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ふるさと納税の導入メリット・デメリット。実数値を元に疑問を解決!

JUL. 20

拝啓、ふるさと納税の導入を迷っている、活用に悩んでいる事業者のアナタへ

起業に関心のある方のために開催された『【しくじり起業】〜起業の挫折乗り越えるまでの失敗談ばかりのセミナー〜vol.1』。後編でお届けするのは、

山形県酒田市の洋菓子ブランド『COMERU』を営みながら、ふるさと納税の活用をすることで事業を拡大していった内橋良介氏の赤裸々なお話し。

既に起業しているが、ふるさと納税導入は難しそうで手が出せずにいる方、またこれから起業を考えていて、ふるさと納税導入も視野に入れている方にぜひ聞いてほしい内容となっています。

本記事内容は酒田市の事業者様の取り組みであり、ふるさと納税制度の全てではないことご理解のうえお読みください。

地元産の米粉を使ったスイーツブランドで、ふるさと納税を運用

内橋氏:内橋と申します。今回は、事業者側からふるさと納税のお話をさせていただければと思います。

内橋 良介 氏
内橋 良介 氏

まず簡単に自己紹介をさせていただくと、私はカムコミュニケーションズ株式会社で代表取締役をしています。事業としては洋菓子の製造・販売をメインに展開しており、今年で創業13年目の会社となります。

元々はオランダせんべいを作っている酒田米菓さんの洋菓子部門として、スピンアウトしてできた会社です。酒田市に店舗と工房があるのですが、私は東京と酒田市を行き来しているのと、デザイナーが福岡からリモートで参加しています。

ふるさと納税で出しているのはCOMERUというブランドで、簡単に説明しますと、「お米が活きるスイーツで、くらしをもっとつややかに」というコンセプトを掲げ、庄内産の生え抜きの米粉を使ったグルテンフリーのお菓子を作って販売しています。

どん底で引き継いだ事業。ふるさと納税を強化したことで、V字回復に貢献

まずふるさと納税を始めた経緯をお話しさせていただきます。実際、ふるさと納税自体は私が代表になる前からもやっていたのですが、本格的に運用を始めたのは私が代表に就任してからでした。

今回のテーマがしくじり起業ということで、しくじりポイントも交えて話そうと思うのですが、弊社の場合は私が代表に就いた時点で、しくじりきったどん底の状態からスタートしました。

どういう状態だったかと言いますと、年商の6倍以上の債務がありまして、営業利益率がマイナス40%程度で、創業からずっと10期連続減収減益。なぜ潰れていないのか分からないような状態で引き継ぎました。しかも引き継いだのが2020年の6月なので、ちょうどコロナ真っ只中。これ以上しくじることはないだろうというような、底の状態からスタートでしたね。

皆さんご存知だと思いますが、地方は人口減少が激しくて、酒田市も毎年大体1.5%くらい人口が減り続けています。一方で高齢化率は上がっていて、見た目以上に消費者となるポテンシャルの層は減っていることになります。

そんな状況下で店舗だけに頼っていては、沈みゆく泥舟というか、いつか潰れてしまう危機感がすごくありました。

僕自身も元々店舗経営の経験がなく、私にできることといえば自分の知見を使って、事業をV字回復させることだと思ったんです。そこで、ブランドコントロールができる自前のECを軸にして、オンラインのチャネルをできる限り増やしていって、ブランドのタッチポイントを作っていくような構想で、オンラインの強化を始めました。

その中で、ふるさと納税やECモールには買いたくなる仕掛けがあったり、そもそもそのプラットフォーム自体に信頼感があるので、弊社のような知名度のないブランドでも商品を見てもらえるきっかけになると考え、ふるさと納税とECの強化も始めました。

それをやった結果、結構上手くいって、元々ECの売上比率は1%以下だったのですが、それが2022年前期には大体55%ぐらいまで成長しました。このECというのは、自前のECとふるさと納税、ECモールを含めたチャネルの合計です。

もちろんふるさと納税だけでここまでこれた訳ではないのですが、間違いなくふるさと納税はブランドのタッチポイントとして貢献してくれたチャネルだと考えています。

ふるさと納税は利益率が高く、出荷方法も簡単で、リピートにもつながりやすい

次にふるさと納税のメリットをお話ししたいと思います。まず最大のメリットは、利益率が非常に高い販売方法であること。例えばECモールの楽天さんですと、集客力は高いですが、月額の固定費だったり売上のマージンが重くて、かなり薄利になりがちです。

自前のECに関しても、ECモールほどではないですが、やはり固定費も掛かりますし、決済手数料もあるので、利益は残りますが、製造原価をまんま引いた額が残るわけではない。それなりに集客も難易度が高いです。

その点、ふるさと納税は事業者に対して固定費が掛からないですし、マージンも掛かりませんし、集客力も高い。かなり良い面が揃ったチャネルだと思います。ですから、利益率を考えると、その他の店舗販売を含めたとしても、ふるさと納税はかなり効率の良い販売方法だと言えます。

もう一つのメリットは、出荷が非常に簡単なところです。例えばECモールだと、彼らのプラットフォームのルールの中で、私たち事業者が色々用意して出荷をする。出荷通知をするまでが一つの出荷のプロセスなのですが、ふるさと納税の場合は、注文があった際に事業者がやることは、出荷用のダンボールに商品を詰めて待っているだけ。あとは運送会社が伝票を持って集荷に来てますし、出荷通知を送ることもしなくて良いので、事業者側がやることがほとんどないのは、かなりのメリットだと思います。

私たちのようにある程度ECをやり込んでいるような事業者にとってもそうですし、特にECをやったことがないような事業者さんにとっては、踏み出しやすいですよね。

次のメリットは、他のECモールなどに比べるとリピートにつながりやすいという実感があります。そもそも購入というよりは納税なので、本来納税するはずだったお金をこちらに回していると考えると購入ハードルが低くて、良い意味でも期待値が低いと考えています。

要は、自分の身銭を切って購入している感覚が薄いので、満足度が掴みやすく、良い商品だった時にお客さんが満足してくれやすいんですね。その結果、リピートにつながりやすいのかなと思います。

更にふるさと納税の場合、リピーターづくりのための販促ができるんです。例えばECモールだと、出荷する際に販促物を入れることが禁止されているのですが、ふるさと納税は販促物を同封しても問題ないんです。実際ふるさと納税をやってみて、「食べてみたら美味しかったので買いに来ました」というお客さんはかなり多いです。

ふるさと納税のデメリットは自由度が低く、納期のコントロールも難しく、導入に人的リソースが必要なこと

次にふるさと納税のデメリットをお伝えすると、手取り足取りやってくれる代わりに自由度が低いという点が挙げられます。例えばデザインができないこと。自社のECだとSEOをガンガンやって、広告を回して集客するようなことができますが、そういうことも基本できませんし、クーポンやポイントを独自で作って配ることも難しいし、出荷に関しても好きな運送会社を選べないので、自由度という面では低いかなと思います。

もう一つのデメリットは、納期のコントロールが難しいというところ。例えばECモールだと、決まった期間に発送しないと通知が来ますし、キャンセルにつながることもありますし、遅れて発送したら悪いレビューがつくという不利益を被ることもありますし、ある意味決められた納期で出荷するという強制力を持たされています。

一方でふるさと納税の場合は、一応いつまでに出荷しますという手は取っているのですが、遅れても連絡が来ないし、その辺が緩いなと思っています。本当に申し訳ないのですが、繁忙期は出荷をズルズル引き伸ばしてしまうことも。結果的にそれが顧客満足度を低下させてしまうことにもつながると思うので、ある程度自制心を持ってやらないといけないなと感じていますね。

最後のデメリットはものすごくシンプルなのですが、ある程度登録や申請するために人的リソースが必要なことです。特に私の会社は平均年齢が結構高くて、ExcelやWordを使える人がいない状況なんです。なので、結局できる人に仕事が集中してしまうんですね。申請するためのリソース確保みたいなところが、会社によっては難易度が高いのかなと思います。

低コストで高利益率のふるさと納税。コストをかけずにPRできる側面からも、やらない手はない

色々言ってきましたが、事業者側からの意見として、ふるさと納税は絶対にやった方が良いと思います。やはり低コストで高利益率というのは、なかなかない販売方法だと思いますし、起業したての初期段階だと、金銭的なリソースが不足しがちだと思うのですが、そんな中でもお金を掛けずにある程度の売上を作れるのは、とても良いところだと思っています。

もう一点、私はクラウドファンディングのサービスの立ち上げもやっていたのですが、ふるさと納税とクラウドファンディングはすごく相性が良いというか似たような面があると思っていて。どういうことかというと、コストをかけずにPRができるというところですね。たとえその商品が選ばれなかったとしても、沢山の人に商品を見てもらえるチャンスができるので、そういった面では、コストをかけずにPRができるという見方もできるかなと。

特に起業したての方は、こういったふるさと納税のことに限らず、低コストで拡販できる仕組みはどんどん使っていった方が良いと思います。まずはぜひふるさと納税を導入してみてください。

Editor's Note

編集後記

ふるさと納税は、普段買わない地域のものを取り寄せて楽しむものという認識だったのですが、事業者側にもメリットが沢山あると知って驚きました。この記事を読んで、ふるさと納税導入を考える事業者さんが増えたら良いなと思います。

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