KOCHI
高知県
前略
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岩本梨沙(通称:りさりさ)さん。1985年生まれの33歳。生まれも育ちも高知県高知市という彼女は、24歳の時まで「高知以外の日本に暮らすことを考えたことはない」と断言するほどの高知県好き。そんな彼女が24歳の時、東京で暮らすことを決める。しかも東京へ移住したきっかけは、古本屋さんで出会った一冊のことわざ辞典だというのだ。
写真左:岩本梨沙さん
安岡さん(以下敬称略):りさりさ、変わった人でしょ? まあ俺もまだりさりさに会うの二回目だからあんまり知らないんだけど(笑)
そう話すのは、安岡周総さん。1986年生まれの32歳。彼も生まれも育ちも高知県日高村。今回「取材して欲しい人がいます!」と、私とりさりささんを引き合わせてくれた張本人だ。
写真左:安岡周総さん
りさりささん(以下敬称略):会ったのは二回目だけど、ずっと前から知っちゅう気する。お母さん知っちょった。
最近東京で出会ったという二人だが、実は彼女は以前から彼のお母様を知っており、お母様に会うために東京から、日高村へ足を運んだこともあるくらい仲良しだというから驚いた。
りさりさ:日高村には勝手にご縁を感じていて、人に会いに行くことがほとんどですね。
安岡:僕もりさりさのような不思議なご縁を大切にしたいなと思っているんです。
取材開始前から昔からの友人のように和気藹々と話す二人は、実は高知県観光特使と高知県日高村の役場職員。今回は高知県で生まれ育ち、高知県を愛してやまないお二人に高知県の魅力や今後の取り組みについてお伺いしました。
プロフィール
岩本 梨沙(Risa Iwamoto)
高知県観光特使
高知県高知市出身。高知工業高校を卒業後、2年半バックパッカーとして世界各国を渡り歩いたのち帰国。2009年からビストロ「銀座ストック」にてソムリエとして勤務。2013年より高知県の観光特使としても活躍している。
安岡 周総(Masafusa Yasuoka)
高知県日高村 企画課
高知県日高村出身。大学在学中にアルバイトとして働いていたケーキ屋に就職し、パティシエとして活躍した後、2009年より自身の出身地である日高村の役場職員として再就職。社会福祉士・精神保健福祉士の資格など幅広いスキルを持つ。
高校を卒業した後お金を貯めて、2年間半バックパッカーとしてオーストラリア、東南アジア、タイ、カンボジア、マレーシアを転々としていたという彼女。オーストラリアでは仕事をしながら、学校にも通っていた。
海外で暮らす中でわかったことは、自分は全く日本のことを知らないということ。むしろ海外で出会った人たちの方が日本のことを知っているくらいだった。そんな中で、これからどうしようと考えていた時、たまたま入った古本屋さんで一冊のことわざ辞典と出会い、たまたま手に取って開いたページにあった言葉が彼女の人生を変えてしまう。
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田舎の学問より京の昼寝<br /> ー 意味:田舎で学問を一生懸命勉強するより、都の京都にいて昼寝でもしながら、 いろいろな所を見て歩けば、知識が知らないうちに身についてしまうということー<br /> <br />ことわざより
「都会ではそれだけでいいの!?」衝撃が走った。日本に帰ったら東京で暮らしてみるのもいいかもしれない。高知県から出たのはバックパッカーとして海外に出る時が初めてだった。高知県以外の日本に暮らすことを考えたことは一度もなかった。そんな彼女が初めて東京で暮らすのも選択肢の一つかなと思ったのだった。
東京では食事とワインを楽しむビストロ「銀座ストック」のソムリエとして、シェフと二人でお店を切り盛りしていた。当時飲食店での仕事の経験はあったものの、ワインの提供は初めてだったという彼女。それでも必死に勉強し、時にはお客様からワインのことを教わりながらソムリエとしての経験を積んできた。
常連さんの中には彼女が高知県出身ということを聞きつけると、高知県出身の友人をお店に連れて来てくれる方もいて、いつしかいつも誰かしら高知県にゆかりのある方がお店にいる状態。
とにかく「人」が大好きな彼女は、常連さんが増えれば増えるほど「ちょちょちょちょっと来て!」とお店に来てくれた常連さんに声をかけ、常連さん同士をよく繋げていた。そんな繋がりから、仕事が生まれることもあったし、情報交換が行われることもあった。
知り合いが増えていく中で、人の繋がりで5年前の2013年に高知観光特使に推薦してもらい、任命してもらった。ずっと故郷のために何かしたいと思っていたから、嬉しかった。
そして高知観光特使に任命されてから5年が経った今、大好きな高知の魅力をもっと東京の人に知ってもらいたいから、新しいビジネスへ挑戦することを決めた。でもまだどんな形のビジネスにするかは決めていない。はじめの一歩はちゃんと踏みたいからこそ、まだビジネスの形は決めずに可能性を模索したい。
ただ自分自身も持っていた「故郷に何かしたい」という気持ちは、みんな多かれ少なかれ持っていると思っている。だからこそ彼女は、みんなの故郷に対する想いを少しずつ集めて形にしたいという気持ちをブラさず持っているのだ。
安岡:彼女や、高知・地方に関わる方の話を聞いてもらって、少しでも高知や高知に関わる人に興味を持ってもらえたらいいなと思って、今回都内でイベントを開催することに決めたんです。
移住のハードルが高いことを彼は十分知っている。だからこそ「移住」という形ではなくていい。挑戦できる環境や彼女のような面白い人が高知県には、たくさんいることをイベントを通じて伝えたい。
最近彼は「人的不動産」という言葉を気に入っている。人は、価値のある建物や自然のような不動産を見るために、時に遠くまでわざわざ足を運ぶことがある。でもそれではもう “ありきたり” だろう。だからこそ高知県では、会いに行きたいと思う人がいることで勝負していく。人だからもちろん動くけれど、人の価値そのものは動かないから「人的不動産」とネーミングした。
都内にいる人が彼女らとの出会いをきっかけに、誰かとご縁と愛情で繋がっていく。移住というハードルの高い行為ではなく、自分の時間を豊かにするための時間を過ごす場所として高知県を選んでくれたら、それだけでも嬉しいから。
今回のイベントは、高知県土佐市・いの町・日高村が三市町村合同で開催され、株式会社スマイルズの代表取締役社長である遠山正道さんも登壇予定。スマイルズが会社のミッションの一つとして掲げている「世の中の体温をあげる」から、地方の体温をあげるヒントをお伺していきます。
実は彼女がソムリエとして働いていた銀座ストックの経営を行っていた遠山社長。「東京の父」と断言する彼女と遠山さんの対談もありますので、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
NANA TAKAYAMA
高山 奈々