前略、100年先のふるさとを思ふメディアです。

LOCAL LETTER

“中途半端な結果ばかりでした” 人口約900人の奈良県下北山村で新規事業を立案。自信のなかった若者が「夢を実現させる道のり」

JUL. 03

SHIMOKITAYAMA, NARA

前略、なかなか納得できる成果が出せず、自分に自信を無くしているアナタへ

人には必ず「強み」と「弱み」がある。

ですが、自分の弱みはすぐに答えられても、自分の強みを的確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

少し前から、自分の強みがわかるストレングスファインダーが話題になり、自己分析を行う方も増えましたが、それでもやはり、日常生活を過ごしていると自分のできないこと(=弱み)の方が気になり、落ち込んでしまうなんてシーンは多々ありますよね。

そんな中、今回取材をしたのは、うつ病からの社会復帰支援サービスを手がける「株式会社リヴァ」に新卒で入社後、3年で新規プロジェクトの立案、企画、実行までを行い、6年目には新規事業を立ち上げた森田沙耶氏。

経歴だけをみると、順風満帆な森田氏ですが、奈良県下北山村に出会い、新規事業にたどり着くまでは、自分の強みがわからず、成果も出せない状況に、ずっとモヤモヤした時期を送っていたという。

そんな森田氏の取材を通じて見えてきた、彼女が「夢を実現させる道のり」をまとめました。

森田 沙耶(Saya Morita)氏 株式会社リヴァ リヴァトレ事業部 / 2014年に新卒で同社へ入社。現在は再就職支援施設「リヴァトレ市ヶ谷」で、プログラム提供やキャリアコンサルティングに携わる。趣味はスカッシュ、フットサル
森田 沙耶(Saya Morita)氏 株式会社リヴァ リヴァトレ事業部 / 2014年に新卒で同社へ入社。2020年5月末まで就労移行支援施設「リヴァトレ市ヶ谷」で、プログラム提供や再就職コーディネートに携わる。趣味はスカッシュ、フットサル

無我夢中で、周りのスピードに応え続けた

「奈良県も下北山村も接点がなかった」という森田氏と、下北山村の出会いは、本当に偶然だったという。

「下北山村が都市と村を繋ぐためのワークショップ(奈良・下北山むらコトアカデミー)を企画していることを、社内で教えてもらったんです。当時、私はうつ病の方の支援業務を担当していたので、利用者さんに提案できる人生の選択肢の幅を広げるべく、まずは自分の見聞を広めるために、参加することにしました」(森田氏)

実際にむらコトアカデミーに参加した森田氏。最終日に参加者1人1人が「村と私の繋がり方」というテーマで行なったプレゼンが、森田氏の転機になる。

「下北山村の視察がとても面白くて、東京にはない文化や価値観がたくさんある場所だと感じました。そこで、リヴァトレの利用者さんが人生の選択肢を増やすために、村での暮らしや仕事を実際に体験するツアーを提案しました」(森田氏)

当日プレゼンを聞いていた奈良県庁職員の福野氏が、森田氏のツアーに大賛同。あれよあれよという間に実際に事業として進めていく話がまとまっていったという。

「プレゼンをしたのが2017年2月、弊社の社長と福野さんが対面でお話ししたのが同年の5月、実際にプログラムを実施しようとなったのがその2ヶ月後の7月でした。準備期間が2ヶ月しかなくて、この期間にツアーのプログラム作成、集客、地域内の調整などを一気に行わなくてはならず、とにかくやるしかないと、無我夢中でやりました」(森田氏)

むらコトアカデミーで地域に訪れ、すっかり下北山村の豊かな自然や温かい村民の人柄に魅了され、大好きな場所になっていたという森田氏。なんとか村との繋がりを継続し、リヴァならではのサービスにつなげたいという一心で、必死に食らいついたと話す。

「大変でしたが、ここでやり切らないと、『また』中途半端に結果を出せずに終わってしまうと思ったので、とにかくやることを書き出して片っ端からやっていきました。有難いことに、現在までに3回のツアーを実施させていただきましたが、今考えると、当時は不安よりも戸惑いの方が多くて、周りのスピードに応え続けたら、ここまできていたという感じですね」(森田氏)

ツアー当日の様子はこちら

最後まで自分が責任を持つと腹を括った

2014年に新卒第1期生として、リヴァに入社した森田氏。当時、新規事業の立ち上げもできるという魅力に惹かれていたものの、実際に入社してみると、目の前の仕事を必死に行う毎日で、自分のやりたいことがはっきりとは見つからず、ずっとモヤモヤしていたという。

「新卒として入社してからは、法人営業やうつ病の方の支援など色々と経験させていただきましたが、なかなか成果も出せず、自分自身に何が身についているのかもわかりませんでした。自分の強みって言えるものもなくて、何に熱中するわけでもなく、新卒1期生で新規事業も期待されているだろうけれど、何をしたいのかもわからない中で、会社に居ていいのかなと考えていました」(森田氏)

1年目に配属された法人事業部では営業成績が振るわず、2年目からは支援者として利用者さんと接するようになった森田氏だが、「自分で目標設定をして、そこに自分で必要なアクションを取って、やりきった」という感覚が全くない期間が続いていたという。

「下北山村との出会いは本当に大きくて、私自身、東京生まれ東京育ちだったこともあり、第二のふるさとができたような感覚でした。自分自身の財産にもなったこの村ともっと関わりたい、そして、形になるまでやり切りたいという思いで、思い切りやってみようと腹を括ったことが、本当によかったと思っています」(森田氏)

これまでやり遂げることができない、というのがコンプレックスだったという森田氏。自分自身で責任を持ってやり遂げようと決めたことが、自信を持てた一番大きな要因だったという。

「それまでプロジェクトをメインで担当したことがなかったので、社内の人はもちろん、地域の人たち、県庁の人たちにも支えてもらいながら、やってみたら、“意外と自分にもできなくはない”ということに気がつけたのがよかったんだと思います」(森田氏)

当時は、企画から実行までほとんどの業務を一人で行っていたという森田氏。物理的にも精神的にも「自分がやらなくてはならない」という状況に追い込まれたことがよかったと、丁寧に「今考えると」と前置きをしながら、話す。

「本音」を晒け出せる仲間がいた

実際にプロジェクトが始動してからは、楽しい気持ちの方が強かったという森田氏。数々のハプニングがあっても、気持ちを発散できる場所が近くにあったことで、すぐに気持ちの切り替えができたという。

社内のメンバーになんでも話せたのはよかったと思います。正直、想定外のこともありましたが、それを誰かに話して、共感してもらえるだけで心が軽くなりました。話を聞いてもらったら、“じゃあ、仕事します!”と再び仕事に戻ってましたね」(森田氏)

当時はできないことも多く、メンバーからは、涙を汗として扱われるほど、毎日のように泣いていたという森田氏だが、だんだんと経験を重ねるごとに気持ちが楽になっていたそう。

「やることやればなるようになるし、前に進むんだという実感が持てるようになってきて、何かトラブルが発生しても“じゃあこの状況でできることはなんだろう”と考えられるようになりましたし、自分からアドバイスを求めることもできるようになりましたね」(森田氏)

以前までは、何かトラブルが起きても、自分一人で解決しなくてはならないという感覚があったという森田氏。経験を重ねるごとに、自分ができないことは、「できない」と周りに共有すれば一緒に考えてくれると気づき、不安がなくなっていったという。

「社会復帰支援サービスの利用者さんに普段自分がかける言葉は、自分にも跳ね返ってくるんですが、利用者さんの中にも、できないことに注目しがちで、不安を抱えている方はたくさんいます。そんな時は、自分に言い聞かせるように、“できないことがある中でも、何からならできそうか”を一緒に考えるようにしています」(森田氏)

自分の「想い」を尊重してもらえる環境があった

(株)リヴァは、2020年度から下北山村で新たな事業を展開していく予定だという。

「2020年の秋頃には、うつ病などで仕事をお休みしたり離職されたりした方に対して宿泊型の転地療養サービス “ムラカラ” を下北山村で立ち上げます。このサービスでは、単なる再発予防のためのトレーニングに留まらず、今後の生き方や働き方について模索できるような機会を提供したいと考えています。都市生活に違和感を持ち、現在とは異なるライフキャリアも想定している方や、今生活している環境から一度離れてリハビリに専念したい方などに活用してもらいたいと思っています」(森田氏)

話を聞いていくと、森田氏個人としては、特に休職中の教職員向けにサービスを提供したいという想いがあるとのこと。なぜ、「教職員」なのだろうか。

「もともと私自身がリヴァに入社した大きな理由が、 “イキイキと働く大人が増えることで、大人になりたくないと言う今の無気力な子どもたちを変えたい” という夢があったからなんです。子どもにとっての一番身近な大人って、親か先生だからこそ、”先生たちがもっと楽しそうに仕事ができる社会をつくりたい” と、入社面接の時に話しました」(森田氏)

入社後、なかなか踏み切れていなかった教職員向けサービスを、やっと始めることができた森田氏。「ワクワクが止まらない」という。

「会社は、客観的なデータに基づく小ぎれいな事業計画を立てるよりも、プロジェクトリーダーのやりたい想いから始まって、結果的に良いサービスができるほうがいい、と信じてくれています。ただ、事業を始めるからには継続させていく必要があるので、これからしっかりと質のいいサービスを提供していかなくてはいけないと思っています。やっとスタートラインに立った状態ですね​」(森田氏)

今までにない事業を始めることは、正直企業としては賭けのようなもの。

それでも実施に向けて事業計画が進んでいるのは、リヴァとして「成功するかどうかの保証よりも、社員の想いを重んじる」という文化があるからだという。

事業所の開所前には、完全に下北山村に移住し、より密に地域の方とコミュニケーションを取りながら、新規サービス “ムラカラ” を展開していくと、楽しそうに語ってくれた。

常に自信がなかったという森田氏だが、自信がなくてもむらコトアカデミーに手を挙げて参加し、自らやりたい事業をプレゼンし、右も左もわからないながらに動き続けたことが、「夢を実現させる道のり」の一番の秘訣だろう。

とはいえ、森田氏の夢の実現はまだまだ始まったばかり。これからさらにどんな壁にぶつかりながら、夢を実現させていくのか。楽しみで仕方ない。

そのほかリヴァの活動の詳細はこちら

Editor's Note

編集後記

迷いや不安を抱きつつも、周りに支えられながら行動し続けた森田さん。実は昔、森田さんがぶつかった壁と同じような壁に今まさにぶつかっている私にとって、とても刺激的な取材でした。同じように悩んでいる方の元へこの記事が届き、少しでも力になれば幸いです。

これからもリヴァの応援をよろしくお願いいたします!

これからもリヴァの応援をよろしくお願いいたします!

これからもリヴァの応援をよろしくお願いいたします!

LOCAL LETTER Selection

LOCAL LETTER Selection

ローカルレターがセレクトした記事