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LOCAL LETTER

GOOD SURVIVE PROJECTが足立区に生み出す化学反応【ローカル・プロジェクトのリアル vol.1】

MAY. 21

ADACHI, TOKYO

前略、表層をなぞるだけの「地方創生」に悲しんでいるアナタへ

「地方創生」が叫ばれ、全国各地の自治体がこぞって移住促進や産業支援の取り組みに力を入れるようになって久しい。だが、巷で成功事例として聞こえてくる「代表例」の名前が数年前からあまり変わっていないこともまた事実だ。

何をもって成功/失敗を定義するのか、どのような意図で対外的に発信をしていくのか。名前が表に挙がってくることの少ない街にはそれぞれの事情がある。

だが、有名成功事例の街に全国から視察が絶えずさらに盛り上がることは、本来「前例にとらわれない挑戦をする」ことで成功したはずの街にとって、逆説的な状況ではないだろうか。ひとつひとつの街で活かせる資源も違えば、住む人々が求めることだって違うはず。

そんななかで取り組むべきは、様々な事例を分析する中から自分たちの街に合うやり方や進め方を導き出すこと。本質的な成果を生み出している街の事例がなかなか知られていかないことはあまりにももったいない。

この記事では、そのような悩める地域の方々に向けて、ハリボテではない実践的な「ローカル・プロジェクト」たちを紹介していく。

東京のローカル、足立区ではじまった「GOOD SURVIVE PROJECT」

今回紹介するのは、東京都足立区ではじまった地域事業者の産業活性化プログラム「GOOD SURVIVE PROJECT」。

このプログラムは、「TALK」「CAMP」「FACTRY TOUR」の三部構成で展開される、共創型の事業者支援の取り組みだ。

足立区と株式会社ロフトワークがタッグを組み、様々な分野の専門家と地域の事業者の交流を通じて、各事業者の持つ資源を改めて発掘したり事業者同士のつながりを強化することで、新たな挑戦を後押ししていく実践度の高いプログラムとなっている。

現在、こういった事業者向けのワークショップやセミナーといった取り組みは日本各地のいたるところで展開されているがその多くがその場限りの「お勉強」にとどまり、意欲の高い事業者ほど、あれこれ参加するものの何も残らない「ワーク疲れ」に陥ってしまっている。

「GOOD SURVIVE PROJECT」の取り組みを追いかけながら、これまでの「お勉強」と何が違うのか、地域に本当に求められていることは何なのか紐解いていきたい。

自分にできること、ひとりではできないこと

「GOOD SURVIVE PROJECT」の物語が本格的に幕を開けたのは今年2月のこと。25人の参加者と3人のゲストによるイベントが開催された。会場になったのはスナック「レジャード」。手を伸ばせば、ゲストの顔に手が届いてしまうほどの距離感は、そのまま足立の街の密なつながり合いを表しているかのようだった。

初回イベントとして開催された「TALK」に登壇したゲストは、ブランド豚「みやじ豚」のプロデュースを手がける宮治勇輔さん、クラウドファンディングサービス「MOTION GALLERY」代表の大高健志さん、北千住で出版社「センジュ出版」を営む吉満明子さんの3名。

その場で語られた「共鳴で未来をつくる」ことや、「出会いの重要性」がその後の事業者たちの取り組みを形づくるテーマとなった。

その盛り上がりは、翌月に開催された3日間のワークショッププログラム「CAMP」の様子に強く現れている。

「CAMP」に参加したのは、畳屋さんや縫製工場といったものづくり企業からギャラリー運営、農業に取り組む人まで様々。各自のアイデアを共有しながら、専門家のレクチャーを受けて新たな発見を見出していくなかで生まれたのは、「お互いの力を合わせること」の可能性だ。

足立の街で事業を営むものづくりの企業と、ハンドメイドを共通軸に集まるママコミュニティを運営する企業によるコラボレーションや、古民家カフェと一次産業をつなぐクラウドファンディングのアイデアなど、事業者同士の「やりたいこと」がかけ合わさって街のつながりが強化されていく。

その化学反応は、ある参加者のコメントによく現れている。

「ひとりで全てをすることに限界を感じていましたが、コラボは同業他社ではできません。このプログラムで異業種の方とコラボのきっかけを生み出せました。足立の事業者間のネットワークは実はとても広いんです。いろいろと試行錯誤しながら、今後10年で、少しずつ足立と地方をつなげられたらと思っています」

ひとりではできないことに気づき、周りのできることに目を向けていく。これはただ参加するだけの「勉強会」では起き得ないことだ。

GOOD SURVIVE PROJECTの「共創」を生む構造

GOOD SURVIVE PROJECTの一番の特長は、冒頭でも挙げた「事業者同士」の共創を生むしかけにある。

その触媒として大きな役割を果たしているのが、ゲストやメンターの存在だ。

「TALK」ではインプットを、「CAMP」ではアウトプットにつながる気づきを生み出しながら、ただ一方的に教えるのではなく、事業者間のコミュニケーションを引き出すコーディネーター役を務めていた。 

もちろん、どんなに優れたファシリテートやコーディネートがあっても、事業者の実情を踏まえていなければ絵に描いた餅となってしまう。その部分を補完する形で展開されたのが、3つ目のプログラムとして開催された「FACTRY TOUR」だ。

区内の3事業者を訪れ、実際の現場を体験し事業者が抱える課題や悩みにメンター自身が触れていくこのプログラムでは、事業者側から「後継者がいない」「機密性の高い技術が多く外部発信がためらわれる」などの課題が言葉として現れてきた。

これは机の上で夢を見るだけのワークでは見えてこない、地域事業者の「リアル」だ。向き合わなくてはいけない現実を踏まえて事業者の可能性を引き出していく。当たり前のようでいて見落とされがちなこのポイントが、「GODD SURVIVE PROJECT」の価値だと言えるだろう。

全3回のプログラムを経て、次のステップが予定されている「GODD SURVIVE PROJECT」。東京のローカルから未来を生み出していくこの取り組みに、今後も注目していきたい。

これからも東京都足立区の応援をよろしくお願いします!

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