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軽々持ち運べて480人分の水を浄化!?「スーツケース型浄水器」を開発したモノづくり企業の新たな挑戦とは

NOV. 15

拝啓、進化を続けるモノづくり企業を探しているアナタへ

地震や台風など、ときに私たちの想像を超える被害を引き起こす自然災害。昨今では、常日頃からの備えが大切であるという意識も高まり、備蓄や防災グッズの需要も伸びています。

その中でも特に大切だと言われているのが飲料水の確保農林水産省が作成する「災害時に備えた食品ストックガイド」では、飲料水と調理用水を合わせると1人あたり1日3Lほどの水が必要であると言われています。

緊急時に「命をつなぎ止める水」をどのように確保するべきかという議論がされる中、1日に480人分の飲料水や生活用水を供給できるスーツケース型の浄水器が注目を集めています。

その浄水器を生み出したのが、電源や変圧器の開発・製造を専門とする「北富士オリジン」。異業種からの参入でありながら、独自の発想と熟練した技術で未来を切り開いた同社に、開発の裏側や今後の展望を伺いました。

舟久 保弦さん 北富士オリジン株式会社 代表取締役社長 / 1986年4月北富士オリジンに入社、技術部へ配属、その後、営業職を経て取締役へ。生産管理部など、多種多様な分野を経験後に、2021年6月に代表取締役社長に就任。

震災をきっかけにチャレンジした新しい分野でのモノづくり

電源装置や変圧器などの開発・製造を主な事業としている「北富士オリジン」。そんな同社がなぜ、全く新しい分野である浄水器の開発に取り組んだのか、まずはその経緯について伺いました。

「そもそものきっかけは、1995年に起きた阪神・淡路大震災にあります。近畿圏の広範囲に甚大な被害をもたらした大震災の影響は、当時弊社とお取引いただいていたお客様にも及びました。私たちにできることはないだろうかと考え、今一番必要としているものを伺ったところ返ってきたのが『水が欲しい』という答え。会社のある山梨県富士吉田市の水を自社便で届けた私たちは、このときの経験から自然災害が発生した状況での水の大切さを痛感し、浄水器の開発・製造を始めました」(舟久保さん)

写真右が初期型の浄水器『MWP14』。左が現在の新型『MWP20』。大きさの違いは写真からも歴然。

「そこから期間が空いて、初期型の浄水器『MWP14』が完成したのが2014年のことです。当初は災害時の防災設備として自治体向けに開発していましたが、実際に導入するにはあまりにも大きく、さらには取り扱いが難しいということで、簡単に持ち運べて誰でも扱いやすいようなモデルの開発を続けていきました」(舟久保さん)

電源を専門に扱う北富士オリジンだからこそ作り出せたスーツケース型浄水器

小柄な方でも軽々運べる新型浄水器『MWP20』

初期型のMWP14の総重量は約180kg。そこから2017年、2020年と小型軽量化を目的としたモデルチェンジを続け、完成したのが現在のMWP20なのだそう。

重量は28kgまで軽減され、スーツケース型にしたことで持ち運びもスムーズに行えるようになりました。こうした改良を進めるにあたって最も苦労したのが、浄水量の確保だったと舟久保さんは語ります。

「大幅な小型軽量化を実現しながら、浄水量をどれだけ維持できるかというのが最も苦心したポイントでした。結果的にMWP20では毎分1L、1日で1,440Lの浄水が可能となっています。一般的に1人あたり1日3Lの水が必要と言われているので、MWP20を24時間稼働させていれば480人分の飲料水を生み出せる計算となりますね」(舟久保さん)

小型軽量化以外にも、さらに2つのこだわりが詰まっているというMWP20。それは専門的な知識と技術を持った北富士オリジンだからこそ実現できたものでした。

開発・製造する上でこだわったポイントが2つあるんです。一つは、浄水された水が飲み水として使えるかを検査する水質センサーの開発。そしてもう一つがマルチバッテリーの搭載です。
舟久 保弦 北富士オリジン株式会社
飲料水として安全に飲むことができるのか否かを、誰もが判断できるようにランプを点灯させている。この技術は北富士オリジンだからこそ成せるもの。

「私たちの製品をはじめとして、浄水器の基本的な仕組みはRO膜(逆浸透膜)というフィルターを通して、汲み上げた水に含まれる不純物を取り除くというものになっています。RO膜には、0.0001マイクロメートルという水分子しか通過できないような微細な隙間が空いていて、ここを通ることでイオンや塩分などを含まない純水を精製しているわけです。

私たちはそうして作られた純水が本当に不純物を含んでいないか、つまり人体に影響があるものが含まれていないかを検査する水質センサーを独自で開発しました。検査の結果は本体に付いているランプの点灯で視覚的に分かるため、専門的な知識がない方でも安心して使用できるようになっています」(舟久保さん)

浄水器の電源は、家庭の電源からでも、自家用車からでも確保することが可能。

「また、バッテリーにはマルチバッテリーを採用しています。マルチバッテリーというのは、ご家庭で使われているAC(交流)電源でも、車のバッテリーなどに用いられているDC(直流)電源でも使えるバッテリーのことを意味します。

自然災害で大きな被害が出た場合、一般家庭の電源は停電で使えないということが多くありますよね。私たちの浄水器はそういった状況でこそ稼働する必要があるため、非常時にはDC(直流)電源でも使えるようにマルチバッテリーを搭載させました。電源の開発・製造を専門としている私たちだからこそ、実現できたところなのではないかと自負しています」(舟久保さん)

どれだけ優れた製品であっても私たちが持っているだけでは意味がない

現在は近隣地域の防災課などに導入されているスーツケース型浄水器ですが、今後はさらに様々な場所への展開を想定しているのだそうです。

「スーツケース型浄水器はここ富士吉田市をはじめ、近隣の地域に災害用としてご購入いただいています。最近では小型化やマルチバッテリーという利点を活かして、緊急車両に搭載していただくことも増えていますね。

今後の展開としては、キャンプ場をはじめとしたアウトドア施設への導入や、純水を精製できるという強みを活かして、製造ラインで純水を必要とする工場などへの導入も視野に入れています」(舟久保さん)

「どれだけ優れた製品であっても私たちが持っているだけでは意味がない。災害時に必要な場所で稼働できるように、この製品の魅力をもっと多くの方に伝えていきたいですね」と語る舟久保さんの姿に、ただモノを作るだけではない、そんな北富士オリジンの熱い姿勢が重なりました。

技術を磨き、責任を持って品質の良いモノづくりを続ける

令和3年4月の新社屋着工を機に、「新たな環境(新工場/新分野)でのチャレンジ、そして改革」を掲げている同社。「その場で足踏みをしていても成長にはつながりません。より良いモノづくりを目指す私たちは、常に進化していかなければならないと考えています」と舟久保さんは語ります。

そんな北富士オリジンでは現在、取引先の企業と共同してX線の開発を手掛けています。浄水器やX線など、これまでの会社の枠に留まらない領域へとチャレンジできる秘訣は、確固たる基盤があるからなのだと舟久保さんは続けます。

「私たちの強みは、量産品でない手作業のモノづくりにあると考えています。従業員の一人ひとりが技術を磨き、責任を持って品質の良いモノづくりを行っていく。開発・製造・検査・ときには出荷まで自社で行うのもその一環ですね。そうした揺るぎない基盤があるからこそ、新しい分野での挑戦を続けていけるのだと思います」(舟久保さん)

「これから先は私たちが長年培ってきた専門的な知識や、豊富なアイデアを活かした独自性のあるモノづくりもしていきたい」と語る舟久保さん。最後に今後考えている新たな挑戦について伺いました。

私たちの仕事の多くは半導体に関するものですが、今後はそことはまた違った分野にも挑戦していきたいと考えています。私たちが専門としている高圧電気に関する技術を活かせるような、そんな新しいモノづくりを一緒にできたら嬉しいですね。
舟久 保弦 北富士オリジン株式会社

より良いモノづくりを求めているアナタへ。確かな技術と情熱で、歩みを止めることなく進化し続ける北富士オリジンと、まだ見ぬ製品を作ってみませんか?

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Editor's Note

編集後記

浄水器の説明や操作のタイミングでは、多くの方々にご協力をいただいた今回の取材。それはまさに舟久保さんが仰っていた「一人ひとりが責任を持って品質の良いモノづくりを行っていく」という姿そのもので、北富士オリジンの会社としての強さ・魅力を実感した瞬間でもありました。

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