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※本レポートは、2026年1月31日と2月1日の二日間で開催された「第9回地域おこし協力隊全国サミット」(主催:総務省)の「フィナーレセッション」を記事にしています。
第9回地域おこし協力隊全国サミット
公式HP:https://www.chiikiokoshitai.jp/
「地域おこし協力隊」
賛否両論、いろいろな情報も飛び交っている。
当事者の地域おこし協力隊の人たちは、どう思っているのだろう?
地域を選んだ理由や、具体的な活動・地域との関わり方は?
そんな疑問に、先輩たちがお答えします。
セッションのテーマは「ともに描く、地域と私たちの未来」。
実際に活動する・活動してきた三名の登壇者に、それぞれの視点で本音を語っていただきました。
平林氏(ファシリテーター、以下敬称略):本セッションでは、協力隊の現役生・卒業生をお招きし、「リアルな声」を伺います。それでは、自己紹介からはじめていきましょう。

私は株式会社WHEREの代表をしています。
私たちが大事にしているのは「地域は『人』からできている」ということ。人が活躍できる環境づくりが重要で、地域活性はその結果論だと位置づけて活動しています。
具体的に取り組んでいるのは、地域での挑戦を伝えるWEBメディア「LOCAL LETTER」の運営や、地域プレーヤーが一堂に集う「地域経済サミット」の開催、人材育成事業などです。
地域の担い手を育んでいくために、自治体と連携しながら事業に取り組んでいます。

それでは、みなさんも自己紹介をお願いします。
黒田氏(以下敬称略):黒田と申します。名古屋出身で、10年前に京都府南丹市の協力隊一期生として活動しました。任期終了後に拠点を法人化。現在は育児で法人は休眠中ですが、再開に向けて準備中です。

黒田:デザイナーの経験を活かして、地域のルールブック「集落の教科書」を住民の方たちと制作することから活動がスタートしました。
大学で工芸を学んでいたので、ものづくりにも携わりたいなと。2017年に古民家を改修して、地域の工芸作家さんの作品を手に取って購入いただける施設をオープン。
改修時のクラウドファンディングでは、支援方法が分からずにお米を持って応援に来てくれる地域の方もいて、みなさんの温かさに支えられました。
活動再開時には、夫が鍼灸師として働くお寺で、「工芸」と「養生」を組み合わせた、都会の方たちが心身を整えられる場所をつくりたいと考えています。


中桐氏(以下敬称略):中桐と申します。2014年に岐阜県下呂市の協力隊一期生として移住しました。任期終了の2017年に古民家宿を開業。現在は地域プロデューサーとして活動範囲を広げています。

中桐:東京のCM制作会社で働いた後、2年間、海外で暮らしていました。田舎暮らしや自給自足に憧れていて。そんなとき、滞在中だったニュージーランドで協力隊の募集を見つけたんです。
コミュニティデザインや「地域で生きる」ということに興味がありました。仕事内容は、協力隊一期生だったため、いい意味でも自由度が高い。一つひとつ、地域の方たちと対話をしながら課題や魅力を教えてもらい、3年間を過ごしました。
活動中に見つけた古民家をリノベーションして、農村滞在型の宿をオープン。地元の資源を活用しながら「田舎の暮らしをシェアする」をコンセプトに、施設を運営しています。
移住者やUターンした仲間たちと会社を設立して、PodcastやZINE制作による情報発信にも取り組んでいます。


池内氏(以下敬称略):岡山県久米南町で活動中の池内と申します。3年間、IT活用分野で活動しながら、お米づくりにも取り組んでいます。

池内:前職はエンジニアで、移住後は「人とデジタルをつなぐ」ソフト面の支援に注力しています。
役場に「デジタル相談室」を構えて、延べ400名以上の相談を受けてきました。また、子どもたちの観光音声ガイドづくりなど、小中学校での授業にも取り組んでいます。
傍らで協力隊としてNPOにも所属。耕作放棄地の問題などもある中で、お米をつくりながら、地域の景観や自治会の機能維持に励んでいます。
卒業後は「半農×半IT」、IT支援と農業を両立するモデルを確立したいと考えています。

平林:一言に「地域おこし協力隊」と言っても、職種やミッションは多種多様ですよね。
三名それぞれの取り組みの中から、みなさん一人ひとりの「次の一歩」に繋がるヒントを持ち帰っていただけたらと思っています。
平林:まずお聞きしたいことは「どうやって地域を決めたのか」です。みなさんが協力隊になった経緯や地域の選び方を教えてください。
中桐:「地域資源を活用して力を貸してほしい」という自由度の高い募集内容で、自分でミッションをつくれる点に惹かれました。
山や川がある環境に憧れがあったんですが、海外や東京生活を経て、改めて自分のルーツである岐阜を深く知りたいという思いがありました。
黒田:大学のフィールドワークで、地域の「おっちゃんたち」が実はすごい技を持っていて、面白いと思ったのが原体験です。
卒業後はデザイナーとして窓のないオフィスで、季節感のない生活を送っていました。そんなとき、週末に遊びに行った南丹市の空の広さに惹かれました。協力隊の募集情報には「ものづくりのまち」と記載があって「いいな」と。それで飛び込みました。
池内:新卒でプログラマーになりましたが、会社員以外の道を探したくて退職。高校の恩師に「田舎で地域の人と関わってみたら」と助言をもらいました。
紹介してもらった久米南町で、2泊3日の移住体験ツアーに参加。地域の方たちと仲良くなり1ヶ月ほど滞在したタイミングで、たまたまIT分野で協力隊の募集があって。気づけば3年が経っていました。

池内:奇跡の連続だなと。協力隊になることや移住のターニングポイントはいろいろな場所に転がっているのだと感じます。
平林:これから地域を探そうとしている方へ、経験からのアドバイスはありますか。
池内:1ヶ月間くらい滞在すると、地域がちゃんと見えてくると思います。そこまで足を運んで深く関われば、行政や地域の方の雰囲気、ライフスタイルなどが分かってきます。
平林:実際、地域に入る前と入った後でギャップがあると聞きますが、さすがに1ヶ月いたら、ないですよね。
池内:はい。それから、任期終了後に地域に定着することが大切だと思うので、妥協せずに、3年後の自分の姿をイメージできる地域を選ぶとミスマッチを減らせるかなと。
黒田:活動テーマが自分に合っているかどうかも重要です。私はフリーミッションだったので、自分のやりたいことと地域が求めていることの接点を探すことができました。特定の業務を担ってほしいというタイプの募集もありますので、自分が何をしたいかで考えてみると良いと思います。
中桐:一度、地域を見に行きました。自分が大事にしたいことが叶いそうだと感じたら、私は勢いで進むタイプ。行ってみないと分からないことも多かったです。
最近は、お試し協力隊やインターンの制度もあります。事前に地域の方と交流できる機会は、活動の3年間やその後にとても役立ちます。

平林:活動をはじめてイメージ通りだったことや、逆にギャップだったことはありますか。
黒田:「田舎=スローライフ」という表現を見かけることがあるかもしれませんが、実際は行事や清掃などで休日も忙しい。一期生だから協力隊の認知度が高くなく、地域活動やイベントに積極的に参加しました。
仕事と暮らしが地続きの人間関係の中で「清掃で出会った方がお客さんとしてお店に来てくれる」といった繋がりを得られたのはうれしかったです。

平林:地域は仕事と生活が滑らかに繋がっているので、忙しいですよね。
中桐:役場の方が地域の方と繋いでくれて、私も「地域おこしをするぞ」という気持ちでした。でも、地域の方たちから見ると「協力隊って?」「何するの?」と。
今となっては当然だなと思いますが、最初は温度差のようなものがありました。でもそれが、地域の集まりに参加することや、自分を分かってもらうことの大切さに気づくきっかけにもなったんです。
平林:知ってもらうという視点で、一番大事なことは何だったと思いますか?
中桐:「地域の人が主体になる、地域おこし」を進めていきたくて、地域の方たちから出てくるアイデアや、そこから見えてくる魅力をもっとオープンにしたいなと。その難しさを感じていました。
平林:どうやって乗り越えていきましたか。
中桐:とにかく地域の方のお話を聞こうと思い、家を回って食事をご馳走になったりしながら、昔のお祭りの話や「やってみたいこと」を丁寧に聞き出す日々でした。

平林:地道な対話が不可欠なのですね。切り口をかえて、IT分野の池内さんは役場とどうコミュニケーションを取っていましたか。
池内:ITは「何でもできる魔法使い」のように期待されがちなんです。「田んぼの推移を計測する道具をつくってほしい」「情報発信もできるよね」など。
「スーパーマンじゃないんです」と地域の方たちにも話しましたし、行政の担当者との目線合わせやできることの線引きを明確にしました。地域・行政・自分の三者で、3年後の落とし所を共有しておくことも重要です。
3ヶ月に一度は役場と面談をして、「行政として提供していい支援」の範囲をすり合わせました。地域の方たちからの個別の相談も多いので、協力隊としての活動と個人の生活との境界が曖昧になりやすい。だからこそ、事前のすり合わせが大切だと感じます。

平林:協力隊だからこそできたこと、という点ではいかがでしょうか。
中桐:協力隊という名刺があれば、割とどこにでも入っていけてお話を聞くことができるので、活動の幅が広がります。「こういう活動をしたい」と言うと、「じゃあこの人に会ってみなよ」と紹介していただくこともありました。
池内:協力隊は「地域へのパスポート」ですね。協力隊という立場があるからこそ、行政や学校などの公的な場ともスムーズに繋がることができます。これは3年間の特権だなと。
平林:最後に、今後取り組んでいきたいこと、卒業後のビジョンについて一言ずつお願いします。
中桐:私は「持続する」ことがテーマです。
新しく何かを起こすことも大事ですが、今あるこの集落を持続させていくために何ができるかを考えていきたいです。それは、自分のキャリアの一つである宿を持続させることでもあり、外から人が来る入り口となり、地域の魅力を伝えることにも繋がると思っています。
池内:エンジニアの仕事は場所を選ばないのですが、役割を持った人材として今後も定住していきたいと思っています。
一つのことを突き詰めるのも良いですが、地方にはいろいろなリソースや知恵があります。自分のやりたいことと地域から求められることを掛け合わせて、農業、システム、地域に愛される地域活動の「三足のわらじ」を履きながら、生活していきたいです。
黒田:私自身、移住前は仕事をしすぎて体調を崩してしまっていましたが、移住して暮らしを変えたことで、体調も回復しました。暮らしを変えて自分らしく生きたいという方を、工芸と養生の側面から応援したいです。

平林:本日はリアルなお話を聞けた貴重な機会だったと思います。
協力隊制度は、3年という時間をかけて地域に馴染み、地域のために何ができるかを探りながら、生業づくりや就職につなげられる点が大きな魅力ではないでしょうか。
気になる地域があれば、ぜひ足を運んでみてください。
地域のみなさんは、アナタを歓迎する気持ちで待ってくれているはずです。
「次の一歩」を踏み出されることを楽しみにしています。
地域おこし協力隊が気になる方は、こちらの公式HPを見てみてくださいね。
公式HP:https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/index.html
「LOCAL LETTER」の運営会社、WHEREが実施している「WHERE ACADEMY」では、地域活性に特化したキャリア開発を行っています。これから一歩を踏み出したい方、すでに地域で活動している方は、公式LINEをのぞいてみてくださいね。
Editor's Note
多くの学びと気づきのある時間でした。事前に現地を訪ねること。地域の望みと自分の想いを擦り合わせること。そして、3年後のビジョンを描くこと。中でも一番心に響いたのは、「地域の人の話をいっぱい聴く」ということ。三名の先輩たちの歩みをヒントに、ぜひアナタらしい「次の一歩」を踏み出してほしいなと思います。
RINTARO MATSUOKA
松岡 林太郎