YAMAGUCHI
山口
※本レポートは、2023年8月に株式会社WHERE主催で開催されたトークセッション「地域経済サミットSHARE by WHERE for Student in 長門 – 次世代教育と産業創出 -」のSession2「若者からの改革を推進するファクターX」を記事にしています。
「自分が行動しただけでは、世の中を変えることはできない」。そう思い、もどかしさを抱えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、その勇気ある小さな一歩が地域のためになる、そんな将来があるとわかれば価値観の変化にも繋がるはず。前編では、地域を愛する高校生と首長、それぞれの立場からの視点や課題感などをお届けしました。
後編では、さらに地域を発展させていくために必要な行動やマインドについて語ります。
モデレーター:行政は幅広い市民に寄与するという難しさがありますよね。一部の人だけに予算をかけることはできない。やりたいことがあったときに、行政を頼ったとしても100%思い通りにすることはできないのが現実です。ではどうするか。
私は、まずは身近なところで行動をするしかないと考えています。
苦しいことや失敗から逃げて当たり障りのないところにいくのではなく、自分たちで切りひらいていくということがすごく大事だと思います。その行動一つが自分のためや町のためになるかもしれないですよね。どんな行動を起こしていきたいですか?
中ノ目氏(以下、敬称略):いまの私たちにできることは、自分のなかに生まれた小さな興味や疑問を見逃さないで、首をツッコミまくることなのかなと思いました。
「行動」と聞くと大きなことをイメージしがちですが、小さな一歩でも良いんだなと。「ちょっと話を聞きに行ってみよう」だけでも立派な行動なんですよね。
一歩を踏み出すことならいくらでもできると思うので、とりあえず試してみる。そして、一歩出たときに人に頼ることも重要だなと感じています。それは行政だけでなく、隣のおばちゃんも含めて地域全体に頼ること。地域のローカルさを生かして簡単な一歩を踏み出し続けることが大事だと感じています。
山下氏(以下、敬称略):私は自分がワクワクすることをしていきたいです。いま住んでいる人、1人1人がワクワクして生活をしている楽しそうなまちにしたいと思っています。そのためにはまずは自分がワクワクすることを見つけたいです。
山添氏(以下、敬称略):先ほど「これからどんなまちをつくっていきたいか考えている」というお話がありました。これはすごく難しい問いなのでこれから経験を通して答えを見出していかれるのだと思います。
そのなかで1つ、与謝野町が経験してきたことを紹介させていただきたいと思います。
与謝野町は織物のまちだとお話をしましたが、特に昭和30年頃は非常に多くのお着物をつくる産地でした。その量は1年間で1千万反。地球を4周半回るような量です。しかし、昭和40年以降に生産量がガタガタと減少する時代を迎えると、当時の織物事業者たちは自分の家族や子どもにあることを伝えました。
「この織物の産業に未来はない。自分たちの人生は自分たちで考えろ」
これは自分たちの家族を慮ったときに、言わなければいけない状態にあって出た言葉だと思います。
時代の変遷のなかで、声をかけなくてはならなかったことは十分に理解した上で「自分たちのやっていること、人生に尊厳を感じることができない」という大人の背中を垣間見てしまったことも事実。そういう子どもたちが地域から出てしまい、自発的に地域に帰ることもなかったのだと思うんですね。
山添:私は「尊厳を持って生きること」がまちづくりを考えていく上で非常に重要だと思っています。そして、与謝野町に訪れる人たちにとって、強い意味や意義を提供できるまちにしていきたいと思っています。
これから、いろんな思考や挑戦を繰り返しながら答えに辿り着く皆さんだと思いますが、私の話を1つの参考にしていただけたら嬉しいです。
江原氏(以下、敬称略):実は長門市は、瀬戸内側の大都市に通うのはなかなか難しい地域でもあるんです。そのため長門市に働く場所がないから帰って来られないという人もいると思います。
今後、じぶん株式会社のように自分が仕事をつくるために帰ってくる力を持った学生が増えてくれたら嬉しいと思います。たとえ進学を機にここを出たとしてもその後何倍にも大きくなって、新しい考えを持って、仕事をつくっていくというマインドの人が増えるというのは行政としても非常にありがたいことです。
行政は、働く場所や魅力ある職場をつくるために企業誘致にも力を入れています。みなさんの幸せはどこにあるのか。私の同級生も、帰ってきている人もいれば帰って来ない人もたくさんいます。それは、それぞれの価値観で判断しているので正解はありません。
江原:今回は「ファクターX」がキーワードになっていますが、僕は「経験」しかないと思います。人間は目で見て、耳で聞いて、自分で活動したことからしか応用ができない。経験値から出ないと応用が難しいので、ぜひ外に出ていろんな経験をしていただいて、そのなかから「これは!」というものを見つけて帰ってきていただきたいですね。
中ノ目:「誰かのために」地域に戻ってくるのではなく、私がここに居たいからここに居る。自分発のエネルギーで、ここに居る人が溢れるまちがいいなと思います。
私たち高校生ができることは大きくないかもしれませんが、とにかくいま私たちが感じていることを、まずは地域の人に伝えて、どんな小さなことでも発信することが大事なのかなと思いました。
LOCAL LETTERのプロジェクトの1つである、「地域経済サミットSHARE by WHERE」。「地域経済をともに創る」を合言葉に、全国の産学官の実践者たちが一堂に会して繋がり、学び合い、共創するサミットをあなたも覗いてみませんか。
Editor's Note
高校生と首長、立場の異なる4名のトークセッションはとても見応えがありました。それぞれの立場だからこそ見える希望や課題感に触れることができ、自分にはどんな小さな一歩が踏み出せるか考えてみるとワクワクしてきました。
YUKAKO
優花子