伝いすることが多いですが、自分で何かサービスを生み出したいなという想いがずっとありました。食べることが好きなので、食に関することを軸に考え、自分で商品を仕入れてECサイトで販売するようなことをやってみたいと思ったんです」(齋藤さん)
齋藤さんが地域バイヤープログラムに参加したのは、「ECサイト運営の実践的な学びにつながる」と考えたからでした。生産者とのつながりを深め、仕入れの現場を体験することができる本講座は、未経験者でも身体知を身につけられるのが魅力の1つです。
今回お話を伺った3名のように、地域バイヤープログラムの受講生は、受講の理由も出身地もお仕事も今までの経験も多様。これまで、マーケティングやバイヤーの経験がない方も多く参加しています。
座学・フィールドワーク・販売実践という大きく分けて3つの濃密なカリキュラムに沿って受講していくことで、未経験の方でも「今後も地域バイヤーとして活動していきたい!」という確かな自信を手にすることができます。
インプットとアウトプットをバランスよく重ねていく、約3ヶ月間の地域バイヤープログラム。本講座の目標である「好きな地域や事業者を応援する実践的な力」を身につけることへ共感するメンバーが、全国から集まってきています。
地域バイヤープログラムの座学では、仕入れからPRの仕方、販売に至るまで、プロの生きたスキルを学んでいきます。「刺さる情報発信のデザイン」「バイヤー仕事術 発注仕入れ&コミュニケーション」「伝わる店舗ディスプレイ&ポップデザイン」など、多彩な講義をご用意。
これらの講義は、JR東海や株式会社AKOMEYA TOKYOといったローカルとの繋がりが深い企業の全面的な協力を得て実施されています。講師を務めるのは、第一線で活躍する現役のプレイヤーたち。実践に即したノウハウを直接学ぶことができる貴重な機会です。
受講生の一人、山根さんはこれまでも百貨店や地元のお土産屋での販売経験があり、「物を売ること自体は得意分野」であると感じていたと言います。
しかし、このプログラムで学んだことはこれまでの経験を体系的に把握し、さらに深めるものだったそう。
「今まで感覚的にやってきたことを数字で見たり、AKOMEYAさんやJR東海さんの『今こういうことをして、こういう成果が出ている』『こういう商品が売れ行きがいい』といった実例を見させてもらえるのは、非常に大きな経験でした。お金を払って講義を受けた価値があったと思えた、大きなポイントです」(山根さん)
インターネット上だけでは知りえない現場からの「生きた情報」の数々。
講師陣からの赤裸々なお話は、地域バイヤーを目指す受講生にとって、とても価値あるものになっています。
そして、講義で学んだことは、インプットだけで終わりません。
座学で得た知識を、フィールドワークや販売実践へすぐつなげていくことで、さらなる学びが身についていきます。
濃密なインプットを経て、いよいよ一泊二日の現地フィールドワークへ。
このフィールドワークは、生産現場の第一線に実際に訪れ、事業者さんから直接お話を聞くことができる体験の場です。
視察とフィールドワークを通じて、「販売したい」「PRしたい」と思う魅力的な商品を自ら発掘していきます。
生産者から直接聞く、「どうしてこの商品が良いものなのか」「どういう想いを持って作っているのか」といった声は、地域バイヤーを媒体に消費者に届けられます。
生産者の生の声を、消費者に伝達し、商品の価値を広めていく。地域バイヤーの重要かつやりがいのある役割の一つと言えるでしょう。
「消費者さんの想いやストーリーを届けるのは、ハードルが高いと感じていて…」と語る山根さん。
「売り物がよければ売れるという側面もありますが、それ以上にその地域に興味をもってもらったり、応援してもらったりすることが大事だと思っています。単に『商品が欲しい』だけじゃなくて、その地域により一歩踏み込んでもらえたらなと」(山根さん)
今回のフィールドワークでは、生産者の想いを深く掘り下げることの大切さを実感したといいます。
「私が担当した地域は岐阜県の飛騨市でした。同じ岐阜県の郡上市出身だとお話しし、地元トークで盛り上がった後に、具体的な生産の様子を聞いてみたりと、生産者さんとのコミュニケーションも工夫してみました。
また、夜の会食の場でも、生産者さんとお話させてもらいました。視察中には聞けなかった裏話を聞くことができ、そうした機会があったのもよかったです」(山根さん)
生産者とのやり取りは、人と人とのコミュニケーションそのもの。「うちの商品はこういうところが他の商品と違う」「生産するときに、ここの過程が天候に左右されて大変」など、普段は聞けないような生産現場の裏側は、各生産者ごとに色が出る独自のストーリーの数々です。
こうしたエピソードこそが、消費者の心を動かす原動力になります。「そうなんだ、知らなった!食べてみたいな」「この商品のことをさらに調べてみよう」と思わせるきっかけになるのだと感じさせます。
この地域バイヤープログラムでは、後半のフィールドワークや販売実践の場面でも、プロの手厚いサポートが得られる点もおすすめのポイントです。
現地フィールドワークの後、1ヶ月半ほどの準備期間を経て行われるポップアップは、AKOMEYA TOKYOが監修。ポップアップ当日は、AKOMEYA TOKYOの店舗を舞台に、地域で仕入れたものを店内特設ブースで販売します。
そのために、受講生たちは3~5人程度のチームとなって、協力しながら準備を進めていきました。
準備の過程では、AKOMEYA TOKYO現役バイヤーに対し、20分程度プレゼンする機会も。
「この商品を選んだ理由」「どのようにお客様に伝えるか」といった内容をプレゼンし、プロの視点から直接フィードバックをもらうことができます。齋藤さんは、このプレゼンとフィードバックの機会が「特に価値あるものだった」と振り返ります。
「うちのチームは小売りの経験があるメンバーがいなかったので、『こういう風に整えた方がいい』というAKOMEYAさんからの具体的なアドバイスを元に、再度ブラッシュアップしてポップアップに臨みました。
また、他のチームのプレゼンやデザインを見る機会もあり、『こういう風に考えるんだ』『こう表現できるんだ』と、そこからもたくさんの学びを得ることができました。
とはいえ、どれだけ事前準備に力を入れても、やっぱりポップアップ当日にやってみないとわからないこともたくさんありましたね」(齋藤さん)
学びの充実と裏腹に、「本業の仕事を抱えながら、タイトなスケジュールでポップアップの準備を進めることはかなり大変だった」と振り返る横山さん。
チームでの準備は、それぞれの仕事終わりや、朝の出勤前の隙間時間などを活用。メンバー同士協力して準備を精力的に行いました。
ただ、この密度の濃い時間は「やりたいことが同じという共通点があるからこそのいい時間だった」と言います。
「私は3人チームだったのですが、膨大な数のミーティングと時間をかけて、準備に臨みました。それぞれメンバーは、バックグラウンドや得意なことも全員違っていて。生産者さんの同じストーリーを聞いても、三者三様の解釈の仕方がありました。一方で、響いたところが一緒だったりして。メンバーがいるからこその発見があり、充実していました。
同じ興味を持つ仲間と一緒に、企画から販売までの一連の流れをできたのがよかったなと思っています」(横山さん)
この講座では、チームメンバーをはじめとして、受講生同士の関わりが自然に生まれて育まれていく仕組みが用意されています。もちろん、受け身でいるだけでは実りはありませんが、同じ興味関心を抱く仲間との出会いを楽しむ心があれば、有意義な出会いになるでしょう。
『早く行きたければ一人で行け。遠くに行きたければ仲間と行け』。この格言の通り、具体的な行動を起こすときの仲間との連携は非常に大きな力を持っています。
また、卒業生が集まるオンラインコミュニティもあり、プログラム終了後もつながりを広げることが可能です。このコミュニティには、地域バイヤープログラムの卒業生以外にも、地域の活動に興味のある他講座の卒業生たちも250名以上が集まっています。
齋藤さんは、こうした場で積極的にコミュニケーションをとって、新たな活動につなげています。
「オンラインコミュニティ内では、それぞれが活動を投稿しています。『僕はこういうのをやろうと思っているんです』といった発信がしやすく、関心のある人と輪を持てる場所だなと思っています。
そもそも同じような想いを持っている人が多くいて、ベースの話も合いやすい印象です。『僕はこれができて、向こうはこれができる』みたいな感じで、いろいろな人がスキルや経験を持ち寄ることで、ハードルを低く新たなチャレンジができるのでは、と思っています」(齋藤さん)
地域バイヤープログラムを卒業した後の活動の広がりについて、後編でさらに詳しくお話を伺っていきます。(地域バイヤープログラム詳細はこちら)
Information
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Editor's Note
地域バイヤープログラムは、フィールドワークと販売実践の二つの現場での活動があるので、より”動”の動きが必要になってくることを感じました。それは楽しい体験である一方、準備することも多くなるので、よりチームワークが必要になるのではということを思いました。一緒に何かをやり遂げた仲間は、絆も深まりますね。
Momoe Iuchi
井内 百恵