協働
「風の時代」と呼ばれる現代。
目に見えないものや内面、変化が求められる時代だからこそ、新しい道を切り開き続けることが余儀なくされている今、新事業に乗り出す会社も増えている。
そこで今回は、社内メンバーと外部人材が協働することで、自社の強みを最大限に活かしながらも、新たな挑戦に成功したプロジェクトをご紹介。
「鹿児島の食を日本全国、世界へ」を合言葉に、茶ぶりなど鹿児島の食材を楽しめる飲食店を経営している『株式会社NEVERLAND』と、地域企業の伴走支援を行う『協働日本』が協働で生み出した新たな挑戦とはーー。
村松:NEVERLANDの代表取締役加世堂洋平さんに事前インタビューを行っておりますので、今回の事例紹介は、NEVERLANDの代表である加世堂さんと、加世堂さんと一緒に協働を行った協働日本の藤村からお伝えさせていただきます。
藤村:協働日本の藤村です。今回私は、外部人材としてNEVERLANDさんと一緒に約7ヶ月間プロジェクト遂行をさせてもらったので、まずは協働日本の立場から発表させていただきます。
藤村:鹿児島県の方々は『特攻チキン野郎』と聞くと「あの美味しい居酒屋さん!」とピンと来る方が多いかと思いますが、美味しさだけでなく、「加世堂さんがつくるお店っていいよね」と、加世堂さんのファンが多くいらっしゃるのが、NEVERLANDの特徴です。
今回、協働日本が関わったのは「ECサイトづくり」だったのですが、協働日本が関わる前のECサイトは、店舗の雰囲気とは全く異なるものでした。
藤村:加世堂さんと対話を繰り返していく中で見えてきたのが、NEVERLANDが大切にしている「おもてなし」と「熱気」という2つのキーワード。
スタッフさんがお客さんの顔と名前覚えていて、お客さんがお店に行くと「お久しぶりです!」と会話が始まるような「おもてなし精神」溢れたお店づくりをされているのが印象的で、店舗の良さをECサイトにも持ち込もうとご提案させていただきました。
藤村:「ECサイトで接客?」と思われるかもしれませんが、ECサイトは「商品が並んでいて、決済できる」だけじゃなく、「お客様が受け取って、食べて、味の感想を投稿する」ところまで全部を引っくるめてNEVERLANDのECサイトと考えることができるのではないかと思ったんです。
しかしながら店舗事業とEC事業を分析したところ、店舗事業とEC事業に大きな隔たりがあるため、NEVERLANDが持つ「クオリティと接客力」という強みを最大限に生かすことができるECサイトをつくり、店舗と連動させましょうとお伝えしました。
藤村:ここからは具体的に実施内容をお伝えしていければと思います。私たちは、まず店舗と同じく「ここにしかない体験」を意識した『お正月は茶ぶりで家族団欒』という年末年始のキャンペーンを行ったんです。
店舗のお客さんへのヒアリング調査から「今年は3年ぶりに実家に帰ります」という方が多かったので、「家でもNEVERLANDクオリティの楽しいお正月を楽しんでもらいたい」との想いでECサイトの企画を考案しました。
藤村:企画だけでなく、NEVERLANDの強みである「接客」を活かし、店舗に来たお客さんにスタッフさんがEC商品を紹介し、購入の流れをつくったことで、結果的に昨年の2倍の売り上げを達成。今後としては、「おうちdeごちそう13」というイベントを打ち出し、毎月13日周辺にお客様に買っていただくという導線を整えています。
私たちは、専門分野を持った外部人材(協働プロ)ではありますが、プロジェクトに対して何か最適な答えを持っているわけではありません。
例えば今回の事例でお伝えすると、店舗運営に関してはNEVERLANDさんの方が圧倒的に知識も経験も豊富でした。しかし、お客さんの声を集めてフィードバックしてもらうことで、次の学習材料にし、仮説を立てては、またお客さんの声を聞いていく。これをどれだけ早く回せるかを一番に意識したことで、今回の結果になったと考えています。
村松:ありがとうございます。では次に、NEVERLANDの代表である加世堂さんからコメントをいただいているので、ぜひご覧ください!
加世堂:僕らの課題は、店舗でブランディングしている「茶ぶり(緑茶の葉っぱで育てられた鹿児島県長島町の特産ブリ)」をネットでどう販売していくかということ。「生産者とお客様を繋ぐ」という会社の理念を持っていながら、コロナでお客様が店舗に来れない状況が続き、苦戦をしていた状況でした。
僕らは長年、店舗販売を主としてきたので、お客さんの反応を見てメニューを切り替えていくことは得意である一方、Webサイトを通じて、顔の見えないお客さんに販売するとなると、見極めが難しくて。その部分を協働日本さんと一緒に考えていくことになりました。
加世堂:協働日本さんが一緒に伴走していただいたことで、そもそも「僕たちはこうあらねばならない」という固定概念が強くあったことに気が付きました。
例えば、餅は餅屋じゃないですけど、僕たちはあくまで飲食店で、ネット販売のプロではない。だから、「ECサイト販売は僕たちには向いていない」と考えていた部分もあったのですが、そこを取り除いていただき、結果として僕たちの大切にしている部分を尊重してもらったECサイトの作り込みができたと思っています。
今回コロナ禍で改めて思ったのは、すごい速さで時代は変わっていくということ。その中で、「どうやって社会課題に取り組むのか、先読みしないといけない」と模索していた時に、協働日本さんと一緒に取り組みができたのは、とても貴重な体験でした。ありがとうございました。
Editor's Note
「新しい事業」=「全く新しいもの」と捉えがちですが、今回の協働で見えてきたのは、「自分たちの大切にしているものから共通点を見出し、自分たちが得意とする方向へ導いていく」ということではないかと思います。今後何かをはじめるときのヒントになる協働例だと感じました。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香