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地域に関わる仕事はたくさんある。旅行会社や、住宅、鉄道、観光従事者だけでなく、一見関係なさそうなメーカーでさえも地域と密接に関わっている。
実際、民間企業目線で地域と密接に関わりながら仕事をしている企業は、何を考え、どのように関わっているのだろうか。
そんなアナタのために開催したイベント「LOCAL LETTER LIVE*1」で株式会社LIFULL 地方創生推進部 LivingAnywhere Commons事業責任者小池 克典氏と、弊社代表平林が語った「民間企業目線での地域への関わり方」をお届け。
小池氏と平林が自身の話を踏まえながら繰り広げられた90分のトーク内容の一部始から見えて来た7つのポイントをお届けする。
前編はこちら:社内外で信用残高を積むことが重要。
小池氏と平林が語る「新規事業への立ち向かい方」
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平林:小池さんと事前に打ち合わせをした際に「官民連携とは何か?」という話をしたのですが、話しの中で「変態」というキーワードが出てきました(笑)。この言葉はどんな意味で抽出されたんでしょうか。
小池(以下、敬称略):本当の変態ではありませんよ(笑)。「官民連携」というキーワードを考えたときに、「相性」がすごく重要だと思いました。
「これが事業になる」と合理的に判断をした時は、相手とビジネスパートナーになりますが、ただ、何か少し面白ことをやろうという観点を持っている人は「変態」で、とにかくどんどん面白いことをやってしまいます。
平林:小池さんが働く「LivingAnywhere Commons」には「変態の女の子」がいらっしゃったという話も聞きましたが…?
小池:色々な変態がいましたが、その女の子は、アメリカに住んでいた大学生で。。日本で就活をするために、休学をして帰ってきたんですが、彼女には「スーツを着て就活をやる」ことがすごく違和感だったんです。Living Anywhereのテーマは「自分らしく、もっと自由に」なので、「こういうことがやりたいんです」と誰かが企画を出せば、周りは「自由にやれば」というスタンスなので、彼女は自分でDIYをしておしゃれな図書館を作っていました。
平林:図書館で使う本はどうしたんですか?
小池:本はみんなから寄贈をしてもらっていましたね。彼女は建築の専門家ではなく、心理学の専攻だったので、「自分で何かを作っていいんだ」という発見と、周りの人たちから力を借りて作っていました。「地下室を作りたい!」と言った時も、当然一人ではできないので、近所の大人が助け船を出して、完成させていました。
平林:変態と相性というキーワードが出てきましたが、変態って世の中では生きづらいと感じています。今回、彼女が一人で図書館を作りたいといっても、相手が行政の人であれば「ちょっと待て」と、多くの場合ストップが入ってしまうと思います。
だからこそ、LivingAnywhereのように間に入る人が重要だと思うのですが、小池さんはLivingAnywhereがどのような役割を果たしていると考えられますか?
小池:行政側にも、色々な人を呼び込んで「関係人口をつくりたい」というニーズがあります。だからこそ、彼女みたいな人が来ることが私はプラスになると思っていて、まずは、「変態募集」と掲げられるくらい「座組作り」をしっかりつくることが大切です。
平林:小池さんからみて、地域のブルーオーシャンについてはどのようなチャンスがあり、どういう風にすれば生活も出来つつ形になると思いますか?
小池:基本的に、地域にはあらゆるところにチャンスがあり、マインドセットを変えれば簡単だと思います。東京にいると年収という概念があり、企業だと売上、支出、利益に加え、可処分所得がいかにあるかということが大切。
一方、地域は固定費が安く、この物件を自由に使っていいよみたいなところもあるので圧倒的に安く済みます。地域にも色々と稼ぐ手段がありますが、固定の人員を置くまででもなく、フルタイムでは需要がないけれど、少しお願いしたいというところでは色々とやれることがあり、仕事は簡単に見つかります。
平林:わかります。例えば、和歌山県はみかんで有名ですが、季節労働で人手不足が深刻なんです。建築や土木は専門的なスキルがないとできないと思われがちですが、素人でもできる内容を切り出すことで、関われる人が増えるので、みかんの季節以外は建築や土木関係で働いている人もいます。地域に行けば行くほど、一つの仕事に縛られていないんですよね。
小池:私はエンジニアでもクリエイターでもないから、、、と言う方がよくいますが、Facebookの投稿を代わりにしてあげたり、Google Photoの写真を代わりに整理してあげたりするだけでも地域では、喜ばれます。皆さんが思っている以上に、普通に活躍できるところはたくさんあります。
平林:自分が持っているスキルでも発想次第で、活躍できることは沢山ありますね。
参加者(質問が出ました):例えば、地域にどんな人材がいればいいのかが事前にわかればいいと思うのですが、そういう情報はどうやって手に入れたらいいのでしょうか。
小池:本当にその通りだと思います。なぜこういう現象が起きているかというと、求人ビジネスも同じなのですが、課題が案件化されていません。課題を持っている農業や行政が、これだったら解決できるというところまで至っていないのが現状です。
そのため、「こういう人を入れたらいいんじゃない」と間に入って提案をしてくれるような地域のハブになってくれる人が必要になります。地域で生計を立てている人は、結果こういうことを行なっています。
平林:地域に行くと、地域は「繋がり」で解決しています。地域には行けば行くほど、タネがありますし、つながるほど、「手伝って」と声をかけれられます。
地域には色々な仕事が眠っています。最近はハブになる人が重要という話があがっており、コーディネーターの需要がとても高まっています。課題を吸い上げて、それをマッチングできる方や地元に精通している人がコミュニティマネージャーをやっています。
小池:下田の拠点で、コミュニティマネージャーとしてお願いをしておりとても信頼できるのは、板金屋の方です。車がへこんだら直すような人がコミュニティマネージャーをしています。地元愛に溢れていて、おせっかいで、人も地元も好きという人が一番向いていますし、これが、コミュニティマネージャーがやっている仕事です。
参加者:小池さんの目標で100拠点を作る中で、どのように人を選んでいるのでしょうか。
小池:人の選定については、殆どがFacebookの友人からの紹介でつながることが多いです。色々なところに顔を出していると、共通の知り合いが何人もいるので、全くの0ベースの関係はありません。 前回のLOCAL LETTER LIVEで登壇されたペライチの山下さんもそうですが、つながることが当たり前になっていきます。
平林:「移動」もキーワードとしてあるのではないか思います。移動しているのに、つながるという不思議なことが起こることもありますね。
小池:以前福島に行ったら、6~7人くらい知り合いがいて驚きました。自分の感性のままに動くと、だいたい同じような人がいる気がします。
平林:検索は合理的ですが、偶然的な出会いもありますね。
小池:検索では出会えない「セレンディピティ*2」は私も大切にしていますね。
*2 セレンディピティ
素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見したりすること。
平林:イベント前に小池さんとお話する中で、資本主義と社会課題の解決というテーマも出てきましたが、こちらについてはいかがでしょうか。
小池:官と民の目線は違うので、同じ進め方ではダメだと思います。民間側でも官庁側でもスタンスが違います。民としては資本主義であるので、経済としてのビジネスメリットがないとやりません。CSRなどもありますが、それは持続可能なモデルにならないことがほとんど。私自身は、行政側もビジネス環境をサポートする必要があるのではないかと感じています。
平林:私も官と民の認識の違いで失敗したことがあります。今自治体が持っている既存の自治体HPにEC機能を取り入れ、購入までを一貫してできる自治体HPを作って、事業者のネット上での販路開拓を自治体が支援する「稼げる自治体HP構想」というものを提案したことがありまして。
地元の観光事業者や、自治体の担当者レベルではとても喜ばれ、次年度予算に乗せようと5つくらいの自治体が動いてくれたんですが、結果1つも予算が通りませんでした。「官が稼ぐ必要はない」という理由で、行政と民間は全然違うということを学びましたね。
小池:行政は公共性・公平性はとても大切になる中で「誰でも見やすくする」というところはあると思います。逆に、コンバージョンや、いくら売り上げるといったロジックはありませんね。
小池:いけてる行政の方って民間の人と同じように、Facebookのメッセンジャーベースで進行するなど、プロジェクトベースで行い「後から理論」で物事を進めているように思います。
平林:そういう地域は、成果として、本質的に得たいものを手にしていますよね。こういうことが、全ての地域に波及するためにはどんなことが必要だと思いますか。
小池:全ての地域に波及するということはないと思っています。会社が一律でないように、競争がなくなってしまうので、私のおすすめとしては、「地方創生」という入りをやめることですね。地域創生から入ってしまうと、こことここをこうしよう、という点での議論になってしまいます。重要なのは、繋いだ線をどう形にしていくかです。
LivingAnywhere Commonsは、地域に囚われず、あえて特定の地域と付き合うことはないようにすることで、広い視点で物事を考えられるようにしています。
平林:そこはとても共感です。僕らも特定の地域を持っておらず、「地域の創生」というところを考えておりません。僕らは、地域創生がやりたいわけではないので、会社のビジョンにも「心の豊かさ」を掲げており、その中で地域というものがあると思っています。
小池:そうですね。柔軟性を持っていないとWIN-WINになりづらいというのはありますよね。地方創生によくありがちなのが、地域のためにしてあげようと自己犠牲になるケースです。それは長く続かないと思います。
平林:「やってあげている」と上から目線になると怒られてしまいますね。
小池:都会側も地域を選ぶという選択を持ったほうがいいと思っております。気に入った人がいないと定住はできません。例えば、千葉県館山市でプロジェクトをしていましたが、館山で災害があった時は全く他人事ではありませんでした。これは、すでに館山が自分のコミュニティになっていたからです。
平林:僕らも重要だと思っています。社員の一人が長野県根羽村に移住したんですが、彼が移住して最初にしたことは、地方の商工に入ること。その商工にはいるとメンバーが子供の面倒を見てくれるなど、彼の負担もどんどん軽くなっています。コミュニティは選べるほうがいいと思います。
小池:そうですね。コミュニティにも合う・合わないなどありますもんね。いじめが起きる構造と似ていますが、自由になりたくて地方にいったのに、逆に縛られてしまうこともあります。マッチするというところが大切で、地域の人もよかれとおもって連れて行ったら負担になっていることもあるので、選択できることはとても重要だと思います。
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