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LOCAL LETTER

「森のオフィス」が向き合う環境負荷削減。オフィスから見つめ直す “サステナビリティ” とは

DEC. 23

拝啓、サステナブルな取り組みを自社のオフィス環境やコワーキングスペースに取り入れたいと考えているアナタへ

※本記事は「ローカルライター養成講座」を通じて、講座受講生が執筆した記事となります。(第2期募集もスタートしました。詳細をチェック

「サステナブル」が叫ばれる中、自分たちの日常生活で私たちは一体どれほど環境を意識して生活できているでしょうか。

いま、働く環境を改善することで、組織全体で「サステナブルな働き方」を目指そうと動いているコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」が長野県富士見町にあります。

今回は「森のオフィス」クリエイティブディレクターの松田裕多さんを取材。具体的な取り組み内容や、取り組みの背景を伺いました。

松田 裕多(Yuta Matsuda)さん 「富士見 森のオフィス」クリエイティブディレクター/もともとはプロダクトデザイナーとして、東京都内に勤務していた松田さんは、地域おこし協力隊として富士見町へ移住してきた。現在は「富士見 森のオフィス」のディレクターをしながら、商品の開発から企業・組織ブランディングまで、幅広くデザインの仕事に携わる。

八ヶ岳の麓にある、仕事と学びと集いの場「富士見 森のオフィス」(以下、森のオフィス)は、個室型オフィス、コワーキングスペース、会議室、食堂を備えた複合施設です。2015年12月にオープンした当施設は、2020年より、働く場から自然環境に対して責任ある意識と行動を広めるプロジェクト「GREEN COMMUNITY」を開始しました。

ゴミやエネルギー消費の削減、資源の有効利用など、環境負荷を抑えたオフィス運用に取り組むほか、1泊2日の宿泊型研修プログラム「GREEN COMMUNITY 研修プログラム」の提供を開始。自社のワークスペースやコワーキングスペースを、よりサステナブルな環境へと改善するため、都内大手企業をはじめ、さまざまな企業が研修に参加しています。

旅先のメルボルンで触れたサステナブルの取り組みを、人同士のつながりを活かし実現させた「GREEN COMMUNITY」プロジェクト

「森のオフィス」立ち上げと、「GREEN COMMUNITY」プロジェクト発足の両方に深く関わるのは、クリエイティブディレクターの松田裕多さん。富士見町の初代地域おこし協力隊として、「森のオフィス」スタッフを3年間担当。その後、自らのデザイン会社を立ち上げ、現在はディレクターとして「森のオフィス」に関わっています。

――まずはじめに、「森のオフィス」立ち上げの背景を教えてください。

松田:立ち上げ当時、移住促進を主な目的とした「富士見町テレワークタウン計画」が、富士見町で進められていました。そこで、「森のオフィス」現代表の津田が創業した会社「Route Design合同会社」が富士見町から業務委託を受けて、地域おこし協力隊3名と代表の津田、あわせて4名で当施設の運営をスタートしました。

――「GREEN COMMUNITY」プロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください。

松田:「森のオフィス」という名称からもわかるように、当施設は豊かな自然に囲まれています。そのため、「この環境を守りたい」との思いは、職員、利用者さん問わず、もともと皆が持っているのではないか、という考えがありました。

そんな中、2019年に単身でオーストラリアのメルボルンを旅行する機会に恵まれました。この旅を通して、海外のサステナブルな取り組みに触れ、大きな刺激を受けたんです。メルボルンで体験したさまざまな取り組み内容を活かし、「森のオフィス」でも何かやれることはないかな、と。そう考えたのが、「GREEN COMMUNITY」立ち上げのきっかけのひとつです。

――海外のサステナブルな取り組みに刺激を受け、プロジェクトを実現させるまでには、どのような過程があったのでしょうか。

松田:僕はもともと、地域おこし協力隊として富士見町に移住してきました。なので、協力隊時代の同期に、「森のオフィス」でサステナビリティに関する取り組みをしたい、と相談を持ちかけるところからはじめて。すると、その同期が勤める一般社団法人Earth Company(アース・カンパニー)でも、同じ方向性の事業に挑戦するタイミングであることがわかり、それなら「森のオフィス」を実験場として、環境保護につながる取り組みをできるところからはじめていこうと、プロジェクトが立ち上がりました。

できるかぎり自然に負荷をかけず、オフィスを運営していくにはどうしたらいいのか――。そのための取り組み内容を、現在も日々ブラッシュアップしています。

――人同士のつながりが、プロジェクト立ち上げを後押ししてくれたのですね。

松田:そうですね。「森のオフィス」は、「GREEN COMMUNITY」に限らず、数多くのプロジェクトが人同士のつながりから生まれています。仕事内容や性格など、親和性を考慮した上で、人と人をつなげられるよう、スタッフも日々心がけています。

「森のオフィス」入り口付近には、イベント告知のお知らせが。取材日にあったのは、「森のほけんしつ」なるプライベートサロンのお知らせ。このように、会員さんの自発的な動きにより、日々新たなプロジェクトが立ち上がっている。

自発的に広がる「GREEN COMMUNITY ALLIANCE」の輪――。年長者の知恵を活かし、環境保護の活動と地域の人々との交流を同時に叶える

人とのつながりやタイミングに後押しされ、実験的にスタートした「GREEN COMMUNITY」プロジェクト。バリと日本に拠点を構える一般社団法人Earth Company(アースカンパニー)が運営するプロジェクト『Operation Green』とのパートナーシップにより実現した本プロジェクトは、日々トライアンドエラーを繰り返しています。これまで実践されてきた取り組み内容は、多岐にわたりながらも、私たちが日常生活に取り入れやすいものが数多くありました。

――「GREEN COMMUNITY」プロジェクトの具体的な取り組み内容を教えてください。

松田:まずは、プラスチックゴミ削減のために、ペットボトルの販売を止めました。代わりに地域の酒屋さんにお願いして、リサイクル瓶飲料を常備しています。ゴミの分別を徹底し、持ち込みのペットボトルのゴミは、すべて持ち帰りをお願いしています。そのほか、近隣のお店のお菓子や珈琲豆を量り売りにするなど、ゴミそのものを減らす工夫をしています。

また、土の力で生ゴミを分解する「キエーロ(コンポスト)」を利用して、生ゴミを堆肥として再利用しています。宿泊棟では太陽熱温水器を使用しており、お風呂やキッチンのお湯は太陽熱でまかなえる仕様になっています。

――「GREEN COMMUNITY」研修プログラムでは、どのような学びが得られるのでしょうか。

松田:研修プログラムでは、座学だけではなく、僕らが実践してきたサステナブルの取り組みを実際に体験してもらいます。プログラムの一環として、森の中に入ってもらったりもしていて。自然を身近に感じることで、環境保護の必要性をより実感してもらいたいとの思いからです。それぞれの事業所や個々の生活に活かせる形で、知識・技術を持ち帰っていただける内容になっています。

様々なワークスペースとノウハウ共有の場を作る「GREEN COMMUNITY ALLIANCE」の輪も、今後広げていきたいと考えています。そのため、研修プログラムを受けてくださった方々は「GREEN COMMUNITY ALLIANCE」に加盟できる仕組みを作りました。「ALLIANCE(アライアンス)」は、「同盟」という意味。地球環境に配慮したオフィス環境を整えたい――そんなマインドを持つ者同士がつながっていくことで、必要なノウハウが広く引き継がれていく形を目指しています。

――環境負荷の低いものに変えていくと、コスト面が気になります。このあたりはいかがでしょうか。

松田:今はエコプロダクトを購入する段階から自分たちで自給する段階へとステップアップしていますが、プロジェクト開始当初はエコプロダクトに頼ることしかできず、実際にコストは上がりました。なので、その費用を補うためにエコチャージとして会員登録費用に500円上乗せさせてもらう形で、会員の皆さんにご協力いただきました。会員の方々も「GREEN COMMUNITY」の取り組みに協力的で、エコチャージのほかにも、自発的にさまざまな活動をしてくれています。

――自発的に生まれた取り組みとは、具体的にどのようなものでしょうか。

松田:森のオフィスでは、曜日ごとに決まった飲食店さんが食事を提供してくれます。そのお店から出る油の再利用を目的とした「廃油石鹸のワークショップ」も、自発的に生まれた取り組みのひとつです。制作した石鹸は、オフィスのお皿を洗うのに使用します。

それから、当スタッフの緒方が、庭でへちまを育てています。たわしを自給自足するためです。このように、コスト面の負担を減らすために努力しているというよりは、年長者の知恵を活かし、地域の人たちが交流を楽しみながら環境保護の活動を広く伝えていく流れができているように思います。

サステナブルなアクションを、町内の企業にまで広めたいーー。学ぶだけではなく、実践・継続できる取り組みを目指す

コスト面の問題さえも、前向きに楽しみながら乗り越えていく。そんな「森のオフィス」のスタッフと会員さんの姿勢は、固いイメージがあるサステナブルの取り組みへのハードルをやさしく下げてくれます。

そのためか、「GREEN COMMUNITY」の活動に関心を寄せるのは、地元企業だけではないようです。

――「GREEN COMMUNITY」の活動を通して、やりがいを感じられた瞬間を教えてください。

松田:サステナビリティの取り組みに関しては、東京の企業さんのほうがより感度が高い印象があります。ただし当然ながら、東京の企業さんと「森のオフィス」では、そもそもの環境が全然違うんですよね。僕らは「生ゴミは土に埋めたらいい」と思っているけど、東京のオフィスには大前提として土がないんです。そのような環境の違いがあっても、研修を通して学んだ知識をできる範囲で実践してくださっている企業さんがいることは、大きなやりがいにつながっています。

東京の企業さんが「GREEN COMMUNITY」の研修を受けてくださることは、僕らにとっても見聞を広げるいい機会になっています。都会でも実践可能なサステナブルの取り組み内容を、今後さらに充実させていきたいです。

――「GREEN COMMUNITY」の活動において、課題を感じる点はありますか。

松田:環境負荷のインパクトでいうと、エネルギーの再利用が大きな課題ですね。現在、アースカンパニーさんと共同で、電気代や廃棄物の量を毎月数値化し、CO2排出量を客観的数値として認識できる形にしています。この数値を見ると、やはり電気の使用量が環境負荷の大部分を占めているので、電気の供給を再生可能エネルギーに転換しないと始まらないなと感じています。

「森のオフィス」の屋根にソーラーパネルをつける話も進んではいるのですが、取りつけに至るまでに時間がかかっているのが実状です。

――「GREEN COMMUNITY」における、今後のビジョンを教えてください。

松田:「森のオフィス」で培ったノウハウを、もっと外に広げていきたいですね。コワーキングスペースやシェアオフィスを利用してくださる方々だけではなく、町内にも活動を広げていきたいです。サステナブルなアクションを町内の企業にも広めることで、今よりもさらに環境保護の取り組みが生活に根付いていくと思います。

勉強して知識を得るだけでは、環境問題は改善しません。一人ひとりが知識を実践していくことで、少しずつでも環境は守られていきます。そのための行動を起こせる人を、もっと増やしていきたいです。

未来の自分たち、その先の世代のためにも、限られた資源を有効活用し、環境負荷を抑える取り組みは必須です。先代の知恵と新しい知識の両方をあわせ持ち、人同士の交流を育みながら環境保護の取り組みを叶える、「森のオフィス」による「GREEN COMMUNITY」プロジェクト。

「やらねば」ではなく、「やりたい」が自然と生まれる場所で、地球環境を守るための小さな第一歩が、今日も踏み出されています。

企業向けワークスペース改善プログラム「GREEN COMMUNITY研修プログラム」にご興味を持たれた方は、ぜひ「森のオフィス」ホームページよりお問い合わせください。

現在、森のオフィスでは新しい地域おこし協力隊の仲間を募集しているとのこと。興味のある方はぜひ、ご応募ください!

Information

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Editor's Note

編集後記

すぐそばにある自然を守りたい。そんなごく当たり前の願いからはじまった「GREEN COMMUNITY」プロジェクトは、「掲げるだけ」の目標ではなく、地に足のついた「生活」に根付いていました。私自身、現在自然豊かな町に暮らしています。この環境を守るために、できることをひとつずつはじめていきたいと改めて感じました。

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