生き方
「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。
第2回目のゲストは、日本最大級の訪日メディア「MATCHA」を運営する株式会社MATCHA代表取締役社長の青木優さん。「日本の価値ある文化が、時代とともに残り続ける世界に。」をビジョンに掲げて活躍されている青木さんですが、その大きなきっかけになったのが、世界一周中に向き合った自分自身との対話だったのだとか。
10日間誰とも話さず目も合わさず、極限で向き合った先に見えた青木さんの「やりたいこと」とは。自分の人生を選択したいと思っているアナタに注ぐ、一匙の刺激をお届けします。
平林:第2回『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』をスタートさせていきますが、僕自身、今日のゲストである青木さんとお話したくて仕方がなかったんですよ。
青木:ありがとうございます!なぜでしょうか?
平林:青木さんは日本最大級のインバウンドメディア『MATCHA』と、『インバウンドサミット』を企画運営されているじゃないですか。僕らも『LOCAL LETTER』や地域経済サミット『SHARE by WHERE』の企画運営を行っています。お互い年齢も近いですが、お話ししたことは一度もなかったので、とても楽しみです。改めて自己紹介からお願いしてもいいですか?
青木:出身は東京都東久留米市で、弟2人妹2人の5人兄弟です。明治大学国際日本学部の一期生として入学をして、日本の文化を世界に発信できる人を増やそうというコンセプトの元学んでいました。それがMATCHAの創業のきっかけですね。
平林:大学での経験がきっかけなんですか。
青木:大学卒業後は、映像会社であるデジタルエージェンシー augment5 Inc.に所属して、軍艦島のGoogleストリートビューをつくってました。その後、株式会社MATCHAを2013年12月に創業して、日本に来る外国人観光客向けのメディア『MATCHA』運営や、それに伴う海外のマーケティング支援を行っています。コロナ前までMATCHAは月間660万人の方に見ていただいていたんですが、コロナ後は100万人まで落ち込みました。
平林:コロナで動けない中でも100万人が見ていたんですね!
青木:そうなんですよ。コロナで移動が制限されている中でも、100万人の方々が見ているのはむしろポテンシャルだなと思いました。今ようやく220万人ぐらいまで戻ってきている状況なんですが、そんな中最近始めたのが、自治体や企業の人にMATCHAのコンテンツを自由に書いてもらって、瞬時に5言語に多言語化した記事が生まれるサービス。今までは、全部自分たちで取材、記事執筆をして発信してたんですけど、誰もが記事を書けるようにしました。
平林:自動翻訳されるんですか?
青木:そうです。より多くの人が記事を書くことで、より多くの人にMATCHAの記事を見てもらえるようにしたいと思って、頑張っています。
平林:青木さんは、大学生の頃から海外への発信を学ばれて、今の仕事にも活かされてるじゃないですか。今までのお話を聞いていても、人生の一貫性が高いなと感じますが、それは当初から意識されてのことだったのでしょうか?
青木:意識はしていなかったですね。自覚的に進む道を決めるようになったのは、大学生の時かな。
平林:それは、大学時代の世界一周の経験が大きいんですか?
青木:そうですね。大学時代に出会った教授が「日本の文化は世界で流行ってるけれど、日本人がビジネスにできていない」という話をされていて、それを軸に世界一周へ行きました。その中でも特に自分に大きな影響を与えたのは、10日間の瞑想体験で。
平林:世界一周で瞑想!
青木:10日間、誰とも話すことはおろか、目を合わせてもいけなくて。座禅をする場所に1日10時間いたんですけど、とにかく暇なんですよ(笑)。「何も考えてはいけない」というのは、なかなか難しくて。「何も考えない」が成功したのは多分、9日目の1時間ぐらいしかなかったと思います。 あとは雑念まみれ(笑)。
平林:最後の最後で境地に辿り着いたんですね(笑)。
青木:最後の一瞬だけでした。でもその暇を持て余した時間に自分の人生を紐解くことをしていて。生まれた瞬間から現在に至るまで、人にはいろんな選択があるわけじゃないですか。例えば「今日のお昼は何食べようか」とか「どこの大学に進学するのか」とか。そんな選択の連続の中で、「なぜそれを選んだのか、他にどんな道があったのか」を瞑想しながら、何日も何日も繰り返し紐解きながら自分の人生を辿り直しました。
平林:何周も何周も。
青木:そうです。そうやって紐解いていくと不思議なもので、自分の中に何度も同じキーワードが2つ出てきたんですよね。
1つ目のキーワードは「原体験にこそ価値がある」でした。自分の人生を振り返った時に、自分の人生を後押ししてくれたのは自分自身の体験であることが多かったんです。今の世の中は情報に溢れてるけど、結局自分の幸せは誰かと比べられるものではないし、何が正解かもわからない。だからこそ、自分の感覚を大切にすることが大事なんじゃないかと思ったんです。
2つ目のキーワードは「日本文化の商社をつくる」。自分でもどうしてかハッキリしていた理由はわからないんですが、ずっとこの言葉が頭に出てきてました。瞑想中も、瞑想後も、いろんな選択肢はあったはずですが、僕は器用なタイプではないので何か一つにテーマを絞りたくて「日本文化の商社をつくるをテーマにして生きよう」と決めたんです。僕自身がこのテーマにワクワクしたし、「原体験にこそ価値がある」という言葉にも繋がり、広がりも深さもあるテーマ。だから、自分の一生をかけて追える気がしたんですよね。
平林:それは何歳のときですか?
青木:21歳ですね。「日本文化を世界に発信する」「日本文化の商社をつくる」を言葉にし続けていると、自然と情報が集まってきて、引き寄せられた結果、今があるという感じです。
平林:世界一周のあと最初は会社に入社されていますよね。どんな経緯があったんですか?
青木:たまたまなんですが、augment5 Inc.っていう会社の映像をみて、それがすごくかっこよかったんですよ。草津や京都の映像だったんですけど、朝6時ぐらいに見ちゃったもんだからハイになってしまって、Facebookで代表のことを調べたら、直接お会いしたことはなかったのに、なぜかFacebook上では友人になっていて。
どうやら僕のブログを読んでフォローしてくれていたみたいなんです。それが嬉しくて、朝6時なのにもかかわらず、30行ぐらいの長いメッセージを代表に送りました。
平林:ハイテンションのまま(笑)。
青木:そうなんです。メッセージの最後に「会ってください」と書いていたんですが、送信してから1分もかからず「是非」と返信してくださって。
平林:即答で!
青木:「ああやばい」と興奮しながら、その日の14時ぐらいに会ったんですけど、「この人は映像を通じて日本の文化を発信してるな。自分のやりたいことを映像を通じて体現されているな」と思いました。
その後、その代表との出会いや映像が素晴らしかったことをブログに書いたら、2万いいねが付いて、映像が100万回ぐらい再生されて、Googleからどんどん仕事の発注がくるようになって。そしたら入社できることになりました(笑)。
平林:すごいですね!
青木:5人くらいの小さい会社で、いろんなプロジェクトに関わらせてもらったんですけど、途中で僕自身がキャパオーバーしちゃったんですよね。気づいたらフィリピンにいました(笑)。
平林:え、気づいたら?(笑)
青木:いろいろ飛ばしましたけど(笑)、結構しんどい時期でした。「会社に行くの嫌だな」「フィリピンに行こう」と思って、成田空港に向かっていたら、偶然その時に代表から電話がかかってきて。
「どこにいるの?」と聞かれたので「成田空港です。これからフィリピンに2週間ほど行こうと思ってます」って伝えたら「え?なんで?」って。正しいリアクションですよね(笑)。
それでも背中を推してもらってフィリピンへ行き、「改めて自分は何がやりたいんだろう」と考えた結果、「やっぱり自分は日本文化を発信したい」という想いが、余白の時間で生まれたんです。
青木:帰国後、代表にお会いして「働けないね」という話になったんですが、その翌日に蔵前にあるゲストハウス『Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE』に連れて行ってもらって。その空間の盛り上がりに触発されましたね。自分がやりたい情報発信と、多国籍の人たちが交わっているNuiの空間を通じて、この2つがこれから重なっていく時代がくると思ったんです。海外の人に日本文化や魅力的な情報を届けることができたら、それって地域にとってもポジティブになると。
もう少しだけお伝えすると、日本は地域ごとに良さ(個性・文化)があるのに、この良さがどんどんなくなっている状況。この課題は、海外や地域外の人が地域に入ることで解決できるんじゃないかとも思いました。最初の会社は半年間ぐらいしか働いていなかったんですが、最初の経験があって今の自分があると思っています。
平林:やりきったからこそ次に進めた感じですか?
青木:正確には、やりきれなかったんだと思うんですよね。自分の至らなさが出てしまったというか。今思うと、自分の至らなさは「全部自分でやろうとした」ことだったと思います。辞める時に代表からも「青木君は全部1人でやりすぎなんだよ。君がやるのは、映像が得意な人を見つけて、その人とビジョンを共有して、一緒にやってもらうこと。君が形にすることは求めてない」と言われました。これは僕の中でハッとさせられた言葉で、今でも大切にしている言葉ですね。
Editor's Note
この記事を書きながら、たくさんのことに心が動かされました。
「人って本気で向き合えば10日間で変わることができるんだ」「メールを送ったその数時間後に会うってすごい。私も出不精になっていたらだめだ」などなど。
青木さんの人生と向き合うことで、自分自身と向き合うことができる時間となりました。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香