Hiroshima, HIROSHIMA
広島県広島市
前略
自分を加速させる何か新しいモノとの出会いを求めてるあなたへ
新しいビジネスが生まれ、すぐに模倣されて一般化していく時代。このサイクルが目まぐるしく起こっている現在において、たとえ大手企業と呼ばれる企業であっても一社のみでできることは徐々に限られていっているように感じます。
香川県高松市に本社を置く穴吹興産株式会社では、ビジネスをより一層加速できる場として、コワーキングスペース「co-ba hiroshima」を2018年7月に立ち上げました。ここでは全く異なるバックグラウンドを持った人が交流し、化学反応が起きるような様々な仕掛けを行っていきます。
その最初の一歩として、まずはco-ba hiroshimaを知っていただきたい。そんな想いからco-ba hiroshimaのオープニングイベントが開催されました。集まったのは、フリーランスや、自治体職員、スタートアップ企業の代表など、幅広い場所で活躍される方々。皆さんはco-ba hiroshimaに参加してどんな感想を抱いたのでしょうか。そして、あなたならco-ba hiroshimaをどんな風に活用していくでしょうか。
これからは自社で完結せず、地域と一緒になって新しいビジネスを推進していきたいと思っています。
そう語るのはco-ba hiroshimaに到着した時、とびきりの笑顔で迎えてくれた穴吹興産株式会社の執行役員である松本 伸也さん。30社以上のグループ会社を持つあなぶきグループは、以前まであらゆる業務を自社で完結しようとしてきました。
しかしこれからより変化が激しくなるIT時代では、既存のビジネスを展開し続けていくだけではなく、地域や他の企業と関わるオープンイノベーションを取り入れることが、地域のためにも自社のためにも大切だと考えています。
松本さん:今回広島市と同時に高松市でもco-baをオープンしたことで、こちらに来ていただいた方同士がコミュニケーションを取りながら、事業をつくっていくオープンイノベーションな場「イノベーションfrom瀬戸内」をつくり、この場所の情報を日本や世界へ発進していく予定です。
松本さん:今年の3月にはCVC*1 も立ち上げさせていただきました。co-baという場とCVCでの資金、さらには少ない経営資源ではありますが、あなぶきグループの企業を活用して実証実験も行えるようにしていきます。いろんな可能性に皆さんと一緒に挑戦していけたらと思っています。
*1 CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
通常VC等の専門機関が広く資金を集めて行うベンチャー投資を、事業会社が自社の戦略目的のために行うことを指す
続いて今回 co-ba hiroshima のコミュニティマネージャーを務める幸田 良則さん。「私に皆さんのお会いしたい人を言っていただければ、知っている限りの手を尽くしてお会いできるようにセッティングをしていきたいと思っています」と力強く話す幸田さんは、co-ba hiroshima への想いを中心についてお話しします。
幸田良則(Yoshinori Koda)co-ba hiroshima コミュニティマネージャー
1971年福岡県生まれ。テナントビルの賃貸企業でテナント営業8年、財務3年を経て、賃貸管理会社FC本部の立ち上げを10年行う中で社内新規事業を多数経験。その後あなぶきグループへジョインし、企業との新規事業に関わっている。
幸田さん:前職の時から数多くのスタートアップ企業と関わる中で、ビジネスを進めていくためには、必ず「場」と「資金源」が必要なのではないかと思うようになり、全国展開していたコワーキンングスペースであるco-baを広島でも立ち上げようと思ったんです。
全国23箇所にあるco-baでは、co-baを通して多彩な広がりが起きるようにと、それぞれのco-baに一つずつコンセプト「〜〜〜 × co-ba」が設けられています。co-ba hiroshima のコンセプトが今回始めて発表されました。
幸田さん:co-ba hiroshimaは「ビジネスが加速する場」ということで、コンセプトは「加速 × co-ba」です。co-ba hiroshimaでは、スタートアップ企業、フリーランス、ビジネスマン、ビジネスに関心のある学生まで様々な人が集まります。
幸田さん:co-ba hiroshima に来れば、ビジネスが加速する。アイディアだけしかなかった方が co-ba hiroshima に来ていろんな人とアイディアを交換することで、アイディアの内容が固まってきたり、自分自身の方向性が見えてきたらとても嬉しいなと思っています。
幸田さんの想いについてお聞きしたあとは、今回co-ba hiroshimaを一緒につくった株式会社ツクルバの代表中村真広さんと穴吹カレッジの卒業生である建築家の谷尻誠さんの対談がスタート。今回はその一部始終をお届けします。
谷尻さん:僕は起業するとき、ほぼ不安はなかったんです。なぜなら僕は食料に恵まれた世の中に生きているので「死ねないな」と思いました。仮に起業して仕事がなくても、バイトをするという選択肢もありますしね。
谷尻誠(Makoto Tanijiri)さん Suppose design office 主宰
1974年広島県生まれ。94年穴吹デザイン専門学校卒業後、設計事務所勤務を経て、2000年建築設計事務所Suppose design office設立。建築をベースとして、新しい考え方や、新しい建もの、新しい関係を発見し、常に目の前にある状況で、見つけることが可能な新しさを提案し続けている。
谷尻さん:結局起業しても本当に仕事が無かったので、夜は焼鳥屋でバイトしてたんです。だから昼はめっちゃ暇でしたね。(笑)起業するって、大変そうな感じに聞こえますが、別に起業することはそんなに難しくないと思っています。
中村さん:わかります。でもある意味、頭のネジ2本くらいとれてないと、起業はできないんじゃないかと僕は思っています。
中村真広(Masahiro Nakamura)さん 株式会社ツクルバ代表取締役CCO
1984年千葉県生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産デベロッパーの株式会社コスモスイニシアに新卒入社後、デジタルデバイスを活用したミュージアム展示や企画展などの空間プロデュースを経験。環境系NPOを経て、2011年8月に株式会社ツクルバを共同創業。デザイン・ビジネス・テクノロジーを掛け合わせた場のデザインを行っている。
谷尻さん:そうですね、「起業」と「経済」を天秤にかけて、「仕事があるかな」という不安を持ってしまうとなかなかアクションは起こせないですね。
中村さん:そもそもなぜ谷尻さんは起業しようと思われたんですか?
谷尻さん:起業する前に勤めていた会社が不景気で給料もらえなかったからですね。あと、自転車レースに出たかったんです(笑)一年間くらいは「自由な年」を作ってもいいんじゃないかと思って、下請けで図面を描きながらレースに出ていたら、徐々にお話しが舞い込むようになりました。
中村さん:なるほど(笑)
谷尻さん:まあ僕の性格上、もっとよくなると思ったら下請けとかお構い無しに元請けに提案しちゃってて、言うことを聞かない下請けなので、だんだん仕事を頼まれなくなって、仕事がなくなってしまうこともありました。そんな時は焼鳥屋に舞い戻ってましたね。(笑)
中村さん:最近、谷尻さんが「建築家・起業家」とプロフィールに書かれているのを発見して驚いたんですが、起業家としてのスタンスを表明して活動を始められている理由はあるんですか?
谷尻さん:僕は大学にはいかず建築業界に入りました。周りにはアカデミックな人がたくさんいましたが、共感ができなかったんです。それを実感した時、「違う視点で建築の業界を捉える必要がある」と思いました。
谷尻さん:「自分に出来ることは何だろう」と考えた時わかったことは、残念ながら僕は勉強してこなかったので、今から東大卒で賢い隈研吾(くまけんご)*2 を追いかけたところで、僕は隈研吾にはなれないということです。建築で隈研吾と対等に戦う唯一の方法は「考えること」だとも思いました。
考える力は勉強と違って、誰でもこの瞬間に良いアイデアを出したら、世界一のアイデアマンになれる可能性があります。考えるという舞台でだったら「戦える」と思っているので、「君に投資したい」と自分の思考を買ってもらえるように、思考を研ぎ澄ますことを常に考えています。
*2 隈研吾(くまけんご)
日本の建築家。東京大学建築学科大学院修了後、自身の建築事務所「株式会社隈研吾建築都市設計事務所」を設立。現在は、東京大学教授も勤めており、木材を使うなど「和」をイメージした特徴的なデザインは「和の大家」とも称される。
中村さん:今谷尻さんの母校である、穴吹カレッジの講師としてもご活躍されていると思いますが、母校で教えるというのはどんな感覚でしょうか?
谷尻さん:僕が教えるというより、僕が教わっていますね。「何に興味ある?」っていつも学生に聞いています。最近の学生は、建築に限らず、「起業」に興味を持っている学生は多いですね。
中村さん:学生が起業に興味をもっているとしたら、僕たち大人はどういった背中を見せていくのがいいんですかね。
谷尻さん:僕たちは「全力で走る」ことが大切だと思っています。僕らがあぐらをかいていたら、すぐに学生に追い越されてしまいます。僕らがひたすら全力で走って、いつまでも「遠い背中」を見せていないと、若い子たちは追いかけようと思わないと思うので、僕たちは「追いつけないな」と思われるくらい攻め続けるしかないんじゃないですかね。
中村さん:なるほど、それは思わせ続けたいですね。今後谷尻さんが背中を見せ続ける時に大切にしていることはありますか?
谷尻さん:「それは新しいのか?」と、いつも自分に問うようにしています。あと、みんなが賛成するかには注目していますね。僕が新しい企画を出したときに、みんながすんなり「いいね」というものって、みんなの価値観に収まっていることでもあると思うんです。
みんなからは評価されないけれど、未来を作っていくものを生み出せるかには興味を持っているので、極論ですが「みんなに反対される方がいいな」くらいに思っています。
中村さん:みんなに反対されるって、誰もが想像できない未来を作る場合もあれば、本当によくないものの場合もあると思うのですが、最終的に「やる」と判断する決め手はあるんでしょうか?
谷尻さん:「自分が本気で取り組めるかどうか」だけですかね。自分でビジョン掲げて、自分で展望を作ってくしかないと思っています。これからは co-ba hiroshima のような場所を使って、起業という形に限らず、ダブルワークといった形でも「自分が本気で取り組めること」をする人がもっと当たり前にいる時代になってくるんじゃないでしょうか。
谷尻さん:僕が情報交換や仕事の繋がりを作るために行っていたクラブが、今の時代でいう co-ba hiroshima のような場所なんだと思います。クラブよりももっと仕事に近い状態で、場所とコミュニティがあるというのはすごくいいですよね。
中村さん:「あそこに行けば面白い奴がいそうだな」という場所に、co-ba hiroshimaもなっていくと素敵ですよね。今日は始まりのきっかけにすぎないので、これからさらに面白い人達が集まっている、変態たちの巣窟にしたいですよね。
谷尻さん:そうですね。こういうオフィスができると「借りたらどうなるのか」という結果を先に考えて、借りるか借りないかの駆け引きをすると思うんです。みんな駆け引きをすると「損したくない」と考えるけれど、先に損をとった人は損を語ることができるので、結果的に得なんですよね。
だから僕は仕事がなくても海外にオフィスを構えたりしています。オフィスを構えると仕事も生まれるんですよね。投資だと思っていて、ちゃんとお金使って遊べない人は仕事なんてできないと思っています。
谷尻さんと中村さんの対談のあとは、懇親会。イベントが始まる前にそれぞれが書いた「プロフィールシート」を元にそれぞれの参加者が自由に話始め、新しい繋がりがどんどん生まれていきました。
co-ba hiroshima はビジネスを加速させる場。既存の考え方にとらわれず、様々な働き方を応援すると共に、人との繋がりを始め、多様な経営資源を提供してみなさんをバックアップしていきます。とはいえ、co-ba hiroshima もまだまだ始まったばかり。これから大きなチャレンジを繰り返しながら進化を遂げていきます。
今回のイベントは、主催側も含め co-ba hiroshima にいた全ての人に「新しい繋がり」が生まれた時間でした。今後も朝活イベントやプログラミングスクールなど、たくさんのコンテンツで盛りだくさんの co-ba hiroshima にぜひ一度足を運んでみてくださいね。
草々
NANA TAKAYAMA
高山 奈々