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LOCAL LETTER

持続可能な地域社会を「農」で創る。キーワードは「サーキュラーエコノミー&コンパクト」!? そこから見える“未来の暮らし”とは

SEP. 17

Agricultural life

拝啓、農業への憧れに一歩踏み出そうと考えているアナタへ

SDGsや新型コロナウイルスの影響により、食や一次産業に大きな注目が集まる昨今。

今回取材した株式会社The CAMPus BASE代表取締役の井本喜久さんは、いち早く「農業」に着目し、オンライン農学校の開校・小規模農家の育成など、従来とは異なる観点で農の魅力と可能性を伝えている。

“地域で成功する持続可能な農事業の数を増やす” ことをモットーに、仕掛け続ける井本さんが語った「農的暮らしがもたらす、人生のオモシロさ」とはーー。

「社会貢献っておもしろい!」青年会議所の経験でビジネス一色の人生が「ビジネス×社会貢献」へ

平林(インタビューアー):さまざまなことにチャレンジをされていて「すごい!」の一言に尽きる井本さんの人生ですが、井本さん自身が自分の人生を今振り返ると、どんな思いですか?

井本氏(以下、敬称略):自分自身も気が付いたらここに行きついたというか、ハート(心)が感じるままに進んでみたら今の形になっていたという感覚ですね笑。

平林:さすがです笑。さらに深掘りさせていただくと、心のままに活動されていらっしゃる中にも、井本さんの中にはしっかりと “農” という軸があるように見えるのですが、その辺りはいかがでしょうか?

井本:たしかに自分の中で、理念みたいなものはありますね。それを見つけたのは30代に入ってからで、理念が見つかるまでは「何故生きてるのか」と自問自答することが多かったです。

平林:理念を見つけられた「きっかけ」を知りたいです。

井本:きっかけは、JC(青年会議所)での経験ですね。28歳頃に広島で事業をはじめて、JCにも入ったんです。JCでは職業の違う人たちが集まって「ここの地域をどうしていくんだ!」と時には大喧嘩をしてでもとことん議論していく、地域を思ってぶつかり合う姿勢がそこに関わるみんなにあった。それがあまりにも衝撃的で、まるで頭をハンマーで殴られたような感覚でした。今までビジネスしか興味を示していない僕だったんですけど 笑、「社会貢献って、めっちゃ楽しいじゃん!」って思ったんです。

そこから自分が生きている意味は「人の心と体を健康にすることで次の世代をPEACEにする」ことだと思い、これが僕の理念になっています。

半農半Xではなく農Xの時代!?「農的暮らし」で重要なのは、自分の暮らしを中心にライフスタイルをデザインすること

平林:井本さんの中で、今、注目されていることはありますか?

井本:“コンパクト農ライフ” ですね。今、サーキュラーエコノミー(循環経済)*1 というか、「持続可能な経済活動を形にしたい」という想いがあって、このサーキュラーエコノミーを生むエンジンになるのが、コンパクト農ライフだと思っているんです。

*1 サーキュラーエコノミー(循環経済)
従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのこと。

平林:なるほど。農ライフだけでなく “コンパクト” が付くのは何か理由があるんでしょうか?

井本:“コンパクト” の意味に込めている「小さなエネルギーで大きな豊かさを生むこと」がポイントですね。僕らの中では、コンパクトを「0.5haで売上1,000万以上」と定義づけていて、“小規模だけど機能している・小規模だけど質が高い”を目指しています。

平林:小さなエネルギーで大きく機能させる農の形が、持続可能な経済活動のヒントになるということですね。

井本:そうです。今、「半農半X」という言葉がよく使われていますが、これからの時代は「農X」だと思っています。農Xというのは、農的暮らしを中心において、それが上手く機能するように自身のライフスタイルをデザインすることそこに経済活動をかけ合わせて新しい兼業農家のようなものが生まれていけば、人々の心が豊かになるし、健康的に暮らせるし、自然環境も守っていける。

僕らが「コンパクト農ビジネス」ではなく「コンパクト農ライフ」と伝えているのは、何よりも「暮らしを大事」に考えているから。農家って、「つくる・食べる・働く」という人間の基本動作が、自然環境の中で全てまとまっているでしょ? つまりは、コンパクト農ライフがサーキュラーエコノミーの源になるし、いろんな社会問題を解決できるヒントに繋がるし、この考え方は世界にも通じると思っています。

コンパクトに試して高回転で結果を出す。行動に移す秘訣は「APDC」にあり

平林:アクティブでありながら常に結果も出されている井本さんですが、その秘訣を教えてください。

井本:僕が思っているのは、「PDCAっていう言葉は、本当にPから始まるの!?」ということですね。「実はAからなんじゃないの!?」って。

平林:“APDC”ということですか?

井本:そうです。計画してはじめるのではなく、アクションを起こして走りながら考える感覚です。

平林:たしかに世の中のスピードもすごく早いんで、計画(P)からはじめると、机上の空論で終わってしまうというか、計画している間に世の中がガラリと変わっていることがありますよね。

井本:スピード感が大事になるので、コツとしては大事なことは相談しない(笑)。相談する前に行動して、先に結果を出してしまう極論、何かあった時に考えればいいですし、何かあった時の被害を抑えるためにも「コンパクト」を推しています。

Pから考える場合はどうやって大きくするかを考えがちですが、ハートで感じたら、まず小さくアクションを起こして、うまくいったら高回転でまわしていくこれが秘訣かなと思います。

重要なのは「出口の設計」。次世代農家は、ビジネスパーソンこそ向いている!?

平林:井本さんはオンラインサロンやコンパクト農ライフ塾などの活動をされていますが、コミュニティを運営する上で意識をされていることはありますか?

井本:コミュニティでは「この価値観は大切です」と押し付けるのではなく、「これっておもしろくない!?」と提示するようにしていますね。

小さな島で地域活性化の事業をやってる僕の仲間がいるんだけど、彼の大切にしている言葉に「井の中の蛙たれ!」というのがあって。それは大体がネガティブに使われがちですけど、井の中の蛙たちが「おもしろい!」と遊んでたら、外にいる人たちも興味をもって井の中に入ってくると思いません!?ってのが彼の持論。目の前にあるおもしろいことを探求し続けることが、コミュニティ活性化に繋がるコンパクト農ライフもオンラインサロンも、僕ら自身がめちゃくちゃおもしろいと思ってるからこそ活動できるわけです。

平林:素敵な考え方ですね! 井本さんのコミュニティにはどんな方々が所属されているんですか?

井本:都市に暮らすビジネスパーソンが多いです。年齢層は 30〜40代がメイン。これは僕が狙ってるターゲット層でもあって、理由としては、これから農村に行くのは働き盛りのビジネスパーソンこそが向いてるって思ってるからなんですよ。

平林:ビジネスパーソンですか。

井本:いま全国に168万人の農家がいるんですが、そのうち年商100万円以下の農家が全体の約6割を占めています。一方で年商1,000万円以上の農家は1割ぐらい。だから、割合的に見て「儲からなさそう」「大変そう」っていう農家のイメージが先行してしまうんですけど、実際はやり方によって儲かるし、健康的だし、何よりも暮らし全体として持続可能なんだと思うんです。

重要なのは、育てたものをどんな形で、どこに売るか?という「出口の設計」。じゃあそういう、新しい世代として農業をクリエイトしていける人たちは何処にいるかっていうと「都市部でしょ!」と思うわけですよ。

平林:なるほど、その通りですね。

井本:「耕作放棄地が増え続けている」って話を聞いたことがあると思うのですが、全国に使われていない農地は、いま全体で38万ヘクタールもあるんです。これは埼玉県と同じくらいの大きさ。それほどの農地が宙に浮いていると思うと、とてももったいない。使われないんだったら、使われたほうがいいじゃないですか。だから農業はやり方によってはチャンスが転がっているんですよ。

平林:最近はInstagram等のSNSで固定客をつくって、告知すればすぐ完売みたいな売り方もありますよね。

井本:そうなんです。昔と比べてダイレクトに取引できる時代になりましたし、変化の時代だからこそ、ビジネスチャンスも多くなります。里山を復活させるという意味でも、私自身農村にビジネスチャンスを求めてやってくる方々の背中を押してあげたいですし、農こそめちゃくちゃおもしろい人生づくりのヒントになるって伝えたいですね!

都会で働きながら田舎暮らしを考えている全ての人を対象に、田舎暮らしのスタートアップを成功に導く特別受講プログラム「INASTA」をスタートした井本氏。これからさらに「農ライフ」を加速させていく彼に目が離せない。

※ 本記事は、LOCAL LETTERが運営する地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」内限定で配信された「LOCAL偏愛トークライブ」の一部を記事にしたものです。

Information

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・地域で暮らしも仕事も探求したい、人が好き、地域が好き、旅が好き
・地域を超えた価値観で繋がる仲間づくりがしたい
・社会性の高い仕事をしたい
・地域や社会課題を解決する事業を生み出したい

 

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Editor's Note

編集後記

「農で人生をおもしろくする!」。この言葉の宣言通り、農の魅力に引き込まれた1時間半!農業については「大変そう、儲からなさそう、しんどそう」という負のイメージが多く、私自身も「農業は自分とは関りのない世界」と思っていましたが、今回のお話でイメージが一新!更に「農業で心豊かになるし、健康的に暮らせるし、自然環境にいい」といった最強三拍子で、「農家こそ最高の仕事なのでは!?」と新しい世界を知れるワクワクする回となりました。

これからも LOCAL LETTER MEMBERSHIP の応援をよろしくお願いします!

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