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LOCAL LETTER

データサイエンスから導くまちづくりのビジョン。効率的な学習方法とは

FEB. 06

JAPAN

拝啓、効率的にデータサイエンスを学びローカルに還元したいアナタへ

DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化や課題解決の有用性に注目があつまり導入が進むなか、実際にAIやIoTの仕組みを理解し活用できる組織がローカルにはどれくらいあるでしょうか。これを読むみなさんも先進的な地域や企業だけが上手に活用している、遠い世界の話だと思っていませんか。

これまで広島県呉市をはじめとし、さまざまな地域でデータを用いた地域課題の解決の支援を行ってきた松井加奈絵さんは「自治体はデータの宝庫、活用しないのはもったいない!」と語ります。

松井さんが代表取締役を務めるエクスポリス合同会社(以下、エクスポリス)が発表した「Expolis Education Program(エクスポリス エデュケーション プログラム)」は、地方自治体や地域企業をメインターゲットに据えたデータサイエンスの教育プログラムです。どんな想いや経験から教育プログラムの開発に至ったのかに迫り、これからのローカルに必要なデータサイエンスのエッセンスを教えてもらいます。

データ活用やデジタル化がどういった課題解決に繋がるのかピンとこない。まさか自分には関係ないだろうと思っているみなさんこそ、必読の内容です。

松井 加奈絵 (Kanae Matsui)氏 エクスポリス合同会社CEO、東京電機大学システムデザイン工学部情報システム工学科准教授 / 慶応義塾大学KMD研究所リサーチャー。慶応義塾大学にて博士(メディアデザイン学)取得後、国内外の様々なスマートシティ、スマートコミュニティプロジェクトに研究者として参画。現在は地域課題抽出や解決を行うためのデータ流通プラットフォームの社会実装に従事。
松井 加奈絵 (Kanae Matsui)氏 エクスポリス合同会社CEO、東京電機大学システムデザイン工学部情報システム工学科准教授 / 慶応義塾大学KMD研究所リサーチャー。慶応義塾大学にて博士(メディアデザイン学)取得後、国内外の様々なスマートシティ、スマートコミュニティプロジェクトに研究者として参画。現在は地域課題抽出や解決を行うためのデータ流通プラットフォームの社会実装に従事。
釜谷 尚宏 (Naohiro Kamatani) 氏 / 東京電機大学大学院 システムデザイン工学研究科 情報システム工学専攻卒業。在学中は、松井氏の研究室にて地域課題を解決する人材育成のためのSTEAM教育教材について研究。現在は外資系IT企業でデザイナーとして働く傍ら、エクスポリスのプロジェクトにも参画。
釜谷 尚宏 (Naohiro Kamatani) 氏 / 東京電機大学大学院 システムデザイン工学研究科 情報システム工学専攻卒業。在学中は、松井氏の研究室にて地域課題を解決する人材育成のためのSTEAM教育教材について研究。現在は外資系IT企業でデザイナーとして働く傍ら、エクスポリスのプロジェクトにも参画。

課題から逆算してデータを分析する。発想の転換が重要なポイント

エクスポリスは、これまでに地域課題を解決するための手段としてデータプラットフォームの社会実装を手がけてきました。導入された自治体や企業では、日々蓄積される膨大なデータをプラットフォームでリアルタイムに可視化することができ、新たな政策や計画の立案に役立っています。

データを活かしたまちづくりを推進する一方で、IoTやAIという新しい技術を理解し使いこなすことのハードルの高さを実感しています。日々の業務に追われる自治体職員や企業人が、こうした仕組みについて新しく学ぶことができず、先端技術を敬遠してしまうことがボトルネックに。

「データプラットフォームを自治体や企業へ導入するなかで、技術だけでなくデータ活用の発想や考え方も一緒に提供しないと、持続的な課題解決に結びつかないことがわかりました。必要な情報は何かを自ら考え獲得できる人材を育成したい。これが今回の教育プログラムを開発した背景です」(松井さん)

長野県小谷村で実施した初の遠隔授業を行う釜谷さん
長野県小谷村で実施した初の遠隔授業を行う釜谷さん
小谷小学校向けの授業で流したIoT・AIアイデア創出を促す動画
小谷小学校向けの授業で流したIoT・AIアイデア創出を促す動画

課題解決にデータサイエンスを活かすためには、自分たちの組織にどういったデータが蓄積されているかを把握でき、そこから必要な情報を分析できることが肝心です。特に自治体には、地域ごとの降水量や積雪量、上下水道の利用量などたくさんのデータが日々蓄積されています。

課題によっては、既にあるデータを分析するだけで解決の糸口が見えてくることもあります。現状のデータでは不足がある場合は、新たにIoTの技術を取り入れてデータを収集することを検討するなど課題から逆算して分析をするという考え方が必要です。

「どうしても先端技術の導入だけが先行してしまうと、みなさん自分の職域や業務内容と結びつけて考えにくいのだと思います。『便利な仕組みだけど、何ができるんだろう』で終わってしまいがち。

教育プログラムでは『この課題を解決したい』という明確な目的があってから『この技術と仕組みがあれば解決できるかも』という発想ができるように、繰り返し学習し理解してもらえるように設計しています」(松井さん)

松井さんが特にデータプラットフォームやAIによる分析の活用を勧めているのは、都市部よりも人口規模が少ない地域です。こうした地域では人口が減少していくことに対して、管理しなければならない土地の広さは変わりません。人力だけで土地の状況を把握することには限界が生まれます。

「人口減少地域こそデジタルの力が活きるんです。地域ごとにどれだけ積雪したかを自治体職員が現地に計測に出かけている地域がまだあります。現在の技術ではセンサーを設置することで、自動で積雪量が報告される仕組みをつくることも可能です。

今まで人力でまかなっていた労力を省くことで、本来注力するべき地域の運営やマネジメントにより集中してもらうことができます。職員にしかできないことは他にもっとあるはずですから」(松井さん)

「Expolis Education Program」ではデータプラットフォームやAI導入に必要なデータサイエンスの基本リテラシーからしっかりと伝えます。AIにも種類や運用方法が複数あり、自分たちのクラウドの中だけで完結し学習するものもあれば、入力した情報が広く共有され情報漏洩のリスクが生まれるものもあるのです。

基礎的なリテラシーから学ことで、AIやデータとうまく付き合うことができるようになります。「情報漏洩が怖いのでAIやクラウドサービスは使用しない」という判断になってしまうことは、もったいないことです。

広島県呉市に導入されたデータプラットフォームくれの画面
広島県呉市に導入されたデータプラットフォームくれの画面

「リスクを恐れるあまりAIやデータプラットフォームを使わずに、Excelなどを使って人力で処理すると、分析できるデータ量に限界が生まれてしまいます。膨大なデータを分析できないと、有効なデータや傾向を見逃してしまうかもしれませんAIはデータを自動で分析し、リアルタイムで確認することに長けています」(松井さん)

基礎から学ぶことでデータやAIと上手に付き合うことができ、運用のために大量のマニュアルをつくることや、データに過剰にセキュリティをかけて使いづらくしてしまうことも避けられます。自分の職域や業務ではどんなことができるかを想像できるようになるためにも教育プログラムは有効です。

データの可視化が、つくりたいまちの未来のエビデンスに

実際、データプラットフォームを運用する地域ではどういった課題解決に技術が活用されているのでしょうか。エクスポリス合同会社と提携しデータプラットフォームの運用を開始している広島県呉市では、ユースケースとして高齢者の移動手段についてのデータ収集と分析が実施されました。

「車の運転が困難な高齢者が移動手段を失うことで、引きこもりがちになってしまう」という課題の解決の糸口を探るためにIoTの技術を活用したデータ収集を実施しました。

まず70歳以上の市民に「いきいきパス(優待証)」を発行。いきいきパスを使用すると市内の公共交通機関が割引で乗車することができます。移動手段のコストを下げることで引きこもりを防止すると同時に、バスや路面電車の利用割合、よく使用される区間などのデータを取得しました。

このデータから利用者が集中する区間が一目でわかるので、効率的なルート開発やサービス提供を考える上で役立てることができます。また利用者が少ない地域では、遠くまで買い物に出かけることが困難な高齢者がいることも想像でき、移動販売や日用品の配達サービスの必要性が見えてきました。

「プラットフォーム上で見ると簡単な図に見えますが、膨大な量のデータを読み込んで分析した上で可視化しています。データを可視化することで、つくりたいまちのビジョンのエビデンスになります根拠を自分たちでつくり出せるというところがデータサイエンスの魅力です」(松井さん)

また鹿や猪、熊などの有害鳥獣被害対策にIoT技術を取り入れている自治体もあります。これまで目撃者が通報することで、域内に手動の防災無線で警告を流していた仕組みを、赤外線カメラやドローンを用いて監視し、自動で警告が流れるように仕組みをつくっています。

ワークショップ内の授業を行う様子
ワークショップ内の授業を行う様子

「活用できるのは政策や施策を立案する時だけではありません。実施した政策の効果を後追いで分析し、効果検証ができますエビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング(証拠に基づく政策立案)が求められるなかで、政策によってどう変わったのか、データを駆使することでまちの姿をより正確に捉えることができます」(松井さん)

自分が抱えている業務は今のままでいいのか?疑問をもち課題と捉える力も必要

地域課題にあったデータプラットフォームや教育プログラムが提供できるのも、松井さんがこれまで多くの自治体のスマートシティプロジェクトに携わり知見を蓄積してきたからこそ。既に先進的な技術を取り入れ、職員が能動的に動いている地域もそこまでの進歩には長い年月がかかっています。

「早い自治体でスマートシティに取り組み始めたのが2012年頃です。今では、自治体職員自らデータからプランニングが能動的にできるようになっている市町村もありますが、そこまで仕組みができるのに10年以上かかっているんです。

私も2012年当初からこうした自治体のプロジェクトに携わり研究してきました。今回の教育プログラムでは、10年間で得た情報のなかから必要なものだけを効率良くお伝えすることができます」(松井さん)

松井さんは長く自治体と連携してきたため、自治体のセクションと業務の区分けにも精通しています。どの部署でどのようなデータが有効なのかを把握していて、地域が抱えている課題に合わせてワークショップや研修をカスタマイズすることも可能です。

基本的な知識の講義については、クラウド上に映像コンテンツとして用意してあり何度も見返すことができるようになっています。

「一度講義を聞いて分かったつもりでいても、実際の現場で応用しようとした時に使うことができないと意味がありません。プログラムで得た技術を実際の課題解決に落とし込むまで学んでいただけます」(松井さん)

教材については多世代での利用が想定されるためアイデアを出しながら行っているそう
教材については多世代での利用が想定されるためアイデアを出しながら行っているそう

地方自治体や地域企業のなかでは「引き継がれてきた仕事だから仕方がない」と、莫大な労力がかかる業務を疑問に思わず日々こなしている方も多いかもしれません。「自分がいま担当している業務はデジタルの力でもっと簡便化できるのではないか。自動化できるのではないか」と疑問に思うことも重要です。

「自治体職員の方とお話しすると、困っていることを『困っている』と言えずに耐えていることがあります。研修の場であればいくらでも失敗していただいて構わないので、仮説を立てシミュレーションしてもらい、効率化のためにどのような技術が欲しい、使いたいと言えることができるようになっていただければ嬉しいです」(松井さん)

データで開く未来の扉。これからのローカル牽引者に必須な素質

松井さんは、データサイエンスについて基礎から繰り返し学ぶことの重要性を徹底しています。中途半端な知識だとシステムの概要がわからず、本来であれば数10万円で済むはずだった仕組みづくりに何100万円もかけてしまうという事態を避けることができます。

「このプログラムは『自分で全て解析して、デバイスをつくって、AIもつくりましょう』ということをお伝えするものではありません。ご自身の業務の中で、既にあるデータを把握でき、簡単な分析するための技術を導入するプランが立てられるようになることを目指しています。

時間をかけて勉強するということも、もちろん大切だと思うんですが、現実の問題と照らし合わせながら、効率よく学んでいただくことで、実践に活かしながら学んでいただけるところが特徴です」(松井さん)

DXやIoT、AIの活用となんだか難しそうで「怖い」と感じてしまうかもしれません。しかし、一度本質から学ぶことで、これまで多くの人手と労力をかけていたことが、デジタルの力で自動化、簡略化することができる糸口になるかもしれません。

便利な技術を上手に使いこなすことで、まちづくりやビジネスの発展により注力することができます。この技術は、これからのローカルの未来を牽引するリーダーに必須な素質になってくるでしょう。

エクスポリスの提供する「Expolis Education Program」で、未来の扉を開いてみませんか。

Editor's Note

編集後記

興味はあるものの、なんとなく後回しにしていたデータサイエンスやAIの分野。基礎から学べる機会は貴重ですね!これからのローカルに必須な能力だと思いました。

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